野良実装のミノ坊とその仲間達は、公園の美化事業による自立を果たし一斉駆除の危機を回避する。 しかし、実装石の自立を否定する虐待派の塩補によって、ミノ坊と仲間達は地獄の責め苦を受け、奇 しくもミノ坊だけが生還を果たす。 そして逆恨みした塩補はミノ坊とアキラに復讐を誓ったのだが・・・ ※ sc1676.txt 虐待派に託児 sc1699.txt 実装の鐘 sc1982.txt 虐待派 の続きです。詳しくはご参照ください。 − Gの旋律 実蒼石 − ここは実装ペットショップ・グリーンハウス。 まだ肌寒いある日の事、年の頃は30歳くらいであろう、一人の中年男性が訪れる。 「いらっしゃいませ〜 ・・・え? はいはい、はぁ・・・ 少々お待ちくださ〜い」 この店の看板娘・蒼井が出迎えた客は、少々変わった話を持ちかけてきた。 蒼井は店の奥に向き直ると、彼女の相棒を呼び出す。 「空〜! 海〜! 少々変わったお客様よ〜!」 ちなみに、常連客の間では「少々変わった看板娘」と呼ばれている事を彼女は知らない。 「はいボクー!」 「ボクゥ〜」 店の奥から現れたシルクハットの蒼い小人は、実蒼石の空(そら)と海(うみ)だ。 「この子が空で〜」 「はじめましてボクー」 「この子が海です」 「ボクゥ・・・」 「空ちゃんに海ちゃん、はじめまして」 「こちらのお客様があなた達にお話があるそうなのよ」 2匹の実蒼石は見慣れない客にペコリと頭を下げる。 空は興味津々でピコピコと足踏みし、海は邪魔臭そうに上目遣いで見上げている。 「いや、どうもすみません。お時間を頂いて恐縮なのですが、飼い主である蒼井さんも一緒にお話を 聞いていただけませんか?」 「はぁ、まあ、今はお客様の少ない時間帯なので大丈夫ですけど」 「では、お願いします」 男はどこかいやらしい笑みを浮かべて一礼する。 「私、みのり市職員の塩補と申します。実装石による生活被害を緩和する為に、蒼井さんが飼われて いる実蒼石のご協力をいただきたいと思いまして」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 件の虐待騒ぎで処分を受けた塩補は、すでに公園の管理を外されていた。 そしてアキラとミノ坊に逆恨みし、復讐の為にデタラメな話を蒼井達に持ちかけたのだ。 みのり市中央公園の野良実装による公園美化事業は成功したものの、心無い虐待派の人物が劣悪な属 性の野良実装を持ち込み繁殖させて悪戯をしている。 美化事業推進の手前、人間による駆除は人目をはばかるので、実蒼石による駆除が望ましい。 〜と、こんなところだ。 市場に出回る中では貴重な実蒼石を、ペアで飼っている蒼井の話をどこかで聞いてきたのだろう。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− その日の夜、場所は中央公園。 そこには黒い作業服姿でベンチに佇むアキラの姿があった。 ミノ坊に逆恨みする塩補を警戒し、こうして寒空の下で見張っているのだ。 虐殺派の自分がどこでどうボタンを掛け違えたのかと、自嘲気味に口元が緩む。 そんなアキラを物陰から見つめる1人と2匹。 塩補と、実蒼石の空と海だ。 塩補は因縁の(逆恨みの)人物・アキラを指差し2匹に囁く。 「空ちゃんに海ちゃん、あそこにいる黒ずくめの男を見てごらん。どうだい、怪しいだろう?」 「怪しそうだボクー」 「どうでもいいボクゥ」 「え?」 「なんでもないボクゥ」 塩補がリンガルを見つめて考え込んでいる横で、空は海を突付いて余計な事を言うなと小声で釘を刺 す。 とりあえず、聞こえなかった事にして話を続ける。 「あいつがね、性質の悪い野良実装を持ち込んで、繁殖させては他の実装石達の邪魔をするんだ。 いわば市民の敵というやつだね」 「悪い奴だボクー」 「皆殺しだボクゥ」 「え?」 「ひとりごとだボクゥ」 そ知らぬ顔をして明後日の方向を向く海、今にも口笛を吹きだしそうな表情だ。 塩補の愛想笑いも少々ひきつり気味だが、とにかく話を再開する。 「それでだね。(聞く気がなさそうだから)手短に言うと、あいつを少し懲らしめてほしいんだ」 「「 ボク? 」」 「最初の話と違うボクー」 「ニンゲンさんの首は切ったら駄目なんだボクゥ」 「いやいやいやいや、首は切らなくていいから。僕の話聞いて、ね?」 塩補の持つリンガルに、すぐさま2匹の反論が返ってくる。 実蒼石は飼い主(マスター)に従順で賢い生き物であり、そして俊敏な動きで等身大の鋏を振るう姿 とは裏腹に、おとなしい性質でもある。 人間に危害を加えろとの指示に異を唱えるのも当然の事だろう。 ここで塩補は目を閉じて、さも大げさにウンウンと頷いてみせる。 