会社の近所に実装石料理を専門にやっている店がある。 その名も『まる実(まるじつ)』。 実装石料理というとゲテモノ扱いする人もいるが、この店は別だ。旨い実装石料理がリー ズナブルな値段で食べられる。加えて、『目で楽しむ実装石料理』を実践している名店だ。 さて、その『まる実』に最近、新メニューが追加されたそうだ。それも夏季限定。油断し ていると食い逃がすかもしれないと思い、早速会社の帰りに同僚と食べに行くことにした。 『いらっしゃいませデス。いつもありがとうございますデス。』 『まる実』に来ると、常連の僕達とはすっかり顔なじみになっている、この店のマスコッ ト兼店員、禿実装石の「ミツボシ」が挨拶する。 「よ、ミツボシ。ご苦労さん。」 こっちも普通に返事を返す。ミツボシに付けられている首輪はリンガル兼用の優れモノで、 「デスデス」という実装語をリアルタイムで人間の言葉に変換してくれる。 実装石料理の専門店で実装石が店員をやっている、と言うと変に思うかもしれないが、こ れで親父さんに言わせると、「『ミツボシ』がいないと店が立ち行かない」そうだ。 元々、「ミツボシ」は普通に公園で暮らしていた野良の仔実装だったそうな。それが、一 家が同属に教われ、親や姉妹は皆殺しにされ、自身も禿裸にされ身体中をズタボロにされ た。必死に逃げてどうにか逃げ切ったものの、傷が深く、『まる実』の前で行き倒れにな ったところを、親父さんが気まぐれで助けたらしい。その後『ミツボシ』はいつしか店を 手伝うようになり、気が付いたら店の重要な役を任されるようになっていたそうだ。ちな みに、今ミツボシが着ている服は実装石用のまる実の制服である。 『三名サマご案内デスゥ〜。』 「いらっしゃい〜。」 ミツボシに案内されて店内に入ると、親父さんが笑顔で迎えてくれた。 僕達は会社帰りに何度もこの店に寄っているので、この親父さんとはすっかり顔なじみだ。 もっとも、ここの親父さんは一見さんも常連さんもわけ隔てなく、常に誠心誠意で接して くれるので、そういう意味では常連のありがたみが無い(笑)。 「こんばんわ」「こんちわ」「毎度です〜。」僕たちも礼を返す。 「いらっしゃい。今日は何にします?」親父さんが愛想よく問い掛ける。 「なんでも新メニューが加わったと聞いて。ぜひ一度食べておこうと思って。」 「はは、分かりました。『流し実装』ですね。」 「へぇ、新メニューは『流し実装』って言うんですか。」 「ええ。それじゃ案内させますんで。お〜い、『敏明』ぃ。」 「あいよぉ!!」 奥の調理場から、のれんをくぐって元気よく二十歳そこそこの若者が顔を出す。親父さん の長男の敏明君だ。以前はやんちゃだったというが、今では親父さんの後継ぎとして店で 修行に精を出している。 「あ、どうもいらっしゃい」敏明君が挨拶してくる。 「『流し実装』をお召し上がりになるそうなんだ。部屋の方にご案内して、支度してくれ。」 「はいぃ、分かりましたぁ。それじゃあこちらの方へ。」元気よく敏明君が親父さんに答 える。 「ミツボシ、3番の部屋の実装を、『流し実装』のほうに回しておいてくれ。」 『ハイデスゥ。』 親父さんの指示にミツボシが返事をして店の奥に入ってゆく処を横目で見ながら、敏明君 に案内されて、『流し実装』の部屋にたどり着く。 とりあえず『流し実装』のほかに、生中も頼んでおく。 『流し実装』の部屋は、四方を壁に囲まれていた。そして、タイル地の床の上にイスとテ ーブルが置いてあり、テーブルの一方に小さな流し台が置いてあった。流し側の壁の上の 方は布の垂れ幕のようなもので隠されている。そして、流しの向かいの壁には、高い位置 にテレビモニターが置かれている。 