タイトル:【駆除】 ススキ原の実装石駆除(加筆修正)
ファイル:実装虐待用薬品処分.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4574 レス数:0
初投稿日時:2009/11/27-20:34:36修正日時:2009/11/27-20:34:36
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 実装生物基本法が改正されてから、およそ一年半が経つ。
 日常生活においては特に変わったことはない。公園の実装石がいくらか減って、真性の
愛護派と虐待派が減り、観察派が増えたことくらいだ。緩い虐待派兼観察派の俺にとって
はどうでもいいことである。

 ただ、重度の愛護派が自分の飼っている実装石を捨てることは問題となっていた。
 そして、俺の住んでいる街外れの草原に、その手の実装石が大量に捨てられ、そのまま
野良化して増殖している。どうも適当な捨て場として噂が広がったらしい。その実装石た
ちの駆除を、俺は先日頼まれた。入稿直後の物書きという暇な身分と、実装関係に詳しい
という理由で。

 その草原は、知合いの金型会社の社長のもの。その社長には色々恩もあり、報酬という
ことで大金も約束されていた。ついでに使用期限の切れそうな虐待用薬品の処分もしたい
という、色々な理由で俺はその頼みを引き受けたのだった。
 無論、役所に私有地の実装石駆除届けは出してある。






 秋も半ばの昼過ぎ。青い空には羽雲が浮かんでいる。吹き抜ける涼風が心地よい。

『ここは私有地です。実装石を捨てないで下さい』

 そう記された看板が立っていた。
 街外れに広がるススキ原。秋も更けてきて、枯れたススキが大量に立ち並んでいる。子
供の頃は、俺も友達と一緒にここで秘密基地なんか作ったっけ。懐かしい思い出だ。二十
年近く前のことだけど。

 俺は草原の外れに立っていた。車が数台置けるほどの開けた場所。近くに一本の枯れた
木がある。俺が子供の頃はそこそこ大きな杉の木だったが、五年前に落雷に遭ってこの有
様だった。縦に裂けた幹と数本の枝が、墓標のように残っている。
 傍らに置かれている道具箱には、小道具や薬品が納められている。社長の持っている軽
自動車を借りていたので、荷物運びは楽だった。

「にしても、匂うな……。何匹いるんだ?」

 万能リンガルを動かしながら、俺は唇を曲げた。
 辺りに漂う、うっすらとした実装臭。耳を澄ますとデスデスという声も聞こえてくる。
ススキの葉に隠れて見えないが、相当数の実装石が潜んでいるようだった。しっかし、食
えるものも無いこのススキっ原で、連中は何を食って生きてるんだろう? ま、どうでも
いい疑問なんだけど。

「さて、始めるか。紫電」

 目を向けた先には、一匹の薔薇実装がいた。首には認識タグ付きの紫色の首輪を付け、
私物が入ったリュックを背負っている。俺の相棒の紫電。

「分カッタ……」

 表情の無い顔を上げ、金色の瞳を向けてきた。
 俺が飼っている……という建前の薔薇実装。ただ、こいつは俺の家に居候していると表
現する方が正しい。本人の話では、自分は人間の創作物を食べる突然変異の薔薇実装で、
俺の物語が気に入ったとのこと。事実、俺がノートPCで書いた小説を、食べるという名
目で読んでいる。印刷されたものより、書き立ての方が美味しいらしい。

 水だけ飲んで成体になった実装石もいるらしいし、そういうもんなのだろう。

 家賃代わりなのか、色々と掃除などを手伝ってくれるのはありがたかった。
 まあ、一応実装生物基本法に基づき、俺の飼い薔薇実装として登録してある。

「ソノ前に……あれ、チョウダイ」
「了解、と」

 俺はポケットから小箱を取り出し、中身の氷砂糖を紫電に渡した。
 およそ食い物という食い物を口にしない紫電だが、なぜか氷砂糖だけは食べる。本人曰
く、嗜好品。同じ砂糖である角砂糖や金平糖は食べない。氷砂糖でないと駄目らしい。そ
こら辺の基準は、俺には分からない。

