タイトル:【馬鹿・薔薇】 水晶ハワタシノ魂ダ!
ファイル:突発的発想.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1746 レス数:0
初投稿日時:2009/12/05-17:49:01修正日時:2009/12/05-17:49:01
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「おやぁ?」

 眺めていたノートPCから目を離し、俺は思わず声を漏らした。

 庭に作ってある家庭菜園に近づいている実装石。

 家庭菜園などが実装石の被害にあうというのは時々耳にする。まあ、普通の草なんかよ
りも美味しい野菜が無造作に植わっていれば、実装石でなくとも盗みに来るだろう。
 ただ、うちの家庭菜園には柵が作ってあり、実装石では簡単に入れないようになってい
る。その壁を何とか乗り越えようと奮闘している実装石。

 俺が気になるのは、そこじゃない。

「何でだ?」

 一応実装忌避剤撒いてあるから、そうそう近づいてくるもんじゃないよな? 実装石は。
 ちなみに、忌避剤と実装香を一緒に撒くと、ふたつが撒かれた地面の土を頬張りそのマ
ズさに悶絶しつつ、食べるのを止められない姿が見られるのはマメ知識。五分くらいで飽
きるけど。

 閑話休題。

 こないだから雨降ってたから、忌避剤の匂いが消えた?
 いや、雨くらいで消えるようなもんじゃないし。

 まあ、いいや。

「おーい、紫電」
「何……、家主サン?」

 リビングの隅っこで本を読んでいた紫電が顔を上げた。

 うちの居候薔薇実装。創作物を食べる突然変異種。

 俺は座布団に座ったまま、柵を越えようと無意味に頑張っている実装石を指差した。不
法侵入の実装石は、適当にとっ捕まえ、気が済むまで適当に虐待して殺処分してしまうの
がいつもの対処法だが、あいにく今の俺にそんな暇は無い。
 卓袱台に置かれたノートPCに文字を入力しながら、

「あれ、始末しておいてくれ」
「分カッタ……」

 俺の言葉に頷き、紫電は読んでいた本を床に置いた。
 床を蹴ってふわりと浮かび上がり、窓の方へと近づいていく。

 ふと持ち上げた右手に現れる、薄い紫色の水晶。緩いV字型の水晶で、鋭角的なブーメ
ランのような形だった。ナイフ……かとも思ったけど、何だろう? 違うよな。
 見ていると、紫電はその水晶を顔に当てた。

 サングラス……? 
 どっかで見たこと有るような形状……。

 訝る俺を尻目に、紫電が窓を開ける。

 その音に気づいて、実装石が顔を向けてきた。
 ああ、そういうことか。
 実装石の顔を見て、俺は納得した。そいつは、鼻の穴から赤と緑の鼻水を垂らしている。
病気で嗅覚イカれてるのか。それで、忌避剤に反応しなかったらしい。
 鼻は利かなくとも、視覚で野菜は認識できたんだろう。

 紫電は窓辺に仁王立ちし、サングラスを右手で軽く持ち上げた。

「オウオウオゥ……。ソコノ実装石、挨拶モ無ニ他人ノ畑荒ラスタァ、何事ダ?」

 ブッ!

 俺は思わず吹いた。よかったー、飲み物口に入れて無くて!
 何やってんの?

 実装石が不思議そうに紫電を睨み付けた。

「何デス、お前?」

 尋ねられて、くいとサングラスを動かす紫電。
 その端がきらりと光るのが分かった。

「双葉町ニ高名轟ロク薔薇実装……。乙女ノ魂ソ背中ニ背負ニ、不撓不屈ノ……本読ミ実
装、紫電様タァ、ワタシノ事ダァ……」

 決めポーズとともに、実装石を指差す。いや、その名乗り口上……。本来は気合い入れ
て言う見栄切りなのに、無感情に淡々と……全然説得力無いよ。似合ってるけど。

 それを挑発と受け取ったのか、鼻炎実装石が目をつり上げた。多分。

「デシャアアア! 生意気なヤツデス。トッチメテヤルデース!」

 のたのたとこっちへと走ってくる。鼻水垂らしながら。

 あー、参ったな、部屋には上げてくれるなよ、紫電……。病気の実装石は臭いキツイし
汚いし、厄介だからな。虐待前処理してない実装石は大抵似たようなもんだけど、病気の
連中は特にそれが酷い。

「ワタシヲ誰ダト思ッテイヤガル……」

 棒読みで言っても迫力無いけどね……。

 紫電は顔に付けていたサングラスを外した。右手で端を持ったまま、真上へと掲げてみ
せる。紫電の顔にかけられるほどだったサングラスが、一気に巨大化する。大体四十セン
チくらいだけど、実装サイズとしては充分大きかった。

「必殺……」

 身体を大きく捻り、巨大サングラスを投げる紫電。

 いや、何か違う!

 ブーメランのように回転しながら、サングラスは空を切裂き、二つに分裂。
 突進してきた実装石を直撃した。

「デスウウァアア!」

 悲鳴を上げながら、空中へと吹っ飛ばされる実装石。さらに、その両手両足をサングラ
スの先端が貫き、空中へと拘束される。逃げだそうと暴れているが、ぶんぶんと首を振る
のが精一杯の抵抗だった。

 紫電が右手を振り上げる。

「ギガ……」

 全身から水晶の針が飛び出した。手足や胴体、肩や背中から、その数三十本以上だろう。
さながらウニのような姿である。なんというか、普通に凄いな……。

 俺はキーボードを叩く手を止め、紫電の勇士に見入っていた。

 全身から伸びていた水晶が引っ込み、右腕から細長い水晶が構成される。右手から真上
へと伸びる、長さ八十センチくらいの槍のような水晶。表面には、二重の螺旋溝が彫り込
まれたいた。なかなか芸が細かい。

「ドリルゥ……」

 その水晶槍が巨大化する。
 紫電の右手に掲げられた、身長の二倍ほどもある薄紫色の円錐型の水晶。表面には深い
二重螺旋の溝が刻まれ、まさに巨大な水晶のドリルである。てか、よく持ってられるな、
こんな重そうなもん。

 紫電がその水晶ドリルを構えた。どういう仕組みか高速で回転を始める。

 そして、飛んだ。

「ブレイィ……クウゥゥ……」
「デギャアアアアアアア!」

 空中に磔にされた実装石の胴体を貫通する紫電。
 庭に着地し、水晶ドリルを一振りして元の槍状に細くし、腕へと引っ込める。

 胴体に大穴を穿たれた実装石。

 ボんッ!

 爆音とともに、その身体が爆砕した。いや待て……今の流れで爆発する要素は無かった
のに、何で爆発? 紫電が何かしたのか? 俺の疑問をよそに、粉々の肉片や赤緑の液体
が辺りに降り注いだ。

 くるくると飛んできたサングラスを手に取り、それも小さくする。
 カチャリと音を立てて、紫電はそのサングラスを掛けた。

 オリジナルと違うのは仕様?

「アバヨ……ダチ公……」

 そう呟いて、紫電はぽてりと前のめりに倒れる。俺も大人だ。この展開にはひとまず目
を瞑ろう。それ以前に、ツッコミ入れたら負けな気がするし。

 庭にばらまかれた実装石の残骸を眺めながら、静かに告げた。

「ゴミ片付けなかったら、この小説読ませないから」
「カ……!」

 跳ね起きる紫電。

 俺はディスプレイに向かって小説の続きを書き始めた。




 おまけ

 鼻炎実装石
 鼻の病気で嗅覚が壊れているため、忌避剤の効果を受けない野良実装石。
 紫電の水晶ギガドリルブレイクで爆砕される。 

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