2010年1月 変化は起きた。 最初は軽微なものだった。日頃から観察しているものでないと気付きにくいほど ほんの少し、ほんの少しずつ実装服の緑色が濃くなってきたのだ。 ローゼン社の実装研究者や、観察派と呼ばれる一部の人間は違和感は感じたものの 特に気にも留めることもなかった。それくらい軽微な変化だった。 2010年2月 1月と同じく、僅かずつではあるが実装服の緑色が濃くなっていた。 また例年であれば寒さから風邪、肺炎を起こし死んでいく野良実装が多いのだが 暖冬のせいもあるだろうか、今年は若干死者が少ないように見えた。 2010年3月 食用実装石生産工場での生産ラインで、熱湯に落とす最終処理の場面で 即死しないものが増えてきた。 通常なら99%は即死だったものが、2割程度の実装石が 断末魔をあげながら数秒もがき苦しむようになった。 2010年4月 実装石の出産の季節。 両目を緑に染めた実装石が例年通り公園に溢れかえっている。 多産の個体が増えているようで、テッテレテチテチと騒がしい。 駆除作業で各自治体の実装課は大忙しのようだ。 2010年5月 高級買い実装を育てるブリーダーはホクホク顔。 知能の高い個体が1〜2割増しで産まれるようになった。 しかし大人しめの、口数が少ないものが多いように見えるが 使役用の用途としては非常に適していた。 2010年6月 蛆ちゃんが中々パキンしなくなり、蛆専門の虐待派が 新種、若しくは突然変異が起きたのでは?と騒ぎ出した。 マチ針2本耐えられたのが5本耐えられる程度の違いではあるが・・・。 同じく公園でのヒャッハー中、バールでの一撃で即死しない個体も増えてきていた。 2010年7月 ローゼン社が実装石の耐性強化についてのレポートを発表した。 偽石の耐性がかつての倍以上になってきていることが原因のようだ。 実装石以外の実装シリーズにはこの変化は見られなかった。 また、地球全土での実装石の数が、昨年の1.4倍になっていることがわかった。 2010年8月 公園や市街地に増えてきた実装石を処理するために実蒼石を使う自治体、国が増加。 強化されたとはいえ実蒼石による確実な抹殺が進み、実装石の数はみるみる減っていった。 2010年9月 集団で実蒼石と戦う実装石が増えてきた。 100匹単位での戦いは流石の実蒼石も大変そうだ。 実蒼石に混じり、ヒャッハーする虐待派が各地でみられた。 2010年10月 初めて、実蒼石が返り討ちにあった例が報告された。 戦う群れの中に、実装さんや実超石が多かったこと また虐待派のサポートがなかったことが原因とされたが 犠牲となった実蒼石は「普通の奴らも強くなっているボクゥ」と 言い残し事切れた。 その報告は全国の虐待派の怒りを増幅させた。 2010年11月 先月に引き続き、実蒼石が返り討ちにあう例が増えてきた。 また家宅侵入等の被害も明らかに増加し、小さい子供が留守番する家では 子供が糞まみれにされるケースも多数みられた。 2010年12月 発展途上国では、実装石の食害による被害が看過できない状況になってきた。 僅かな食料を実装石に奪われてしまい、餓死する例が多発してきた。 間接的にせよ、人間の生死に実装石が影響することへの危険視がなされたが 世界実装愛護機構「WJLO」が事前に手を回し、世界規模での対策はなされなかった。 2011年1月 日本でも、コンビニエンスストアに数百もの実装石が突入する事件が起きた。 群れの中に弱い力ではあるが実超石がおり、ガラスが割れ客の女性が顔を怪我をしたほか 止めようとした店員が足を骨折する被害が出た。 2011年2月 家畜や、庭でつながれている犬の被害が増えてきた。 野良ネコであっても子猫や病気で弱っているものが 殺され、食われてしまう場合が多くなり、問題視されてきている。 そんな中、日本では家宅侵入時に、乳児が殺される事件が起きた。 立て続けに6件。 世界中で同様の被害が起き、全世界的なアンチ実装石の機運が高まってきた。 2011年3月 実装石駆除のため、自衛隊、消防隊での火機類の使用が認められる法案が成立した。 愛護派による抵抗はあったものの、アンチ実装石の流れは止められずスピード可決となった。 2011年4月 自衛隊、消防隊の駆除活動中に、強い力を持つ実超石による反撃があり 2名の重傷者、1名の死者を出す。 