庭師実装石「みど吉」 第2話 産まれてから僅か二日で理不尽な理由でアクマ(虐殺派の人間)に全てを奪われた仔実装 そんな彼女に別の人間が「復讐する為の力」を授けようと持ちかけ、彼女はそれに応じた。そして・・・・ 「オマエタチ!!今すぐ逃げるデス!!アクマが・・アクマが来たデス!!」 「ヒャッハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」 「なにしてるデス!!早く逃げるデスー!!アクマに見つかったら殺されるデビャッ!!」 グシャァッ!!!! 「ヒャッハァァァァァ!!!!糞蟲共は皆殺しだァァァァァァァ!!!!!」 「レピャァァァァァァァァァァァァ!!!!」 「ママァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」 「まだいたか糞蟲ィィィィィ!!喰らえェェェ!!正義の鉄槌ィィィィィィィィィ!!!!」 パーーーーーン!!!! 「テジャッ!!」 「レピャァァァァァァ!!オネチャーーー、助けてレピィィィィィィ!!」 「ウジチャン待ってるテチ!!今オネチャが助けにい・・・」 「死ぃねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」 ブシャッ!! 「テチャァァァァァァァァァァァ!!!もうやめてテチーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 がばっ!! 日も暮れて暗くなった中実装用の宿舎で三女(後のみど吉)は自分の悲鳴で目を覚ました 「はあ・・・・はあ・・・はあ・・また、あの夢テス・・・・・」 「大丈夫テス278?もしかしてまた家族を殺された時の夢テス?」 三女を278と呼んだ隣のベットの311は心配そうに声を掛けた 「ごめんテス311、起こしちゃったみたいで・・・」 「気にしないでいいテス278、ワタチも似たような夢を見てさっき起きたから・・・・・」 311は力なく答え、そのまま俯いた そんな311を見て278はあの日から今日に至るまでを振り返った・・・・ あの日彼女は人間に連れられて見た事のない部屋に来ていた 『着いたぞ・・』 人間の言葉に長旅の疲れでクタクタになった三女はゲージから這うように出てきて辺りを見回した 「ここは・・・どこテチ?」 『ここは地獄、お前にはまず名前を与える、名前は278だ』 さっきの人間とは違う声が頭上から聞こえ、三女こと278は声の方向を見上げ、改めて声の主を確認した 真っ白な髪の毛、深い溝のようなシワ、明らかにかなり高齢な老人に見える しかし凄みのある目、歳不相応の立派な体躯、その身から発せられる静かな殺気が彼が只者でない事を物語っている 『ご苦労だった』 『ハッ、それでは失礼します』 278を連れて来た男は老人に敬礼してそのまま部屋を出て行った 「ニイナナハチ?それがワタチのお名前テチ?」 『そうだ、それがお前の名前だ、大まかな話は聞いているな』 278はその言葉に頷いた 『いいだろう、訓練は明日からだ、今日は基本的な強化手術(偽石の摘出、及び強化、避妊処理)を済ませておく』 「テ?」 『今のままではお前は訓練に耐えられないからな、お前を訓練に耐えられるように強くする手術だ』 「そうなんテチ?分かったテチ!!・・・・えっと・・・・」 『私の事は軍曹と呼べ、それと返事は「イエッサー」だ』 「ハイ・・じゃなくてイエッサーテチ!!グンソウサン」 『・・・・まあいいだろう・・・・・』 こうして278の新たなる生活が始まった そして始まった訓練は確かに実装石にとって過酷なモノであった 内容は長距離ランニング、腕立て伏せ、サンドバックにパンチ、キックなどの打ち込み+α、これをひたすら夜明けから日没まで行い 日が暮れると宿舎に戻り夕食(強化総合栄養剤)を済ませみんな死んだように眠る、毎日これの繰り返しだった 278も最初はすぐにへばっていたが3ヶ月程で体が慣れてきてなんとかこなせるようになった 基礎訓練をこなせる様になると実地的な戦闘訓練が追加される 対実装石に始まり少しづつレベルが上がり中実装になった今は1対多数の戦闘訓練を受けている もちろんここまで辿り着けた仔実装はほとんどいない 始めは278の他にも400匹近くの仔実装がいたが既に最初の訓練で300匹近くが脱落(死亡)している 278も何度も訓練中に仮死した事もあった、五体がバラバラに吹き飛んだ事だってあった それでも278は歯を食いしばり、何度も死の淵から這い上がり訓練について行った そこまでして頑張る理由、それは今でも耳の奥に残っている母や姉妹の最後の断末魔 雄叫びながら家族を殺した憎いアクマの声や顔、その時に味わった無力感や怒りと悲しみ それが278を突き動かし、今日まで278を生かした しかし・・・・278はあの日以降満足な睡眠をとった事がない 目を閉じて眠りに落ちればあの日の惨劇が色褪せる事なく再生される・・・まるでDVDのループ再生のように 一通り終わればまた最初から始まる もし278が偽石の強化手術を受けていなければとっくの昔に自壊していただろう 「278、無理してでも眠るテチ、明日の訓練に響くテチ・・・」 物思いにふけっていた278に311が心配そうに声を掛け、布団に潜り込んだ 「テエ・・・・」 278も小さくため息をついて仕方なく布団に潜り込んだ 『実装石に強化を施し、訓練して兵士とする計画を始めたいと思う』 テロリスト対策会議の場で「軍曹」と言われる老人がいきなり切り出した 『ぶっ・・あ〜はっはっはっはっは!!