タイトル:【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 完全版
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1382 レス数:0
初投稿日時:2010/01/03-02:26:55修正日時:2010/01/03-02:26:55
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 声は突然だった。

「ついに復讐の時がやって来たデス!」

 そんな叫びに、俺は顔を上げた。

 いつも通りの平穏な平日の昼下がり。リビングで座布団に座ったまま、卓袱台に置いた
ノートパソコンで小説を書いている時だった。
 リビングの隅っこには、辞書を読んでいる居候薔薇実装の紫電がいる。

 そして、庭には一匹の実装石がいた。
 鼻から赤と緑の鼻水を垂らしている。

「あれ、あいつ……?」

 庭に仁王立ちしてこっちを指差している実装石。いつだったか、紫電に水晶ギガドリル
ブレイクで粉砕された鼻炎実装石だよな? あの時、粉々になった破片を紫電が半日がか
りで片付けたけど、何で生きてるんだ?

「アナタ、マタ性懲リモナク……」

 辞書を起き、紫電がリビングの中央まで移動する。
 黄色い瞳で、無感情に鼻炎実装石を見つめていた。

 鼻炎実装石は丸っこい右手で、ビシッ! と紫電を指差した。

「あの時はよくもワタシをぶっ殺してくれたデスね! しかし、ワタシはお前を倒すため
に、地獄から蘇ってきたデス! お前を倒すための、新たな力を宿してデッス!」

 偉そうに叫ぶなり、右手を真上に振り上げる。

「デデスデスデスデデスデース!」

 ドクロちゃん……?

 呆然とする俺を無視して、鼻炎実装が跳び上がった。二メートルほど。
 って、実装石とは思えないほどの跳躍。

 轟音と共に空の彼方から飛来する、緑色のよく分からんもの。それが、跳び上がった実
装石の上下に移動し、合体する。鼻炎実装石を挟むように。

 潰れた?

 一瞬そう思ったが大丈夫らしい。

 ドスン。

 庭に着地したのは、身長二メートルを越える巨大な実装石……実装さんだった。なるほ
ど、さっきのは実装さんの上半身と下半身か。どういう原理かは分からんけど。丸太のよ
うな両拳(?)を打ち合わせ、実装さんが咆える。

「これが、新しいワタシの力デッス! さあ、クソムラサキ、覚悟するデス」

 改めて右手で紫電を指差した。

「ソウ……。ナラ、ワタシモ……真ノ力ヲ出サセテモラウ……」

 そう答え、紫電も右手を振り上げた。

 真の力って何?

「リリカル・クリスタル・キルゼムオール!」

 こっちは大魔法峠ですか?

 ガラスが砕けるような音とともに、無数の紫水晶の破片が紫電を包み込む。水晶の破片
は緩やかな回転と共に、紫電の身体へと貼り付き融合していった。そのぬいぐるみのよう
な小さな身体を、人間のような形状へと作り替えていく。
 薄い紫色の水晶も肌色に染まっていた。

 身長百六十センチほどの、紫色の髪の全裸の少女。人間のように五指のある手の他、身
体の形状も普通の少女と変わらない。芸術的なエロスですなぁ。

 思わず見入ってしまう俺。自重しろ!

 その身体に薄い水晶が貼り付き、紫色の下着から、ドレス、靴、手袋、左目の眼帯、頭
の水晶の髪飾り。そして、水晶の胸甲冑と肩当てを作り上げていく。最後に、右手に刃渡
り八十センチほどの水晶の剣を、左手に四角い盾を作り上げた。

「変身完了」

 両足を軽く前後に開き、紫電が水晶剣をかざし、ポーズを決める。

 ……何コレ? いわゆる、実装生物の人化って都市伝説?
 でも何か色々と違うような気もするけど。

 俺は瞬きしながら、変身した二匹を見つめ、思い切り頬を引っ張った。

「痛くない……なるほど、夢か。オッケイ、理解した」

 いわゆる明晰夢ってヤツね。よかった、よかった。
 なら、安心して見てられるわな、うん。現実ならどうしようかと思ったわ。

 紫電に突きつけていた腕を引っ込め、実装さんが不敵に笑う。

「デッププ……。お前も変身したデスか。そうでなくては、倒し甲斐が無いデス。さあ、
掛ってくるデス、クソムラサキ。ブッ倒してやるデス!」
「言ワレナクトモ……」

 紫電が左足で床を蹴った。細い身体とは裏腹に、凄い瞬発力。
 左手の盾で窓ガラスをぶち破り、右手に持った水晶剣を思い切り引き絞る。舞い散るガ
ラスの破片を突っ切り、弾丸のような勢いで水晶剣を突き出した。

 その動きは、さながら牙突!

