庭師実装石「みど吉」第3話 20XX年、巧妙かつ増加するテロリストに対抗する為に 実装石を鍛えて兵隊として利用する軍曹の計画 一体実装石を使う事に何の利点があるのだろうか? 軍の上層部もその事に疑問を持っていた どうせなら実蒼石や薔薇水晶の方が戦闘力が高くて訓練しやすいだろうに、誰もがそう考えたが その疑問は彼女達を実践投入した直後に解消した それは「実装石は人間の住む所にはどこにでもいる」と「実装石は人間より遥かに弱い」の二つの常識を逆手にとったステルス性 たとえばこの軍兵実装石が汚れた実装服を着て汚いビニール袋を腕に提げて 監視カメラも気にしないで堂々とテロリストのアジトに近付いたとしよう それを見かけたテロリストはどう考えるか・・・・・・・・おそらく全員が 「また汚い実装石がゴミを荒らしにきやがったか」 程度の考えしか浮かばないだろう、当たり前だ、何せ実装石は人間の生活圏ならどこにでも現れるから警戒する程珍しくもない、そして 「庭を汚される前に始末しとかねーと」 と何の疑問も思わないで敷地の外に蹴り飛ばそうとするか首をへし折ってゴミとして捨てようとして不用意に近付く 当たり前だ、「実装石は危険な生物」なんて誰が考えるだろうか、まずいない、それが常識だ この常識の盲点こそ軍兵実装石誕生の理由であり彼女達の最大の武器でもあった その盲点を最大限に利用し、監視カメラの死角に誘い込んでから敵の始末、誘拐された要人の場所の確認・確保 セキュリティシステムの無力化、人間の突入部隊の誘導と囮となって敵の目を引き付けたりと軍兵実装石は活躍した しかもテロリスト達はまさか実装石がやっているなんて夢にも思わないから 軍兵実装石が任務に就いてから彼らは常に被害を受け、その勢力は僅か数年で大幅に減少 この実績の高さはすぐに認められ、彼女達には「緑の乙女」の部隊名を与えられ 部隊の存在はすぐにトップシークレット扱いとなり多くのテロリストに恐れられる事になった そんな中、278は主に要人救助優先、または殲滅優先などの任務で敵対勢力の殺戮を担当する事が多く(特に身体能力が高かったので) 仲間からは「アサシン」の名前で呼ばれて頼りにされていた そして3年後、278はその戦果を認められて「退役権」を与えられた 退役権、それは軍での働きを認められた者や、身体的特徴の情報がテロリストに知れ渡って前線に出せない者に与えられる特別恩赦、又はリストラ もちろん278の他にも戦果を認められて退役権を貰い 軍をやめてお手伝い実装、介護実装としての第2の人生を歩む者、家族の仇を取る為に国に帰った者 そのまま軍に残り後続の指導にあたる者、退役権を辞退して死ぬまで現役を貫く者などさまざまだった 278はその中で前から興味のあった庭園関係の勉強に励み半年程度で「庭師実装」として認められて 軍の仲介で有名ペットショップで販売され「鈴山俊秋」に買われる事となった 278が鈴山家に買われた頃、この地域では年々増えている実装絡みの被害に役所や住民が頭を悩ませていた いくら駆除しても渡りや不法投棄で1週間程度でまた元の数に戻る公園の野良実装 更に野良の中に元飼い実装が増えた事により今まで以上に手の込んだ被害が (手の込んだ成り代わり、集団で狙いやすい子供や妊婦などの襲撃、一人暮らしの老人の家などの襲撃) 多くなり、ほかにもマナーの悪い虐待派や虐殺派の起こす犯罪も増えていた (飼い実装の強奪・殺害、虐殺を注意した人間に対する暴行や殺人未遂、愛護派を狙ったテロまがいの攻撃) 困った市の役員は愛護派、虐待派、無関心派の人達に何度か集まって貰って意見交換を行い解決策を模索する事にした 最初の内は 「実装ちゃんをいじめる虐待派を追い出せばいい」 「糞蟲に考えなく餌をばらまく糞愛誤派をこの街から叩き出せば万事OKだろ」 「てか虐待派も愛護派も出てってくんないか?」 