『 ン……。 』 眩しい……目を開くと仕事場の見慣れぬ天井。 私は来客用のソファに横たわり、身体には上から毛布がかけられてあった。 『 っと…。 』 首を動かし、窓を見ると雲間から光が差していた。 雨音は無い。 夜にあれだけ激しく降っていた雨も明け方には止んでしまったらしい。 壁にかけられた時計を見ると、既に出勤時間は過ぎていた。 しかし今日は休みであり、急ぐ必要は無い。 けれども自分はまだ仕事が残っている……早く済ませないと…。 『 ふぅ…… 』 一度は起き上がろうとしたが、まだ眠気が残っていた。 昨晩で一気に疲れが出たらしく、身体が満足に動いてくれない。 少しだけ…あと少しだけ休んだら仕事を再開しよう。 今日は早めに仕事を終わらせよう。 そして皆と一緒に、美味しい物でも食べて気晴らしをしよう。 皆…? その時、事務所には私以外誰も居なかった。 まだ醒めきってない頭を抑えつつ、ソファから上半身を起こした。 社員も実装石達も誰も居ない。 物音を立てているのは私の横たわったソファの近くのストーブのみ。 どうしたのだろう……そう呆けていると、入り口のノブが回りドアが開いた。 『 おはようございます……あ、あれ…? 』 『 あぁ… 』 「 …… 」 入ってきたのは新社長と実装石達だった。 新社長とサトとセキを先頭に、タロとジロ、実装石と獣装石達が入ってくる。 けれども不思議なことに、皆無言で表情が重かった。 私の挨拶にも反応を見せず……私が腰を降ろしているソファの元へ集まってきた。 『 ……ど、どうしたんです、みんな…。 』 全員、暗く思いつめた表情を浮かべていた。 『 あ……みんな、服が濡れてますよ?風邪を引いてしまいますから、早く乾かさないと……。 そうだ、後で温かい物でも作って皆で一緒に食べましょうか? 』 しかし何も答えてくれない。 その代わりに新社長が給湯室へ行き、コップに水を汲んできた。 『 まずは疲れただろ? さっき家に行って薬を取ってきたんだ…まずは飲んでゆっくりしてくれ 』 『 は、はい… 』 私は勧められるままに新社長からコップを受け取り、紙に包まれた粉薬を喉に流し込んだ。 「 ……事務員サン 」 飲み終えて数秒後、最初に顔を上げ、言葉を切り出したのはサトさんだった。 『 は……はい? 』 「 ……今まで事務員サンには、本当にお世話になったデス 」 サトさんが頭を下げると、合わせて実装石達も私に頭を下げた。 『 ……な…なんの事です? 』 「 今日限りで……事務員サンとはお別れデス… 」 『 え……。 』 「 事務員サン、今まで本当にありがとうデス…… ここに居ない実装石も獣装石、みんなに代わってお礼を言うデス… 」 「 ありがとうデス… 」 「 本当にありがとうデス 」 再び実装石達も私に向かって深々と頭を下げた。 『 ちょ……ちょっと待ってください! みんな一体、何を言い出すんですか!? 』 「 …… 」 『 社長もです!一体、どういうことなんです!? 』 『 それは、だな… 』 「 ワタシ達は…あの方に付いていくと決めたデス 」 『 ……あの方? 』 「 あの方は……この世界を壊すと決めたデス この間違った世界を正しくすると決めたのデス… 」 『 サ、サトさん…! 』 思い余って私はサトさんの肩を掴んだ。 『 な、何を言ってるか分かってるんですか…! 』 「 …… 」 『 他のみんなも…一体どうしたんです!? 』 しかし私の問いに誰も答えてくれようとはしない。 やはり無言の拒絶のみが続いた。 『 姉ちゃんがさ…。 』 話を切り出したのは新社長だった。 『 …会社の台所事情が厳しいってのに、俺から奪った貯金、手を付けてなかったよ。 』 『 貯金…です? 』 『 楽園杯でさ、大穴当てた時のヤツだよ。 あの時の姉ちゃんさ、俺の結婚資金にするとか言ってネコババしたと思ったのに… せめて会社が厳しいなら、使ってくれれば良かったのによ…。 』 新社長が拳を握り締め、泣きそうな擦れた声を発し続ける。 『 あれはコイツらに渡すことにしたよ。 』 『 お金を? 』 『 あぁ、それで俺もコイツらと一緒に行くことにする。 何をするにしても、金と人間の協力者ってのは必要だしな…。 』 『 みんな、何……を… 』 僅かだが睡眠は取ったばかりの筈なのに、なぜか再び睡魔が襲ってきた。 「 その今までのお礼に……事務員サンにはこれを渡すデス 」 それは一枚の地図。 かなりの広域を記した地図がサトさんの手に握られていた。 『 こ、これが一体どうしたのです? 』 私はその地図を受け取り、間近で眺めてみた。 それは隣の県の地図で……海岸から離れた場所に赤い丸が打ってあるのが見えた。 「 事務員サンや他の社員サン達は、その島へ逃げて欲しいデス 」 『 逃げる…? 』 「 この会社を直ぐに整理して、他の人達と一緒にその島へ移住して欲しいデス そして、そこで暮らして欲しいデス… 」 『 な、なぜその島へ……行かなくては……ならないのですか…? 』 瞼が重く……話をするのが辛くなってきた。 