「甘いデス!」

 実装さんは地面を蹴って軽く左に跳びながら、身体を捻って紫電の突きを躱す。デカイ
図体してるってのに、思いの外素速い! しかも、身体も柔らかいッ!

 その状態から、カウンター気味に右腕を突き出す。

「二重の極みデェェェスァァァァ!」

 ガラスの砕けるような音とともに、紫電が吹っ飛んだ。

 自分で割ったガラス戸を突っ切り、リビングを飛び越してから、その奥へと突っ込む。
台所から聞こえてくる、椅子やテーブルの粉砕される音。棚が倒れたのか、ガラスの割れ
たような音も聞こえた。椅子の脚っぽいものが、リビングに転がってくる。

 ああ、夢でよかった……。実際にこんな破壊されたら、洒落にならん。

「どうデッスン!」

 得意げに胸を張る実装さん。

 とはいえ、あの丸っこい手でどうやって二重の極み撃ったんだ? 原作の坊さんは肘や
足でも、ついでに短剣でも二重の極み撃ってるから、原理上は可能なんだろうけど。ま、
どうせ夢だし、深くは考えないことにしよう。

 俺は台所の方に声をかけた。

「おーい。大丈夫か、紫電?」
「ワタシハ、大丈夫……」

 そんな答えとともに、紫電が歩いてくる。左手に持った盾は砕け散り、左手の手袋も破
けている。何度か頭を振って髪の毛にくっついた木の破片を払っていた。
 窓辺まで歩いてから、両手で水晶剣を構える。正眼の構え。

「左手の盾で防いだデスか。そうでなくては面白くないデッス!」
「凄イ威力。盾ガ無カッタラ危ナカッタ……」

 その台詞とともに、紫電の姿がかき消える。

 いや、リビングの床に足跡を撃ち込み、微かな残像だけを残して突進していた。さっき
の突きとは比べ物にならない神速。目にも留らぬ超高速で、実装さんに肉薄する。

「飛天御剣流・九頭龍閃!」

 唐竹、袈裟懸け、右払い、右切上げ、逆風、左切上げ、左払い、逆袈裟、刺突。九種類
の斬撃が、一瞬の間に実装さんの巨体に撃ち込まれた。

「デギャァ!」

 吹っ飛んだ実装さんが、ブロック塀に激突。

 ブロック塀を破壊して、道路を突っ切り、向かいの家の塀に激突した。向かいのブロッ
ク塀に亀裂を入れてから、跳ね返って道路へとうつ伏せに倒れる。

 さすが九頭龍閃。凄い破壊力!

「デッスッスッ」

 だが、実装さんは即座に跳ね起きた。うつ伏せから地面を蹴って逆立ちし、そのまま地
面に立つ。全身から血を流し、肩で息をしながらも、その顔は笑みを浮かべていた。

 ついでに、起き上がる際に何か白いモノが見えた気がするけど……
 気のせいでござる。絶対に気のせいでござる!

「さすがワタシを一度殺したヤツデス。これだけじゃ厳しいデスね……」

 実装さんが、自分の胸に右手を突っ込んだ。
 丸い腕がずぶりと胸に突き刺さる。

 胸から引き抜いた右手に握られていたのは、六角形の緑色の板っぽいもの。偽石……?
と思ったけど何か違うなぁ?
 胸にはぽっかりと穴が開いているが、何ともないようだった。

 どっかで見たことある形だけど、何だっけ?
 俺は頭をかく。

「実装錬金デス!」

 核鉄かー!

 緑色の閃光が辺りを包み込む。
 数秒後、その光が消えた時には、高層ビルのように巨大な影が佇んでいた。身長六十メ
ートルにも及ぶ巨大ロボット。実装石の顔を模した頭部と、緑色のボディ。腕と脚部も緑
色で、両手と両足首辺りだけが肌色だった。

 巨大ロボットの足に踏まれた向かいの民家三軒が全半壊してるけど、夢だから多分大丈
夫だろう。うん。大丈夫だよね?