「そうだね、理由も無く人間を傷つける事は悪い事だね、その通りだね。君達は良い事と悪い事の区 別がつく賢い実蒼石だね。飼い主の蒼井さんが、正しく躾けしているのが分かるよ」 「ボクー」 「ボクゥ」 「でもね、あの悪者をほうっておいたら、飼い主の蒼井さんが・・・とっても困る事になるんだよ!」 「「 ボク? 」」 飼い主が困る事になると聞いて、一転して2匹の表情は曇る。 「実装ペットショップの店員さん、つまり実装石の専門家が協力しているのに、市の事業が失敗して しまったらどうなると思う?」 「ボクー?」 「ボクゥ?」 「そんな駄目な店員さんが働いているお店にお客さんは来るかい? 来ないでしょ? そうなったら ご主人様の蒼井さんはクビ、食べる物も住む所も無くなってしまうよ。君達はご主人様を野良実装 みたいに公園に住まわせるつもりかな?」 「嫌だボクー!」 「野良マスターはカッコ悪いボクゥ!」 さあ大変だ、忠誠心に厚い空と海は蒼井の身を案じて口々に反発する。 実蒼石にしてみれば、店の経営だの信用だのと、人間社会の理屈を言われると信じざるを得ない。 まんまと騙されてしまった訳だ。 「そ こ で だ。君達に気をつけてほしいのは、心優しいご主人様はきっと心配するだろうから、 人間をやっつけたなんて絶対に言っては駄目だよ。全てはご主人様の為だから、ね?」 「ボクー・・・」 「ボクゥ・・・」 ただ、実装石には容赦の無い実蒼石でも、人間相手となると話は別だ。 どうしても今ひとつ煮え切らない。 そんな様子に苛立ちを見せる塩補は、背後の植え込みに置いてあるダンボールハウスに2匹を手招き する。 トン トン トン 「もしもし、実装石さん今晩は。夜中に悪いんだけど、ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」 不自然なほど真新しいダンボールをノックし、中の住人を呼び出す。 するとハウスから出てきたのは、薄汚れてしまった上品な飼い実装服に肩ポシェットの成体実装と、 中実装になりかかった仔実装だ。 「よくぞ聞いてくれたデッス! あのクソニンゲンは極悪人デス! 高貴なワタ〜・・・」 (テンプレにつき以下略) 「よくぞきいてくれたテッチ! あのクソニンゲンは極悪人テチ! こうきなワタ〜・・・」 (テンプレにつき以下略) この親子、実蒼石を目の前にして臆する事も無く、あらん限りの罵詈雑言でアキラの悪行を訴える。 どこかで聞いたような30万匹大量虐殺だの、強制連行で実装慰安婦だのと呆れるほどだ。 「分かったボクー。そこまで悪い奴ならご主人様も許してくれるはずだボクー」 「(邪魔臭いけど)ご主人様の為に頑張るボクゥ」 「それは助かるよ。だけど、公園から出て行くように注意するだけでいいからね、優しくだよ?」 純朴な実蒼石2匹は、この大ぼらを信じてしまい心を決めたようだ。 「じゃあ行ってくるボクー」 「秒殺してくるボクゥ」 「うん、優しくだよ優しく〜、優しくね〜?」 空と海がアキラの方へ向かった事を確認すると、いやらしい笑みでボソリと呟く。 「ひ・・・ひひひひw 奴さえいなくなれば、後は糞蟲共を皆殺しだ」 ベンチに佇むアキラに近づく蒼い影が二つ、左右に分かれて挟むように立つ。 「ん・・・ 実蒼石? 実蒼石か? それも2匹も? 珍しい事もあるもんだな、俺になんの用だ?」 空と海はアキラがリンガルを取り出すのを待ち口を開く。 「悪いニンゲンさんは公園にいては駄目だボクー」 「出て行かないと優しくするボクゥ」 「ちょっと意味が違うぞボクー」 「 はあ? 」 ポカンと口を開け、固まってしまうアキラ。 「え〜と。お前達、何か勘違いして・・・」 「警告で済むうちに出て行ってほしいボクー」 「熱く激しい一夜が待ち構えてるボクゥ」 「ちょっと黙ってろボクー」 終いにはアキラを無視してもめだす2匹。 どうもこの実蒼石の海は実蒼石らしからぬ性格のようだ。 一方のアキラは、訳の分からぬ展開に徐々に血圧が上がってくる。 「無視するな、おい。で、嫌だと言ったらどうするんだ?」 「聞き分けがないボクー」 「嫌よ嫌よも好きのうちだボクゥ」 「少々、手荒い事になるボクー」 「でも痛いのは最初だけだボクゥ」 「もうお前はしゃべるなボクー!」 「少々手荒い事だと? 面白いじゃないか・・・」 口では面白いと言うものの、殺気立った表情でゆらりと立ち上がるアキラ。 どこに忍ばせていたのか、右手にはバール、左手には特殊警棒、こうなると見境が無い。 本来、実蒼石は希少種であり、その殆どには飼い主が存在している。 傷でも負わせれば大変な事になるのだが・・・ アキラが背後の海にチラリと目線をくれたその瞬間、手にしたバールと特殊警棒から金属音が上がる。 