軍曹、遂にボケが始まりましたか、あははははははははは!!』 『いやまったく・・・軍曹も歳には敵いませんか。今のは最高に笑えましたよ』 『やれやれ、軍曹も場所を考えてギャグを言って下さい。今我々は・・・』 最高のボケと勘違いして大爆笑していた仕官達は軍曹の殺気のこもった目線で一睨みされて凍りついた この軍曹と呼ばれている老人は十代の頃からありとあらゆる戦場を渡り歩いていた有名な傭兵だったが 40代後半からヨーロッパのとある軍隊にスカウトされて今では後続の育成に努めている鬼トレーナーでもある 現に今この会議場にいる半数以上の仕官が彼の元教え子だ 『君達は私がそんなに愉快な人間に見えるのかね?』 凍りついた仕官達は一斉に首を横に振る 思い出して見れば鬼軍曹が大事な会議で冗談を言う性格じゃない 『私も考えもなく計画を打ち立ててはいない。もちろん理由もな』 そう言って軍曹は計画の説明を始めた 軍曹が実装石の訓練を行う為に着目したのが「胎教の歌」と「思い込みの強さ」の二つ まず「胎教の歌」、一般的に実装石の性格や基礎知識レベルは母親の胎教の歌である程度決まると言われている そしてこれを深く追求していった結果 「実装石は他の生物に比べて睡眠学習の能力に長けている」 と言う事が判明した、つまりこれを利用して毎晩宿舎に 「体を鍛える事は素晴らしい」 「体を鍛える事によって強くなる」 の内容を含んだ歌と睡眠学習用のCDを交互に流し訓練への低抗心を大幅に減らし向上心を養う それに伴い次の着目点「思い込みの強さ」が生きてくる。 「実装石は思い込みによって体の構造を作り変える」 これも実装石に関わる者ならみんな知っている話、愛護にせよ虐待にせよ他の目的にしてもだ 人化実装、獣実装、実装さん、これらはみんな思い込みによって全く別のモノに体を作り変えた元実装石だ このような現象は実装シリーズ以外ではまずない。 つまりこれを利用して毎晩宿舎に流す歌と毎日の訓練によって筋肉の発達を促し カルシウム、プロテインなどの栄養と毒物への耐性強化の為に致死量ギリギリのコロリやドドンパ、ゲロリなどを混ぜ合わせた 強化総合栄養剤を与えて体質の強化の手助けも行う これによって実装石を強化して兵士としての教育を行うのだが・・・・ 理論は確立していても誰も実践した者はいないが故、どこまで強くなれるのかは正に未知数 その為に軍曹はまず、理想的な実装石の調達場所として日本を選んだ なぜならヨーロッパやロシアでは「虐待は下品な行為」が常識で野良を見かけたら即駆除が当たり前だった(駆除予算は平均日本の6倍) アフリカや東南アジア、南アメリカの発展途上国では貴重なタンパク源として容赦なく食い潰されるので虐待なんて贅沢を思いつかない アメリカ合衆国内では「虐待派=犯罪者予備軍」の図式が確立しているので (野良に対するイメージはヨーロッパと同じ)虐待派の存在はゼロに等しかった 結果としてお望みの「生きる意志を明確に持つ」実装石がいる確率が高いのは自然と 虐待を一つの文化として容認し、駆除にたいして力を入れていない国「日本」が選ばれ、 集められたほとんどの仔実装も人間や同族に家族を殺された賢くて復讐心を強く持つモノを中心に選ばれた その後、あれこれと試行錯誤を繰り返しながら一年が過ぎた・・・・ 最初488匹いた仔実装石は34匹だけが最終訓練まで生き残り、当初の予想を遥かに超えた「軍兵実装石」が完成した 見た目は普通の実装石と変らないが、その筋力は全くの別物となり既に実装の枠を大きく逸脱している 鍛え上げられたウレタンボールのオテテは鋼並みの硬度となり、渾身の正拳突きは人間の骨なんて簡単に粉砕する 一般の実装石より少しだけ長いアンヨの脚力に至っては2メートル位簡単にジャンプする程になった 知識に関しても睡眠学習以外に自主的な学習によって人間の成人位まで跳ね上がり その知識を生かす為に手を人間に近いもの(4本指)に改造してもらった その結果、実装石として初期型を除けばおそらく最強の実装石に彼女達はなった (分かりやすく言えば人間が仮○ライ●ーと同じ位の力を手に入れたような状態) 『全員よくここまでついて来た』 最後まで訓練を担当した軍曹は最終訓練の終了後に彼女達をねぎらった 「サンキュー・サー軍曹!!」 彼女達は一糸乱れぬ動きで軍曹に敬礼した 『今回の最終訓練をクリアーしたお前達は晴れて望み通りの力を手に入れた 今のお前達なら復讐など容易いだろう、しかし・・』 軍曹はここで一息ついた、そして 『復讐の前にしばらく軍の任務に就いてもらう、お前達の力をアテにしているぞ』 「イエッサー軍曹!!これからもよろしくお願いしますデス軍曹!!」 こうして34匹の実装石は本来の目的である「軍兵実装石」としての戦いの日々が始まった