公園でのヒャッハー中にも反撃による死者が出たため、虐待派は最低5名以上での行動が義務付けられた。 2011年5月 東アジアのとある国で大地震が起きる。 パニック状態の中実装石による深刻な被害が出たと発表されたが その国では国家威信を保つため、詳しい内容は報道統制がなされた。 ネット上では、複数の集落、村が実装被害により壊滅したとの情報がまことしやかに囁かれた。 2011年6月 東南アジアのある国で、同じく地震が発生し津波による大きな被害が出る。 現地をレポートするTV中継では壮絶な現場が映し出された。 人間の死体に群がり、食いつくす実装石の姿。 伝染病が流行し、弱る人間を襲う実装石。 健康な人間であっても、実装石の数の前に敗北し食い殺される場合もあった。 国連は、軍隊による実装鎮圧を決定した。 2011年7月 天災による被害がない国においても、実装石による死者が急激に増加。 一般的な実装石の力が非常に強くなったことが原因であり バールのようなもので数回殴った程度では死なず、 人間並みの体力を持つものが増えてきた。 また知能が非常に高いもの、実超石等の割合も非常に多くなり 実装石は国際的に「S級危険生物」と認定された。 2011年8月 日本でも東北地方のある集落が実装石により壊滅的な被害を受ける。 糞まみれになりながら車で脱出した者の証言によると 深夜未明に数万単位の実装が各家を襲撃し、ほぼ全ての人間が食い殺された。 自衛隊による鎮圧は11日を要した。 2011年9月 アフリカのとある国で、実装石によるクーデターが勃発。 超天才実装のリンガルによる声明に、世界中が震撼する。 「ニンゲンの終末のときは来たデス 2012年12月23日には、お前たちのいうマヤ文明の予言通り 長期暦の終わりが来るデッスン これはワタシタチ実装石の間でも 大切な石の中に刻まれてきた予言デスゥ ニンゲン達、耳をかっぽじってよく聞くデッスン 『2012年12月23日 種の終末の時はきたれり』 もう一度言うデス 『2012年12月23日 種の終末の時はきたれり』デッスン」 2011年10月 アメリカ軍が実装国に対し宣戦布告。 最新鋭の軍備による攻撃を行うが予想外の苦戦を強いられる。 実装石の成体までの成長スパンが異常に速くなったことが原因である。 死に際に子供を産み、その子供が数分間で成体になるため数が減らない。 また世代が新しくなるにつれ、ノーマルの個体も強さを増し 実装さんや獣装石、実超石の割合も高まっていった。 日本は自衛隊を派遣するまでに時間がかかり また救助作業のみの強力であったため国際的な非難を受けた。 2011年11月 丸2ヶ月近くをかけ、アメリカ軍が実装国を鎮圧。 ほっとしたのもつかの間、同じアフリカ、南米、アジア大陸で 実装によるクーデターが勃発する。 2011年12月 実装石による混乱に乗じ、一部の人間国家が他国に侵略を開始。 全世界的な戦乱が巻き起こり 第三次世界大戦となる。 2012年1月 大戦の中、中東で核が使用されてしまう。 人間対人間での戦争による使用であった。 核の使用による国際的な衝撃は大きかったが その後それ以上の衝撃が人類を襲った。 「実装石が放射能への耐性を実装した。」 人類同士の争いは止まった。 ここからは人類と実装石の争いが始まったのだ。 2012年2月 ヨーロッパのある国が実装石に降伏宣言を出す。 先進国での初めての人類敗北。 その後、実装国家の勝利が続くようになる。 また実装の知能も急激に高まり、人間と同等の武装がなされる。 2012年3月 大国ロシアが実装石に降伏。 周辺国家が次々と実装に支配され、その実装がさらに群れをなしていくため 質、量ともに実装の圧勝であった。 またこの月、一部の先進国、武装国家以外はほぼ実装石と人間の立場が入れ替わる。 地域により人間の扱いは異なるが、奴隷同然の扱いを受ける場合が増える。 日本は島国で会ったことが幸いし、他国からの実装石流入が少なく 被害は増え続けているものの何とか瀬戸際で食い止めていた。 2012年4月 アメリカの3つの州が実装により陥落。 アメリカの威信をかけた本土での戦いが始まる。 そのため他国での援護を行っていたアメリカ軍は撤退となり アフリカ大陸、ユーラシア大陸、ヨーロッパの3分の2が実装により支配される。 