「なっ!?・・・」 一瞬のうちに空が詰め寄り、挨拶代わりに鳴らして離脱してみせたのだ。 先程のふざけた様子とは一転し、鋏を構えた2匹の雰囲気はがらりと変わる。 「最初に断っておくボクー。ボク達は『躾』の中で実装石を狩る訓練も受けたボクー」 正直、「訓練済み」と聞いて背中に寒い物を感じるアキラ。 実装石に関するアルバイトで飯を食っている身の上ならば、訓練済みの実蒼石が普通の人間の手に負 えない事くらい百も承知だ。 「ああそうかい! こっちも手加減する手間が省けて助かるぜ糞蟲ども!!」 しかし頭を冷やすにはまだ足りないらしい。 背後の海を無視して猛然と空につっかかる。 「糞蟲じゃないボクー」 少しむっとした感じでバールを受け流す空。 そのまま鋏でバールを引っ掛けると、あっさりと弾き飛ばしてしまう。 あっと思った次の瞬間、アキラは左腕に鈍痛を感じ警棒を取り落とす。 「峰打ち(みねうち)でござるボクゥ」 アキラの背後から左腕に痛打を加えた海はボソリと呟く。 当のアキラはそんな呟きなど聞く余裕も無く、転がるようにして2匹の挟み撃ちから逃げ出す。 偶然に近くに弾き飛ばされていたバールを拾い上げ、こわばった表情で再び対峙する。 「ニンゲンさん、今のうちに出て行くボクー」 「峰打ちでも怪我するボクゥ」 アキラは2匹の警告など耳に届かないかのように、慌てて上着を脱ぐとバールを持った右手首に巻き つける。 握りの滑り止めと、防具を意識しての事だ。 「困ったニンゲンさんだボク〜」 「こっちもおかしな因縁つけられてるんだ。お互い様だろっ!」 勢いよくバールを振るうものの、何の手ごたえも無く宙を切る。 返礼に両手両足に「鉄」が食い込む鈍痛をもらう。 空と海の仕業だ。 2匹がアキラを中心に円を描くように走り、重なり、また離れる。 幾度となく峰打ちの洗礼を受け、今や服の下はあざだらけだ。 「ニンゲンさん、しつこいボクー」 「しつこいと嫌われるボクゥ」 「もう降参するボクー!」 「いい加減にするボクゥ」 全身打撲のために、鉛のように重くなった体を引きずってアキラは食い下がった。 いったい何がそこまで執念深く駆り立てるのか、目だけはギラギラと睨みつける。 しかし決定的な戦力差は如何ともし難いのだ。 実際のところ、空と海はアキラの強情さに手を焼いていた。 諦めの悪いアキラを大人しくさせるため、せめてバールの動きを封じようと空がアキラの右肩めがけ て鋏を放った時・・・ 「空〜〜! 海〜〜! お仕事はもう終わった〜?」 マスターである蒼井の声が飛び込んできたのだ。 びくりとした拍子に、空の放った一撃はアキラの顎にそれてしまう。 崩れ落ちる姿は、まるでノックアウトされたボクサーのようだ。 「マッ・・・マスターだボクー!?」 「大変だボクゥ!」 大慌ての2匹、その目に物陰から必死で手招く塩補が目に入る。 「とっ とにかくあの人の所に戻るボクー!」 さながら蒼い風が走るが如く、2匹は一目散に塩補の元に舞い戻った。 そこへ空と海の仕事ぶりを見学しにやってきた蒼井が顔を覗かせる。 2匹が逃げ去った後に残ったのは、見事ノックアウトされたアキラだけだ。 「あら? まあ〜、この人はどこでも寝込む人だわ。変わった人ねぇ・・・」 別段に驚くでもなく、時折店を訪れる客であるアキラの顔を覗き込む蒼井。 そう言えばひっくり返っているアキラを見るのは二度目だ。 「どうしようかな・・・口に金平糖でも押し込めば起きるかなぁ・・・」 そんな様子を公園の出入り口から見つめる目が4つ。 飼い実装服に身を包んだあの実装石と、その仔実装だ。 「テププw あのニンゲンいいきみテチw 高貴なワタチを殺そうとしたバチが当たったテチw」 「こんな事でコンペイトウが山盛り手に入るなら、お安い御用デスw デェwウェw」 そう、この糞蟲2匹は塩補から偽証の話を持ちかけられ、代償としてポーチに入りきらぬほどの金平 糖を受け取っていたのだった。 塩補本人は、アキラと因縁がある糞蟲親子だとは露知らない。 糞蟲は排除されていたはずのこの公園で、図々しく居座っていた糞蟲ぶりが目立った為にたまたま話 を持ちかけた、ただそれだけなのだ。 奇妙な因縁の邂逅と言えよう・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「お、目が覚めたかアキラ」 「アキラちゃん何があったのよぉ? 心配したんだからぁ!」 目を覚ましたアキラが目にした物は、いつもの見慣れた天井と、むさくるしい中年男性二人の顔。 アキラの親友、実装石虐待派の山岡氏と、知り合いの巨漢のおかま・バロンだ。 