町外れの双葉山に、奇妙な実装石がいる。 そんな噂が町の観察派の中で流れていた。どんな実装石なのかは分からない。ただ、変 なのとしか言われていない。ま、あくまで巷の噂ってヤツである。 というわけで、その真相を確かめるため、俺は出掛けたのだった。 「疲れたー……」 山とも言えない小さな双葉山の遊歩道を歩きながら、俺は呻いた。 小説のネタを考えるついでに変な実装石見物にやってきたのだが、その意志は早くも折 れ掛けている。だって、緩いとはいえ山道歩くのは疲れるんだもん。 一応山歩きっぽい装備は持っていた。ちゃんとウォーキングシューズを履き、それなり にしっかりした服を着て、小道具類の入ったリュックを背負っている。雨具も忘れてはい ない。腰のベルトには、護身用の得物を下げていた。 でも、重いです……。 俺は近くにあった石へと腰を下ろした。 「変な実装石探すって言ってもなぁ。そうそう簡単に見つかるわけないよな。当たり前だ けどさ。小説書けないからって、現実逃避しすぎたか……」 ポケットから取り出した高性能偽石サーチャーのディスプレイを眺める。 あちこちに見える緑色の光点。これは実装石の反応だった。他には赤と青と灰色がいく つか。それぞれが実装紅と実蒼石、実装燈である。あと、ひとつだけ見える黄色い光点。 実装金だ。ごくごく稀ーにピンクの実装雛がいることがあるけど、あれは一年に一度見ら れれば幸運だ。 紫の薔薇実装には会いたくはない。 「紫電何してるだろ?」 家に置いてきた居候薔薇実装の事を考える。 今日は俺が資料用に図書館から借りてきた本を朝から読みあさっていた。この散歩にも 誘ってみたのだが、家で本を食べると言い張ってついて来ていない。 「ま、仕方ないか」 ため息をついてから、ディスプレイに視線を落とす。 緑の点は実装石であるが、それが成体なのか仔なのか、賢いのか糞蟲なのか、そういう 情報は一切分からない。そういう機能のある超高性能なサーチャーもあるらしいが、俺の 収入じゃ手に入れることもできん。 「ん?」 俺は首を傾げた。 このすぐ近くに、赤い点がある。位置的に近くの池だな。 実装紅でも眺めてから帰るか。結局収穫は無さそうだし。 手早く決断してから、俺は遊歩道から外れて歩き出した。整備された道とは違い、森の 中は下草が茂っている。それでも、素人が歩けないほど無茶な森ではない。まあ、そのうっ かりから事故になったりもする。 目的の池は道から五十メートルほどの所にあった。 池というか、沼。 辺りの地面から流れてきた水が溜まった場所である。水溜まりと表現する方が正しいか もしれない。池からは小さな沢が一本下に向かって流れている。雨が降らないと枯れてし まう、そんな小さな沢であるが。 目的の実装紅は、意外とあっさり見つかった。 池近くの木の根元に座っている。 「何だ?」 その実装紅を見つめ、俺は訝った。 人間に関わっていない実装種は、基本野生動物と大差無い。人間相手には大体警戒の反 応を示す。一部の実装石を除いて。 実装紅は木の根元に座ったまま、手帳を眺めていた。俺には目もくれない。 近づいてみても、俺に気づいた気配もなく、手帳を眺めている。いや、近づいてみて分 かったけど、眺めているわけじゃなかった。 「絵を描いてる?」 その姿に俺は自分に尋ねるように口を動かす。 実装紅は絵を描いていた。左手で手帳を押さえ、小さな実装用絵筆を紙の表面に走らせ ている。筆から紙に画かれる緑色。どうやら、ここから見える風景を描いているらしい。 色が薄くなると、絵筆を紙から放し、口に咥えた。もごもごと口を動かしてから、絵筆を 離すと緑色の絵の具が付いている。 「体内で絵の具を作ってるのか、こいつ」 腕組みしながら、俺は感嘆の言葉を漏らしていた。 絵を描く飼い実装紅ってのは知っている。テレビに出たり雑誌に載ったりすることもあ るからな。ただ、そいつらは普通の絵の具を使って絵を描いている。この実装紅のように 自分で絵の具を作るなんてことはしない。 おそらくは、植物の色素を体内で抽出して、絵の具を作ってるんだろうけど。 「首輪はしていない、か」 実装生物基本法によって、飼い実装は首輪の着用を義務付けられている。つまり、こい つは野良実装紅。もしくは、捨て実装紅か。どっちにしろ、自分で絵の具を作って絵を描 く実装紅なんて、滅茶苦茶珍しいけど。 実装に関わる者のはしくれとして、これを見逃すわけにはいかん。 「おい」 「ダワ!」 俺の口にした少し大きな声に、実装紅は大袈裟なまでに身体を跳ねさせた。俺の方に目 を向けるなり、手帳と絵筆を持ったまま俊敏に距離を取ってみせる。素早ッ。 「アナタ何者なのダワ……」 万能リンガルに表示されるそんな文字。 