一方、テーブルの上には草花に覆われた岩のイメージのオブジェの周りに、2つに割った 竹が勾配をつけて螺旋状に並べられていた。…要するに、流しそうめんのセットだ。 察するに、『流し実装』とは食用実装をところてんの様に細切りにして、流しそうめんの ように掬って食べる料理なのかな? そう思った矢先、手元に箸と小さな取手付きのざる、そしてタレを入れた小皿が2皿配ら れた。タレは梅肉と醤油系のタレ…ポン酢かダシ醤油だろう。更に、なぜかぐつぐつと煮 えた湯を湛えた小さな鍋。鍋は3人で共有のようだ。微妙に流しそうめんとは違うな…。 生中も届いたので乾杯して突き出しを食べつつ喉を潤していると、支度が幾らか整ったの か、敏明君がリモコンでテレビモニターの電源をONにする。 モニターの画面に光が灯り、映像が写し出される。画面の中には …白い壁の部屋の中に、 テレビやボール等の玩具に囲まれて一匹の実装石が座っている姿が写し出された。 日本料理の店に魚を入れておく『いけす』があるように、この店では食用の実装石をスト ックしておく小屋がある。いわば『実装石のいけす』だ。画像の風景はその『実装いけす』 の風景だ。この店は味で勝負するお店だが、一方で実装石料理の店なので、若干の『演出』 がある。モニターに写されているのはその演出の部分らしい。と、いうことは画像の実装 石が『流し実装』の材料かな…。 画面の実装石をよく見ると、部屋の中にはテレビやボール等実装石を楽しませるアイテム があり、また首に首輪とリードを付けていることに気がついた。まるで飼い実装石みたい だ。味にこだわる親父さんは、ブロイラー方式で育てられた実装石を使うことは無い。実 装石牧場で放牧して育てられた、上質の実装石だけが使われている。当然画面の実装石も その牧場から仕入れたもので、飼い実装に近い待遇で育てられているはずだ。首輪やリー ドをつけているのもそのせいだろう。テレビやボール等の玩具も、そんな牧場実装に不満 を持たせないためのアイテムだろう。当然、自分がこれからどんな目に会うか知る由もあ るまい。呑気に歌なんぞ歌いながら腹をさすっている。 「デッデロゲー♪ デッデロゲー♪ デッデロゲッゲー♪ デロデッゲー♪」 あれ… この歌、確か実装石の胎教の唱だったはず。目を見てみると両方とも緑色…。 コイツ、妊娠している! 妊婦実装石か。 このモニターは実装リンガル機能付きで、画面の下側に字幕のように訳語が出ている。 『ワタシ達は高貴な実装石、この世で一番偉い生き物デス、ニンゲンよりも偉いデス♪ ニンゲンは馬鹿なので、ワタシ達が導いてやらないといけないデス♪ オマエ達も早く産まれて、ママと一緒にニンゲン達をこき使ってやるデス♪ ワタシ達に従うことがニンゲン達の幸せデス、早く産まれて来るデッス、皆でニンゲン をこき使ってやるデス〜♪』 …あの歌、こんな意味だったのか。コイツをこれから喰っちまうとはいえ、同情無用にな ったな。 「人間には、どれも同じ『デッデロゲー♪』に聞こえるんですけどね、個体によって歌の 内容は結構違うみたいですよ。」敏明君が説明する。 「それにしてもお腹が大きいね。風船みたいだ。」同僚の一人が感想を言う。 「この実装石は特に多産の品種でしてね、普通の実装石だと一度のお産で多くても10匹 位なんですが、コイツは30匹くらい産みます。中に入っている数が多い分、普通の実 装石よりもお腹が特に大きいんです。」 「へ〜、実装石にも色々品種があるんだなぁ。知らなかったよ。」 「トントン」 不意にモニターの中の、『実装いけす』のドアがノックされる。 『失礼しますデス。』 まる実の制服を着た禿実装石…ミツボシが入ってきた。 『水場の用意ができましたデ…』 ドガッ!! いきなり妊婦実装石がミツボシを殴る。 