「フルプレートアーマーの実装錬金、実装バロンデッス!」

 ロボットの口が動き、スピーカーのような音質の大声を発する。どうやら、さっきの実
装さんはコックピッドに搭乗しているらしい。

 右手人差し指で、庭に立った紫電を指差し、

「これで、お前もぺしゃんこデス!」
「残念ダケド、ソウ甘クハナイ」

 いや、その身体であの巨大ロボット相手にするのは無理だろ。
 俺の考えを否定するように、紫電は右手に持っていた水晶剣を持ち上げる。

「卍解・紫縄天譴明王!」

 ドゴォン!

 爆音を轟かせ、具現化される巨人。全身を紫色の鎧兜で覆った鎧武者だった。その大き
さは実装バロンに匹敵する。日本鎧に似ているが、材質は金属などではなく紫水晶らしい。
律儀にも左目には眼帯を付けていた。

 飛び散った木の破片が辺りに降り注いでいる。
 近所の家の屋根やガラスの壊れる音。

 俺の家半壊……いや、八割くらい壊れてるけど、夢だから平気だよねー? リビングか
ら真上に青空見えるけど、これ現実だったら笑えんよねー?

「ソノ巨大ロボットで、ワタシノ明王ヲペシャンコニ出来ル……?」

 水晶剣を素振りする紫電の動きに連動する、紫縄天譴明王——長いので紫明王に略す。
その巨大な水晶剣が空を斬った。全長四十メートルはあるだろう、巨大な水晶剣。多分、
高層ビルでも普通に両断できる。

「デデ……。お前もそんな切り札を持っているとは、予想外だったデス……。だが、そう
でなくてはつまらんデス。お前のムラサキヨロイよりもワタシの実装バロンの方が、強い
と証明してやるデェェェス!」

 実装バロンの突き出した拳を、紫明王の水晶剣が受け止める。
 巨大な鉄骨が激突したような轟音が響いた。

 紫明王が半歩後ろに下がり——
 後ろの家が潰れた音が響く……。周辺被害、全然考えてないッ。

 実装バロンの拳を捌いてから、両手で水晶剣を構え、踏み込みとともに諸手突きを繰り
出す紫明王。巨大な水晶剣の切先が実装バロンの胸を穿つ。だが、装甲の表面を削っただ
けで、貫通はできていない。
 甲冑だけあって、硬いなァ。

 それでも突進の勢いに負け、実装バロンが仰向けに転倒する。民家が何軒も潰れ、轟音
とともに派手に土煙上がってるけど、誰も気にしていない。

「カワイソウ……」

 追撃する紫明王。

「甘いデス!」

 しかし、その場に右手を突き、片手倒立と同時に、紫明王の胴体めがけて回転蹴りを放
つ実装バロン。なんつーアクロバティックな動き!
 その蹴りを水晶剣で受け止めつつも、重さを捌ききれずに横に倒される紫明王。連動し
ている紫電も横に倒れていた。

 再び民家が多数潰れて土煙が上がっている。
 夢なのに、罪悪感を覚えるのは何でだろ?

 右手逆立ちの実装バロンが、腕の力だけで跳び上がり、直立体勢に戻る。
 同じく跳ね起きた紫明王が、袈裟懸けに水晶剣を振り下ろす。その巨大さとは裏腹に、
凄まじい速度で動く実装バロンと紫明王。
 全く現実味無いな……って夢だけど。

 実装バロンの突き出した拳が、水晶剣と激突した。

 ギィイン!

 再び凄まじい轟音。砕けた金属の破片と水晶の破片が辺りに降り注ぐ
 実装バロンと紫明王が、お互いに後退し、民家数軒を踏み潰した。

 どうやら実力は互角っぽい。

「なかなかやるデッス……。チッ、こうなったら仕方ないデス……! これは正直使いた
くなかったデスが……。お前を倒すためなら、使うしかないデス!」

 実装バロンが背中からジェットを吹き出し、空高く飛び上がった。

 その直後、街の地面をぶち破り現れたのは、緑と赤の巨大な宇宙船だった。てか、色遣
いはかなり違うけど、こいつはアークグレン……!

「ナラ、コッチモ……トッテオキノ切リ札……」

 真夏の入道雲を切裂き、巨大な紫色の空中要塞が現れる。

「キスレブ総督府……ロニ・ファティマ、ニヨッテ発掘・改修サレタ強襲揚陸艦……」

 紫明王ともども、紫電が飛び上がった。

 あぁ、ゼノギアスか、懐かしい……。一回しか使えなかったんだよな、この超巨大変形
ギア。残念だったなぁ。もう少し活躍する場面が欲しかったなぁ。

 空中要塞が、その場で変形を始めた。豪快で重厚な金属音とともに両足が形成され、続
けて上半身と両腕が形成されていく。
 スリムというよりは非常にゴッツいデザイン。だが、それがいい!