気絶したアキラがバールを手にしていた為、蒼井が気を利かせて救急車の変わりに、アキラの携帯の 中から知人と思われる二人を呼んだのだ。 全身あざだらけで昏倒していたアキラに、バロンは巨体を震わせ泣いて怒る。 山岡氏は復讐戦に執着するアキラを無謀だと諭すが・・・ 「緑でも青でも糞蟲は糞蟲です! 引き下がるのは死んでも嫌なんですっ!!」 これには二人も呆気にとられた、死んでも嫌だとはどういう事か。 顔面蒼白でわなわなと震えて2匹の実蒼石に執着するアキラに、二人は異様なまでに実装にこだわる 理由を、ゆっくりと時間をかけて聞きだした。 それは、無残な過去だった。 小学生のアキラが野良仔実装を拾い、親を説得して飼いはじめた事から全ては始まった。 野良を飼っているというだけで心無い悪ガキから糞蟲と呼ばれ、次第にクラス中から虐めを受けた。 それでも仔実装には罪は無いのだからと健気に面倒を見たが、顔中あざだらけで帰宅したある日。 チププププ チピャピャピャピャピャ ピャーーッピャッピャッピャ 気がつけば、床には赤と緑の汚いしみだけが残っていた。 しかし、元凶は消えたものの、中学に進み虐めはさらに酷くなる。 糞蟲野郎と足蹴にされ、手足を縛ってプールに投げ込まれ、現金を脅し取られ、そして思春期の中学 生が次に要求したものは・・・ 「妹を不良達に差し出したってぇ!?」 「そいつらこそホントの糞蟲なのよぉぉぉ!!」 「今でも・・・ひ・・・妹の助けてって声が・・・ううううう・・・・・」 噂は広がり妹は転校し、アキラは十代の頃から一人でこの街に住まわされていた。 自分を裏切った実装石が、そして集団リンチを受ける禿裸実装石のような惨めな自分の姿が、実装石 への歪んだ憎しみとなり過剰な反応の原因だったのだ。 最後に、アキラはぽつりとつぶやく。 「逃げなければ・・・いつか何かが変わる・・・・・気がするから・・・」 ・ ・ ・ 「さすがに焦ったボクゥ」 一夜明けての実装ペットショップ・グリーンハウス。 ちょうど客足も少なくなる時間帯となり、実蒼石の空と海は飼い主である蒼井から昨夜の話を蒸し返 され、それがやっと終わったところなのだ。 本来は空と海の仕事が終わった後に、待ち合わせ場所のグリーンハウスまで塩補が2匹を送って蒼井 に引き渡すはずだったのだ。 ところが興味を持った蒼井が中央公園まで様子を見に来たから大変だ。 慌ててグリーンハウスまで車を飛ばし、蒼井が来るまでに念入りに口裏を合わせ、とにかく「アキラ の事は知らない、自分達が帰った後の出来事」だと言い張った。 そして、蒼井は気絶しているアキラを山岡氏とバロンに引き渡しただけなので、当然昨夜の出来事は 知らない。 「また昨夜の話を聞いてきたボクー」 「まるでスケベな中年親父みたいにしつこく聞いてきたボクゥ」 「詳しく聞いてきたからあせったボクー」 「何匹狩ったとか、どんな順番だったとか、まるでエロ親父だボクゥ」 「ひょっとして、マスターは・・・」 「マラでも生えてるボクゥ?」 「お前は下品だボクー!」 「んーー? マラがどうかしたの〜?」 「さ 昨夜のお仕事でマラ実装がいたって話しだボクゥ!」 「マスターは気にしなくていいボクー!」 どやらレジに立っている蒼井のリンガルに、声の大きかった会話の一部が届いていたらしい。 店の奥の物置にいた2匹は慌てて取り繕う。 「危なかったボクー」 「もう少し小さな声で話すボクゥ」 「・・・ところで、しつこいと言えば、昨夜のニンゲンさんもしつこかったボクー」 「変質者の特徴だボクゥ。テレビで言ってたボクゥ」 「変質者ならマスターも分かってくれるはずだボクー?」 「でも『しおほ』ってニンゲンさんは秘密にした方が良いって言ってたボクゥ」 飼い主に忠実な実蒼石であるから、隠し事が心苦しいのは当然であろう。 ただ、昨夜の実装石親子の証言や変質者(?)らしきアキラの反応が、その罪悪感を和らげていると 言える。 なにより、結局は「飼い主である蒼井の為」という部分が大きい。 しかし・・・ 「・・・でも『しおほ』ってニンゲンさんは、また呼びに来るかもしれないって言ってたボクー」 「マスターの為なら・・・しょうがないボクゥ」 さすがに乗り気ではない。 乗り気ではないが、2匹は目を合わせると小さくコクリと頷く。 蒼井は客の対応を済ませると、レジの横に腰掛け自分のリンガルを覗き込む。 しかし小声になった2匹の会話は、もう一切表示されていない。 「ふ〜〜ん」 なにか思うところがあるのか、薄く含み笑いをするとリンガルを戻す。 店の奥からチラチラと見つめる視線に気づいているのか、いないのか・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「みんな、なにしてるデス?」 