画面を見ていた敏明君のこめかみに血管が浮き出る。ミツボシは親父さんや敏明君にとっ ては家族も同然だから、そのミツボシに乱暴を働くヤツは許せないのだろう。 『遅いデスゥ!! 一体いつまで待たせやがるデス!! もう少しで産まれてしまう処だ ったデス!! このクソ禿実装、可愛いワタシの可愛い仔供に何かあったらどうするつ もりデス!!』 『す、すみませんデス…。 とりあえず、水場にご案内するデス。』 そう言ってミツボシは妊婦実装石のリードを取って『実装いけす』から出てゆく。 乱暴を働かれても決して怒ったりすること無く、淡々と自分の役割を果たすところが、親 父さんがミツボシを高く評価する所以だ。それに、この『実装いけす』から実装石を連れ 出す仕事は、ミツボシの重要な仕事だ。人間が連れ出そうとすると、危険を感じて暴れた り、逃げ出そうとしたりして、時に身体を傷つけ肉質を悪くする場合がある。しかし、実 装社会では最底辺とされている禿実装のミツボシ相手だと、実装石達は安心し…というよ り、今のようにふんぞり返っていばり散らしながら指示に従う(従うのは、その時々の実 装が欲しいもののところに案内する、と言っていって連れ出すからである)。結果、肉質 を損なうことなく最良の状態で調理場に搬送することが出来るのだ。 『さ、こちらデス。』 画像が切り替わり、別の部屋にミツボシと妊婦実装石が入ってくるところが写し出される。 映し出された部屋は、四方を壁に囲まれており、その壁際におまるのようなものが置かれ ていた。通常のおまると一寸違うのは、おまるの底は完全に穴が開いており、床下に当た る部分に水が湛えられている。 …なんかいわゆる『ぼっとん便所』みたいだ。 『ではごゆっくり、デス』 リードをおまるの真上から垂れ下がっているフックに引っ掛けると、ミツボシは一礼して 部屋を退室してゆく。 『フン、使えないクソ禿デッス…。あんなゴミ、後で仔供達の餌にしてやるデッス。』 ミツボシに悪態をつく妊婦実装石。敏明君の怒りのボルテージが上がるから、悪態を付く のは止めて欲しい…。大体、本気を出したらミツボシはマラ位なら素手で、ミツボシ専用 の包丁『鬼姫』を持たせれば覚醒獣装石どころか並の(戦闘訓練を受けていない)実蒼石 にだって勝てるんだぞ。お前なんか相手になるか。 『デェ〜ッス…』 苦しそうに一息つくと、妊婦実装石がおまるに跨る。本来ならオッドアイのはずの目が、 両目緑から紅に変わってゆく…。 妊婦実装石は自分を励ますためか、それともおなかの中の仔実装達に話し掛けているのか、 なにやらデスデス言いながら出産の為いきみ始める。 『仔供たち、ママは頑張るデス…。一生懸命、オマエ達を産むデス…。だからオマエ達も 良い仔に産まれてくるデス!そしてママと一緒に幸せになるデス!! ニンゲンどもを こき使って、いいように利用して、皆で楽して生きるデッスゥウウーーーン!!!』 …最後の一言が無けりゃ、ちょっと感動したのになぁ。この糞蟲め。 無論、僕たちの感想どころか、見られていることにも気づかないまま、妊婦実装石は出産 を始める。 ぷりん。 「テッチュ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テチチチ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッチャ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッピャ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッピュ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッシャ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テップゥ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッシャ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッタァ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッテレ〜♪」 バシャ。 「デー、デー、デー、…。」 荒い息の妊婦実装石が一息つく。両目は赤いままだ。一度に30匹産んだら1匹1分で粘 膜を舐め取っても、最後の方は30分後になってしまって、蛆決定! だからな。何匹か に分けて出産するんだろう。 『デー、デー、…。 さ、可愛いワタシの仔供たち、粘膜を舐めとってやるデスよ…。 …デェェエエ!?』 妊婦実装石…、いや、もう親実装石か、親実装石が驚きの声を上げる。なんだ? しかし、声を上げた理由はすぐに分かった。ほんの今産み落とした赤ちゃん実装石達がい なくなってしまったからだ。おまるの下の水場の中は水だけで、他には何も居ない。 『デェエエ、仔供、仔供、ワタシの仔供!! い、一体ドコに行ってしまったデスゥ!?』 あちらこちらを必死に探す親実装石。と、おまるのある側の壁がす〜っと音も無く上がっ て無くなってゆく。 …いや、壁が無いんじゃない、ガラスだ。今気が付いたが、おまる のある側の壁はガラスでできていて、向こう側に薄い布の幕のようなものが垂れ下がって いただけだったのだ。 ガラスの壁の向こう側にはテーブルに座った人がいる。反対側を向いているが、服装やテ ーブルの上の様子には見覚えがある…。 僕達だ!? 思わず振り向いてモニターの反対側にあった流し台の方を見ると、壁の上の方の幕が上が って、流し台の方の壁がさっきまでとは少し様変わりしている。幕の後ろ側、本来の壁は ガラス張りになっていて、そのガラスの向こう側に例の親実装石がいた。何の事は無い、 親実装石がミツボシに案内されて連れて来られたのは、この『流し実装』の隣の部屋だっ たのだ。そのガラスの窓の下の壁にも長方形の穴が開いており、その中に洗面器が置かれ ている。位置的に見て、おまるの下にあった水溜りは、この洗面器の中に湛えられた水だ ったようだ。 と、流し台の上にももう一つ洗面器がある… その中から何か聞こえる… 「テッチュ〜ン♪(ママ〜、大好きレフ〜♪)」 「テッテレ〜♪(周りがあかるいレフ〜♪)」 「テッチ〜♪(このぬるぬる取ってレフ〜♪)」 … 行方不明だった蛆状態の仔実装達だ。洗面器の中に浮かんでいる。仔実装達の行方不明は、 壁の穴から敏明君が洗面器を新しいものと取り替えたことによるものだったらしい。 親実装石もそれに気がついたみたいで、ガラスをドスドスたたきながら、 『仔供たちを返せバカニンゲン!!スグ返さないと許さないデスゥ!!』 とか叫んでいる。ま、当然だろうな。苦労して産んだ仔供たちが、粘膜もとらないうちか ら攫われてしまっては怒りもする。 「はい、それじゃあ、料理の準備ができましたので始めさせていただきます。」 親実装石の叫びなど全く意に介さず、敏明君が料理の内容について話し始める。 「ご存知の方も多いと思いますが、実装石という生き物は、産まれたときには粘膜に全身 を覆われていて、手足の無い状態で産まれてきます。親実装石がその粘膜を舐め取って やると、見る見る手足が生えてきて、1〜2分で仔実装になります。粘膜を取らないと、 暫くして粘膜が固まってしまい、いわゆる蛆実装になります。」 