「やってやるデス! 何度だってデエエエスウウウゥゥゥ!」

 下半身をドリルへと変化させた実装バロンが、実装カラーのアークグレンに突き刺さっ
た。赤と緑の螺旋がその機体を包み込み、元の構造を無視した変形を始める。
 ジェットエンジンから両腕が飛び出し、機体の前半分が両足となった。いつの間にか機
体上面に移動した実装バロンが飛び出した頭部に収納される。

 ほぼ同時に、両者の変形が終わった。
 爆音を響かせ、地面に着地する二体の超巨大ロボット。

「怒濤合体! アークグレンジッソー、デスゥ!」

 実装石の顔が頭と胸にある、割合スマートな超巨大ロボット。カラーリングは無論、緑
と赤と肌色だった。本来は銀色基調なんだが、実装石だから仕方ないか。

「超巨大ギア・ユグドラクリスタルⅣ……!」

 背中に潜水艦のような巨大戦艦を背負った、無骨な超巨大ロボット。本来のカラーリン
グは赤なんだけど、紫電が作ったせいか全体的に紫色である。

 双葉町、壊滅しているけど……いいよね、夢だから。

 座布団の上にあぐらをかいたまま、俺は他人事のように数キロサイズの超巨大ロボット
を眺めていた。設定によるとこの両者はアークの方が大きいんだけど、見た感じでかさは
同じ。そこら辺は俺の想像力すげー……のか?

「覚悟するデスゥ!」
「ソレハ、コッチノ台詞……」

 ゴォウン!

 アークグレンジッソー、ユグドラクリスタルⅣ。両者の突き出した拳が激突する。巻き
起こった凄まじい衝撃波が、潰れた街をなぎ払い、俺の家の残ったリビングと卓袱台とノ
ートパソコンを吹っ飛ばした。

 座布団と俺が無事なのは夢だからだろう。

 ユグドラクリスタルⅣの蹴りが、アークグレンジッソーを吹っ飛ばし、アークグレンジ
ッソーのアッパーがユグドラクリスタルⅣの超巨体を打ち上げる。

 足を一歩つくだけで地震のように地面が揺れ、拳を叩き付けるたびに爆音と衝撃波がま
き散らされる。巨体が倒れれば、震度7クラスの大揺れ。

 もはや、ここまで来ると災害だな。

 三回、四回と攻撃を叩き込んでから、両者間合いをとるように大きく後退する。

 既に街の面影はなく、そこには全てが砕け散った廃墟だけが残っていた。まあ、キロサ
イズのロボットがぶつかり合えば、こんなもんだろう。

「一気に決めるデス!」

 アークグレンジッソーが左腕を振り上げた。

 その腕から真上に伸びる巨大なドリル——
 ではなく、巨大なマラ……

 えええ……!

「アークグレンジッソー・マラドリル……」

 マラドリルが高速回転を始めた。

 ……キモい。

 一方、背中に装着されていた戦艦を、両手でライフルのように構えるユグドラクリスタ
ルⅣ。その先端にエネルギーが収束する。全エネルギーの九割を使う必殺技。

「ユグドラクリスタルカノン……」
「ブレイクデェェスゥゥゥ!」

 戦艦主砲から放たれた渦巻く薄紫色の閃光の奔流。全身を砕け散らせながらもアークグ
レンジッソーがその光の渦を突き進み、ユグドラクリスタルⅣの身体に風穴を開ける。だ
が、アークグレンジッソーもそれで限界だった。

 ふたつの超巨大ロボットが、爆音とともに砕け散る。
 無数の金属と水晶の破片が飛び散り、巨大なキノコ雲が天を衝く。

 相打ち——!