「よくわからないけど見物デス」 「あのニンゲンが悪い奴と戦うみたいデス」 「悪い奴デス?」 場所は中央公園。 20匹ばかりの実装石がアキラを取り囲み、デスデスと鳴き交わす。 今はアキラがフルボッコの目に遭って2日目の夜だ。 ようやく痛みも薄れ動けるようになり、リベンジに燃えて特訓中というところだ。 もっとも、さすがに夜の公園とはいえ、大っぴらにバールを振り回すわけにも行かず、立ち木の多い 奥まった場所を選んでいる。 ただ、場所が場所だけに公園の野良実装達の家に囲まれており、どうしても実装石達の注目を集めて しまう訳だ。 「悪い奴はなにをしに来るんデス?」 「デエ? それは知らないデス」 「さあデス」 「ワタシ達を殺しに来るんデス」 「「「「「 デエ!? 」」」」」 声の主がくるりと振り向く。 新しい実装服を手にいれ、トレードマークである焦げ跡のある頭巾を被ったミノ坊だ。 「怖いニンゲンさんが実蒼石を使ってワタシ達を殺しに来るんデス」 「実蒼石デス!?」 「見た事無いデス」 「見た事無いけど知ってるデス〜」 実蒼石を見た事がある者も無い者も、本能のレベルでは実蒼石を恐れる。 そして虐待派が使役する実蒼石による惨劇も、稀に見られる光景だ。 多くの実装石は実蒼石を恐れるのが常だと言えよう。 「ミノ坊、よくわからんデプ」 野良の分際でどうやってカロリー摂取するのか、でっぷりと太った実装石がミノ坊に疑問をぶつける。 ちなみに、仲間内からは見た目そのまま「デブ」と呼ばれている実装石だ。 「あの黒服の怖いニンゲンは味方デプ? また掃除の時みたいにミノ坊の仲間になるんデプ?」 「そうデス。また助けてくれるデス。本当はいいニンゲンさんなんデス」 「じゃあ実蒼石は、怖いニンゲンは、なんでワタシ達を殺すデプ?」 「もういない、長老や片目さんやご近所さんみたいに、ワタシ達を殺したいんデス。実装石を殺すの が面白いんデス。笑いながら殺すんデス」 「「「「「 デエエエ!? 」」」」」 アキラの方を向き直り、背中を見せるミノ坊の肩は揺れている。 デプは、そしてミノ坊を取り巻く実装石達は、ミノ坊が怖くて震えているのだと思った。 しかし一心不乱にバールを振るうアキラを見つめるミノ坊の表情は複雑だった。 またあの男が来るのか、片目や長老やご近所さんをなぶり殺したあの男が。 そして、またもや自分は何もできないのか。 震えるほどに自分自身が腹立たしく、悔しくて悔しくて涙が出てきそうだ。 ミノ坊の心中は複雑な思いと激しい憤りで溢れているのだった。 「ワタシ達は・・・・・・非力・・・デス・・・・・」 痛々しいまでに絞り出した呻き声は、誰の耳に入る事もなくこぼれ落ちた。 「デププw 馬鹿なニンゲンデスw」 「バカなニンゲンテチw」 アキラを取り巻く実装石達から、さらに離れた立ち木の影に実装石親子の影が一つ。 空と海に嘘をついてアキラを襲わせた、あの糞蟲親子だ。 もりもりと咀嚼する親蟲が手にするのは、頭を齧りとられ息絶えた仔実装の骸。 仔蟲はおこぼれにあずかり、手だか足だか分からない物をくちゃくちゃと噛んでいる。 「ど〜せまた、フルボッコデスw」 「かわいいワタチを殺そうとした『てんばつ』テチィw」 「デプププププwww」 「テプププププwww」 最後の一口を満足げに飲み込むと、親蟲はその場を後にする。 「さて、馬鹿どもはほっておいて、家に帰るデス」 「帰るテチー」 肩から提げた飼い実装用のポーチには、まだまだうなるほど金平糖が詰まっている。 家に帰って食後のデザートとでも言うつもりだろうか。 「あ、ママわすれてるテチ!」 「なんデス?」 「あの、しょーわるニンゲンがいってたテチ。フルボッコにされた、くろいバカニンゲンがまたきた ら『めじるし』をおけって、いってたテチ」 「そうデス、そうデス。公園の外に目印の小石を並べておくデッス。これでまたコンペイトウデスw」 「コンペイトウテチーw」 アキラが懲りてない場合のためにと、塩補が用心して糞蟲親子に頼んでおいたのだ。 糞蟲親子は嬉々として指定の場所に向う。 「しょうがないデッスw 麗しいワタシに献上させてやるデップw」 「やるテッチw」 「デピャピャピャピャwww」 「チピャピャピャピャwww」 耳障りなダミ声が冷たい夜の風に流れてゆく・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 レジの方から聞こえる聞き覚えのある声に、空と海は顔を見合わせる。 蒼井が対応している相手はどうやら塩補のようだ。 「また来たみたいだボクゥ」 「無益な暴力は嫌だけどボクー。