「 それは……その島以外に、ニンゲンの住める場所は無くなるからデス 」 『 え… 』 「 これから世界はゆっくりと壊れていくデス 誰も気付かれないくらい、ゆっくりと少しづつ壊れていくデス そして何時しか完全に壊れ切った時、ニンゲンの住める場所は無くなるデス その島以外の何処へ逃げても、ニンゲンは生きていける場所は無いデス 」 『 だからさ、アンタには社長として最後の命令をするよ 』 そこで新社長が書類を近くのテーブルに置いた。 『 これから社の整理をして、社員の皆に十分な手当てを払ってやって欲しい まだ、それくらいの資金は残っているからな それで時期を見計らって全員に島のことを伝えてやってくれ そして、社員の皆が島で暮らしていけるよう手配して欲しいんだ 』 『 そ、そんな……勝手…です……! 』 抗議しようとも、身体が満足に動いてくれない。 「 ワタシはニンゲンが嫌いデス…! 」 そんな私を見ながら、サトさんが再び口を開いた。 「 ワタシはニンゲンが…ニンゲンの作った社会と世界が大嫌いデス!」 サトさんは泣いていた。 そういえば社長が亡くなって以来、一度も泣いたのを見てないのに今更だが気付いた。 泣きながらサトさんは恨みを、怒りを、悲しみを始めて表に出した。 「 嫌いで嫌いで堪らないデス! 全てを壊してこの世から無くしたい大嫌いデス!! けど、そんなにニンゲンが嫌いで……本当に大嫌いデスけど……! 」 今まで溜まりに溜まっていた思いを吐き出したのだろう。 ひとしきり吐き出すとサトさんは顔を上げた。 しかしその表情も涙混じりだけど……その時は怒りとは無縁の澄み切った笑顔だった。 「 デスけど……社長サンや事務員サン達だけは嫌いになれないデス… 」 再びサトさんが頭を私に下げた それに習ってセキさんや他の実装石達や獣装石達も私に頭を下げた。 「 ありがとうデス…! 」 「 今まで本当にお世話になったデス…! 」 「 事務員サンのことは忘れないデス…! 」 皆、泣きながら私に何度も何度も私に頭を下げた。 涙で顔をボロボロにしながら、いつまでも私に頭を下げ続けていた。 『 そ…そんな……みんな…私を置いて…行くんですか…!? 』 動かない身体を動かし、皆に手を伸ばした。 『 私ばかり…私…ばかり……1人で……! 』 目が霞んで、もう意識が続かない。 手は伸ばそうとも決して届かず……みんなの立っている場所が異様に遠く感じた。 「 何もかも忘れて欲しいデス… 」 薄れ行く意識の中、サトさんが私の手を取り…言葉を紡いだ 「 何もかも忘れて……あの島で静かに暮らして欲しいデス… そして何時までも……何時までも幸せに………デス… 」 サトさんの手の感触と願いの言葉 それを最後に私の意識は途切れてしまった 「 ほら、早くするデス 」 「 ねむいテチュ… 」 「 早くしないとニンゲンが起きてくるデス! 」 まだ日の昇りきらぬ早朝。 1匹の親実装が、仔実装を急かしながら道を急いでいた。 新聞配達が時々通るほどの時間帯のためか、辺りに人の気配は無い。 「 ママ、疲れたテチュ… 」 「 何を言ってるデス! 」 仔実装は道の真ん中で座り込んでしまった。 『 あの……少しよろしいですか? 』 「 デェ…!? 」 声を聞いて驚いた親実装は、直ぐに仔実装を背中に隠した。 『 あ、驚かないでください、何も危害は加えませんから… 』 「 デェ……本当、デス? 」 『 はい、少しお聞きしたいことがあるだけですから 』 私の言葉に、親実装は疑わしげにしている。 「 ワ、ワタシに何を聞きたいデス? 」 『 それなのですが……あなた達はどこへ向かっているんです? 』 「 そ、それは… 」 『 何です……いったい先に何があるというのです? 』 「 ……楽園デス 」 再び歩き始めた親仔実装の横に続きながら、教えてくれた。 3日前、自分達の住んでいた公園に獣装石が1匹現れて、住んでいた者達に告げた。 〈 みんなを楽園に連れていくデス!! 〉 獣装石は、自分達を助けてくれる実装石が現れたと伝えた。 その実装石は、全ての実装石を救ってくれる。 餓えも寒さも人間からの駆除や虐待からさえも救ってくれると伝えた。 「 ワタシも最初は信じてなかったデス 」 しかし、公園にも他のコミュニティから噂は入ってくる。 とあるコミュニティは総出で会いに行き、結局1匹も帰ってくることはなかった。 罠を警戒していた個体も少なくなかったが、1匹も戻ってこなかった。 「 罠だとしたら、1匹くらい生きて戻ってもおかしくないデス 」 親実装は私に対して警戒が解けてきたのか、口調が軽くなってきた。 「 もしかしたら……本当に楽園に行けるかもしれないデス 」 最近は食料事情も悪くなり、人間の駆除や虐待派が勢いづいてきた。 今の公園も何時まで居られるか分からない……だから自分達も賭けることにした。 「 獣装石は、あの山の頂上にいる実装石が助けてくれると言ったデス! 」 親実装が指差した先に、霧もやのかかった山が見えた。 『 なら、早く行きましょうか。私がその仔を持ってあげますよ? 』 「 あ、ありがとうデス! 」 皆と別れてから二ヶ月。 私は会社の閉鎖後、その事後処理に追われていた。 新社長が行方を眩ましたが書置きで全て私に任せるよう指示してあり、社員達は従ってくれた。 