 ではない。

 爆炎と煙を突き破り現れる、実装バロンと紫明王。

「デッスゥゥゥ!」
「カワイソウ……!」

 紫明王の振り下ろした水晶剣が実装バロンを斜めに斬り捨て、実装バロンの突き出した
拳が、紫明王の巨体を砕く。

 再び相打ちとなった両者が、破片の中に消える。

 だが、飛び散る無数の金属と水晶から飛び出してくる、実装さんと人型紫電。

「三重の極みデェェェェス!」
「飛天御剣流・天翔龍閃!」

 実装さんの放った破壊の一撃が紫電の身体を粉砕し、紫電の繰り出した超神速の斬撃が
実装さんを斬り捨てる。

 水晶の破片を振り払い、飛び出してくる紫電。
 斬り捨てられた実装さんを脱ぎ捨て、飛び出してくる鼻炎実装石。

「マダ終ワラナイ!」
「これで終わりデスッ!」

 俺のいる位置からでも二匹の姿がはっきりと見えた。夢だからな、うん。

 鼻炎実装石が頭を突き出す。両方の鼻から垂れていた鼻水が、長さ六十センチほどの赤
と緑の円錐形ドリルを形成した。
 異議あり!

「実装インパクト……」

 ドドドッ!

 紫電の放った鞭のような数本の水晶ドリルが、実装石をぶち抜いた。
 それでも穴だらけの身体で、実装石が実装インパクトで紫電の身体を貫通する。

「カワィ……」
「デッ……」

 ついに相打ち……ッ!
 じゃないし!

 砕けた二匹の身体から飛び出してきたのは。

「テチィイイ!」
「カアイショゥ!」

 仔実装石と、仔薔薇実装だった。

 えええええッ!

「まさかここまで手こずるとは思わなかったテチ……。こうなったら、本当に最後の手段
を使わせてもらうテチ……! もうワタチの手札は無いテチィ」

 仔実装がどこからともなく取り出したのは、キノコだった。

 デフォルメされたキノコで、大きな笠は黄色で赤い丸がついている。柄には顔がついて
いた。スーパーキノコ……ではない。NEWスーパーマリオに出てくる巨大キノコだ。

 巨大キノコを丸呑みした仔実装。
 十数センチ程度の小さな身体が、爆発するように膨れあがる。

 再び地震のような揺れとともに、アークグレンジッソーサイズの超弩級実装石が現れた。
ただ、さっきみたいに人型ではなく、まんま無駄にでっかくなった実装石だ。単純に考え
ておよそ一万倍? 巨大化しすぎ!

「ワタチハ、マダ、戦エル……!」
「これで終わりデスウウウゥゥゥゥ!」

 巨大な腕が小さな水晶剣を構えた仔紫電を撃ち抜いた。

 砕け散るというレベルではない。十数センチのフィギュアサイズの身体に叩き付けられ
た、直径数百メートルの腕。圧倒的とも表現できない凄まじいまでの大質量に一撃され、
破片すら残らず消え去る。

「紫電ッ!」

 思わず声を上げた俺に。

 その声は聞こえてきた。

「マァダ……オヤユビ バラジッソウ ガ ノコッテルゼ……!」
「それはさすがに無理だろオオォォッ!」

 思わず全力でツッコむ俺。

 五センチにも満たない親指紫電が空中を飛びながら、超弩級実装石へと向かっていく。
無茶苦茶ちっちゃいけど、何故か見える。

 無論夢だからな。さすがマイドリーム、もう何でもアリだぜ!

「フッ、そのちっこい身体で何が出来るデッスゥゥ!」

 突進してくる親指紫電目がけて、超弩級実装石が右腕を引き絞る。

「オマモリ ガワリ ニ ハイシャク シテキタ…… ヤヌシサン ノ ドリル…… ツカワセテ…… モラウゼェェ……!」

 親指紫電が構えているのは金色の細長いドリルだった。

 それは確か、俺がいつだったかホームセンターで買ってきた、直径5mmのチタンコーテ
ィングドリル。木に穴開けるだけなのに、千円以上するチタンコーティングドリルを衝動
買いしてしまった、あの時の俺。紫電が興味深げにドリルを見ていた記憶があった。

 親指紫電が金色のドリルを右手に掴み、頭上に掲げる。

「コノ ドリル ハ…… ヤヌシサン ノ…… バラジッソウ ノ ……ジッソウセイブツ ノ ……」

 紫色の光がチタンコーティングドリルを包み込んでいた。紫電の金色の瞳に、紫色の渦
巻き模様が浮かんでいる。螺旋力覚醒かッ!