 氷砂糖を口に含んでから、紫電は近くの石に腰掛けた。背中のリュックからポケット辞
書を取り出し、読み始める。読むというか、これが紫電の食事だった。もっとも、創作物
でない辞書などは、エネルギー源というよりも飲み物のようなものらしい。

「じゃ、最初に言った通り、頼むぞ」
「ガンバッテ……」

 俺の言葉に無感情に答える紫電。
 道具箱から取り出したバールを一振り、俺は草原に入っていた。






 十分後。
 空き地には実装石が十匹転がっていた。草むらの中で適当に見繕ったのをバールで一撃
して、連れてきたのだ。今は頭から血を流してぐったりしているが、そのうち元気になる
だろう。というか、俺が元気にさせるし。

 俺は鉄のロープ杭を地面に差し、ビニール紐を四角形に張った。地面から二十センチほ
どの高さに張られた紐が、二メートル四方の正方形を作っている。その横に薄い鉄板の破
片を転がしておいた。社長さんの会社から貰ってきた、いらない鉄板である。使い終わっ
たら、そのまま鉄の廃材行き。

「デー……。クソニンゲン……。痛いデスゥ」
「カワイソウ?」

 氷砂糖を食べ終わった紫電が、金色の瞳で倒れた実装石を眺めている。普通の薔薇実装
なら実装石を見れば即座に殺しているのだが、この紫電は薔薇実装とは思えないほど攻撃
性が低かった。また、実装石含む他実装にもほとんど興味を示さない。
 骨が砕けて血が出ているが、この程度で死なないのも実装石。

「さて、調合始めるか」

 俺は地面にシートを広げ、道具箱からいくつかの器具と薬品を取り出していた。
 シートに置いた折畳式の台に乗せられた大型のビーカー。

 その中に廉価版の活性剤、偽石保護剤、精神安定剤、強壮剤、栄養剤。それらの残りを
全部注ぎ込む。さらに、裏ドドンパ、裏ゲロリ、ついでにマムシ酒にハバネロソースを注
ぐ。それらの混合液をガラス棒で勢いよくかき混ぜて終了。

 調合というにはあまりに大雑把だが、そこは気分である。

 ビーカー内でゆっくり回転している薄茶色の液体。大型の注射器で中身を適量吸い取っ
てから、一番近くにいた実装石へと近づく。
 きらりと光る金属の針に、実装石その1が慌てる。

「クソニンゲンッ……何する気デスゥ! そんな物騒なモノはさっさとしまって、ワタシ
を治療して解放するデスゥ! 無論、謝罪のステーキやお寿司は忘れては——……」
「なに、心配することは無い。これは元気になる薬だよ」

 にっこりと答えてから、俺は実装石その1の胸に注射針を突き刺した。尖端を直接心臓
へと打ち込み、およそ100mlの液体を全部注入する。

「デッ……!」

 シャックリのような声を上げ、実装石その1が弾けるように直立した。さながらバネ仕
掛けのオモチャのように。赤と緑の目を見開き、三角口を大きく開けて、全身から脂汗を
流している。びくびくと脈打つように痙攣するあちこちの筋肉。俺がバールでぶん殴った
傷は跡形もない。再生力も全開だ。

「デ、デデ……! デー……!」
「紫電」
「分カッタ」

 地面から少し浮き上がり、滑るように寄ってくる紫電。
 直立不動な実装石その1の傍らで停止すると、右手に小さな水晶の針を作り出した。薔
薇実装の作り出す水晶は大抵紫色だが、紫電の作り出す水晶は非常に色が薄い。

「サァ、頑張ッテ……全力デ穴掘リシナサイ……」

 ぷす。

 水晶針を実装石その1の頭へと突き刺した。
 その途端。

「デアアアアアアァァァァ!」

 断末魔じみた悲鳴を上げながら、実装石その1が走り出した。両目から色付き涙を流し、
実装石とは思えない異常な勢いで。犬や猫に匹敵するような速度である。そのまま地面に
落ちていた鉄の破片を掴み、凄まじい勢いで紐で囲まれた地面に突き立て始める。

「何が起ってるんデスゥゥ……」

 狂ったように地面を掘り始めた実装石その1の姿に、他の実装石たちが怯えたように身
を寄せ合っていた。毒薬か何かを注射されたと思っているのだろう。
 だが、実際は間逆だ。
 俺は空の注射器で混合液を吸い上げ、残りの実装石たちに見せるように突き出す。