「で、この『流し実装』なんですが、産まれたばかりの、手足が生えかけの実装石を味わ って頂くためのお料理になります。この産まれたての赤ちゃん実装石から髪と服と粘膜 を取って、そちらの竹の流し路の方に流しそうめんの要領で流しますので、お手元の取 手付きのざるで掬って、手足が生えきって完全な仔実装に変わる前にタレを付けてお召 し上がりください。タレは2種、梅肉タレと醤油をダシで割ったダシタレをご用意して おります。あとこちらのお鍋なんですが、『湯くぐり』と言いまして、ざるで掬った赤 ちゃん実装石をそのまま5秒くらい、しゃぶしゃぶの要領でお湯に通して頂きますと、 中がとろっとろのジューシーな味わいに変わりますので、お好みでこちらの方もご賞味 ください。お一人様10匹づつ、合計30匹お流しします。それじゃ、始めます。」 そう言って敏明君は手元の洗面器に手を入れて何やらやり始める… 洗面器の中から「レッフ〜ン♪」「レヒャ!?」「テチャ〜!」と何やら赤ちゃん実装石の 声が聞こえてくる。多分、赤ちゃん実装石から粘膜を取って、禿裸に剥いているんだな… 「デジャァア!!デスデス!?デギャアア!!」 高い位置から洗面器の中の仔供達を見ていた親実装石が、様子を涙を流しながら威嚇して いる。洗面器の中では赤ちゃん実装石達が髪を抜かれ、服を奪われているはずだから、止 めようとするわな。止められないけど。 と、敏明君は流しの蛇口から水を流し、ささっとむき身の赤ちゃん実装石を洗って、手早 く竹の流し路に流し入れる。 「レッフ〜ン♪」「テッチ〜♪」「テッテレ〜♪」 髪やら服やら剥かれて酷い目に会っているはずなのに、もう忘れたのか、それともウォー タースライダーみたいで楽しいのか、妙に嬉しそうに赤ちゃん実装石達がまずは3匹流れ てくる。先の2匹を下流にいる同僚の為にスルーして最後の一匹を取手付きざるでさっと 掬う。 「レッチュ〜ン♪」 なぜか喜んでいる赤ちゃん実装石を、箸でつまんでタレに絡ませる。8cmくらいの大き さだな。まずはダシタレからいくか。 「レチャァアア!?」 タレに浸すと、醤油ベースのダシタレが辛いのか、赤ちゃん実装が悲鳴を上げる。タレか ら上げて目の前に持ってくると… 「テヒテヒ… テチ? …テッチュ〜ン♪」 本能か、まだ不完全な右手を口元に持ってゆき、首をかしげて媚をする。僕もそれを見て 思わず笑う。まあ、笑いの理由は可愛いからとかではなく、置かれている立場が分かって いない間抜けっぷりにだけど。 「チププ… テチャテチャ♪」 媚がうまくいったと思ったのだろう、厭らしく笑ったあと何か言ってる。金平糖を寄越せ とか勝手なこと言っているんだろうな。お前は食うほうじゃないんだよ。 ぱくっ。とりあえず噛まずに、口の中に入れるだけにする。 「テチ? …テチャ!?」 口の中から赤ちゃん実装石の悲鳴が響く。生えかけの手足をバタつかせて暴れている。口 の中の感触で、手足がどんどん生えてきているのが分かる。そこに歯を立てて…ガブリ! 「テヒャァァアア!!」 赤ちゃん実装石が口の中で断末魔の悲鳴をあげる。この世に産れ落ちて5分足らず、何の 喜びも楽しみの知らないまま(脱糞の喜びさえも知らないのだ)、苦しみもがいて地獄行 き。何も良いことの無い実装生。そんなことを考えながらも赤ちゃん実装石を味わう。 う〜ん、まずはこのぷりぷりの弾力ある感触。蛆実装のように脆くなく、仔実装よりも柔 らかい。手足が伸びている、ということは風船のように皮に弾力があり、更に中がはちき れんばかりに膨らんでる、ということで、それがこのぷりぷり感を生み出しているようだ。 更にこの味わい。まず産まれたてなだけに嫌な雑味が一切無い。そして手足を形作るため の栄養分だろう、何ともいえない旨みが口の中一杯に広がる。