青い目で警戒するように俺を見つめた実装紅だが、不意にその警戒を解いた。 「あら。アナタ、紫電の家主さんなのダワ?」 え? ちょっと待て、今こいつ『紫電』って言った? てことは、うちの居候の知合いか? 「紫電知ってるのか? 変な薔薇実装」 「彼女は友達なのダワ。紫電にはいつもお世話になっているのダワ。この間も助けて貰っ たし、アナタには紅茶のお礼があるのダワ。ありがとうなのダワ」 ぺこりと一礼してくる。 「いえいえ、どういたしまして」 応じるように頭を下げる俺。って、実装相手に何やってるんだ……。 さておき、紅茶のお礼って——何だ? 俺、こいつに紅茶やった記憶は無いんだが。知 らんうちに紅茶渡してたか? 野良実装紅にペットボトルの紅茶の残りを渡すってことは あるらしいが、俺は少なくともここ半年野良実装紅には会ったことはない。 じゃ、飼い実装紅……? こっちも心当たりは無いよな。 腕組みして記憶を辿る俺に、実装紅が続ける。 「安いリーフだけど、野良の身分に紅茶は貴重なのダワ」 「安いリーフ……?」 あー! 紫電が時々持ち出している俺の紅茶か。OK、納得した。 俺は紅茶を買って適当に呑んでから放置する癖がある。紫電が時々その残り物の紅茶を 欲しがるので、気にせず渡していた。どうやらこの実装紅へ渡すために欲しがっていたら しい。それで、紅茶のお礼ってことか。で、紫電の友達ね。うん、理解した。 俺は神妙な面持ちで何度も頷く。 「なんだかよく分からないけど、納得して貰って嬉しいのダワ」 実装紅がそう言ってきた。 まあ、挨拶はこれくらいにしておいて。 「ところで、紫電の友達がこんな所で何してるんだ?」 「ワタシは絵を描くのが趣味なのダワ。最近はこの辺りで絵を描いているのダワ」 手帳を持ち上げてから、実装紅が絵筆で池を示す。 小さい池とそれを覆うように茂っている広葉樹。午後の日が差し込む、森の中の風景。 確かに絵にするには適当な風景だろう。 さきほどちらっと見えたけど、こいつの描く絵はそれなりに——いや非常に上手い。下 手な人間の絵描きよりも上手いくらいだ。 「絵描き趣味の野良実装紅……。元飼いか何かか?」 「女の子の過去を訊くのは失礼なことなのダワ」 手帳を小脇に抱え、絵筆で俺を示して断言する。 「さいですかー」 乾いた誤魔化し笑いを浮かべて頭をかく俺。実装紅に駄目出しくらう男って……。 こっそりと凹んでいる俺に、実装紅が続けて訊いてくる。 「アナタこそ、こんな所で何してるのダワ?」 「んー……。この辺りに変な実装石がいるって噂聞いたから、気分転換がてらに来てみた んだが、そうそう見つかるモンじゃないないよなぁ」 大袈裟にため息をついた。 実装紅が右手に持った絵筆をすっと持ち上げる。 「変な実装石って、もしかしてそいつのことなのダワ?」 「そいつ?」 絵筆に導かれるように俺は振り返り。 固まった。 「デスー」 そこに実装石がいた。 ただし、身長二メートルほどの特大サイズ。無駄にでかい体躯に、丸太のような手足。 落書きみたいな赤緑の目と、三角口。緑色の頭巾とワンピース、白い前掛け。 「実装さん……!」 俺は目を丸くした。 通称、実装さん。正式名称、巨大化実装石。 成体実装石が極めて稀に起こす繭化。そこから生まれる、突然変異型の実装石のひとつ だった。単純に異常成長からなることもあるらしい。どっちにしろ珍しい存在だ。見ての 通りので巨体で、動きはあんまり速くはないが、そこから生み出されるパワーは桁違い。 一発ぶん殴られれば、人間でも容易く致命傷を負うほど。 このバケモノを真正面から素手でブッ倒す、武闘派の虐待派もいるらしいが、俺にそん な芸当は無理。普通は見つけ次第通報、駆除である。 しっかし、今日の俺は変な実装によく会うな、ホント。 もしかして当たり日? 「デー……」 実装さんが俺を見つめた。が、俺には興味無いらしい。興味持たれても困るけどさ。 そのまま、足元の実装紅に目を移す。 「デデデ、デッジャアアアア!」 耳をつんざくような絶叫を上げる実装さん。すごい大声…… 左手に持った万能リンガルに目を落とすと、 『ついに見つけたデシャアア!』 両手を振り上げたまま、ドスドスと足音を響かせ——はしないが、そんな足音を響かせ そうな勢いで突進してくる。そんなに速くはないけど、この巨体の体当たり喰らったら無 事じゃ済まない! 実装さんが右腕を振りかぶった。 俺は足元に突っ立っている実装紅の襟首を引っ掴み、横へと走る。 「デエェェスゥゥ!」 ドッ! 実装さんの振った右腕が木の幹に激突した。 勢いに任せて振り抜いた一撃だが、木が激しく揺れ枯れ葉や枯れ枝が落ちてくる。木の 幹にはうっすらと凹んだ跡があった。どんな怪力だよ……。 