こんな状態ばっかりで意見交換どころじゃなかったが その内にこの問題に真面目に取り組む人達が集まり、そして一つの解決策として 「公園に住んでいる実装石の質を上げてそれを管理する」 と言う方法を実験的に行う事となった 一見愛護派寄りの考えに見えるが発案者は虐待派の方から出たアイデア(他所の街での成功例を参考に)だ 大雑把に説明すると まず公園などの実装石の群れから糞蟲個体を選別して駆除、その際賢くまともな個体を残す(役場が担当) 次に必要な教育を施した「指導実装石」をその群れに送り込み、群れの体質改善を行う(教育は虐待派が担当) 群れの運営が上手く行くように最低限の生活維持の道具(段ボール、ボロキレ等)を配給する(主に愛護派が担当) 更に地域内で実蒼石、実紅石など戦闘力の高い実装シリーズを飼育しているブリーダーに 「特別駆除要員」の資格を与えて(希望者のみ)実装シリーズを役場が賃金を出して雇用(暫定的に)して 町内の渡り実装狩りに対しての参加を呼びかけた その結果、最初の1ヶ月で効果は表れた、実装石の襲撃や家宅侵入、託児の被害が大幅に減ったのだ 賢い個体ばかりになったので人間を甘く見て安易な行動に走る事がなくなり 更に賢い個体の家族に糞蟲が産まれれば、容赦なく虐待派に提供されるので、群れの健全な維持ができるようになった 渡り実装も公園に辿り着く前に特別駆除要員の実蒼石などに狩りつくされ、公園での異常繁殖や実装被害にいくらかの歯止めが掛かった 「地域全体で実装被害を減らそう」のスローガンに始まった大掛かりな計画は大成功したかに見えた しかし、その成功したかに見えた計画は2ヵ月後に脆くも崩れ去る事になる 計画を崩したのは実装石からではない、人間の方からだった 最初の異変はとある実装石の群れの周辺住宅地で、また実装被害が増えた事だった 不思議に思った役場の人間が調べた結果、この公園にいた指導実装石と元からいた群れがほとんど殺されて 更に誰かが意図的に同族喰いやマラ実装を大量にリリースした事が分かった この事件を皮切りに他の公園で賢い個体を狙って虐殺が行われたり、巡回中の特別駆除要員の実装シリーズを狙って殺す事件が起こるようになり 2ヶ月半で以前のように実装被害に悩まされる地域に戻って・・・いや、さらに実装被害が悪化した この事態に計画に参加した人達や住民は激怒した、 「せっかく野良実装石に悩まされなくて済んでたのに・・・」 「やっと静かに生活できると思ったのに・・・・」 一方事件を起こしている虐殺派や虐待派はと言うと 「真面目に生きているフリをしている糞蟲や、それを支援する愛誤派共にムカついた、これは正義の鉄槌だ」 「賢い個体の群れの方が殺しがいがあって楽しい、何せ抵抗するからな」 「やっぱ他実装も虐待してこそ真の虐待師でしょ、人の飼い?だから何?」 その後どうなるかなんて1mmだって考えてない、自分が楽しければ他なんてどうでもいいから・・・・ もちろん役場だって馬鹿じゃない、看板を立てたり監視カメラを取り付けたりと対策は行った しかし役場が対策を立てれば立てる程、彼らは「ゲームのレベルが上がった」とますます喜んで虐殺や他実装虐待を繰り返し もはやこの計画は崩壊の瀬戸際に追い込まれた (後に彼らは健全な虐待派と区別されて、悪虐派と呼ばれるようになった) そんな中、みど吉の近所の公園に住んでいた指導実装石が悪虐派に殺される事件が起こり、周辺でまた実装被害が急増しだした 実はこの時点で指導実装石の後続が間に合わなくなって役場の職員は困っていたのだ 悩んだ職員は、やむえずその近所で評判のいいみど吉を飼っている鈴山家に向かい 「後続の指導実装石が来るまで公園の指導を頼みたい」 と俊秋に頼みに来たのだが、俊秋はいい顔をしなかった 「でもなあ・・・みど吉がいないと庭の手入れが・・それに安全なのかい? あそこって先週悪虐派ってのが暴れたらしいじゃないか」 現に今鈴山家の庭の手入れは全てみど吉に任せっきりなので、もしみど吉に何かあったりしたら困る・・ 「それはもう大丈夫です、監視カメラや防犯ブザーを増やして安全策は確保していますから」 役場としてもいろいろと対策案の用意を説明してなんとか俊秋の了承を取り付け みど吉は一時的に第7公園の指導実装石(ボス)となった それから3日後、みど吉が公園に初めて来たのだが、その公園は正に地獄の様だった 公園の地面や遊具、植木に実装石の血肉や糞が今も残り、とても一週間前まで「綺麗な公園」だったと言うのが信じられない程汚れていた 「・・・・あまりにも酷いデス、無法地帯もいいトコデス・・・・」 みど吉は公園を見回して呟いた、その時、みど吉の姿を見つけた野良実装石がゾロゾロとみど吉の周りを取り囲み始めた 「・・・・ここの住人デスか?