「イヤ コノ ワタシ ノ タマシイ ダ……! テメエ ゴトキ ニ……クイツクセル カ……!」

 親指紫電の右腕とドリルが一体化した。

「クラエ……!」

 そのドリルが巨大化する。
 三十センチほどの金色と紫色の円錐ドリルへと。

「クィーン シデン……」

 それが一メートルほどに巨大化。続けて十数メートルに。さらに数百メートルの超巨大
ドリルへと。いやいやいや、大きくなりすぎ!
 ここまでくると、親指紫電が巨大ドリルにくっついてるようなもんだ。
 さすがに不釣り合いすぎるぞ……。

「ギガ……ドリルゥ……」

 そして、突き出された超弩級実装石の右腕めがけ突進する。

「ブレイクゥゥゥ!」

 周囲に飛び散っていた、無数の紫色の水晶片——ユグドラクリスタルⅣ、紫縄天譴明王、
人型紫電、紫電、仔紫電の破片を螺旋状に身に纏いながら。

「ダイ シデンダン…… スペシャル……!」
「今度こそ消え去れデェェスゥゥゥ!」

 金色と紫色の超巨大水晶ドリルと、超弩級実装石の右腕が激突する。

「ッデエエェェスウァァアァァ!」

 右腕が砕けた。

 高速回転する超巨大水晶ドリルによって、先端から破壊されていく超弩級実装石の右腕。
親指紫電が腕を突き破り体内へと突入する。同時に螺旋を描いていた無数の水晶片がミサ
イルとなって弾けた。
 数キロはあるだろう胴体が、内部から爆砕される。

「このクソチビムラサキデギャアアアァァアァァァァ!」

 空気を振るわせる絶叫。

 親指紫電が、超巨大水晶ドリルで超弩級実装石の胴体を縦に引き裂き、さらに左足を粉
砕していく。辺りに飛び散る焦げた肉片。

 一度外に飛び出した親指紫電が、空中で方向転換し、左腕の先端から再び超弩級実装石
へと突入した。直径数百メートルの巨大な左腕を、豆腐のように粉砕しながら、肩を貫き、
首を貫き、頭部を縦に貫き、超弩級偽石へと突撃する。

 刹那——

「デッズアアアアァァァァ!」

 断末魔とともに、偽石を砕かれた超弩級実装石が爆ぜた。

 赤と緑の閃光を迸らせながら、大爆発を起こす。ひしゃげるように空気が震え、ふたつ
のキノコ雲を吹き散らし、衝撃波が地面を引き剥がしていく。どうやらこれでおしまいら
しい。双葉町、てか弐地浦市も壊滅するだろうけど、夢だから大丈夫だよね?

「ヘッ…… コレガ スイショウ ノ チカラ カヨ……。タイシタ モン ジャネーカ……」

 爆発の中に、親指紫電の姿がかき消えた。






「お!」

 俺は跳ね起きた。頭を押さえ、辺りを見やる。
 暗い部屋。いつもの寝室。枕元の時計を見ると、午前三時半だ。

 部屋の片隅に目を移す。
 段ボール箱の中でタオルにくるまった紫電が、音もなく眠っていた。

「うー。変な夢見たな……」

 ぼやいてから、再びベッドに寝転がり、俺は目を閉じた。






おまけ

俺
プロ作家の男。変な夢を見る。


紫電
居候薔薇実装。創作物を食べる突然変異種。
夢の中で大活躍するが、本人は静かに寝ている。


鼻炎実装石
かつて、家庭菜園を荒らそうとして紫電による水晶ギガドリルブレイクで粉砕された実装
石。夢の中で復活したものの、未だに鼻炎が治らず、鼻水を垂らしている。
赤と緑の鼻水でドリルを作り、実装インパクトとして相手を粉砕することが可能。


実装さん
鼻炎実装石が上半身パーツと下半身パーツを装着することによって変身した姿。見た目は
身長2mを越える普通の実装さんであるが、反射神経や俊敏さ、柔軟さ、膂力や頑丈なども
桁違い。どういう原理かは不明であるが、二重の極みを撃てる。

変身呪文は「デデスデスデスデデスデース」


人型紫電
紫電が真の力を発揮し、水晶を纏って人型に変身した姿。身長160cmほどの、人間と同じ
姿の少女。長い紫色の髪と黄色い瞳、眼帯や髪飾りなど紫電の名残を多く残している。紫
色のドレスと靴、手袋、紫水晶の胸甲冑、肩当て、右手に水晶剣と左手に水晶の盾を装備。
華奢な見た目に反し、凄まじい身体能力を持つ。
水晶剣は片手でも両手でも扱え、飛天御剣流の技などが使える。