「あなたも虐待派自称するなら、実装さんくらい根性で何とかするのダワ」 俺の右手にぶら下がったまま、緊張感無く言ってくる実装紅。なんちゅー図太い神経な んだよ、こいつは。……と思ったけど、そうじゃない。こいつはこの実装さんを倒す手段 を持っている。方法は知らんが、この態度はそこから来る余裕だ。 「クソ赤、ぶっ殺してやるデェェス!」 振り返ってくる実装さん。その視線は俺がぶら下げた実装紅に向けられている。どうや ら、こいつに何か恨みあるらしい。事情は分からんけど。 「ガンバルのダワ」 他人事のように、実装紅が言ってくる。 ああ、ちくしょう。やってやろうじゃねぇか! 「デカブツ、こいつはお前にくれてやる!」 俺は右手の実装紅を森の方へと思い切り放り投げた。 ——ふりをして、足元に落とす。 「デッ!」 腕の動きと飛んでいたはずの実装紅を追って、実装さんの目が森へと向かう。地面に落 ちた実装紅を探すように、きょろきょろと赤と緑の目を森の木々へと走らせていた。デカ くはなっても所詮実装石、頭は悪い。 俺は空いた右手で腰の得物を抜いた。 剣と呼んでいる武器である。 長さ六十センチほどのステンレスの細い板。厚さ二ミリで幅は三十ミリ。ホームセンタ ーで売っているステンレスの平板を切って、三角形の切先と握りを付けたもの。切先部分 にしか刃は付いていない。地域の駆除活動なんかで、実装石を仕留める武器だ。刃の無い 部分でも並の実装石ならすぱっと切れる。 ……町中でこれ持って歩いてたら捕まるけどな。 ただ、これで実装さんを相手にするのは無謀の一言。 もっとも、真正面から斬りあう必要もない。俺はステンレスの剣を逆手に持ち、思い切 り踏み込んだ。右手を振って、槍投げのように剣を投げつける。 「デッ」 切先が実装さんの腹に刺さった。相手が普通の実装石なら、難なく貫通するんだけど、 相手が実装さんじゃ、そうもいかん。 貫通することもなく、剣が地面に落ちる。表皮に傷を付けただけ。 「このクソニンゲン……邪魔するなデ……デ……?」 俺を睨んだ実装さんが、足を踏み出すこともできず、後ろへと倒れていった。俺が探し ていた『変な実装石』が危険な実装石の場合を考え、剣にはあらかじめ実装シビレを塗っ ておいたのだ。無論、強力即効タイプ。ちーと値は張るのが玉に瑕だけど、実装さんでも 擦ればこの通りである。 「デデデ……」 仰向けに倒れたまま、痙攣している実装さん。 「さすが紫電の家主さんなのダワ。でも、ワタシを囮にしようとしたのは、いただけない のダワ。レディは丁寧に扱うのがマナーなのダワ」 足元の実装紅が俺を見上げてくる。 「文句言うな」 万能リンガルを動かしつつ、俺は言い返した。 何にしろこれでしばらくは動けんはず。とはいえ、相手は実装さん。用心に越したこと はないので、背負っていたリュックを下ろし、中から取りだした強力実装シビレスジェッ トプレーを吹き付けておく。 「デー……!」 実装さんの弱々しい悲鳴。 俺は地面に落ちていた剣を拾い上げ、刃の無い剣身にスプレーを吹き付けておく。これ で、ステンレスソード追加効果麻痺のできあがり。 「で、そこの実装さん、お前に恨みあるっぽいけど、何があったんだ?」 「多分、そいつはフランソワーズとかいう元飼いの捨てられ実装石なのダワ」 絵筆で実装さんを示す実装紅。 フランソワーズ……って、あー、何というか、うん。フランス人に謝れ。 名前はともかくとして、身元は分かった。 こいつは実装生物基本法改正の時に捨てられたヤツだな。法改正によって、実装生物は 飼い実装に相応しいか否か調べる定期的な試験が義務づけられた。試験自体は簡単で、普 通に躾けられていれば、苦もなく通れるようなレベル。実際うちの紫電はあっさり受かっ ている。まあ、あいつは特別だけど。 しかし、躾を怠って糞蟲化した実装はまず通れない。実質糞蟲を間引く試験だ。 試験を通れなかったヤツは、一ヶ月後に再試験がある。そして、その再試験で落ちれば ほぼ無条件で殺処分。それでも飼い続けるには、多額の実装飼育税を払うこととなる。実 装飼育税は月十万近い代物で、事実上の罰金だ。 再試験で通る見込みが無く、殺処分送りにするほどの根性も無く、なおかつ実装飼育税 を払う気もない人間に飼われていた実装石は、そのまま捨てられることが多い。法改正に 伴い、一部で社会問題化していた。 俺も街外れの草原で駆除したっけなー。 このフランソ……実装さんもその類なのだろう。 「何でお前がその元飼いに恨まれてるんだ?」 「昔、ワタシが友達から貰った飴を舐めていた時に、そいつがいきなり『寄越せ』と言っ て来たのダワ。だから、軽くお仕置きしてあげたのダワ」 澄ました表情で実装紅が答える。 状況はおおむね理解した。