「説明しよう!」

 朗々と声を上げる。言ってみたかったんだ、これー。
 全員がその注射器を凝視するのを確認してから、おもむろに続けた。

「俺が注射したコレは、活性剤やら安定剤やら栄養剤やらを適当に調合した、実装石が死
ぬほど元気になる薬だ。名付けて、超カンフル剤ッ! 効果は見ての通り! 成人男性並
みの速さで数時間走り続けられるくらい元気になるゾ! きっと……」

 と、穴掘り実装を指差す。
 この混合液を人間の薬に喩えるなら、超アッパー系のドラッグ兼超強力ドーピング剤。
うん、毒薬だな。ジャック・ハンマーも拒否するくらい。

「デェェェ……?」

 実装石たちは俺の言葉を理解していないようだけど、気にしない。これは俺の自己満足
だし、理解できることはハナっから期待してない。どうせ頭で分からなくとも、すぐに体
で分かるんだから。

「そして、俺の相方である薔薇実装、紫電の水晶針」

 俺の言葉に応えるように、紫電が右手を持ち上げ水晶針を作り出す。五センチほどの細
い針のような水晶。微かに紫色を帯びている。

「こいつは凄いんだぞ。これは、実装石の頭に刺すことによってその全身を支配し、紫電
の命令通りに無理矢理動かす、特性の命令強制水晶針だ。今の命令は『その紐に囲まれた
四角形の地面を、死ぬ気で掘れ』だ。つまり、見ての通りの状況だ」
「カワイソウ……」

 無表情のまま水晶針を持って近づく紫電と。
 素敵な笑顔のまま注射器を持って近づく俺に。
 実装石たちはただ震えることしかできなかった。






「デアアアア!」
「デギョォオオオオ!」

 絶叫だか悲鳴だかを上げ、赤と緑の涙を流しながら、鉄の破片をひたすら地面へと叩き
付ける実装石その1からその10。超カンフル剤と紫電の水晶針の相乗効果で、実装石と
は思えない勢いで仕事を行っている。
 ま、掘るといっても、ただその場で土を掘り返しているだけ。端から見れば、耕してい
るように見えるかもしれない。目的は耕すことではないので、誰かが掘った土を運び出さ
ねばならない。まあ、ようするに俺だ。
 俺は用意したスコップを地面に突き立て、紫電を見やる。

「じゃ、残りは頼むぞ」
「分カッタ……」

 紫電が右手で敬礼のような仕草をする。ポケット地図と氷砂糖の入ったリュックを背負
い、左手に小さな草切り用のナイフを持っていた。これが作業準備である。紫電の仕事は
草地に散らばっている実装石を狩り出すことだった。
 右手を下ろし、杭のような水晶を作り出す。
 それを地面に突き刺した。

「コレ、目印……」

 地面の水晶杭を示し、確認するように言う。

「ジャ、行ッテ来ル……。家主サン、穴堀リ、頑張ッテ」

 音もなく地面から浮き上がり、紫電が草地へと向かった。三十センチほどの高さを、大
人の徒歩ほどの速さで進み、茂るススキの中へと消える。
 それを見送ってから、俺は穴掘り実装石が掘り返した土を、外へと放り出す作業へと移
った。適材適所とはいえ、これはキツい仕事だなぁ。



 ------



 薔薇実装の本能で、偽石のある位置——実装石のいる場所は正確に分かる。高精度の偽
石サーチャーくらいの精度だろう。どちらがかが残って穴掘り、どちらかが草地に入り込
んで実装石の狩り出し。適材適所とは家主さんの言葉だが、お互いに他の選択肢が無いの
が事実だった。

「デ、お前何者デス? ここはワタシの縄張りデスゥ。……よそ者はすぐにどこかに行く
デス! さもないとこのグリーンドが酷い目にあわせてやるデシャァァ!」

 地面に置かれたボロい段ボール箱から、威嚇してくる実装石。右手に持った、オモチャ
のステッキを剣のように突き出していた。ボロボロの既製服を着て、ボロボロのリボンを
付けている。捨てられた元飼い実装だろう。
 性格は、準糞蟲。

「カワイソウ……」

 紫電は右手を伸ばし、水晶針を飛ばした。
 ぷす、と額に刺さる。

「デ? デー! お前、今何……デ! 体が勝手に動くデスゥ!」

 強制針の効果で、自分の意志とは関係無く歩き出す実装石。必死に止まろうとしている
が、無意味な抵抗だった。水晶針が脳神経へと干渉し、紫電の命令を強制させている。自
分の知る限り、この強制水晶針の効果に逆らえた実装石はいない。
 グリーンドなる元飼い実装は、さきほどの空き地に刺した目印水晶へと勝手に歩いてい
く。目印水晶の場所は、水晶針が勝手に教えてくれた。

「お前ッ、ワタシに何したデスァアア! さっさと元に戻すデシャアア!」

 振り向きながら叫んでいる。
 紫電はそれ無視して次の実装石を探しに向かった。偽石の場所は分かるので、迷うこと
はない。ただ、生い茂る枯れススキは普通に邪魔だった。左手に持った草切りナイフでス
スキを掻き分け、空中を滑りながら進む。

「実装石、タクサン……。オ仕事、イッパイ……。ワタシ、カワイソウ……」

 そうボヤくが、残って穴掘りよりも楽だろう。
 これも居候の対価だった。





 実装シリーズの中でも、伝説的な初期型カオス、同様に怪物的な雪華実装を除けば、薔
薇実装の戦闘能力は他の追随を許さない。実装石ではたとえ一万匹集まっても無理、実蒼
石が十数匹集まって、ようやく倒せるか否かの強さである。普通の薔薇実装ならば、この
草地の実装石を全滅させるのに十分も掛らないだろう。

 それをしない理由はふたつ。

 まずひとつは、実装石の死体を放置すると腐って大変なこと。
 そして、もうひとつは、紫電そのものが薔薇実装としてはありえないくらい弱いことだっ
た。実装石よりは確かに強い。しかし、標準的な成体実蒼石と正面からやりあえば、勝率
は五分五分。その程度の強さだった。
 普通の薔薇実装が他の実装生物の偽石エネルギーを主食にするのに対し、突然変異体の
紫電は創作物に込められた人間の意志エネルギーを糧とする。その差なのだろう。

 もっとも、主に本類を読むことが食事のため、知識量は下手な人間を上回り、人間並み
に知能も高い。薔薇実装特有の闘争本能も薄いため、非常に大人しく従順。本来ならまず
出ない飼い薔薇実装証明証をあっさり取ってしまうくらいに。
 まさに、突然変異種。

 そして、弱さを補う技術も色々と持っている。
 今使っている強制命令水晶針もそのひとつだった。実装石だけでなく、実蒼石や実装紅
にもほぼ確実に効果があり、同族である普通の薔薇実装にもある程度効果がある。以前、
ゴタゴタで他の薔薇実装と殺し合いになった時は、相手に水晶針を撃ち込んで動きを止め
ている間に逃げたこともあった。





 灌木の陰に隠れるように作られた段ボールハウス。ビニール袋で防水処理がなされ、枝
葉や草で迷彩処理もしてある。意味があるようで意味が無いが、努力の形跡は伺える。こ
こに住んでいるのは、賢い固体のようだった。

「テチ?」

 ススキをかき分け現れた紫電を、仔実装四匹が不思議そうに見つめる。姉妹で遊んでい
たらしく、小さなボールが転がっていた。間引きも終わった賢い仔実装たち。
 薔薇実装特有の強烈な殺気も攻撃性も無いため、他の実装から危険視されることもまず
ない。それが幸運か不幸なのかは、紫電には分からなかった。

「サヨウナラ……」

 右手を一振り。
 手から放たれた水晶の針が、仔実装四匹に突き刺さる。偽石を一瞬で破壊され、事態を
理解する暇も無く絶命した仔実装たち。水晶針の精密射撃も、紫電が身に付けていた技術
のひとつだった。
 段ボールハウスの中で、何かが動く気配。親実装だろう。

「カワイソウ……」

 紫電の右手から伸びた水晶の槍。細長い水晶が、段ボールを貫き、中にいた親実装の偽
石を砕き、反対側の段ボールを貫き、地面に刺さる。
 普通の薔薇実装のように大きな水晶を一気に作ることはできない。だが、小さな水晶を
効率よく使うのは紫電が得意とすることだった。