・・・」 みど吉は取り囲んでいる同族に静かに問いかけた 「こいつ・・・ドレイニンゲンの匂いがするデス」 「デププ・・・どうせ捨てられデス。コイツにこの公園のルールを教えてやるデス」 典型的な糞蟲がみど吉をジロジロ見ながらみど吉に近付いてきた 「ルール?・・・・何の事デス?」 「デシャァァァ!!新入りのクセに口答えするなデ・・・」 喚きだしたその糞蟲にみど吉の高速正拳突きがクリーンヒットして糞蟲は悲鳴を上げる間もなく遥か3メートル向こうの植木に叩きつけられ 衝撃を分散しきれなかった体は腐ったトマトのように爆ぜた 「「「「「「デェェェェ!!!!!」」」」」 幾分か知恵のある個体はみど吉の力に驚き逃げ出した 残った馬鹿な個体はと言うと 「デデ、す・・・少しはやるようデス。気に入ったデス、お前にはこの私のボディーガードを勤めさせてやるデス、これはとても・・・」 お馬鹿な発言をした糞蟲はみど吉が現役時代から愛用している伸縮式のアーミーナイフで胸を刺され、偽石を砕かれた 「デピャーピャッピャッピャッピャ!!アイツは醜いから死んだデス!!高貴で美し・・・・」 現状が理解できていない糞蟲は首を切り落とされ、頭部の偽石を貫かれた 「デヒィ!!・・い・・今ならコンペイトウとステーキで許してやらなくもな・・・」 訳の判らない事を言ってた糞蟲は顔を刺されて絶命した 「に・・逃げるデスー!!アイツはなんか・・・」 やっとみど吉が自分より強いと理解した糞蟲は振り向いた瞬間に背中を貫かれた 「デ・・デデ・・デプ〜」 媚びて助かろうとした糞蟲は真っ二つに切られた 時間にして5秒程度、その僅かな時間で5匹の糞蟲が死んだ 「どうやら前のボスがいなくなってから糞蟲が増えたみたいデス・・・・仕方ないデス」 みど吉はボソリと呟くと改めて両腕からアーミーナイフを伸ばし、凄まじい勢いで走り出した 一方その頃 「この馬鹿野朗!!なんで第7公園の駆除を後回しにしたんだよ!!」 「いやだって第7公園に指導実装石が来るのは明後日じゃなかったんすか?」 「それは第2公園だアホ!!」 二人の役場の職員が車を飛ばして第7公園に向かっている最中だった 実は若い職員の勘違いで昨日第7公園の野良実装石を駆除する予定を第2公園と間違えてしまったのだ 何も知らないみど吉がそこに行ったら、たちまち野良の糞蟲に襲われてしまうのは火を見るより明らか そんな事になったらせっかくみど吉を貸してくれた鈴山さんに怒られるに決まってる 「まだ・・・公園に着いてなければ・・・」 「それだったら有難いよ!!だがなあ、飼い主に電話したら2時間前に出掛けたって言うじゃないか!!」 「じゃあもう着いててもおかしくないか」 「コイツ・・・運転中じゃなかったらブン殴ってやったのに・・・」 虐待派に殺されたならある程度は言い訳がきく、だが糞蟲の駆除を忘れてたなんて言い訳なんかになりゃしない 禿裸にされてドレイ扱いされてるならまだフォローは効くが(服代や植毛代程度)殺されてたりしたらアウトだ 7桁寸前の弁償金なんて上司が認めてくれなきゃ二人の責任払い(自腹弁償)確定、そんな大金持ってる訳無い 「うう・・・みど・・なんとか、とにかく無事でいてくれ・・・」 先輩職員は青くなった顔でみど吉の無事を祈った・・・・・やがて 「着きましたXXさん!!」 公園の前に車が停まった直後、飛び出すように車から降りた先輩職員は急いでみど吉を探した 「おおーーいみど・・・えーっと・・・吉、そうそうみど吉ーーー!!どこにいるんだーーー!!」 「ワタシならココデス」 少し離れた茂みからみど吉がのそりと出てきた、服も髪も汚れてない姿を見た職員は安堵のため息をついた 「みっ、みど吉・・・よかった〜無事で、心配し・・・・え?」 無事な姿に安心して何気にみど吉に近付いた職員は、みど吉の出て来た茂みの向こうに奇妙な山があるのに気付いた 「え?・・・え?・・何これ?・・・ええええ!!」 茂みの向こうや広場にいくつかある山、それは実装石の死体の山だった 「なんじゃこれ?・・一体誰が?」 「デデッ!!そこのクソドレイニンゲン!!今すぐにその怖い糞蟲を殺すデス〜!!」 