捨てられ実装石が、この実装紅から飴を奪い取ろうとして返 り討ちにあって、それから色々あって繭化し、実装さんとして最誕生、偶然か必然か目的 の実装紅の前に現れたってことか。 一応、それはこの実装紅の言い分である。 「さて、フランソ……ワーズ……だったか?」 「気安く……呼ぶな、デス!」 息も絶え絶えに言い返してくる実装さん。 「事情を訊こうか? お前は何でこの実装紅を襲ったんだ?」 「あれは……、去年のコトデス……」 無駄に長々とした実装さんの話をまとめると。 ドレイの元で優雅に暮らしていたが、突如ドレイが反逆し自分を放り出してしまった。 新しいドレイを探していた所、飴を舐めている実装紅を発見したので、飴を献上させよう としたが、生意気にも刃向かわれ、ツインテールで滅多斬りにされ禿裸に。 その後地獄のような日々を送りつつ、ドレイと生意気な実装紅に復讐の念を燃やしてい たら、いつの間にか強い身体になっていた。さっそく実装紅のいそうな場所に復讐しに来 てみたら、目的の実装紅を発見。 しかし、クソ生意気なニンゲンに邪魔されてしまった。 「さて、どうやって殺すか?」 剣の切先で実装さんの頭をつつき、俺は首を傾げた。 実装さんを見つけたら、近寄らずに役所に電話するのがセオリーである。しかし、俺は 携帯電話を持っていないし、いちいち戻って電話していたら、復活して逃げられる可能性 もある。実装石駆除用の薬品類は持ってきているので、この場で処分してしまおう。 こういう場合の緊急処分は、法的にも認められているし。 「デ……デー……」 心臓にシビレを注射された実装さんが呻いている。これで少なくとも明日くらいまでま ともに動けないはず。普通の実装石なら全身麻痺でとっくに死んでるけど。 実装紅が呆れ顔で頭を押さえていた。 「愚かな実装石なのダワ……」 気持ちは分かる。凄くよく分かる。 それはそれとして、 「お前、もし俺がいなかったら、どうやってこいつの相手したんだ? 実蒼石でも倒すの 難しい実装さんだ。普通の実装紅じゃ逃げるのも無理だろ」 「他の実装紅なら無理なのダワ。でも、ワタシが実装石を殺すのは簡単なのダワ」 そう言うなり、実装紅は息を吸い。 近くの木に向けて鋭く息を吐いた。 パッ。 小さい破裂音とともに、木の幹に白い色が付いた。体内で生成した絵の具を滴状にして 勢いよく吐き出したのだ。しかも、見た感じ狙いも正確。 「……なるほど」 俺は腕組みをして唸った。いやはや、こいつは凄い。 実装石は実装生物で最もデタラメな生態を持っている。そのひとつに目の色がある。両 目を緑に塗れば勝手に妊娠し、赤く塗れば強制出産。妊娠実装石でも両目を赤と緑に塗り 直せば妊娠状態は解除され、腹の仔は消化されてしまう。青く塗ると「ダワダワ」と鳴き、 黄緑に塗ると「カシラー」と鳴き、赤紫に塗ると「ルトルト」と鳴くなど、無茶苦茶すぎ てもはや清々しい。 そして、実装石の目を白く塗ると、それだけで死ぬ。健康状態に一切関係無く。 実装紅はこの実装さんの両目に白い絵の具を吹き付けるつもりだったらしい。目を白く 塗られた実装石は、確実に死ぬ。獣装石だろうと実装さんだろうと、たとえ最凶のマラ獣 装さんだろうと即死だ。 凄いな……この実装紅。人間並に賢いだろ。 「当然なのダワ」 俺の視線に得意げに胸を反らす実装紅。ちょっと腹立つ。 「さて、改めてこいつどうするかな?」 倒れたまま俺を睨んでいる実装さん。 目の色で思い出したけど、実装さんの目赤く塗るとどうなるんだろ? 気になったら実行。 俺は荷物から取り出した赤インクを、実装さんの緑の目に垂らした。両目が赤色に染ま り、身体が勝手に強制出産モードに移行する。 「デエエ……ェ……! 生まれ、るデス……!」 「デッデレー!」 「デッデレー!」 「デッデレー!」 「デッデレー!」 「うおあ!」 思わず、俺は後ろに飛び退いた。 実装さんの股間から飛び出してくる実装石。 普通の実装石を強制出産させると、大抵親指か蛆。栄養状態がよければ仔実装が生まれ る。だが、実装さんの股間から飛び出してきたのは、成体の実装石だった。しかも、保護 粘膜にも包まれていない。 実装服全てを身に付けた成体実装石は、身体を丸めたまま地面を転がり、普通に二本足 で立ち上がっていた。身体機能も成体レベルらしい。 実装さんからは成体実装石が生まれると聞いたことはあったが、本当だったとは。 あと、こいつもしかしてノーパ…… うん。考えないことにしよう。 「デッデレー!」 「デッデレー!」 「デッデレー!」 「デッデレー!」 強制出産は続いている。 うお、しまった! これじゃ、処分の手間が増える! 俺は持っていた剣を、実装さんの片目に突き立てた。 「デゴ!」 眼球が潰れ、強制出産が止まる。 随分とダイエットした実装さん。 