当面の手当てと再就職先、会社の資産の処分をおこない、同時に皆を探した。 山は既にもぬけの空であり、一匹も姿を見せなかった。 新社長の足取りも掴めず、今は何をしているのか検討もつかない。 そうして諦めかけていた時、風の噂で聞いた。 最近、公園の実装石が朝になると一斉に居なくなっていたと。 夜明け前に、どこかへ一斉に移動を始めていたと。 その後には1匹も残らないと。 事後処理をほぼ終えた後、私はみんなを追った。 実装石達が行く先に、あの子達がいると私の勘が告げていた。 そして今日、ようやくその実装石と幸運にも会うことができた。 『 この山にですか… 』 山の入り口に辿り着いた。 ここまで来ると、付近から集まってきたらしい実装石達も続々と山へ登っていくのが見える。 汚れた者、仔を連れた者、身体に傷を追っている者…全てが頂上へ向かって登っていく 「 まだ行くデス? 」 『 はい、私は会わなくてはならないんです 』 親実装に仔を返すと、私も一緒に登った。 何も舗装されていない獣道を登っていく無数の実装石と私が1人。 しかし中腹にかかった時、私の前に獣装石が5匹、茂みの中から飛び出してきた。 「 そこまでデス! 」 獣装石が5匹、私の前に立ちはだかった。 「 ここは私有地デス!ニンゲンはさっさと立ち去るデス!! 」 『 あ…… 』 私はその先頭に立つ獣装石に見覚えが有った。 あの肩に付けられている青いリボンは、まさしく…… 『 ミチさん……ですか? 』 「 デ…ェ? 」 回りの4匹が先頭の獣装石の顔を見た。 「 ……じ、事務員サン…デス? 」 『 久しぶりですね、ミチさん……ということは他の皆も、この山にいるんですね? 』 鬱蒼と茂る木が視界を遮って頂上は見えない。 しかしミチさんがここにいる以上、あの場所に皆がいるのは間違いなかった。 「 …引き返して欲しいデス 」 『 え… 』 「 さっさと引き返すデス!! 」 ミチさんは今まで聞いたこともないような厳しい口調で私をまくしたてた。 「 これ以上進んだら、たとえ事務員サンでも生きて帰れないデス! 」 『 な… 』 「 ここから先は、ニンゲンの立ち入る世界じゃないデス!! 」 ミチさんは全く私を通すつもりは無かった。 他の4匹の獣装石と共に、私の行き先を完全に遮っていた。 『 …それでも私は行きます! 』 「 事務員サン… 」 『 私が…私が今まで、どんな想いをして探したてきたと思います!? 』 勝手にお別れを告げられ、勝手に居なくなってしまった。 他の社員達は慰めてくれたし、残された事後処理が悲しみを和らげてくれた。 けれども皆もことは決して忘れられなかった。 そして社長から最期に頼まれた以上、このまま別れるなんてできる筈がなかった。 『 ……通りますね 』 私はミチさんの横を通り過ぎ、再び山頂を目指して登る。 「 分かったデス 」 通り過ぎた背後からミチさんが声をかけてきた。 「 …それではワタシが案内するデス 」 「 ミチ!勝手にそんなことをして良いのデスか! 」 「 命令と違うデス! 」 「 この事務員サンは特別デス……もしもの時はワタシが責任を取るデス 」 『 ミチさん…ありがとうございます 』 「 …しかし事務員サンは来ない方が良かったデス 」 『 な、なぜです? 』 「 他の者達は事務員サンのことを忘れているかもしれないからデス… 」 『 どうして…どうして忘れるのですか? 』 「 分からないデス、分からないデスけど…… ワタシもさっき事務員サンに会った時、すぐに思い出すことができなかったデス… 」 ミチの言葉の意味が分からなかったけれども山頂へ。 山を登り切る頃には、東の空から完全に日が昇り、完全に夜が明けていた。 「 寒いデス! 」 「 お腹が空いたデスゥ〜! 」 「 早く何とかするデスゥ! 」 山頂は広場になり、そこには何百という実装石が集まっていた。 しかし集められた実装石達は、何も貰えないことに腹を立てているようだった。 「 早く食べ物を寄越せデス! 」 「 何でもいいから食べさせて欲しいデス! 」 広場の近くの木陰から私はずっと見ていた。 『 何をしようというんですか… 』 こんなに餓えて疲れきった実装石達を集めて、どうしようというのだろう。 時間と共に不満は蓄積され、実装石達の不平の声が大きくなっていく。 「 …あの方が来られたデス 」 『 え、誰がですか? 』 ミチさんが広場の方へ指を差した。 その指を差した先は、小高い丘になっており……広場を見下ろせる高さになっていた。 丘の中心付近に1匹の個体が姿を現す。 [ 左列・文官筆頭 " サハク " ] サト 続き、その左側に類稀な知能を有する実装石達が整列した [ 左列・文官幹部実装 ] タロ ジロ コタロ コジロ メイ … ( 第一期総数 16 ) そして丘の中心、サトの右側に1匹の個体が姿を現す [ 右列・武官筆頭 " ウセキ " ] セキ 続き、その右側に鍛え抜かれた精鋭の獣装石達が整列した [ 右列・武官指揮獣装 ] ホウ テン チィ ショウ … ( 第一期総数 15 ) 初代 " サハク "と初代 " ウセキ "が静かに膝をついた 他の左列と右列の個体達は一歩下がり、2匹を見習って恭しく膝をつく 広場に集まった実装石達も、事務員も見た 丘の上に整列した者達の中心 " サハク "と " ウセキ "の間に1匹の仔実装が姿を現したのを 風が吹き 木の葉が舞った 雲が流れ 小鳥が飛んでいく 『 ……え? 