これは蛆実装や仔実装、ま して成体の実装石にも無かった味わいだ。 旨い。ただひたすら旨い。 そしてこんな調理法を採用した理由もわかる。普通の調理法では、どんなに手早く調理し ても客が食べる前にただの仔実装になってしまう。手足が生えかけの、赤ちゃん実装石の うちに食べられるのはこの『流し実装』ならではだ。 至福の味わいに浸っているところに、敏明君が赤ちゃん実装石の第二段を流してくれる。 今度は『湯くぐり』も試して見よう。さっと赤ちゃん実装石を掬うと、掬い取ったざるご と鍋の熱湯に漬す。 「テヒャ…! ガボ…!! グブブ…!」 洪水と熱湯のダブルパンチに苦しむ赤ちゃん実装石。5秒ほどして引き上げ、様子を見る と… 「テェエ… テェエ…」 と息も絶え絶えだ。体表も茹でられたため白く変色してきている。 火傷が痛むのか、「ティエエ〜ン、ティエエ〜ン…」と弱々しく泣いているところを箸で 摘み上げる。今度の赤ちゃん実装石は何をされるのか分かっているのか、首を左右に振っ てイヤイヤをする。いわゆる『賢い実装石』かな?でもダメ。今度は梅肉タレに絡めて… ガブリ!! 「テッチュァァアアアァァァ!!!」 赤ちゃん実装石の悲鳴に続いて、今度はジューシーな旨みの肉汁がとろりと口の中に広が る。ぷりぷりした感触はそのままに、暖められたことで旨みが活性化したみたいだ。この 『湯くぐり』したヤツも旨すぎ。 「レヒャ!?」「テヒィ!」「テェエ!!」「ヒィィイ!!」「チャァア!?」… 皆でどんどん流れてくる赤ちゃん実装石を掬ってはパクパクと食べる。ダシタレも梅肉タ レもよく合うなぁ。気が付いたら僕も同僚もその旨さにすっかり無口になってる。無言の ままひたすら喰いまくり。にぎやかなのは、真紅の両目から紅い涙を流しつつ「デジャァ ア!!デジャァア!!」と叫んでいる親実装石だけだ。 気が付いたら、親実装石が産んだ最初の10匹はすっかり食べ尽くしてしまった。僕らの 食べっぷりに、料理人の敏明君も嬉しそうだ。 ふと親実装石の方を見やると、ガラス窓に散々手を打ち付けたのだろう、両手は血まみれ になっている。両目から血涙を流し、ガラス窓の前にorzの姿勢で突っ伏したまま、「デー、 デー、デー…」と鳴いて、…いや『泣いて』いる。 そんな親実装石に敏明君が声を掛ける。 「お〜い、赤ちゃん実装石が切れちゃったんだ、続きを頼むよ。」 『デデッ!? ふ、ふざけるんじゃないデス!! よくも可愛くて賢く、高貴なワタシの 仔供達を食いやがったデス!! ワタシの仔供を何だと思っているデス!! 許さない デス、このクソニンゲン!! 残りの仔供達を産み終わったら全員ぶちのめして仔供達 の復讐をしてやるデッス!!』 鼻息荒い親実装石。 『そうデス、とりあえず水場以外で産めばいいデッス!! 何匹か蛆になってしまっても、 全滅よりましデッス!! デププ、さすが賢いワタシ、おマエらクソニンゲンは黙って そこで悔しがって見ているが良いデス!!』 何匹か蛆になったり死んでしまうようなら、あんまり自慢できるような対策でもないんだ が、人間を出し抜いたつもりなのか、妙に嬉しそうだ。でもそうするとここで打ち止めな のかな。全然食べ足りないのに。と、そこへ… 「残念、無理。」 敏明君がつぶやいて、リモコンのスイッチを押す。モニターのリモコンと思っていたが、 他にも色々な機能があるみたいだ。 ヴィィイイ〜ン。モーターの駆動音がしたかと思うと、天井から吊り下げられていたフッ クが上に上がってゆく。そのフックに繋がれていた、親実装石の首輪に繋げられているリ ードも巻き上げられ、おまるの真上にある穴に巻き取られてゆく。当然、首輪に繋がれて いる親実装石も引きずられるようにして、おまるの処につれてこられる。 