2012年5月 日本でも複数の県がほぼ実装により支配される。 大分県のみ被害は相変わらずなく、日本の国家機能すべてが大分県に移される。 2012年6月 アメリカ軍は劣勢の戦いが続く。 半分の州は実装により支配され、そうでない州にあっても人間はパニックとなり 犯罪等治安が悪化。 2012年7月 ア メ リ カ 軍 降 伏 。 2012年8月 日本も大分県を残し、実装に支配される。 2012年9月 全世界で身を隠しながら活動していた科学者が 大分県に集結。実装被害のない大分県の秘密に一縷の望みをかける。 それを受け、実装世界代表から人間に対し、再度のメッセージが発せられる。 「ニンゲン、無様デッスン オオイタにはワタシ達は攻め込めないデス 精々そこで縮こまって滅亡の時を待つがいいデッスン オオイタ以外の全ての地球上のニンゲンを これから抹殺することにしたデッスン!!!!!!!」 2012年10月 科学者による大分の謎の研究は何も進展せず。 実装の科学力は日増しに高まり、大分県内に実装スクリーンを打ち込む。 ※実装スクリーン 雪華実装の鏡と、薔薇実装の水晶を加工したもので 実装石の素材ではないため大分県内で存在できる。 ここに実装金による音波を送り、音声と画像を人間に伝える 実装テクノロジーの集大成。 勿論造るためには大量の実装シリーズを消費する。 実装スクリーンには、大分以外の地球上で 人間が抹殺される様子が24時間映し出される。 2012年11月上旬 科学者は大分県の研究を中止。 どれだけ研究をおこなっても大分県の謎は解けなかった。 生き残った人類は、ノアの方舟計画を極秘裏に進めることになる。 大分に集結している人類から選りすぐったメンバーを選出し 人類の未来をかけ地球から脱出させ、いつの日か 地球を実装から取り戻すことを目的とする。 2012年11月中旬 地球規模での地殻変動、異常気象がはじまる。 天災なのか、実装テクノロジーによるものなのかは最早わからない。 実装スクリーンを見ると、火山の噴火による溶岩で覆い尽くされた地表や 実装石により育てられた奇妙な種の植物が生い茂る緑の地表 実装石により食いつくされ、砂漠となった地表が映し出されている。 もう大分以外の場所で人類は存在しないだろう。 生き残った人類は、ただ受け入れることしかできなかった。 2012年11月下旬 ノアの方舟計画の脱出メンバーが決まる。 生き残った各人種毎の健康な若者を男女2組ずつ 各分野の最高権威の科学者、そして 現大分県元首「二葉敏明」 2012年12月1日 実装スクリーンに実装世界代表がメッセージを発する。 「ニンゲンの生き残りの皆さん ついに2012年12月が来たデッスー これまで偉そうにのさばっていたお前たちも あと23日後には種の終末を迎えることになるデッスン 今のワタシ達は進化し、もうニンゲンに構ってもらえなくても 死ぬことはなくなったデス お前たちがワタシ達を虐げている間に ワタシ達は少しずつこの日に向けて偽石に様々な実装を 行ってきたデス そしてこの地球はワタシ達のモノ いや ワタシ達そのものになるのデッスン!」 メッセージの終了と同時に世界規模での地殻変動が突然治まる。 2012年12月中旬 ノアの方舟計画の準備が完了する。 地球脱出は終末の1日前、12月22日に決定する。 2012年12月21日 ノアの方舟計画始動。 2012年12月22日23時 ノアの方舟計画実行。 無事スペースシップが地球を離れる。 地球に残った人類は、この船に全ての希望を託した。 2012年12月23日 私二葉敏明は無事大気圏を脱出した。 そして安全ベルトをはずし、シップの窓から地球を見て戦慄した。 地球そのものが 巨大な初期型実装石の頭部になっていたのだ。 あの溶岩は実装の赤いオッドアイ、植物は実装服や緑の眼・・・ 絶句する我々を更に驚かせる事態が起こった。 地球そのものとなった実装石の眼が、確かにこの船を睨んだのだ。 そして地殻変動で刻まれただけのはずの三つ口が動き 確かに我々の脳裏に言葉を送ってきたのだ。 「ムダナ テイコウ デス ニンゲン ワタシハ モウ コノホシ ソノモノ デッスン オマエタチガ ドンナニ アガイテモ キョウジュウニ ウチュウ ソノモノ モ ワタシニ ナル デス」 我々は絶望した。 