』 私は時間が止まったのかと錯覚してしまった。 「 … 」 「 … 」 「 … 」 広場に集まった何百という実装石達の動きが一斉に止まってしまった。 先まで、あれだけ騒がしかったのに今は静まり返っている。 実装石どころか仔実装まで一言も発せず立ち尽くしていた。 その全ての実装石は丘の上の仔実装だけを見ていた。 『 何が……何が起こったというのです…? 』 私だけ時が動いているようだった。 辺りを見回し、他に動いている実装石がいないか探したが見つからない。 しかし実装石達は相変わらず仔実装だけを見ている。 まるで何かに聞き入っているように 『 …まさか! 』 私はポケットから携帯電話を取り出す。 その携帯電話の翻訳用実装リンガルを起動して画面を見つめた。 ( モウ 何モ 恐レル事ハ 無イデス ) 液晶画面に言葉が表示された。 『 こ、これって……! 』 続いて丘の方を、広場の方を見るが全く声は聞こえていない。 ( オマエ達ハ コレカラ救ワレ 幸セナ世界ヘ 辿リ着クデス ) けれどもリンガルは音声を拾い、液晶画面に翻訳結果を映し出している。 そして丘の上の仔実装は片手を上げた。 ( 幸セナ世界へ ワタシガ 案内スルデス ) 更にもう片手を上げた。 『 そ、そんな…! 』 その仔実装は両手に5本の指を持っていた。 見間違える筈がない……まさしく、コミドリと名付けられた仔実装だった。 ( オ前達ヲ導ク ワタシの名ハ ミドリ デス ! ) 束の間の沈黙 その静寂を破ったのは広場にいた1匹の実装石だった 「 ミドリ……サマ? 」 その言葉を聞いた他の者達が、一斉に何かを認識した。 「 ミドリサマ… 」 「 ミドリ、サマ 」 「 ミドリサマ…… 」 なぜか全ての個体が、初めて目にする仔実装に敬称をつけていた。 そして個々の呟きは時が経つに連れて協調していく。 最初はバラバラな口調も、徐々に統制をされはじめていった。 「 ミドリサマ! 」 「 ミドリサマ! 」 「 ミドリサマ! 」 何時しか、広場の実装石達全ては歓声を上げて連呼していた。 烏合の衆でしかなかった野良実装達が、誰からともなく完全に統制されていた。 『 あ、あれは… 』 広場の中の1匹に見覚えがあった。 あれは、私をこの山へ案内してくれた親実装だ。 「 ミドリサマ!ミドリサマ!ミドリサマ! 」 その仔は親実装の足元に……他の成体実装石からにも踏まれ、下半身を失っていた。 しかし下半身を失いながらも、その目はコミドリを見ていた。 「 ミドリチャマ!ミドリチャマ!ミドリチャマ!! 」 既に親は仔を、仔は親を忘れていた。 全ての実装石は、丘の上の仔実装しか目に入らなかった。 そう、全ての実装石は救われたのだ。 餓えも寒さも、人間の恐怖からも、全ての苦しみから解放されていた。 視線の先にある仔実装以外に何も見えなかったのだから。 「 これから、この実装石達は散らばっていくデス 」 熱狂的にミドリサマの名を叫び続ける実装石達を見ながら続けた。 「 色々な場所へ行き、たくさんの実装石にミドリサマの名を伝えるデス 」 『 名前を伝える? 』 「 名前を聞いた実装石達も、同じようにミドリサマを崇めるようになるデス 」 『 なぜ、そんなことを… 』 「 そしてミドリサマの名前を聞かされた実装石達も、他の実装石達に名前を伝え… 更にたくさんの実装石達にミドリサマの名前が広まっていくデス 」 連呼する勢いは落ち着く気配が無い。 「 ミドリサマの名前は、波となって遠くへ……遠くへ広がっていくデス 」 1匹が10匹の実装石に伝え、10匹が100匹の実装石に伝える。 更にその数は増して名前を知る者は多くなり……世界の隅々にまで広がっていく。 「 そして世界中にミドリサマの名前が伝わる前に…… そうなる前に事務員サンは安全な場所に逃げて欲しいデス だから、早く山を降りて… 」 『 …嫌です! 』 私は木陰から広場に出た。 このまま他の皆と別れてしまうなんて堪えられなかった。 せめて、もう一度くらい話をしたいと思った。 そして熱狂する実装石達の近くにまで来て、丘の上から見える位置に立った。 『 みんな…! 』 手を振って、私の存在を知らせた。 「 ………? 」 その振っている手に、サトさんが気付いて此方を向いてくれた。 『 はは… 』 「 ……… 」 『 ……え 』 けれども一瞥しただけで、直ぐに視線を元へ戻した。 表情を全く動かすことなく、二度と私の方へ振り向いてくれることはなかった。 「 …気が済んだデス? 」 背後からミチさんが声をかけてきた。 『 ミチさん…… 』 「 ワタシ達は少しづつ昔のことを忘れているデス 」 『 忘れている? 』 「 あのミドリサマの傍にいると、少しづつ今までの事を忘れてしまうデス… もうサト達は事務員サンを殆んど覚えてないかもしれないデス 」 『 覚えて…ない? 