「デデデデ!? デヒャァア!?」 更にリードが巻き上げられると、親実装石はまるで絞首刑のように、天井からおまるの上 に吊り下げられる形になった。親実装石の背が立つぎりぎりまで巻き取ると、今度は上下 に揺らすように、巻いたり緩めたりを繰り返すようになる。 「デッ、デヒッ、テギャ… デデデ… デギグウウウェエェェ…!!」 とうとう耐え切れなくなったのか、一旦上げられて落とされた弾みに親実装石は再び仔供 を産み落とす。 どん。 ぷりん。 「テッシャ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッタァ〜♪」 バシャ。 ぷりん。 「テッテレ〜♪」 バシャ。 … 再び10匹くらいの赤ちゃん実装石が産み落とされる。 洗面器を入れ替えると、中にいた赤ちゃん実装石達が、早く粘膜を取って欲しいのだろう、 敏明君を親と間違えて、懸命に媚を売っている。 「レチィ♪」「レフレフ♪」「レッフィ〜♪」「レッチュ♪」「レチュン♪」… そんな赤ちゃん実装石に、敏明君が優しく声を掛ける。 「よしよし、すぐに良くしてやるからな。」 その言葉を聞いて、何も分かっていない赤ちゃん実装石たちは嬉しそうに鳴く。 「「「「「「「「「「レッチュ〜ン♪」」」」」」」」」」 …で、それから10分立たないうちに、全員が「テヒャァアア!!」と涙と悲鳴を残して 僕らの胃袋に消えた。 更にもう一度、親実装石に強制的に出産を行わせ、その時産まれた赤ちゃん実装石も親実 装石に見せつけるようにして喰いつくし、『流し実装』は終わった。 僕たちが食べている間、そのありさまを見せ付けられた親実装石が『デヒャァァアア、止 めるデス!止めるデス!』と絶叫していたのがちょっと印象に残った。あくまで味で勝負 のお店だけど、実装石の料理は結局虐待がらみになるなぁ。 ふぅ、赤ちゃん実装石とはいえ10匹も喰うと満腹だ。大きくなったお腹を抱えて部屋を 出ようとする。 「デスン、デスン… デェェエエエエ〜ン!!」泣き叫ぶ親実装石。 30匹も産んだ仔供が、手も触れられないうちに皆喰い殺されては、こうなるのも無理な いか。ちよっとかわいそうだったかな…。旨かったけど。 そう思っていると、ガラス越しに、敏明君が泣きつづけている親実装石に声を掛けていた。 「そう泣くなよ。 …ほら。」そう言って手のひらの中にいる何かを親実装石に見せる。 敏明君の手には2匹の小さな仔実装… 10cm位か、大きさからしてついさっき産まれ たばかりみたいだ。もしかして…。 『ママ? ママテチか!? ワタチ、ママの仔供テチ♪』 『テッチ〜♪ ママテチ、ママテチ♪ ママ、始めましてテチ〜♪』 『デ…? …デデ、い、生きている仔がいたデスか? デッス〜ン♪ 良かった、良かっ たデスゥ〜♪』 「ああ、全部で32匹産んだから、2匹だけ残しておいてやったよ。こいつらはちゃんと 粘膜を取って、髪も服も残してやってる。安心しな。」 おお、全米も泣いたの感動の名場面。 ガラス越しながらも感動の親仔の対面が目の前で繰り広げられていた。 でも、それも長くは続かない。 敏明君が仔実装をそっと引っ込めてクーラーボックスに入れると、親実装石の方も、いつ のまにか部屋に入ってきていたミツボシに引きずられるように連れ出される。 『デジャァア!? こ、仔供達〜!! は、離せデスゥ!!』 親実装石は必死で暴れるが、毎日人間の仕事を手伝うという(実装石にしては)ハードワ ークをこなして、マラ実装石にも余裕で勝てる程身体が鍛えられているミツボシには敵わ ない。そのままずるずると部屋から引き出される。その後姿に敏明君が声を掛ける。 「安心しな、何日か後でちゃんと再会させてやるから。」 「デッ? デシャァア!?」 