3m程離れた茂みの切れ目から、野良実装石がみど吉を指しながら叫んだ 「まだ残っていたデスか・・・」 かろうじて変声リンガルで拾える程度の声で呟いたみど吉は、ゆっくりと振り返り 「何をぼさっとしてるデス、クソドレイニンゲン!!世界遺産級の可愛いワタシのピン・・」 野良実装石に弾丸のように突進し、すれ違いざまに顔の真ん中、胸、腰を一瞬で切り裂き、野良実装石を4枚に下ろした 「うわあああ!!チョット待て!!なんなんだこれ!!」 目の前で起こった一瞬の出来事に先輩職員は自分の目を疑った だってあり得ない、実装石の全力疾走なんて亀の歩くのと変らない程度のはずなのに 今のみど吉の速度は野犬の走る速度に匹敵する程の速さだ、それに今のみど吉の右腕から伸びているナイフ、野良を一瞬で切り捨てたあの技 「み・・・みど吉・・・お前は一体何者なんだ」 聞かずにはいられない、目の前にいる実装石は明らかに自分の知っている実装石とは違う別次元の生き物だ 「・・・・・申し訳ないデス、出来ればワタシの事は内緒にして欲しいデス」 「いやだから・・・」 「ペットショップに来る前に殺しの技を学んでいた・・・・それだけしか言えないデス」 みど吉から、得体のしれない何かを感じた職員は、もうそれ以上聞き出す気になれなかった 「XXさ〜ん!!いの吉見つかりましたか〜・・・ってなんじゃこりゃ!!」 車を近くの路肩に停めてからやっと来た若い職員が、公園の異常に驚いた 「ギャクタイハってニンゲンサンが、悪い糞蟲だけをみんなやっつけてくれたデス」 何も知らない若い職員にみど吉はさらりと嘘をついた 「え?そうなの?んでその虐待派の人はどこにいるのさ?」 「その人ならもう帰ったぞ『後は任せます』って言ってな。それといの吉じゃなくてみど吉だろーが」 咄嗟ではあったが先輩職員はみど吉の話に合わせた、どうせ本当の事を言っても信じてくれないだろうから 「な〜んだ、急いで来て損した、俺達のする事ないじゃん」 「する事はある、ほら、死体を袋に詰めてゴミ捨て場に持って行くぞ」 そう言って実装処理袋に先輩職員は死体を詰め込み始めた 「ええ〜・・・ったく、また虐待派の後始末かよ・・・」 「文句言うな、みど吉が無傷なだけでも御の字だろうが、それともお前、みど吉に何かあった後で弁償できるか?」 ブツブツ文句を呟く若い職員を先輩職員は諌めた 「ワタシもお手伝いするデス」 若い職員から何枚か処理袋を貰ったみど吉は二人を手伝って死体の始末を始めた それを離れた茂みの奥から元からいた賢い個体の一群が覗いていた 一時は悪虐派の持ち込んだ糞蟲の群れに襲われ、子供を喰われ、服も取られて奴隷としてコキ使われていたが みど吉が自分達を支配していた糞蟲を一掃して、その後、殺した糞蟲から服を剥ぎ取って自分達に渡して 「ここにもうすぐニンゲンが来るはずデス、みんなは向こうの茂みに隠れていてほしいデス」 そう言ってみど吉はみんなを誘導して役所の人間の対応を行った 「デエエ・・・・今度のボスは物凄いデス」 「ワタシ達の敵わなかったアイツ等をあっという間にやっつけたデス」 「強いデス・・・・まるで蒼い仔みたいデス」 「もしかすると蒼い仔より強いかもしれないデス」 みど吉の実力を見ていた彼女達は、その凄まじさに純粋に驚いていた こうしてみど吉は本石の望む形ではなかったが、その力を見せる事によって、問題なく公園のボスとして迎えられた しかしこの後、思いがけない事件がみど吉に降りかかる事となる ************************************************************** 追加説明 伸縮式のアーミーナイフ 軍兵時代に支給された軍兵実装石専用に開発された武器の一つ 腕に篭手のように装備して、有事の際に肘を特定の向きに曲げることによって刃渡り15cmのナイフが飛び出す仕掛けになっている 材質は全て強化カーボン材を使用、これによって金属探知に引っかからないので敵の目を欺く事ができる 収納は腕の付け根にあるロックを外しながら腕を上に向ければ重力で引っ込む 一般の軍用実装石は利き腕にナイフ、反対の腕に連装式の隠しボウガンが基本だが 接近戦が得意なみど吉は、好んで両腕にナイフを装備している 他にもニードルの付いたワイヤー、コンパクトスタンガン、実装石サイズのスナイパーライフル(射程距離最長150m)など 数多くの兵装が存在する