とはいえ、どうしたもんか……? 実装さんから生まれた成体実装石、ええと、ひふみ のしのごの……二十七匹。この場合、俺が責任持って処分しなきゃいかんのか。 処理スプレーはあるから殺して吹き付ければ終わりなんだけど。 「ニンゲンの好奇心というものは、危険なのダワ」 額を押さえ、実装紅が首を振る。 悪かったな……。 心の中で悪態をついてから、俺はデスデスと騒いでる実装石たちに目を向けた。 ん? 何だろう、こいつら? 二十七匹の実装石たちが、お互いに何か言い合っている。つい でに、殴り合いをしているものもいた。いきなりケンカかよ。 万能リンガルに表示された言葉を見て、俺は言葉を失った。 「フランソワーズはワタシデス!」 「何言ってるデス、この偽物がデス!」 「華麗で美しいフランソワーズはこのワタシデス! 全員跪くデス」 「黙れ偽物デシャア!」 えっと、これって……。 俺は声を上げてみた。 「ふ、フランソワーズちゃーん」 『デスー!』 その場にいた実装石全部が、一斉に俺を見つめる。 キモい! じゃなくて、こいつら全員自分がこの実装さんだと思ってる? 「ニンゲンの言葉では、偽石情報の複写とか言うらしいのダワ」 実装紅がそう告げてくる。 いや、お前……本当にそこらの人間よりも頭いいだろ……? 偽石情報の複写。実装石を強制妊娠を経ずに強制出産させた時、低確率で起る現象であ る。仔実装が体内で瞬時に作られる際に、仔の偽石が親の偽石情報を全て奪い取ってしま うのだ。その場合、生まれる仔実装は一匹で、親の記憶をほぼ全て引き継いでいる。代わ りに親実装は偽石にかかる過負荷で死ぬ。 偽石情報の複写は、俺もまだ一回しか見たことない。 「それが実装さんで起ったらこうなるのか……」 「デッ……デッ……」 荒い呼吸を繰り返している、オリジナルフランソワーズ。 実装さんを強制出産させた時に偽石情報の複写が起ると、親と同じような記憶を持つ成 体実装石が大量に作られるのかぁ。ついでに、偽石が頑丈な親の実装さんは簡単に死ぬこ とはない、と。勉強になったな。 さて、改めてこいつらどうすっか? 本物を懸けてケンカを再開した実装石たちを眺めながら、俺は考える。 今実装さんの右目にぶっ刺さってる剣で全員殴り殺してから、脆くなった実装さんの偽 石砕くか、両目を白く染めるかして、処理スプレーで死体処理ってところだろうか? 残 りカスが山になりそうだけど。 でも、何か芸が無いなぁ。 ごそごそとリュックの荷物を漁る俺。 「お、これいいかも」 取り出したのはアンプル注射器。 単三乾電池ほどのプラスチックの容器に、薬品と気体を封入したもので、蓋を外して注 射針を刺すと、中身が勝手に注射される仕組みだ。紫電には緊急治療用として実装活性剤 と栄養剤、精製水を混ぜたものをひとつ渡してある。 「また変なこと思いついたみたいなのダワ……。どうせ終わったら後悔するのだから、や めておいた方が賢明と思うのダワ」 「やらずに後悔するよりやって後悔する方がいいと、人は言う」 アンプル注射器を軽く放りつつ、俺は言い返した。 実装紅がため息をついているが、気にしない。 容器の中にあるのは、赤い液体。液体実装香。こいつを実装石に注射すると、全身から 実装香の匂いを放つようになる。そうなった実装石はあっという間に同族に襲われて食わ れてしまう。 だが、相手が実装さんだとどうなる? ここにいる仔の実装石たちに襲われることになるだろう。無論、この巨体ですぐに食い 尽くされることもなく、シビレの効果で抵抗することもできない。物凄く面白いことにな るのは分かった。 恐怖を含んだ実装紅の声。 「アナタ、物凄い笑顔なのダワ……」 「こほん」 口元を押さえ、咳払いをする。 じゃ、さっそく実行。 と。 足をつつかれ、俺は動きを止めた。 実装紅が絵筆の握りで俺の足をつついている。 「どした?」 「……変な……実装石がいるのダワ」 そう示した先。 木の陰に隠れるようにして、全然隠れていない実装石がいた。 「……何だ、こいつは?」 口元が引きつる。 裸の成体実装石。それ自体は珍しくもない。 だが、その実装石はいびつに肥大化した身体を持っていた。不自然にの盛り上がった胸 に、上下逆さまの実装石の顔が付いている。同じように盛り上がった腹にも九十度傾いた 顔が付いていた。見ると、腕も多い。本来の二本に加え、肩から明後日の方向に伸びた長 さの違う二本の腕。腹の横から飛び出した腕が四本。 奇形、というか異形の実装石だった。 人面瘡という言葉が浮かぶ。 変な実装石、こいつだ……! とりあえず、ケンカ中の実装石たちは保留。 シビレスプレーでまとめて沈黙させる。 「ワタシも初めて見る実装石なのダワ……。それにしても、おぞましい姿なのダワ。