』 「 そうデス……それにワタシ達は昔のことを全て忘れると決めたデス… 」 言葉が出なかった。 今まで積み上げてきた物が崩れていったような…激しい喪失感に襲われた。 「 ワタシは今から巡回してくるデス 」 呆然とする私に、ミチさんは身を翻した。 「 そして巡回して、ここに戻ってくるまでに……事務員サンには山を降りて欲しいデス 」 そして背を向けると歩き出し、言葉を残した。 「 山を降りたら事務員サンも全てを忘れて欲しいデス… そしてあの島へ行って、いつまでも静かに…… 何もかも忘れて、静かに…幸せに暮らして欲しいデスゥ… 」 ミチさんの姿が、実装石の群集の中に消えた。 残されたのは熱狂的な実装石の群集、呆然とする私。 もう今の私からは何も言葉が出なかった。 それから先はよく覚えてない。 虚ろな目で山道を降りていただろう。 空が、木が、全てが色あせて見えたのだから。 『 ……っ! 』 足を取られ、山道に転倒してしまった。 膝と肘に激しい痛み。簡単には立ち上がることができない。 けれども、私に手を差し伸べてくれる者はいない。 私の周りには、もう誰も居ないのだから。 『 はは……は… 』 もう乾いた笑いしか出なかった。 なぜなら私は全てを失ってしまった。 最も信頼していた人間に裏切られ 最も心を通わせていた実装石達に見捨てられたのだから 痛みに耐えて立ち上がり、再び山を降り始めた その何もかも失い、茫然自失としていた私の背後で 実装石達の激しい歓声が、天まで響いた " ニンゲンに死を! " " ミドリサマに栄光を!! " " 我ら実装石に永遠の楽園を!!! " < 楽園崩壊 了 > エピローグ 足 音 ( 36ヵ月後 ) 冷たい風が頬を刺す。 透き通るような青い空に、真っ白な雲が流れていく。 落ち葉が風に巻き上げられ、螺旋となって吹き飛んでいった。 『 ……久しぶりですね 』 目の前には既に閉鎖されて久しい社屋。 窓にはカーテンが閉められ、扉には頑丈な南京錠がかかっている。 もう誰にも使われずに久しく一部が朽ち始めていた。 最後に実装石達と別れてから私は、暫く何もせず日々を過ごした。 回りから全ての人や実装石達が去った後、残された私には何もする気力が起きなかった。 しかし数ヵ月後、気晴らしに教えられた島の下見へと向かった。 それで島の学校で教職員が不足しているのを知ると、教員免許を取ることにした。 今では私も学校の教員となり、多くの生徒達に囲まれて暮らしている。 それはそれで楽しい…けれども過去を忘れ去ることはできなかった。 休みの合間に私はこの場所へ訪れ、懐かしい建物を見て昔を思い出していた。 『 これが見納めかもしれませんか… 』 あれから約3年。 社会は目立たない部分から崩壊の兆しを伺わせる。 交通、通信、流通を始めとするインフラレーションの低下は著しい。 社会の基盤が揺らぎ始めた事に対し、警鐘を鳴らしている人達は少なからずいた。 しかし人々は人命に直接何も被害を受けていないせいか、非常に楽観的だ。 明日もまた今日と同じ日が続くと信じきっている。 電車が途中で停まり、テレビが映らず、電話も繋がらず… そんな日々に慣れ、そして原因究明の糸口さえ掴めない日常。 なのに人々は現実の問題から目を逸らして娯楽と快楽のみを求める。 もう、2度と此処へ来ることは無いだろう……何となく、そう感じた。 『 ……本当に潰れてるな。 』 「 デスゥ… 」 ……? 声のする方を振り向いた。 社屋の近くで、1人の男性と1匹の実装石が私と同じ方向を向いていた。 『 この土建会社がそうだったらしいが…折角、休みを貰ってきたのに無駄骨だったな。 』 「 …… 」 男の人は頭を掻き分けて溜息をついていた。 実装石の方は、肩を落として残念そうに呟いている。 『 あの……此方へ何か御用でしたか? 』 私は気になり、歩み近寄ると背後から声をかけた。 『 えっと、その……そういう貴女は? 』 『 これは失礼しました……私、この会社へ以前まで勤めていたんです。 』 『 え、そうだったんですか!? 実は私、一つ面白い噂を聞いてやってきたんですよ。 』 『 噂といいますと…? 』 『 はい、この辺りに頭の良い実装石達が集まっていると聞いて… 』 この人は実装石に関わる仕事をしているらしかった。 それで職業柄、噂に聞いた実装石達に興味を抱いてこの場所へ出向いてきたらしい。 『 そうですか……しかし残念ですが、もうここには誰もいません… 』 社屋を見上げ、私は輝いていた日々を思い出す。 あの時は確かに輝いていた。 社長と社員達、実装石と獣装石達に囲まれ、幸せな日々を送っていたと懐かしく思う。 『 その実装石達は、どこへ行ったんです? 』 『 さぁ……分かりませんが、遠い場所へ行ったと思います。 』 社屋の上には紺碧の空が広がる。 『 私達の手には届かない……遠くへ…です。 』 このどこまでも続く青い空の下、どこかであの子達は生きているのだろう。 そして同じ空を見上げ、何を思うのだろう。 その心の片隅には、ここで暮らしていた思い出など微塵も残っていないのだろうか…? 「 デス…? 