変身呪文は「リリカル・クリスタル・キルゼムオール」


実装バロン
実装さんが胸から取り出した緑色の核鉄から変化したフルプレートアーマーの実装錬金。
身長57mの巨大ロボットで、実装さんは内部に搭乗している。顔は実装石を模しているも
のの、身体は金属の重甲冑。ただし、色遣いは実装石。全身が緑色で、手と足首だけが肌
色。全身甲冑だけあり、非常に頑丈。
巨大甲冑という見た目に反し、かなり俊敏でアクロバティックな動きが可能。


卍解・紫縄天譴明王
人型紫電の水晶剣の卍解によって召喚された、身長60mほどの巨大な鎧武者。その全身は
紫水晶によって構成されている。長さ40mにも及ぶ巨大な水晶剣を持つ。紫電の動きと連
動し、相手を攻撃する。名前が長いので、紫明王と略される。紫電自身も紫縄天譴明王の
動きと連動しているので、紫縄天譴明王が倒れたりすると紫電も倒れる模様。紫電の動き
をそのままトレースするので、非常に動きは速い。
紫電が内部に乗り込むことも可能らしい。


アークグレンジッソー
双葉町の地面をぶち破って現れた実装カラーのアークグレンに、実装バロンが合体し、人
型に変形した全長約4kmの超巨大ロボット。カラーリングは緑と赤と肌色で、頭と胸の顔
は実装石。割合スマートな体型をしている。

必殺技は左手から伸ばした巨大マラドリルで相手を粉砕する「アークグレンジッソー・マ
ラドリルブレイク」


ユグドラクリスタルⅣ
入道雲の中から現れた超巨大強襲揚陸艦が人型に変形した、全長約4kmの超巨大ロボット。
カラーリングは薄紫で元ネタよりもかなり大きい。体型は無骨でゴツイ。背中にはカノン
砲として使用可能な、戦艦ユグドラクリスタルⅢが合体している。人型紫電が乗り込んだ
紫縄天譴明王が操縦する模様。

必殺技は、ユグドラクリスタルⅢをライフルのように構え、全エネルギーの九割をビーム
砲として発射する「ユグドラクリスタルカノン」


仔実装石
数本の水晶ドリルで粉砕された鼻炎実装石から飛び出した、仔実装石。
何故か巨大キノコを持っている。


仔紫電
鼻炎実装石によって貫かれた紫電の中から現れた、仔薔薇実装サイズの紫電。小さな水晶
剣を構えて、超弩級実装石に挑むが一撃で粉々に砕かれる。


超弩級実装石
仔実装石が巨大キノコを食べて変化した、身長約4kmの実装石。実装石をそのまま1万倍の
大きさにしたような外見。外見は実装石であるが、あまりの巨体のため単純に殴るだけで
も圧倒的な破壊力を作り出す。
頭部にある偽石の大きさも超弩級。
パンチの一発で、仔紫電を粉砕した。


親指紫電
砕けた仔紫電の中から現れた、身長5cmにも満たない親指薔薇実装。
直径5mmチタンコーティングドリルを持っている。本人曰く、お守り代わりに家主さんか
ら拝借した。右腕と同化したドリルを超巨大化させた、全長400mにもおよぶ紫と金色の円
錐形ドリルと、辺りに飛び散った無数の水晶片を螺旋状に纏った「クイーンシデン・ギガ
ドリルブレイク・大シデン団スペシャル」によって、超弩級実装石を破壊、最後に超弩級
偽石を砕き、その爆発に呑まれて消える。


5.0mmチタンコーティングドリル
高速度綱のドリルに窒化チタンをコーティングしたもの。全長約12cm。滑り特性、耐熱性
に優れ、焼付きや摩耗などに強くなり、通常のドリルよりも長い寿命を持つ。
値段は1000〜1500円。同形の鉄工用高速度鋼ドリルは約500円、木工用ドリルは約600円。
あくまでも金属に穴を開けるためのドリルであり、木に穴を開けるのにチタンコーティン
グドリルを買う必要は無い。
紫電の右腕と一体化し、紫と金色の巨大ドリルへと変化する。


あとがき
正月の朝に書いたものは、いまひとつ勢いが足りなかったので書き直してみましたが、何
か予想以上にカオスな方向に吹っ飛んでしまいました。
でも、後悔も反省もしていません。
以前書いたものは消してしまおうと思いましたが、一応残しておきます。

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