どう やって生まれたかは知らないけど、これは狂っているのダワ……」 異形実装石を見ながら、実装紅が口元を押さえた。声から感じられる露骨な嫌悪感。 確かに、こいつは不気味だ。 ただ、興味も湧く。 俺はポケットから小さな袋を取り出し、中身の金平糖を適当にばらまいた。 「デデ……」 実装さんズが反応するが、無視。お前らは後回しだ。 実装寄せ金平糖。実装香といくつかの甘味料によって、実装石を強力に引きつける金平 糖である。相当に自制心のある実装石で無い限り、この金平糖の誘惑には勝てない。なお、 人間が食べるのはお勧めしません。 「美味しそうな匂いデスー!」 「ママー。速く行くデスー」 のたのたと走ってくる、異形実装石。 今、胸にあった顔も喋ったよな……。 胎内で融合したまま生まれて成体になったヤツか? だとしたら、そんなのが成体にな れるのか? 奇形実装石は大抵、仔のうちに間引かれると聞くが……。もしくは、間引き を逃れて生き延びた類か……? 異形実装石は金平糖の所まで走ってきてから、金平糖をひとつ摘み上げて口に放り込ん だ。その甘みに顔をとろけさせる。 「甘い〜デス〜ゥン♪」 「ママー、ワタシにも食べさせて欲しいデスー!」 「ワタシにもコンペイトウー!」 「うげ……」 思わず口元を押さえる俺。 その奇形実装石の余計な顔は、胸と腹だけではない。盛り上がった後頭部にひとつ、背 中にさらにひとつ顔が付いていた。顔の周辺から適当に伸びた、手だから足だか分からな い突起。うねうねと動いている。 五個の顔と、合計十一本の手足を持つ異形の姿だ。 何というか、とっても不気味。 「ちょっと待つデスー。お前にもやるデスー」 と胸の顔の口に金平糖を入れる実装石。 「甘いデス〜ン♪」 上下逆さまの顔が、気持ち悪くにやける。 「ママー。ワタシにもコンペイトウちょうだいデスー」 「アマアマ、コンペイトウデスー」 実装石はそのまま器用に、腹や後頭部、背中の顔に金平糖を渡していく。拾った金平糖 を別の手に渡すと、その手の持ち主らしい顔が受け取り、口へと運んでいた。ちゃんと連 携できてるのが凄い。 てか、ママって、つまりこいつら親子……? ん……? 何か今頭に閃きかけたような。 「久しぶりのコンペイトウデスー」 散らばった金平糖を食っている異形実装石。涙まで流して喜んでいた。身体と同化した 子供にも分け与えている。見た目は異常だけど、行動は割と普通だな。仔が食事できるっ てことは、消化器系も繋がってるのかね? 俺は実装さんの目に突き立てていた剣を引き抜いた。 「デギャ!」 悲鳴は無視。 一振りして血を払ってから。 「オイ、お前」 俺は切先を異形実装石に突きつけた。 ふと顔を上げ、俺を見つめる異形実装石。 「デァ」 ポロリ、と持っていた金平糖が落ちた。 その顔が一瞬で青くなる。絵に描いたような漫画的な青さ。まったく、こいつらは本当 にデタラメな身体構造してるよなー。 「あ、あ、悪魔が出たデェスアアアアア!」 断末魔のような絶叫を上げて、異形実装石がその場に腰を落とした。必死に後退ろうと しているが、腕も足もまともに動いてない。ガタガタと、まるで痙攣するかように激しく 全身を震わせていた。 何、その反応? 予想以上の怯え様。 「妙に怯えてるのダワ」 「だな」 実装紅の言葉に頷く俺。 異形実装石は俺を凝視したまま、両目から色付き涙を流している。 「ま、また、ワタシたちを……嫌デスゥ! 壊されるのは嫌デスゥゥゥ!」 「デエエェェン! もう許してデスゥゥゥ!」 同じように泣いている他の四つの顔。 また? もう? こいつら俺のこと知ってる? ピコン! 俺の頭の上に電球が点った。 「あああああッ、思い出した! あん時の託児実装石ッ!」 「アナタ、こいつ知ってるのダワ?」 驚いたように見上げてくる実装紅に、俺は力強く頷く。 「知ってるも何も、こいつらこの姿にしたの俺だよ。てっきり野垂れ死んでると思ったの に、生きてたのか! しかも、かなり元気そうに」 「ダワ……?」 ぱちくりと瞬きする実装紅。 もう三年以上前か。俺がもう少しやんちゃな虐待してた頃だ。 わざと託児の仔実装を捕まえて、実装液化剤注射して形変えて遊んで、やって来た親実 装に仔実装四匹を埋め込んで放り出した。そのまま死んだとばかり思ってたんだが、こう して仔実装共々生きているとは予想外。今の今まで存在自体忘れてたわ。 いやまさに運命の出会い。 sc0543.txt 【虐】なんとなく書いてみた 06/10/30 実装液化剤.txt 参照 http://jissou.sytes.net/upload_s/src/sc0543.txt と、いうわけで! 「変な実装石の正体も分かったことだし、何しようかな〜?」 