「カワイソウ……ダカラ、苦シム必要ハナイ」

 賢い実装石には武士の情けを掛けるのが、紫電の流儀である。
 水晶を介して、紫電に流れ込んでくる親実装の偽石エネルギー。それを感じ取ることは
できるが、そのほとんどは紫電の偽石をすり抜け霧散していった。何度やっても同じ。普
通の薔薇実装のように、他実装の偽石エネルギーを取り込むことはできない。

「カワイソウ……。カワイソウナ、ワタシ。オ仕事、タクサン」

 吐息してから、次の実装石を目指して、紫電は移動を開始した。



 ------



「デアアアア!」
「デオオオオ!」

 騒がしい絶叫とともに、十匹の実装石が鉄の破片を地面に突き立てている。俺の作った
超カンフルで四、五段階限界突破した身体能力と、紫電の刺した水晶針の効果で、意志と
は無関係に動く体。ここまで来ると、穴掘り機械だった。

「しっかし、元気だな、こいつら……。俺がやったんだけど」

 掘られた穴はおよそ五十センチほどの深さになっている。
 スコップを置いて、俺は折畳椅子に座ってポカリを飲んでいた。あいにく俺は生身の人
間。鈍った体で穴掘りをすれば、疲労も溜まるし体も痛くなる。
 疲れた身体に秋風が心地よい。

「デヒョオオアアァァァ!」

 住宅地からは遠いので、騒音公害にはならない……と思う。
 過剰な肉体酷使に、筋肉が千切れ、骨が砕け、喉が裂けても、その次の瞬間には再生し
ている。体内で破裂する血管に、一瞬痣のような跡ができ、数秒後に消える。まさに命を
燃やしている状態だ。各種薬剤のおかげで、痛みや疲労も感じていない。むしろ、壊れた
くらいに恍惚とした表情のまま、涙と涎と鼻水と汗とを垂れ流している。

 これで裏ドドンパや裏ゲロリが入っていなかったら、盛大に糞を漏らし、嘔吐していた
んだろうけど……。

「こっちも、随分集まったな」

 紫電が地面に刺していった水晶の杭。
 そこに集まっている成体から仔まで、百数十匹の実装石。みな、頭に水晶の針が刺さっ
ていた。紫電に刺された強制針のせいで、目印の水晶杭の所までやってきているのだ。デ
スデスと騒ぎながら、ぎゅうぎゅうとすし詰めになっていた。
 時折ススキの隙間から実装石が現れ、集団の外側へと張り付く。

「さてと、俺も穴掘り続き始めるか」



 ------



 何匹くらい実装石を狩り出しただろうか?
 朽ち木に腰掛け、草切りナイフとリュックを起き、紫電は氷砂糖を口に含んで休憩して
いた。口の中に広がる甘い味。他の食べ物は食べられないが、なぜか氷砂糖は食べること
ができる。そして、その味と食感は、怖いくらい舌に合っていた。

「フシギ、フシギ……?」

 さほど持久力の無い紫電は、適当な所で休憩する必要がある。
 リュックに入れていたポケット地図を取り出し、両手で広げた。

 紫電は創作物に込められた人間の意志エネルギーを糧とする。基本的に人間の書いたも
のなら、種類は問わない。ただ、本として印刷されたものよりも、書き立ての方が美味し
い。そして、居候先の家主さんの書く小説やエッセイは、体に合うのか非常に美味しかっ
た。書き立ての生文章は、まさに絶品である。

「美味シイ文章。ワタシ、シアワセ……トッテモ、シアワセ」

 紫電はその味を思い出し、無表情のまま笑った。
 一方で、直接的な意志エネルギーのあまりない地図や楽譜などは、大きな栄養にはなら
ない。意味合いは飲み物に近いだろう。また、一度食べてしまうと栄養の落ちてしまう創
作物とは違い、何度も変わらず味わうことができた。

