タイトル:【馬】 愛護の果てに 【修整
ファイル:愛護の果てに【修整】.txt
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初投稿日時:2010/02/07-23:01:54修正日時:2010/02/07-23:01:54
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愛護の果てに…





 実装石を取り囲む人間社会には、大きく分けて3つに分類される。

  一つ、実装石について感心のない中立派
  二つ、実装石について内容の差(虐待・虐殺などの)はあるが、あまり快く思っていない虐待派・虐殺派
  三つ、実装石について人間と同等の愛情を示す愛護派
 
 そして、悲しいことに世界の実装石たちは、虐待・虐殺及び労働を強いられている。 
 そんな社会の反愛護的構造を打開すべく、愛護派によるプロパガンダムービー製作がついに始動した。

 少々前置きが長くなってしまったが、私の名前は虹浦利明、愛護派であり世界実装愛護協会にも席を置いている
ついでに言うと独身だ。 
 


 ここのところプロパガンダムービー製作に多忙を極め家でも映像のチェック作業で、可愛い私の愛実装たちと遊ぶ時間
もない。
 帰宅すると、愛実装たちがテチテチと可愛い声で出迎えてくれる。

 あわてんぼでフリルのついた実装服を着ているがミリ、利発で大きなリボンがチャームポイントのドリ、食いしん
坊で太り気味なのがドミ。
 
 「ごめんよ今日も仕事で遅くなって」
 「「「ご主人様おかえりなさいテチ」」」
  
 躾済のとてもお利巧な仔実装たち、一緒に生活をはじめて半年ほどになる、元々の仔実装好なことも相まって
成長抑制剤入りの食事を与えている。
 やはり家飼いにするには成体実装を飼うにしては狭いので、仔実装がちょうどよい。

 「おや?どうしたんだドミ!」
 「お腹がすいて動けないテチィ」
 「「お腹すいたテチィ」」
 「みんなごめんよ、お詫びにあさっての日曜日オスシを食べに行こう!」
 「「「テェーーー!」」」
 「ん?どうしたんだい?うれしくて声も出ないか?」
 「「「ご主人様、大好きテチュー!」」」
 「じゃあ今からごはんを作るから、洗濯物するから服を脱ぎなさい」
 「「「ハーイ、テチュ」」」
 
 もじもじとしながら、ミリとドリが服を脱がずにいる。
 
 「どうしたんだい?ミリ、ドリ」
 「ご主人様、あの綺麗なお魚さん食べちゃうのテチィ?」
 「お魚さんたべないでテチ」

 先週綺麗だからほしいとせがまれて買った熱帯魚のことを言っているのだろう。
 ドミがここのところずっと「美味しそうテチ」と言っているので、気になっていたのだろう。

 「ミリとドリといっしょで、かわいいお魚さんは食べないよ」
 「お魚さんよかったテチ!」 
 「テチィー!」
 
 日課のTVニュースを見ようとTVをつけると、今夜からは大寒で例年にも増して冷え込むと報道されていた。
 オイルヒーターとエアコンの温度をいつもより高めに設定し、実装服と仔実装用の防寒コートを着せ仔実装たちを
テーブルに上げた。
 テーブルの上に仔実装用のハムステーキ、ライス、ポテトサラダとコーンスープを並べ、汚れた実装服を回収する。
 
 「お前たちは先に食べておきなさい、私はお風呂の準備するから」
 「「「モグモグモグ、ハーイ、モグ、テチュー」」」

 私は仔実装たちの汚れた実装服を洗濯機にかけながら、風呂を沸かしていた。
 
 「おまえたち、お風呂に入るぞ!」

 いつもならすぐに返事が返ってくるはずなのに返事がない。
 食事のためにテーブルに上げたのを思い出しテーブル周辺を探すが、やはりいない。

 「おーい」

 やはり返事がない。
 嫌な予感がして小さな声でも聞き取れるように、TVを消そうとした。
 TVには『実装ハンタートモイ』が写っており、背景をよく見ると南国だ。
 TVに写っているモトイが「ナンスカ!これデッケー水槽じゃないスカ!自分熱帯魚じゃないスヨ!」と言って、巨大
水槽のそばでずぶ濡れになって、愚痴っていた。
 私は嫌な予感がした。
 ”熱帯魚””水槽”……
 暖房の温度を上げたせいで、部屋の中は熱かった。
 仔実装たちには冬服をしかも防寒着だ。
 TVでは実装石の番組、しかも南国。
 先週購入したばかりの熱帯魚と水槽。
 もしや!
 
