タイトル:【観察】 実装石の日常 渡りII
ファイル:実装石の日常 渡りⅡ 第4話.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4149 レス数:1
初投稿日時:2010/02/11-18:54:52修正日時:2010/02/11-18:54:52
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 実装石の日常 渡りII 第4話

ここまでのお話
双葉児童公園は愛護派の餌付けと放置で野良実装の増加と飢餓が起こる。
先生と呼ばれる賢い個体は生き延びるため今の公園を捨て、血の繋がらない仔を引き連れ新天地となる公園を目指す 「渡り」 を決行。
だが公園はあまりに遠く旅路は危険が多い。

渡りの一行

先生実装:我が仔でもない仔実装たちを引き連れて渡りを決行 実装石とは思えない深慮 棒を上手く使う
親指  :渡り一行で唯一の親指
禿仔実装:髪を失ってから精神がやや失調している
靴なし :靴をなくしている
長女  :少し体が弱い
次女  :彼女の一家は間引きまでしたが、最後は崩壊したらしい
三姉妹 :一行の中で唯一血のつながりのある姉妹で3女・4女・5女 賢くないが仲はいい
カタウデ:飢えた姉妹に右腕を食われ、うまく再生していない 共食いの惨状に精神状態がやばい 
踊り子 :特徴:ダンスが好き  趣味:ダンス  特技:ダンス  生きがい:ダンス   


知り合い実装:先生実装の知り合い 【脱落】

上記の仔  :5匹いる姉妹    【脱落】




*************************************


突然、旅の仲間の多くが抜けてしまい、衝撃を受けた渡りの一行も無駄口を叩かず、黙々と国道27号線沿いの歩道を歩いた。
太陽が昇り始め、辺りも明るくなりだしたが、ひと際明るい場所が見えてきた。

コンビニ、である。
よくある話だが田舎の小さなスーパーからコンビニへ衣替えしたこの店舗、同業者は近場にもう一軒あるだけなので、中々客の入りは良い。

それでも朝では立地条件からか、さすがに人の出入りは少なかった。


「……お前たちはこの辺で待ってるデス、私だけで行って来るデス」


先生実装、単身で駐車場の奥にあるコンビニ店舗へ近づく。
とは言え、辺りを見渡し、人影が無いことを確認した上でだが、ゴミ箱の周辺を調べ上げる。

さて、コンビニの駐車場は洗い落とされてはいるが、あちらこちらに赤と緑の染みがこびりついている。
言うまでもないが、野良実装の末路だ。


10匹の仔実装らは別段、感慨もなく駐車場の入り口の隅っこで座り込んでいた。
早朝から歩き通しなので、これ幸いと休憩だ。

ふと、禿仔実装がアスファルトの染みの傍にある何かに気づく。


「ゴハンテチィ……」


実装フードの押しつぶされたものが、アスファルトにへばりついている。

包みだったのか、小さな紙片が近くに落ちていたが、親指が駆け寄る前に風で飛ばされていった。


「ゴハンテチィ!」

「私も欲しいテチ!」


カタウデが親指につられて、実装フードの残骸を拾い集めて、ほおばる。
粒だったものが車にでも潰されたためなのか、ごくごく僅かだったので、すぐに食べ終わった。

他の仔実装らは疲れているのか、見向きもしない。
ただ、靴なしだけがあたりをキョロキョロ見渡している。


「どうしたテチ、靴なしは」

と、誰かがつぶやく。
いつのまにかあだ名で彼女らは呼び合うようになっていた。


「さあ、出発するデス」


先生実装が戻ってきた。どうも収穫は無かったらしい。


「先生……」


遠慮がちに靴なしが言う。


「ママはコンビニに行くって言って、帰ってこなかったテチ。妹たちもママを探しに出掛けて帰ってきてないテチ」

「…………………………」

「だからこのコンビニの周りを探してみたいテチ」

「靴なし、それは駄目デス」


即答である。


「今は大丈夫だけど、ここはいつ危ない場所になるか分からないデス。それにお前の家族もお前が早く出掛けることを願ってるはずデス」


靴なしは、しばらく視線を落とし、そして元気良く顔を上げた。


「はいテチ」

「さあ、じゃあ行くデス」


先生実装に従って、一行は歩き出す。それと気づかず路上にこびり付いた染みを踏み越えて。

一行が再出発した後、近所の男性がやってきて、そっと小さなダンボールを置き去りにしていく。



……中には親指実装11匹も入っていた……。






*************************************





仔実装ばかりの中、親指実装は中々の健脚らしく無理なく付いてきている。


「私は足が速いレチ、これくらい平気レチ」


自信満々で他の仔実装に言ったものだ。


一行が歩く歩道沿いには民家や小さな商店が軒を連ねており、だんだん人が出入りし始めている。

幸いにも朝は誰しも忙しいので、一行に手出しすることもなかった。


「おっと」


危うく仔実装を踏みそうだった青年、避けてさっさと行ってしまう。
実は彼、実装石を成体1匹と仔実装を8匹も飼っていた人物である。
飽きてしまい、すでに飼っていないが。

飽きが来たので係わり合いになるのも嫌なのだろう。


順調に一行が進んでいくと、歩道に古びたコンビニ袋が落ちている。


「なにかあれば良いけどデス」


先生実装は慎重に袋の口を広げて中身を覗き込む。
なにか入れ物があれば中を見るのが野良実装の常識である。


「…………………………」


数秒、覗き込んだまま沈黙した先生実装、道ばたに袋を戻す。


「その袋は見なくて良いデス、さあ、さっさと進むデス」


仔実装らはぞろぞろと歩き出した。
いや、親指実装だけは列を離れて、そっとコンビニ袋をつまみ、中身を見ようとする。


「親指いいいいいいいいいいい!!!!!」


背後からの怒声で、親指は縮み上がる。


「私は見るなと言ったはずデス! とっとと歩けデス!」

「は、はいレチ!!!」


大慌てで親指は一行の最後尾についた。


なおも一行が歩き続けていると、家を出る人がいきなり多くなってきた。

朝は基本的にニンゲンから攻撃されにくい、と知っている先生実装であったが、さすがに10匹も連れての大所帯では目立ちすぎる。

人家と人家の間に、雑草生い茂る空き地が見えた。


……ここで一休みすべきか?