にへら〜、と笑う俺。 今の俺は三年前のテンションに戻っている! 実装石を捕まえては加工し、実装オブジェ として虐待派に売って小銭を稼いでいた頃の俺。小説売れ出してからは副業から足洗った けど、その創作心は今でも十分残っているぞ。 「デギャアアア!」 異形実装石改め加工実装石が逃げようとするが、腰が抜けていて動けない。 でも万全を期して、剣先で適当な所を斬っておく。 「デェ……」 シビレの効果で動けなくなる加工実装石。この濃度のシビレを身体に入れたら、あっと いう間に全身麻痺。呼吸すらままならないだろう。 シビレ効果で動けない実装石二十七匹に、実装さん一匹、あと加工実装石一組、と。 これだけあれば、色々できそうだ。 「アナタ、緩い虐待派を自称しているのに、やることはエゲツないのダワ……。紫電の言っ ていた通りなのダワ。ニンゲンというのは怖ろしい生き物なのダワ」 「気にしちゃ駄目だぞ」 明らかに引いている実装紅に、俺は笑顔で告げた。 リュック内にある薬品と小道具を漁りつつ、眉根を寄せる。あー、こんなコトならもう 少し色々持ってくるべきだったなぁ。残念残念。 「お取り込み中すみません」 突然の声に俺は顔を上げた。 おや。 いつの間にか、近くに一人の男が立っていた。作業着っぽい服の上に白衣を羽織り、鞄 を手から下げている五十路ほど男。銀縁の眼鏡をかけている。見た感じ、何かの技術者っ ぽいけど、全体的に服装がズレているような気も。 立ち上がって男を見つめる。 「何ですか?」 「ちょっとこちらの実装石たちに用事がありまして」 と、シビレで麻痺している実装石たちを手で示す。 虐待派……じゃないよな、雰囲気的に。観察派でもない。愛護派ってわけでもなさそう だし。何者、このおじさん? 通りすがりのエンジニアなんてことはなさそうだし。 俺の感情を読んだのか、男が手短に自己紹介をする。 「私、実装研究所の白井博明と言います」 「実装研、ですか?」 実装生物を研究している研究所だ。実装石の研究が主だが、他実装種の研究も行ってい る。あちこちの製薬会社から販売されているコロリ、シビレ、ドドンパ他、多数の実装用 薬品は、ほぼ実装研が基幹特許を握っている。俺が使っている液化剤なんかも、実装研の 友人から安値で買っているものだ。 博明さんは、すっと目を細め、 「失礼ですが、あなたのコトはさっきから見てました」 「え……」 固まる俺に、否定するように手を振ってみせた。 「いえ、監視や盗撮ではなく、先程遊歩道を歩いていたら、巨大化実装石の絶叫が聞こえ たんです。何事かと駆けつけてみたら、あなたが色々やってるのを見つけてしまいまして、 思わずこっそり見入ってしまいましたよ。ははは」 「はぁ」 「さすがは、ラッキースター……」 「はい?」 今何て言った? ラッキースター? 幸運の星って、俺のこと? 困惑しつつ近くにいた実装紅を見やるが反応無し。 「あなたの愛称ですよ。有名なんですよ、あなた。創作物を食べる薔薇実装を飼ってるな んて幸運、宝くじで一等当るようなものですからね」 羨ましそうに言ってくる博明さん。 なるほど、紫電のことか。そういえば、実装研の友人も滅茶苦茶羨ましがってたな。あ いつはかなり珍しい突然変異種だし、おそらく世界中探しても紫電みたいに物語を食べる 薔薇実装はいないだろう。 「それで、こいつらに何の用です?」 「彼女たちを譲って欲しいのですが、よろしいでしょうか? 正確には、今日は私たちで その変異体を探していたのですが、僅差であなたに先を越されてしまいまして」 痺れている加工実装石を目で示す。 変異体ねぇ。確かに事情忘れてたとはいえ、俺も最初は異様な奇形かと思ったわ。でも、 ネタが割れちゃ貴重さも激減だろう。 「あなたが作った人工奇形としてもかなり価値はありますよ」 俺の考えを読んだように、博明さんが続ける。読心術? 「普通はここまで弄られた実装石が野良で生き残ることはありません。何かしら体内で変 異が起っていると考えられます。それを調べれば実装生物の臓器移植などの研究に役立つ と思います。あと、その実装石を作った経緯を教えて貰えるとありがたいです」 俺も昔は色々実装石弄ってたが、偽石保護処置したヤツ以外は大抵短命だ。保護処置を しても、肉体組織は徐々に劣化していく。野良で何年も生きているのは不自然だ。 加えて、この加工実装石は形こそ滅茶苦茶だが、実に元気そうだ。当時の俺は仔が食事 したら、体内で食ったものが腐ると考えてたのに、普通に食ってるし。 調べてみたくなる気持ちも分かる。 「それに、そちらの巨大化実装石。偶然とはいえ、巨大化実装石の偽石情報の複写現象は 非常に貴重です。