 「ミリ!ドリ!ドミィィィーーーーーーーーー!」

 私は絶叫した。
 
 部屋隅の床に仮置きしていた水槽の中に3匹は浮いていた。
 
 3匹がエサをやりたいと言って駄々をこねるものだから、作ってあげた梯子と足場が災いした。
 私は軽く尿を漏らし、一瞬目の前が真っ白になった。

******************************


 急いで3匹を引き上げる利明、仔実装からはうんともすんとも返事がない。
 3匹は呼吸をしていない。
 ブヨブヨした3匹の腹を力の加減に注意ながら押す。
 ピューーー、ピューーーと水を鯨よろしく噴き上げる。
 食いしん坊のドミからは水と共にグッピーが飛び出した。
 が、グッピーなどの騒ぎではない。
 すぐさま3匹の顔に耳を向けるも、呼吸をしていない。
 愛実装3匹が死ぬかもしれない状況に利明はパニックになる。

 「ミリ!いま助けるからな!」 
 
 利明が大きく息を吸い人工呼吸を試みる。
 
 「プゥゥーーーーーーーーーー」

 ボン!異音に驚き利明がミリから口を離す。
 ミリの口から緑と赤の血泡がブクブクととめどなく溢れ出ており、痙攣によって周囲に血を振りまいている。
 おそらく肺が破裂したのだろう、痙攣は止まらず続いており、利明は目の前の現実を振り払うかの如く、首を左右にゆっくりとふった。
 利明の目から見ても、ミリが絶望的な状況ににあるのは否定しようのない事実である。

 「ああぁぁぁぁ、こんなつもりじゃぁ……、ミリィィーーーーー」

 だが、そんな現実を肯定しきれない利明は、なんとかミリを目覚めさせようとする。
 利明は何度もミリを揺する、揺すり続ける、そして…ミリの胸を境に、上下の体が真っ二つに折れ曲がる。
 絶望から事実に変わり利明は咆哮した。

 「あぁぁぁーーーーーーーーーーー…………!」
 
 絶叫ではなく咆哮、己の愚かさをと浅はかさ、そしてこの悲劇に…。
 利明は残ったドリとドミを一刻も早く助けようと次の手を講じる。
 ドリの胸に左右の人差し指と中指をあてがい、心臓マッサージを試みる。
 利明は自分に言い聞かせるように「ゆっくり、慎重に」と何度も自分に言い聞かせる。
 
 「いくぞ!ドリ」
 
 確かに動きはゆっくりだった。
 だが緊張し少々力みすぎていた。
 ミシ、ミシ、ミシ、ボキッ!
 ドリの胸が信じられないほどへこみ、口と総排泄口から液体と汚物があふれ出る。
 
 「あぁぁぁーーーーーーー!!ドォーリィーーーーーー!!!!!」
 
 特に痙攣はなかったが見る見るうちに肌が青褪めていく、おそらく心臓を押しつぶしたのだろう。 
 
 「ドミ!お前だけは、お前だけは絶対助ける!」
  
 利明は「くやしいです」と言わんばかりの表情で最後のドミの蘇生にかかる。
 
 「そうだ!電気ショックだ!」

 コンセントの延長ケーブルの受け口のある方を切断し、金属部分をむき出しにし、皮膚から離れないようにドミの両胸
にテープで貼り付ける。
 器官に水が戻らないようにうつぶせに寝かせて、慎重に延長ケーブルを壁面のコンセントの指し口にそえる。
 
 「いくぞ!ドミ!」

 延長ケーブルを壁面のコンセントに差し込んだ。
 バチ!と火花が飛び散る、「ジジジジジジジ……」とうなり声を上げながらドミの体が信じられない速さで痙攣する。
 電気ショックを与えたがドミに回復の兆しはない。

 「なんてことだ!どうすれば!」
 
 利明はしばらく考え、ドミの体からエアコンのコンセントに目を向けたそのとき、ドミの体がピクリと動いた。
 普段の利明ならば見逃すことのない動きだったが、動揺したしている利明の目にはその生死の明暗を分ける動きを捉え
ることが出来なかった。
 神のイタズラというべきだろうか?それとも幸運の女神に見捨てられたのだろうか?
 ドミは電気ショックの影響か?立ち上がれず手足を緩慢に動かしている。

 「そうだ!電圧が足りないんだ!エアコン用の200Vなら」
 「ェ……ェ…………」
 「今たすけてやるぞ!ドミ!」  
 
 コンセントをさす。 
 バチン!一際大きな火花が飛び、ドミの体が30センチほど飛び上がった。
 「テ!ジジジジジジジジジジジジジ……」とエビゾリのまま今も曲がり続けている。
 おそらく電気で筋肉が強制伸縮しているのだろう。
 