だが空き地なら安全、と言うものでもない。


「にゃー」


黒い猫が、のっそりと空き地から出てきた。

先生実装も、後ろの仔実装らも固まる。

それもそうだろう、何しろ猫に襲われて助かる見込みはほとんどないのだから。

しかも黒猫は顔におびただしい実装石の血をつけていた。

ついさっき、実装石を狩ったのは間違いない。


「…………………………」


先生実装が無言のまま枝を引き抜いて構えた。

カタカタと震える仔実装らは、そんな先生実装の背にしがみ付くほか何もできなかった。

黒猫はそんな一行に一瞥しただけで、さっさと通り過ぎて行った。

どうも今は狩りをする気分ではなかったようだ。



「ふう、デス」


大きなため息を、先生実装は吐いた。

もし黒猫に襲われれば、最悪の場合全滅したであろう状況だったのだ。


「怖かったテチ、怖かったテチィ!!!!」

「猫怖いテチャアアア!!!」

「猫はもういないデス! もういないデス! さあ出発デーーーーース!」


大声で仔実装を激励する先生実装だった。

泣き出さないよう、歩き出させた先生実装であったが、この決断が結果的に惨事を生んだ。




一行が少し進んでいくと、小学生が10人ほどたむろしている。


「お、実装石だ」

「朝から汚いなぁ」


集団登校の集合場所であったのだ。男の子が2人、一行に気づく。

そして集団登校まで時間はまだあった。

2人が目配せして動くと、さっと振り向いて叫ぶ先生実装。


「お前たち! 全力でさっきの空き地まで走るデスゥ!!!!」


その時には、男の子2人が駆け出していた。

模範を示すように先生実装は、仔実装らより先に通り過ぎた空き地目指して走り出す。

「な、なにテチ!」

「ニンゲンテチ! ニンゲンが襲ってくるテチィ!!」


慌てて仔実装らも先生実装の後を追う。

テッチテッチと歩いてきた歩道を走る。後ろには圧倒的な速さ(実装視点)で男の子2人が迫り来る。


「走るデス! 走るデスゥ!!!」


叫びながら先生実装は空き地の茂みに飛び込んで行き、他の仔実装らも続く。

だが、最初に反応が遅れた親指とカタウデがもう少年の手が届きそうにまで追いつかれていた。

親指もカタウデも涙を流し、必死に逃げていた。

しかし、空き地にまではまだ距離がある、絶対に追いつかれるであろう。


「私は死にたくないレチ!」


親指、叫んで前を走るカタウデの足を蹴飛ばす。


「テチャ!」


悲鳴一つあげて、カタウデが転倒し、その横を親指が駆け抜ける。


「テチャアアアアアアアアアア!?」


驚きと痛みでカタウデが悲鳴をあげる。

男の子が、まず背中を踏みつけて、逃げられないようにしたからだった。


「まーた糞虫発見ー!」

「とりあえず駆除しておこうか」





*************************************





カタウデにされることを茂みの中から、一行は見ていた。

恐怖で声も出ないが、震えながら見ていた。

じっと見ているほか無かった。





「テチャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

まず逃亡できないよう、両膝は関節の反対方向に折られた。


「痛いテチ! 痛いテチ! いた、痛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


ぶちぶち、と残っている腕がもぎ取られる。


「やめて、ほんとにやめてテチィーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



のけぞって、カタウデは悲鳴をあげた。

腕をもがれたカタウデは、路上でもがき苦しむ。



「ママッ、助けてママア!! 痛いテチ! ニンゲンさんが私に痛いことするテチィー」


そんな彼女を男の子2人は見下ろして、笑う。


「テチィヤヤヤヤア!!!!!!!!!!!!! やめてテチ! やめてテチィィィ!!!!」

「助けてテチャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「死んじゃうテチャ! ほんとに死んじゃうテチャアアアアア!!!!!」

「ママッ! 助けてテチママァああああああああああああああああああ!」

「テ、チ、ヤ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

「テチャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」





無限に続くとも思われる人間の責め苦を止めたのは、人間だった。


「丹後君! 余部君! やめなさいよ!」


同級生らしい女の子が大声をあげながら2人のそばにやって来る。


「もう出発する時間よ?」

「はーい」

「もう時間かよ」


聞き分けがいい2人は他の子供と合流すると、集団登校をはじめた。









しばらくして実装石の一行が茂みから出てくると、歩道にはバラバラに解体された仔実装の死骸だけが残されていた。

















踏破距離 およそ1.5km

新天地の双葉市立運動公園まであと およそ12.5km



続く

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1 Re: Name:匿名石 2016/11/17-00:10:22 No:00002818[申告]
目的地といい国道といいもしかして渡りⅡって渡りと同じ公園を目指す物語だったのか
そして、親指が糞蟲っぷりを見せてきた
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