しょうがいなボクー」 「マスターのために、一肌脱ぐボクゥ」 「・・・・でも恥ずかしいから明かりは消して欲しいボクゥ」 「いいからとっとと来いボクー!」 「あらあら、二人ともご機嫌ね〜。ちょうど良いところに来てくれたわ、この間のお客さんなのよ」 2匹が揉み合いながら出てくると、塩補と話していた蒼井が手招きする。 その2匹を見てニッコリと笑う塩補、実にいやらしい笑みだ。 「やあ、悪いんだけど、また中央公園に来てくれるかな?」 「夜の公園で一肌脱がそうなんて・・・ ボゲッ!?} 「この口がボクー! この口が悪いんだボクー!」 海の返事が終わらぬうちに、再び取っ組み合いが始まる。 ・ ・ ・ ・ ・ 再び、夜の中央公園。 水銀灯に照らされてベンチにたたずむ黒装束のアキラ、そしてその横に腰掛けるミノ坊。 アキラは少しイライラしていた。 塩補を警戒した夜の見張りも暇だろうと、山岡氏が差し入れをくれたまでは良いのだが・・・ ちびちび食べて時間がつぶせるようにと渡されたイカそーめんに、公園の野良実装達が集まってきて しかたがない。 そして、ミノ坊が横に座っているからなのか、どうもこの実装石達はアキラの事を「改心した良いニ ンゲンさん」だと勘違いしているらしい。 命知らずな事に、涎をダーラダラ流して遠巻きに囲んでいるのだ。 そのうち、1匹の仔実装がトコトコ近づき、無言でアキラを見上げる始末。 努めて平静を保っていたアキラだが、さすがに目尻がぴくりと動く。 すると。 「ニンゲンさん、ワタシ1本欲しいデス」 「・・・ほら」 めずらしくミノ坊からおねだりがきた。 こんな事もあるのだなと、アキラはイカそーめんを1本渡す。 「これあげるデス。お家に帰ってママと一緒に食べるデス」 「ほんとテチ!? わーいテチ!! ありがとーテチィーー!!」 「え? おい?」 ミノ坊からイカそーめんをもらった仔実装は、おおはしゃぎで家族のもとに駆けて行く。 と、それを見た他の野良実装達は、どどっとアキラの足元に走り寄る。 「なっ なんだお前ら!? いーかげんに!・・・」 ミノ坊の行動そのものが予想外の上に、まさか虐殺派の自分が実装石に懐かれるとは。 青筋を立てて激高しかかったものの、この公園で虐殺虐待はご法度だ。 歯軋りをして野良実装達を睨みつけるがそれ以上は我慢するしかない。 「ぐぬぅっ・・・ ミノ坊、このイカそーめんをコイツらにくれてやれ」 「ニンゲンさん太っ腹です〜♪」 「それから、帰って寝ろ!って、言ってくれないか」 「お安いご用デス〜」 ミノ坊はイカそーめんを野良実装たちに配ると、「なあに?」といった無邪気な表情で見上げてくる。 これは案外に確信犯なのかもしれないと、いぶかしむアキラであった。 「公園の野良実装に餌をあげちゃ駄目なんだボクー」 「実蒼石は見た、だボクゥ」 アキラがはっと振り向けば、そこには音も無く近づいた空と海がいる。 デエ!? デ? デデ! デデエ! デス? 家路につくはずの野良実装達も一斉に振り向く。 程度の差こそあれ、空と海の2匹を目にするや、皆が一様に固まってしまう。 「遅かったじゃねぇーか、糞蟲ども」 「糞蟲じゃないボクー」 糞蟲の一言に、今夜も空はむっとした表情をする。 対するアキラはニヤリと笑い、両の手からバールと警棒をするりと伸ばす。 「デ!? ニンゲンさん駄目デスゥ!! 実蒼石さん止めてデスー!!」 実蒼石を間近で見た緊張で固まっていたミノ坊だが、アキラのバールを見て我に返る。 転がるようにベンチから降りると・・・ まあ、実際には短い足で転がり落ちたのだが、転がるように降りると実蒼石めがけて走り出す。 「あ!? おい待てミノ坊! 危ないってっ!!」 アキラは慌てて止めようとするが、驚くべき速さで海がミノ坊に詰め寄る。 「じっ 実蒼石さん止めてデス! このニンゲンさんは悪いニンゲンさんじゃないんデス!」 必死で訴えるミノ坊に、海は顔を近づけて横から下から斜めから、まじまじと見つめる。 「実蒼石さん、ちゃんと聞いてるデス!? この公園にはこのニンゲンさんが必要なんデス!」 「ふ〜〜んボクゥ・・・・」 「ミノ坊、いいからこっちに来い!」 空と海の動きを警戒しながら、アキラはミノ坊を抱き上げて仲間の野良実装達に身柄を預ける。 そんなアキラに、複雑な表情の海が口を開く。 「わかったボクゥ」 「なにがだ?」 「なにがわかったボクー?」 「ニンゲンさんはジックス派だボクゥ。立派な変態さんだボクゥ」 「はああああ???」 「そっ それはたしかに変態さんだボクー!」 「てめっ! なにを訳の分からねぇ言いがかりを!!・・・」 「実装石が、イカくせーんだボクゥゥゥ!!」 海は、ええい黙れと言わんばかり。 くわっと目を見開き、鋏の切っ先をアキラに差し向ける。 