 「しまっ!コンセントが抜けない!」

 わずか10秒予定よりも長く電気を流し続けたドミは、穴という穴からうっすらと湯気を上げていた。
 気のせいかあたりに香ばしい肉の焼ける匂いが漂っている。 
 10秒と言う時間は仔実装から生命を奪うには十分だった。

 「ドォォーーーーーーミィィーーーーーーーー!」
 
 ドミの目には既に生気はない。
 
 「あぁーーーーーーーーーーーーーーー!」

 衝撃のあまり利明がパンコンした。

******************************


 翌々日 斎場にて




 利明はミリ、ドリ、ドミの葬儀を粛々と行った。
 世界実装愛護協会には”不慮の事故”ということを届けてある。
 生前友好のあった実装石たちも葬儀に参列している。
 
 「虹浦、コレが今生の別れだ。仔実装ちゃんたちにお別れを…」

 葬儀に参列している世界実装愛護協会の友人が肩を押してくれた。

 「ミリ、ドリ、ドミ……」

 葬儀会社の人が「そろそろお時間です」と3匹の棺桶を焼却炉に入れる準備をする。
 ミリ、ドリ、ドミが仲良く3匹並べられて焼却炉にゆっくりと入れられてゆく。

 「耐熱ガラス越しに最後のお別れを…」

 焼却炉に炎が灯る。白木の棺桶がみるみる黒くなる。
 涙で曇る目をこすりながら利明は小さく、誰にも聞かれないようにささやく。
 
 「さようなら、ミリ、ドリ、ドミ」
 
 利明は目をつぶり3匹のことを思い出す。
  ミリは可愛い実装服が好きで、おっちょこちょいの甘えんぼさん、でもとても妹思いのお姉さん
  ドリは寝るときもリボンを離さない位好きで、寝かせつけるの大変だったな、お利口さんだったけど
  ドミはちょっぴりわがままで、ちょっぴり食いしんぼで、ちょっぴりふとりすぎだったな 
 3匹との過去を回想する。
 涙がとめどなく溢れだす。
 参列者のみんながそんな利明を慰める。

 「ごめんよみんな、本当にごめん」

 押し殺した嗚咽が静かな斎場の隅々にまでいきわたる。
 そしてゆっくりと焼却炉の耐熱ガラスから最後のお別れを……
 棺桶を突き破って、ぽっちゃりとした仔実装が飛び出す。
 
 「テヂィーーーーーーー!ご主人様ぁーーーーー!ダヂゲデェーーーーー!」
 「ドミィーーーーーーーー!」
 「焼却炉の火を早く!はやくけしてくださいぃ!」
 「ダメなんです、この焼却炉一度点火させると、時間が来るまで消せないんです!」
 「ヂィーーーーー!楽園が見えるデヂィーーーーー!」
 
 もう既にドミは火達磨だ。
 注意してみるとミリが焼け崩れた棺桶の中から這い出してくる。
 傷は完全に回復しておらず立つことは出来そうない。 

 「ヂ……ヂ…………」 
 「ミィーーーーーリィーーーー!!!!」
 
 滝のような涙を流しながらドミが耐熱ガラスを叩きつける。
 そのたびに焼却炉のなかを除くための耐熱ガラスの可視部分がススで狭くなっていく。
 頭を抱えながら、尽きることのない涙を流し、利明が言葉にならない言葉口にし絶叫した。
 そして、棺桶を3匹分並べたせいで焼きムラが出たのだろう。
 最後に真中の棺桶から火達磨のドリが飛び出す。
 耐熱ガラスまでととかず落下する。
 
 「ゴジュジンザヴァーーーーー、ダヂゲ……」

 ミリは這いつくばったままの姿で炭になった。
 ドリは落下し焼却炉の床のススになった。
 ドミは耐熱ガラスのススとなった。
 そして利明は立ったまま気絶した。

 その後、虹浦利明は蒸発し、社会的にもこの事件が知れ渡ることとなった。
 この1件は再現VTRとして、プロパガンダムービーにも追加されていた。
 実装石の”しぶとさ””仮死状態”についての諸注意にも重きを置くようになったという。
 そして、この事実こそが現在も語り継がれている『実装石は人を不幸にする』をたとえる実例として今も語り継がれて
いる。




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最後まで読んでいただきありがとうございます。
書くネタ、アイディアは山ほどあるんですが、文章にするのって難しいですね。
前回感想で誤字脱字間違った表現をご指導してくださった方々ありがとうございます。
今回は前回より、いくぶんか気をつけて書いてみました。

2010.02.07 修整
      前半部分水槽事故前後の詳細
      前半部分代名詞

677氏、678氏 ご指導ありがとうございました。

さばを

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