 初版が昭和のこのポケット地図は、紫電が愛用しているものだった。何も食べられなか
った時はこの本の栄養で生き延び、忍び込んだ図書館で本を食べまくった時は息抜きにこ
の地図を食べ、今は氷砂糖の友となっていた。本当に十数年以上一緒にいる非常に味のあ
る地図である。
 今の状況を人間に喩えるなら、高級和菓子とお茶の休憩だろう。

「実装石、5ヒキ……? デモ、今ハオ休ミノ時間」

 辺りに見える偽石の気配。氷砂糖の匂いに釣られて近づいてきたのだろう。だが、今は
休憩時間であり、余計な戦いは不要である。
 不意に殺気を感じ、紫電は横に移動した。

 べちゃり。

 不快な異音と、鼻を突く臭い。
 地図を持ったまま金色の瞳を匂いの元へと向ける。
 氷砂糖の入ったリュックが、緑色の糞にまみれていた。投糞で、氷砂糖全滅。

「デーププププ! これで、お前のアマアマはもう食べ——」

 その実装石の言葉は最後まで続かなかった。
 紫電の右腕が、実装石の顎を打ち上げる。ポケット地図を朽ち木の上に置いてから、一
息で接近。手加減抜きの本気のアッパーだった。

 顎の骨の砕ける手応え。
 間髪容れず振り下ろした左腕が、頭蓋骨を砕く。左下段蹴りが膝を砕き、右の正拳が肩
骨を砕き、脇腹を抉った左腕が内蔵を潰し、右中段蹴りが腰骨を砕く。薔薇実装としては
非常に弱い紫電だが、それでも実装石度を圧倒する戦闘力は有していた。

「カワイソウ……。ワタシヲ怒ラセタ貴方ハ、カワイソウ……」

 右手に作り出した水晶の短剣が閃く。頭巾が、前掛けが、服が、汚れたパンツが、前髪
が、後ろ髪が、粉々に切裂さかれ、靴のみ残した禿裸が仰向けに倒れた。

「デププ、アマアマデスー」
「こんな美味しいもの、ドレイの所に住んでいた時以来デスー!」

 はっと振り返る紫電。

 四匹の実装石が、糞にまみれた氷砂糖を貪るように食っていた。だが、もはやそれはど
うでもいいことだった。びりびりに破られたリュックもどうでもいい。
 朽ち木の上に置いておいたポケット地図が、地面に落ち、何度も踏まれ、ページがバラ
バラに破け、ついでに実装石が漏らした緑色の糞にまみれていた。

「カ……ワ……」

 水晶の短剣が地面に落ちる。
 自分が実装石だったら、一瞬で偽石が砕け散っていた。精神的に頑丈な実装紅や実蒼石
でも、偽石への重大な損傷は免れなかっただろう。十数年の月日を共にしてきた命の次に
大事なポケット地図が、無惨に破壊され糞塗れにされた様子は。

 秋風に枯れススキが揺れている。青く澄んだ空と白い羽雲。

「イ……ソ……ゥ……」

 他の実装石の偽石エネルギーを取り込み、爆発的なパワーを燃やす薔薇実装。その寿命
は長くても十年程度。だが、紫電はその特異な食事と低出力のため、細く長く、もう二十
年以上も生きていた。その実装生の中で、おそらく最大の衝撃。
 金色の瞳から一筋の涙が流れ落ちる。
 偽石が砕けるかと思うほどの精神的ダメージが、形を変えて偽石を包み込んだ。煮え立
つ溶岩のような、熱く重い感情。意識が怖ろしく鋭く、冷たくなっていく。

「カワイ……ソウ……!」

 紫電は、その長い生涯の中で、初めて……
 本気でキレた。



 ------



 風が吹き抜ける。ススキの葉が擦れ合う微かな音。

「ん?」

 俺は穴掘りを一時中断し、顔を上げた。
 なんだろう、この嫌な予感?

「——ァァ——ィィ!」

 声が聞こえる。続いて、物凄い勢いでススキの葉が掻き分けられる音が近づいてきた。
何か形容できない威圧感が迫ってくる。
 そして、ススキをかき分け飛び出したのは、紫電だった。

「ソオオオオ! オオオウウウウウウゥゥゥッ!」

 咆哮のような泣き声とともに、一直線に空を切り裂く。普段どんなに急いでも小走りく
らいの速さでしか移動できない紫電が、比喩抜きで撃ち放たれた矢のような速度で空を突
き抜けていた。そのまま枯れ木に向かい。

 タァンッ!