それをあっさりと引き当てるあなたは、まさにラッキースター」 「その名前やめて下さい……」 「無論、謝礼は差し上げます」 そう口にする博明さんの表情には、形容しがたい凄みがあった。目の前にした得物を絶 対に逃がさないという必死さ。ぶっちゃけ、断わる勇気無いです。 「いいですよ、どうせ処分する気だったんで」 「ありがとうございます」 深々と一礼してから、博明さんが右手を上げた。 「確保ッ!」 その瞬間、どこからともなく現れる十人の男たち。 シビレで動けないでいる実装石たちを素早く袋に詰め、やつれた実装さんを担架に乗せ ると、そのまま消えていく。一分にも満たない早業だった……。 凄いぞ実装研。 博明さんは満面の笑顔で一礼する。 「ご協力ありがとうございます。今日は予想以上の収穫でしたよ。お礼は奮発させていた だきますよ、ご期待下さい」 「そうですか」 俺は生返事を返した。こいつら虐待する予定だったんだけど、ま……いっか。虐待後の 処分に苦労するのは目に見えてたし。それでも、実行するのが虐待派なんだけど。 ふと、博明さんが目を移した。 さっきから何も言わない実装紅へと。どこか寂しげに声を掛ける。 「紅姫、君は戻らないのかい?」 「何度訊かれても答えは同じなのダワ。ワタシはあの人の所には戻れないのダワ……。戻 る資格はまだ無いのダワ……。放っておいて欲しいのダワ」 べにひめ、ってこの実装紅の名前か? 元飼いかと思ったけど、どうも家出か何かした みたいだな。色々と事情があるようだけど、そこら辺は俺が関わることじゃない。 「あと、ラッキースターさん」 「いや、俺にはちゃんと名前があるんですけど」 言い返すが、博明さんは無視して続けた。 「もし機会がありましたら、紫電さんと一緒に実装研に来ていただけないでしょうか? 是非彼女を調べてみたいので。いえ、手荒なことはしませんよ。彼女には強力なバックが いるので、下手をすれば我々の地位が危ないですからね」 紫電のヤツ……。 居候薔薇実装として家賃分以外のことは放任主義だったけど、実はとんでもないコネ持っ てるんだなぁ。何だろ、その強力なバックって? 博明さんが名刺を差し出してくる。 「気が向いたらこちらへお電話下さい。健康診断だと思っていただければ。あと、報酬は ちゃんと支払いますので」 「はぁ」 曖昧な返事とともに、俺はその名刺を受け取った。 後日、紫電と話し合ってから実装研で精密検査を受けた。 内容は身体測定から心電図や血液検査、生成水晶の検査など、まさに健康診断のような ものだった。その結果、紫電の血糖値が正常値よりも少し高いことが判明し、氷砂糖を食 べるのを禁止されて落ち込んでいた。 おまけ 俺 主人公の作家の男。 息抜きで変な実装石を探しに来た。実装研究所の友人から買った薬品を主とした虐待を行 う。緩い虐待派を自称しているが、やることはエグい。最近は虐待派から観察派とやや無 関心派に移行気味。 希少価値の非常に高い突然変異種の薔薇実装を飼っていることから、一部の人間にラッキ ースターという名前で呼ばれている。 実装紅 紫電の友達の紅姫。 絵を描くことが趣味で、最近は双葉山に居着いて絵を描いている。植物の色素を抽出して 絵の具を作る技術を持ち、自前の絵筆を使う。絵の技術は非常に高い。 複雑な過去を持つ模様。 実装さん フラソワーズという名の元飼い実装石。 飼い実装試験を通れず捨てられ、野良化した直後紅姫から飴を奪おうとした所で返り討ち にあい、禿げ裸となって地獄のような生活(本人談)を送る。その後飼い主と紅姫への復 讐心から繭化し、実装さんへと変異する。 が、あっさり倒されてしまった。 白井博明たちによって、実装研へと連れて行かれる。 実装さんの娘たち 強制出産で生まれた実装石たち。仔だが成体の身体を持つ。 偽石情報の複写が起っているため、全員がフランソワーズとしての記憶を持つ。記憶には 結構な齟齬があるが、誰もそれに気づいていない。 実装さんの強制出産から偽石情報の複写が起った非常に希有な例。 白井博明たちによって、実装研へと連れて行かれる。 加工実装石。 主人公が三年ほど前に弄って放り出した実装石。 普通なら死んでいる状況なのだが、流れ着いた双葉山で野良実装石として元気に生きてい る。その異形の姿から、変な実装石がいると噂になった。他の実装石および実装種はその 姿を恐れて、近づくこともないため、迫害の危険性は皆無である。 白井博明たちによって、実装研へと連れて行かれる。 白井博明 実装研究所の研究員。主に治療系の研究を行っている。 ちょっとズレたマイペースなおじさん。 部下十人とともに双葉山の変な実装石を探していたが、主人公に先を越されてしまう。そ の後交渉によって、加工実装石と実装さん、その娘たちを手に入れる。 紅姫のことを知っている模様。