もちろんそんな言葉には納得できないのか、親実装石は暴れまくり、ミツボシにも殴りか かる。しかし、どれほど殴られてもミツボシは意に介さず、淡々と親実装石を引きずって ゆく。 …実際、ミツボシにも複雑なものがあるのだろう。家族を皆殺しにされ、自身も禿裸にさ れて殺されかかったミツボシは、一切他の実装石との係わり合いを断っている。だから、 同じ実装石を地獄に運ぶ、三途の川の渡し守のようなこの仕事も顔色一つ変えずにこなし ている。一方で、やはり地獄送りにした実装石達に負い目があるのか、このような状況で は相手に好きに殴らせてやって、反撃することは無い。また、親父さんが仔供を産む許可 を出しても、「ワタシにはその資格は無いデス」といって、決して妊娠しようとしない。 ミツボシ、辛いよな…。 『ま、ママ〜!? ど、どこに行くテチ?』『い、嫌テチ!ママの所に返すテチ〜!!』 一方、クーラーボックスの仔実装達も泣き叫ぶが、結局何もできないままだ。そこへ… 「安心しろ、オマエ達が何日か良い仔にして大きくなったら、またママに会わせてやる。 そしたら、ずっとママと一緒にしてやるからな。」 そう敏明君が優しく声を掛ける。 『ほ、本当テチか!?』『や、約束テチよ!?』 「ああ、だから良い仔にしてるんだぞ。」 「「テチ!!」」 ぱたん。 元気よく仔実装達が返事をするのを見て、敏明君がクーラーボックスの蓋を閉じた。 「ご馳走さま〜、また来るよ〜♪」 「毎度ありがとうございました〜。」『ありがとうございましたデスゥ〜。』 お勘定を済ませたあと、クーラーの効いた店内から、再び生ぬるい熱気が立ち込める外に 出た。 敏明君と実装石親仔のやり取りを見ていた僕は、ミツボシと一緒に見送りに外に出ていた 敏明君に声を掛ける。 「さっきの仔実装たち、どうなるんだい? 躾を施して、親と一緒に牧場かどこかに送る のかな?」 敏明君はちょっと困ったような顔をしながら、小声で答えてくれた。 「滅多に材料が揃わないんでメニューには載っけてないんですが、『おさとがえり』って いう仔実装と出産直後の親実装石で作る料理がありましてね、その材料にするんです。」 …ここは実装石料理を専門にやっている料理店『まる実』。 旨い実装石料理をリーズナブルな値段で提供してくれる名店だ。 でも、ひとたびこの店の調理場に足を踏み入れた実装石は、決して幸せにはなれない道理 らしい。 興味をそそられた僕らは、『おさとがえり』を予約して、生ぬるい空気の中を、泳ぐよう に家路についたのだった。 − 終 − **************************************** 実装ワールドには『実よし』という実装料理の名店あるのですが、自分が勝手にその『実 よし』の設定を使っても良いのかどうか悩んで、結局別の料理屋を作ってしまいました。 多分そんな事はないと思いますが、美味しそうと思ってくれる方がいたら幸いです。 それにしても、『会長』の続き(エロエロの予定)を書こうと思っていたのに、何で別の スク書いちまったんだろ。ま、いっか。皆が忘れ去った頃にまた投下します。では。 追記。 今回は意図的にスクに「結構」という単語を入ました。なんかもう、意地になってます。 更に追記。 一度アップした後、『生』→『産』の大量誤記発見。 大急ぎで消して修正版を上げました。ゴメンナサイ。

| 1 Re: Name:匿名石 2014/10/13-12:09:49 No:00001469[申告] |
| 流し実装が旨そう
おさとがえりも見てみたかった |
| 2 Re: Name:匿名石 2014/10/13-15:14:45 No:00001475[申告] |
| 流し実装うまそうだ
料理描写がいいな |