」 『 …どうかしましたか? 』 連れの実装石が私の服を引っ張って呼びかけている。 『 へぇ……そいつが人間に懐くなんて珍しいですね 』 『 はは、どうしたんです一体……あ…あれ…? 』 今まで何匹も実装石を見てきた私だが、この実装石は普通の個体とは何かが違う気がした。 外見は普通の実装石なのに……どこかが違っていた。 『 この子はなんて名前なんです? 』 『 あぁ、それはですね……俺はそいつの事を73番って、一応呼んでます 』 『 73番? 』 『 此方にも色々と事情が有りましてね……そうだ、折角だから貴女が名前をつけてくれませんか? 』 『 え、私がですか? 』 『 はい、73番というのは仮の名前でして、そろそろ立派な名前をつけたかったんですよ 』 『 なるほど……そうだったのですか… 』 「 名前デス? 」 実装石はそんな私達の会話を聞きながら首を傾げていた。 それで私は背を屈めると、実装石と同じ高さの視線になって手を取り… 『 …この子は今まで73番と呼ばれて来たんですね? 』 『 はい、お恥ずかしながら 』 『 では折角ですから、その番号をヒントにして名前をつけましょう 』 私は、その実装石の手を取りつつ、向かい合って微笑みかけた。 「 デ…? 」 『 あなたの新しい名前は…… 』 < 付 記 > ●主要実装石説明 ここでは本誌に登場する実装石及び獣装石を5項目6段階にて評価、概説を以下に示す 魅力 : 回りの個体を惹きつける力 知性 : 知能の高さの度合い 体力 : 体躯、肉体的戦闘力 統率力 : 集団を統べる能力 対人 : 対人感情。人間全体に対する嫌悪感の度合い 6段階( S,A,B,C,D,E で評価 ) 高 ← → 低 ○ " 第一期左列幹部実装 " 魅力:C 知性:A 体力:C〜D 統率力:D 対人:A 概説 『 楽園崩壊 』より登場。 付近の高い知能を有する実装石達からミドリに託された12匹の仔実装達。 自分達の運命を受け入れ、明日をも知れぬ親実装達であったが、仔の明日だけは諦められなかった。 苦慮の末、特に選りすぐられた仔実装達。 産まれ持った素質と、親実装達の期待に応える使命感、そしてサト達の指導によって能力が見事に開花。 期待に応える筈の親実装達惨殺、大恩有る女社長とミドリの死によって産まれた人間への激しい憎悪。 以降、左列(文官の意。対して右列は武官を示す)第一期幹部として参加。 開花した手腕を存分に奮い、並行して更に素質を見出された仔実装達を指導。 以後、第二期左列幹部実装育成に当たり、最終的には400万を越える知識階層の形成に繋がる。 ○ ミチ 魅力:C 知性:B 体力:A 統率力:B 対人:D 概説 『 楽園崩壊 』より登場。 セキによって7番目の指揮獣装に任命された獣装石。 事務員が最後に山へ登った時、その前に立って制した指揮獣装である。 山の警護を任されていたのは幸運にも事務員に好意を持っていた指揮獣装のミチだった。 でなければたとえ事務員とはいえ、無事に帰されることは無かったであろう。 この獣装石は、やはりホウによって集められた多くの個体のうちの一匹である。 この『 楽園崩壊 』以後、その手腕を認められ指揮獣装に任命される。 実は以前より、この獣装石は人間との平穏な生活を夢に見ていた。 他の仲間に打ち明けはしないものの、とある人間に飼われることを望んでいたのだ。 その渇望する飼い主こそ常に優しかった事務員。 時々訪れる仕事場で、いつも笑顔を絶やさない彼女を遠く離れた場所から眺めていた。 この指揮獣装は事務員の飼い獣装としての生活を、密かに夢見ていたのだ。 そして他の個体と同じく、事務員にだけは憎悪を抱けなかった。 そのような経緯があってか、決起後はサトが少数の人間達に用意した特別区" 楽園 "の監視を志願。 海の向こう 見えない島から最も近い岸辺 この指揮獣装は事務員の面影を追い続ける生涯を選択した ○ コタロ ( 解説 二回目 ) 魅力:C 知性:S 体力:B 統率力:B 対人:B 概説 ミドリとは三代に渡る付き合いを持つ家系の実装石 言動は最悪だが、サトに次ぐ知能の持ち主として一目置かれる存在である。 元々、人間に対して良い感情は持っていなかった。 そのため本物語で、今まで人間に対して溜まっていた感情が一気に表面化した。 他のどんな犠牲に耐えることができても、ミドリと女社長の死だけは許すことができなかったのだ。 よって以降はサトの片腕として、その才能を存分に発揮する。 現社会の完全破壊と、全人類の殲滅。 数年後は人間に対する憎悪と現社会破壊の功績から次代" サハク "と噂される。 しかし物語終盤にて、この個体は投獄される。 サトとセキを除いて最高位に辿りついたコタロも、反逆者の烙印を押される。 薄暗い牢獄の中で処刑を待つ身。 だがコタロは決して非を認めず、自らの正当性を主張する。 この個体は自らの生命を投げ捨てでも、最後まで仲間達の非道を嗜めようとする。 その脳裏に浮かぶのは一枚の旗 強大な逆風をを受けても堂々とたなびく 懐かしき一枚の旗だった ○ メイ ( 解説 二回目 ) 魅力:C 知性:A+ 体力:D 統率力:D 対人:B 概説 サトと同じ研究施設出身の実装石。 