歌舞伎役者が見得を切る姿さながらだ。 ゴスン! 鈍い音と共に海の頭が揺れ、見開いた目がぐるりと裏返る。 「イカそーめん食べてたんだから・・・・・イカ臭くてあたりまえだボクー!!」 後頭部へ一撃かました鋏を下ろすと、空は地面に突っ伏す海に吐き捨てるように怒鳴る。 その顔は相棒のあまりのボケっぷりに恥ずかしさで真っ赤だ。 対するアキラも、海と空の会話を翻訳するリンガルを覗き込む顔が真っ赤だ。 ただし、こちらは歯をむき出しに怒っている。 「貴様ら・・・ふざけやがってぇ・・・・・」 「・・・相方が失礼したボクー」 シルクハットを手に取りペコリと頭を下げる空。 だが、再びアキラを見上げたその顔には、先程の緩みきった表情は一片もない。 「ちょうどボク1匹だボクー。恨みっこなしの正々堂々だボクー」 「言いがかりをつけられて正々堂々ってのも納得いかねーが、その潔さは気に入ったぜ」 沈黙と共に長い睨み合いが続くが、アキラの怒声と共にその緊張が打ち破られる。 「覚悟しやがれっ!!」 「ボクー!!」 デエエエ〜〜〜!! デエ〜デプデプゥ〜〜〜!!! アキラと空が見たものは、でっぷりと太った実装石がおびただしい数の仲間を引き連れた姿だ。 肉を揺らし走る群れの先頭は、ミノ坊の知り合いのデブ。 アキラと実蒼石の戦いを避けようと、あらかじめミノ坊がデブに頼んでおいたのだ。 「ミノ坊〜〜! 言われたとおり、みんなを起してきたデプゥ〜〜!!」 「ありがとーデスー!!」 ミノ坊は、その身を案じて拘束していた野良実装に振り向き命令する。 「もういいデス。離すデス」 先程の気弱さは微塵も無い、リーダーに相応しい意志力が溢れんばかりの顔つきだ。 正面に向き直ると、大きく息を吸い渾身の命令を下す。 「 全 員 ニ ン ゲ ン さ ん の 足 元 に 集 合 デ ス ー ッッ !!! 」 「「「「「「「「「「 デェ〜ス!! 」」」」」」」」」」 次の瞬間、公園中の野良実装が雪崩をうってアキラの足元に集まる。 あれよあれよと言う間に空をも巻き込んで、集まったその数は100匹近く。 デスデスの大合唱で、文字通り足の踏み場も無い。 「ボ? ボクゥ?」 実装石に踏みつけられ、なにがなんだか分からないうちに海も目を覚ます。 「こ、こら! お前らどけ! 踏み潰しても知らんぞ!?」 「踏みつけては駄目なんデスー!」 「ミ、ミノ坊!?」 仲間に担ぎ上げられたミノ坊が、実装石の群れからひょこりと頭を出し叫ぶ。 「公園の実装石に痛い事しては駄目なんデスー! ニンゲンさんの決めたルールなんデスー!」 「ミノ坊、お前!」 「当然、踏んづけても駄目なんデスー! だからこの戦いは終わりデスー!」 「ボクー?」 アキラと空が目を丸くしていたその時。 「あっはははーー! すごぉーい!」 パチパチパチパチ! 陽気な女性の声に拍手が続く。 一同が一斉に声の方を振り向くと、そこには空と海の飼い主、蒼井の姿が。 「ミノ坊ちゃんだっけ? あったまイイのねぇ〜♪」 アキラとミノ坊と公園の野良実装達には何がなんだか分からない。 一方、実蒼石の空と海は予想外の展開に声も出ない。 「それに比べて、あんた達はぁ〜〜。このアンポコチン!」 蒼井は手にしているゴミ袋から何かを取り出すと、アキラ達の前に放り出す。 「デゲウ!」 「テチベ!」 それは例の糞蟲親子だった。 2匹とも、特に親実装の方は嫌というほど殴られたらしく、ボコボコの顔つきだ。 「空に海! あなた達ね、この実装石親子に騙されたのよ!」 「「 ボクッ!? 」」 「デヒィー!」 「テヒィー!」 蒼井がむんずと親実装を踏みつけ、ぐりぐりとスニーカーをめり込ませる。 「デエッグエッベッ! ワタシは悪くないデスー! 性悪なバカニンゲンに無理やり嘘をつかされた んデッス〜〜!」 「むりやりなんテチ〜〜!」 「この期に及んでまだ嘘つく気? 山ほど金平糖もらっておいてぇ〜。うりうりうりぃ〜〜」 「デゲベゲベゲベェェ!・・・」 「ひー! たすけてテチー!」 「うっ 嘘だったボクー!?」 「どうなってるボクゥ!?」 「あなた達の様子がおかしかったからね、昼間にこの公園に偵察に来てみたのよ。そしたらいかにも 『糞蟲』って感じのこの親子がいたから、分かりやすく体に聞いてみたのよ」 「ちょっ、ちょっと待ってくれ・・・ください。全然話の流れが分からないんですけど・・・」 全く事情の分からない展開に、女性苦手のアキラがやっとの事で口を挟む。 「あら、ごめんなさいお客様w 実はこの子達、私が飼ってるんです」 「ええ!?」 「え〜とですねぇ、私が働いている実装ペットショップの『グリーンハウス』に、塩補と名乗る、嘘 かホントか分かりませんけど〜、みのり市職員の人が来まして」 「塩補!? 