なぜなら、別の方向の窓から見えた星も 実装石になっていたからだ。 他の乗組員のすすり泣く声だけがシップ内に響き渡った。 これでたとえ、どこか他の星にたどり着いたとしても 地球と同じ状況が待っているに違いない。 人類は敗北したのだ。 絶望の中、大分県元首である私は地球実装石に捨て台詞をはいてやった。 何の意味もないことはよくわかっていたが。 「ケッ。お前ら、結局大分県だけは手も足も出なかったじゃねえか。 お前らが全宇宙を実装石にするってんなら、俺がこうしてやる 『この宇宙全てが大分県だ!!!!!!!!!!!!!』」 その瞬間 シップの外が白い光で包まれた。 いや、おそらく宇宙全てが白い光で包まれたのだろう。 そして、何億、いや数字の単位では表せないほどの数の実装石の悲鳴が 我々の脳裏に直接流れ込んできた。 「「「「「「「「DEGGYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」 次の瞬間、我々の精神はこの2年間の記憶をものすごいスピードで逆再生していった。 変動した地殻は元に戻り、損壊していった建物や自然は元の姿に帰り 死んでいった人間たちは元の姿に戻っていくようだった。 その映像はどんどんスピードを速め、さらに昔に遡っていった。 映像の主体は地球ではなく実装石に変わっていった。 実装石の死からはじまり、成体が子実装になり、出産のシーンになり これを気が遠くなるほどの回数を繰り返し、最終的には 大きく美しい緑の石のイメージが我々の精神に映し出された。 そしてその緑の石は、一体の美しい亜麻色の髪をした人形の体内に戻っていった。 そこで我々は意識を失った。 ふと気がつくと、私二葉敏明は自身の部屋にいた。 これまでのことは夢だったのだろうか? 机の上の携帯電話を手に取る。 懐かしいな、2年前に使っていた携帯だ。 ん? 携帯の画面を見ると、2010年1月1日という日付。 うわあ、年の初めからいやな夢だなあ。 初夢は2日だったっけ?とか思いながらテレビをつける。 するとテレビ画面では、生放送の新春場番組をやっていたのだが 画面に映っているリポーターが半分錯乱気味に叫んでいる。 「私は生きています!死んだはずなのに!」 それから数日、世界は大混乱を起こした。 地球上のすべてが巻き戻っていたのだ そして、すべての生きとし生けるものが、 自分が死ぬところまでの記憶を鮮明に覚えている。 そして、唯一巻き戻っていない存在があった。 実装石だ。 全人類が記憶している。 しかし、この地球、宇宙のどこにもいない存在。 2012年12月23日に 種の終末が来たのは奴らだったんだ。 歪な存在であった実装石は完全になかったことになり 本来の実装シリーズ、実翠石だけが残っている。 私は、方舟に乗っていたメンバーで唯一連絡先を知っていた者に連絡をしてみた。 「はじめまして、二葉敏明です。 未来では大変お世話になりまして・・・変な言い方ですが。 ああ、やはりあなたは最後まで覚えてましたか。 私達、方舟メンバーだけが事の顛末を知ってるんですね、ふふふ。 うん、うん、そうでしょう。 人間は同じ未来は選択しないでしょうから、我々の未来の記憶も どっかで役に立たなくなっちゃいますね。」 そして私は電話を切った。 これから先の未来では、きっと彼と交わることはないんだろうな。 そして唯一残った謎は 大分県の力 一体全体、本当に何なんだろう。 きっと解き明かすことはできないんだろうな。 でも、この記憶を元に人類は予言ができる。 いつか、もしまた実装石が現れる時があったとしても 大分県が全てを救ってくれる、と。 「大分県」と呟いてみた。 私の頭の中で微かに「デッギャァァァ」という声が聞こえてきたような気がした。 END

| 1 Re: Name:匿名石 2014/10/16-22:29:28 No:00001482[申告] |
| 壮大なスケールの良スク |
| 2 Re: Name:匿名石 2014/10/18-01:23:38 No:00001484[申告] |
| 途中、実装人へのリンクにでも繋がるのかと思った
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