特に記憶力に秀でており、本物語以降はサトの補佐を任せられる。 心を許した数少ない人間である女社長の悲劇によって、元々内気だったこの個体も積極的に加担する。 次回以降、この個体は多くの実装石を外界へ送り出す手筈を整える。 数多くの同属達が各地へと散らばり、布石がまた一つ積み上げられる。 それを見届け、帰途につこうとするメイは1匹の実装石を見かけた。 人間から番号で呼ばれる実装石に、 研究室では同じく番号で呼ばれていた昔の自分と重ねあわせた。 メイはこの実装石を人間から救い出し、自分達の仲間へ加わるよう勧めるが…。 ○ テン ( 解説 二回目 ) 魅力:B 知性:B 体力:S 統率力:A 対人:C 概説 恵まれた体格と冷静な判断力から模範的な指揮獣装に挙げられる個体。 前回からの駆除戦でも活躍し、数多くの獣装石を率いる能力を持った指揮獣装。 新しき司令獣装セキが最も頼りにする個体である。 この獣装石の人間に対する感情は比較的悪くは無い。 家族を人間に殺された経緯を辿っていないせいか、仲間達程嫌悪していない。 それでも人間と戦ってきたのは憎悪でなく、常に仲間のために戦いに身を投じてきたからだ。 物静かだが、仲間想いの強い獣装石。 しかしそのために、最も愚かな選択を取る個体となる。 自身の保身や栄光より、たった一匹の親友のために命を賭ける獣装石なのである。 物語終盤にて、親友に味方したテンは築き上げた地位と名誉の全てを失う。 最後まで付き従うのは傷だらけになった僅かな部下達。 援軍のあても無く圧倒的な討伐軍に包囲され、完全に退路を絶たれる。 最終攻勢3時間前 覚悟を決めたテンと親友の獣装石に 木々の枝の間から柔らかな陽の光が降り注ぐ ○ チィ ( 解説 二回目 ) 魅力:C 知性:C 体力:S+ 統率力:B 対人:A 概説 最古参でセキの片腕の指揮獣装の1匹。 類稀な体躯を誇り、数々の駆除戦を生き抜いてきた猛者である。 今回のミドリサマ決起に最も賛同する獣装石。 その動機は数多くの仔達と仲間達の、そしてたった一人だけ心から認めていた人間の死。 元々、人間に対して敵対心は強かったが、この事件により決定的となった。 人類社会に対する復讐と同属達による楽園の創造。 自分こそは最も人間を憎み、最も実装石を愛する獣装石であると自覚していた。 しかし数年後。 人間に代わり、実装石が地上を闊歩し始めた時代。 実装石支配体制が8割方確立された時期に、この巨躯の獣装石は反乱を起こす。 賛同し、従う部下は200に満たない。 その先にあるのは部下共々、例外の無い処刑。 勝ち目は万に一つも無い。 しかし獣装石達は絶望的な反抗と知りつつ、敢えて磐石の支配体制に戦いを挑む。 チィは必ずしも実装石の味方なのではない。 常に弱者の味方なのだ。 かつての飼い主と同じく。 ○ サト ( 解説 二回目 ) 魅力:B 知性:S+ 体力:C 統率力:A 対人:C 概説 左列筆頭となる白髪の実装石。 特別に称号を許された2匹の内の1匹。 遂に最後の1ピースを手に入れた五代目の個体である。 けれどもその代償は余りにも大きく、一片の喜びも無かった。 親や姉の死に涙を流し、同属達の救済を願う心優しかった仔実装は冷徹な実装石に変わった。 以降、人間世界への侵攻は、この白髪の実装石の立案に拠る。 自らが育て上げたコタロとコジロ、そして高い知能を有する実装石達。 数多くの才能を率い、サトは新世界創造の一歩を踏み出した。 物語終盤にて、400万を越える文官の長に。 初代" サハク "として実装石支配体制の頂点に君臨する。 ○ セキ ( 解説 二回目 ) 魅力:B 知性:B+ 体力:S 統率力:S+ 対人:C 概説 右列筆頭となる隻眼の獣装石。 特別に称号を許された2匹の内の1匹。 老獣装ホウが長い間待ち望んでいた、類稀な統率力を有する個体である。 決起後はホウと共に育てあげた指揮獣装達に命令を下し、現人間社会への侵攻を開始する。 ○ ミドリサマ 魅力:S+ 知性:A 体力:A 統率力:A 対人:S+ 概説 実装石意思集合体。 ただ一つの身体に無限の意思。 かつはコミドリと呼ばれた個体である。 本物語以降、配下の実装石と獣装石に命じ、人間社会転覆を謀る。 数年後には全世界の99%以上の個体を完全に掌握。 サトやセキを始めとする者達の旗頭として全人類の殲滅を実行する。 まさに青く白き馬に跨る存在 世界中に死を振り撒き 果てしなき地獄を創造する ○ " 名も無き獣装石 " 魅力:C 知性:B 体力:B 統率力:C 対人:C 概説 今回" 楽園崩壊 "登場個体で最後に解説するのは名も無き獣装石。 僅か一場面にだけ登場した個体である。 以後、この獣装石は自身の能力をセキ達に認められ、若き指揮獣装ショウの補佐役に任命される。 その後は各地を転戦し、人類相手に熾烈な戦いを繰り広げていく。 数々の戦いを経て成長し、ショウの幕僚獣装に任命される。 