塩補と名乗った!? ならそいつは本物です、以前にもこの公園で悪さをしていた虐待 派ですよ」 「え〜〜〜!? やっぱりぃ!」 と、その時、空と海があらぬ方向をちらちらと見ている事に蒼井が気づく。 蒼井とアキラがその方向に目を向けると・・・ 自分が乗ってきた車に乗り込もうと、そろりそろりと逃げていく塩補の姿が。 「この野郎ー!! 待ちやがれーーっ!!」 「あー!? よっくもうちの子を騙してくれちゃったわね〜〜!」 「デ!? ニンゲンさんに続くデスーー!!」 「とっちめてやるデッスー!!」 「デッシャー!!」 デエデエ・デスデスと、ミノ坊と仲間達も後に続く。 「どっ どうするボクー!?」 「空気を読むとこうなるボクゥ!」 我に返った空と海。 無駄口を叩く分だけ機転が利くのか、脱兎の如く走り出した海に慌てて追いかける空。 人と実装の珍行列だ。 しかし寸前のところで塩補の乗った車は逃げ去ってしまう。 アキラが投げつけたバールの傷だけでは割に合わない結末だ。 ・ ・ ・ 「ホントにごめんなさいね、お客様」 「悪かったボクー・・・」 「青いゆえの過ちだボクゥ」 「あっ いやっ その・・・・・」 女性が苦手なアキラは、飼い主の蒼井に謝罪されて「あわわ」になってしまう。 若干1匹、謝っているかどうか怪しいのだがそれに気づく事もない。 肝心の塩補を取り逃がしてしまったものの、アキラと蒼井はお互いの情報を教え合い、今回の出来事 の全容を知る事になる。 そして公園の野良実装のリーダーであるミノ坊にも、分かりやすく解説する。 蒼井と空と海はろくでもない奴に騙されたと憤慨したが、自分達のせいでアキラに怪我をさせてしま ったと泣いて詫びるミノ坊を目の当たりにし、頭に上った血も下がってしまう。 血も下がり、冷静になった頭でアキラ達はふと考える。 「あー! そう言えば!」 「え!?」 「あの糞蟲親子はどこへ行ったの!?」 「ああ!?」 「「 ボク!? 」」 ・ ・ ・ 「デエ・・・デエ・・・」 「テエ・・・テエ・・・」 「酷い目にあったデス・・・」 「あったテチ・・・」 公園から少し離れた住宅街に、体を引きずるようにして歩く糞蟲親子の姿があった。 「あのブサイクなバカ女のせいで、コンペイトウもポシェットもなくなったデス」 「テエエエ!? コンペイトウほしいテチィィ・・・・」 「でも・・・お肉美味しいデスゥ〜ンw」 「おいしいテチィ〜w」 いったいどこで捕まえたものか、糞親蟲はその手にまだイゴイゴと蠢く仔実装を抱えている。 自動販売機を見つけるとその隙間に親仔してもぐり込み、手にした『肉』をもしゃもしゃと食い散ら かす。 「ここは暖かいデス。とりあえずしばらくここで過ごすデス。ケガが治ったら、新しい奴隷ニンゲン を探すデスw」 「さがすテチw」 この糞蟲親仔の幸せ回路は、すでに記憶の中の塩補を奴隷に作り変えているらしい。 いやいや、その愚かしさはまさに糞蟲。 「た・・・たすけテチィィ・・・ ヂギッ・・・」 「美味いデププププwww」 「うまいテププププwww」 ・ ・ ・ その頃、塩補は自分のアパートの虐待専用部屋に戻っていた。 「この糞蟲共があああああっっ!!!」 デギャッ!!! デヒエーー!! デエエエエエン! デヒッ!デヒィーーッ!! 「逃げろ逃げろゴミ共があっ!! そらそらそらあああっ!!!」 デギャアアアア!! 小さな小部屋に放たれた無数の実装石、それを狂気じみた怒声で追い回す塩補。 明らかにミノ坊とアキラに復讐できなかった腹いせだ。 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」 気がつけば、もう蠢く物はなに一つ無い。 「糞っ! 糞っ!! どいつもこいつも糞蟲だっ!!」 「公園の野良糞蟲が自立だとぉ? ふざけやがって糞蟲共が!!」 「今に見ていやがれ糞蟲共があっっ!!!」 ひき肉と化した床の肉を、これでもかと踏みつける。 が、肉の感触が無い、飛び散る血肉が無い、断末魔が無い。 無言のまま、立ち尽くす。 「・・・」 「・・・・」 「・・・・・」 「まずは・・・俺を裏切った、あの糞蟲親子からだ・・・」 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ かなり時間が経っているので忘れられているとは思いますが、託児親子の再登場です。 地獄に叩き落せとご要望がありましたが・・・結末は続きをご覧ください。 Gの旋律は一話完結の形をとりながら、続き物として書いてます〜〜、が。 間隔が空いてしまい話の流れが分かり辛くなり申し訳なく感じております。 ご容赦のほどを。