しかし最終話にて この獣装石はどの個体よりも早く本能で悟る 人間社会を滅ぼし 築き上げた実装石支配体制 誰もが地上の永遠の支配者になるのを疑わなかった だが 間も無く自分達は滅ぼされる 実装石は決して勝利者になれない事を 他の誰よりも早く悟ってしまう それに気付いた獣装石は 恐れ 慄き 狼狽し そして ●次回主要人物及び実装石説明 ここでは次回登場予定人物の概説、実装石及び獣装石を5項目6段階にて評価、概説を記す □ 速水 概説 元実装石ブローカーの実装石専門店店員。 それまで野良実装専門のブローカーをしながら日銭を稼いでいたが、 飼い実装の品質革命により廃業。 それ以降は知人の実装ショップにて働くことになった。 しかしその時、最後に捕獲した73番目の最高級仔実装を親元に帰し損ねてしまう。 以後、この男は通称"73番"との奇妙な共同生活を送る。 店員となり数ヵ月後。 品質革命と社会不安により飼い実装が社会に浸透した頃。 仕事で遠出した速水は、ふと何気ない噂を聞いた。 < 品質革命は、あの場所から始まった > < あの場所にはとてつもない個体が集まっている > とてつもない飼い実装の品質を実現したブリーダーがいるという。 興味を惹かれた速見はその場所へ。 しかし訪れた場所は既に空き家となっていた。 無駄骨を折ったと悟り、途方に暮れる速水と73番。 その時、一人と一匹の背後から声をかけたのは ○ ナミ 魅力:? 知性:? 体力:? 統率力:? 対人:? 概説 ミドリサマの呪縛に捕らわれない数少ない個体。 災厄が始まる数ヶ月前、取り壊し予定の社屋を見納めに訪れた事務員が出会った実装石。 智はサトに遠く及ばず、力はセキに遥かに及ばない。 能力的には一点を除いて極めて平凡な個体である。 しかし、この実装石こそは代弁者に加わらなかった個体。 実装石側の世界の安息な生活を拒み、 人間側の世界の凄惨な生活を選択した愚かな個体である。 事務員が最も過酷な運命を辿る人物とするなら、ナミは最も過酷な運命を辿る実装石と言えよう。 全てを失った事務員の最後の理解者は人間で無かった それは最後の実装石 生き残った人間達から迫害される事務員の唯一の味方 この実装石は最後まで事務員の傍に居ることを願う そう、最期まで ( 残された人々・前編 )『 波は遠くへ 』より登場 □ 大樹 概説 大災厄後に産まれた男児。 そして両親を失い、飼い獣装に助けられた。 乳飲み子は両親の死すら分からない。 滅び行く世界の事情も理解できない。 ただ忠実な飼い獣装に背負われ、安らかな寝息を立てる。 この幼い子が多くの個体の運命を変えることに。 ○ セイ 魅力:B 知性:B 体力:A 統率力:D 対人:E 概説 産まれて間も無い頃、住んでいた公園は人間に駆除され全滅した。 家族の実装石は全て殺され、傷ついた瀕死の仔獣装。 その時、通りがかった若い夫婦が拾い上げてくれた。 夫婦は駆除員に引渡しもせず家に連れ帰り、手当てをすると匿ってくれた。 心優しい夫婦だった。 傷ついた仔獣装が元気になるとそのまま飼い続け、セイと名前を付けた。 セイは自分に優しくしてくれる二人を本当の家族と思い、 産まれてきた二人の子は絶対に自分が守ると心に誓った。 そして災厄。 自分と幼い乳飲み子を逃がす為、二人は囮になって犠牲に。 ミドリのカリスマより飼い主達への恩情が勝り、呪縛に捕らわれなかった。 セイは安全な場所を求めて赤子を背負い、地獄を彷徨う。 地上から人間は姿を消し始め、実装石と獣装石が闊歩し始めた。 赤子を守るために戦い、仲間である筈の同属達からの逃亡生活を送っていた。 だが遂に逃げ道を絶たれた。 多くの獣装石に包囲されて逃げ場を無くした。 なんとしても幼子だけは助けたかった。 自分を助けてくれた飼い主達の子だけは救いたかった。 この命に代えても。 セイは幼子を背にし、恵まれた体格で襲い掛かる獣装石達を倒す。 傷だらけになっても決して諦めようとはしない。 そして片腕を失っても人間の子を守る満身創痍のセイの前に 一匹の巨大な元帥獣装が姿を現した。 ( 残された人々・中編 )『 夢の続きは木漏れ陽 』より登場 □ 先生 概説 今回の" 楽園崩壊 "後、島の学校教員となった元事務員である。 その島こそサト達に教えられた最後の場所。 本物語以降、彼女は多くの若者達に島の場所を告げる。 ( 「 彼女が話を終えた時 」参照 ) そして教員として島へ赴任後は島民達から先生として慕われる。 多くの子供達に囲まれて平穏の時を過ごすことに。 しかし彼女は忘れられなかった。 休みを見つけては思い出の場所に向かい、感傷に浸る。 その最後の機会に一人の男と一匹の実装石に島の場所を告げる。 そして災厄から数年後、実装石の勝利がほぼ確定した。 全世界の人間が僅かに残った生存圏を奪い合い争う時代。 爆発的に増加した実装石達の脅威から逃げ惑う頃。 島の人間達は彼女の秘密を知った。 この災厄を回避できるはずの立場にあった事実を知ってしまった。 人々は残された楽園で満足できない。 嘗ての繁栄への渇望。 物資の窮乏からくる焦燥。 僅かな場所でしか生存を許されない憤り。 全ての負の感情の矛先が彼女へ。 ? ??? 概説 実装石ハ 人間ニハ勝テテモ コノ存在ニハ決シテ勝テナイ ( 残された人々・後編 )『 彼女が再び笑う時 』より登場