 枯れた幹から乾いた音が響く。
 幹に突き立てられた濃い紫色の水晶。それは、長さ五十センチくらいの水晶の杭だった。
普段紫電が作る水晶はほとんど無色透明。話によると、水晶の色は薔薇実装としての力の
濃さらしい。つまり、普段紫電ははほとんど薔薇実装としての力を出していない。そして、
今は何故か薔薇実装本来——いや本来以上の力を出している……?

 杭から伸びる無数の水晶。丸い水晶をいくつも連ねた形状は、まさに鎖だった。その鎖
に縛められているのは、禿裸一匹を含む実装石五匹。

「カワイソウ……」

 視線を転じると、近くに立った紫電。
 金色の瞳から涙を流し、俺に見せるように何かを前に差し出す。

 ……えっと?

 それが、紫電お気に入りのポケット地図と理解するまで、数秒の時間を要した。無惨に
踏み付けられ、ページも破れ、実装糞にまみれている。もう読めないだろう。

 俺は何が起ったのかを、漠然と理解した。
 ボロボロのポケット地図を受け取り、俺は紫電の頭を優しく撫でる。こういう場合には
何と言っていいか分からない。それでも、思いついたことを素直に告げた。

「好きにしろ。俺は止めない」
「カワイ、ソ、ゥ……」

 紫電が、目印の水晶杭に集まった実装石たちを一瞥した。それだけで、頭に刺さってい
た水晶針が砕け散る。だが、解放したわけではない。
 俺の頭ほどの位置にまで飛び上がった紫電が、右手を突き出す。
 手から生成され、撃ち出された新たな針——紫水晶の針が、実装石の頭に次々と突き刺
さった。二百を越える実装石。その頭へと針を撃ち込む精密連続射撃。

「デー……」

 水晶針を撃たれた実装石たちが、動き出す。
 無言のまま列を作るように並び、穴掘実装石が掘っていた穴からバケツリレーよろしく
土を移動させていく。穴の壁に実装石の階段が作られ、その上に立った実装石が土を掬っ
て器用に隣の相手に渡していた。素手のまま穴掘りに参加するものもいる。

 どうやら、俺の穴掘りは必要無くなったらしい。

 紫電が空中で身を翻し、箱の上に置いてあったビニール紐を掴み、弾丸のようにススキ
の中へと消えていった。





 三十分ほど経っただろう。
 深さ一メートル半ほどまで掘り下げられた四角い穴。
 穴の底では四十匹くらいの実装石が倒れていた。最初の穴掘り実装に加えて、紫電が強
制労働させた、追加の三十匹ほど。階段実装石も含む。過酷な労働条件の下で、完全にエ
ネルギーを使い果たし、動けぬまま仮死状態に移っていた。
 一応穴掘り用の鉄の破片は外に放り投げてある。

「まったく、よくここまでやったよ……」

 俺は両手を腰に当てて呻いた。
 穴の隣では、これまた過労仮死している成体実装石が三百匹ほど。中仔実装を含むと、
数は分からん。土のバケツリレーに加えて、意味不明な労働をしているものも多数いた記
憶がある。ススキの中を飛び回って紫電が持ってきた実装石たちだった。
 持ってきた——というのは比喩ではなく、強制針を撃ち込んだ数匹から十数匹の実装石
をビニール紐でぐるぐる巻きにして飛んでくること約十回。

「ココノ、生キテル実装石ハ、全部集メタ。家主サン、続キヲ……」

 静かな怒りのこもった紫電の口調に、俺は無言で頷いた。
 例の地図はハンカチに繰るんで荷物の傍らに置いてある。

 俺が道具箱から取りだしたのは、褐色の500ml瓶。ラベルには『実装液化剤原液』と記さ
れていた。名前の通り、今まで時々使った実装液化剤の原液の残りである。普通はこれを
百倍程度まで薄めて使うのだが、これは処分なので細かいことは無視。原液ともなると、
いちいち注射で血管に体内に注入する必要もない。
 俺は、瓶の蓋を開け、中身を無造作に穴の中に落とした。

「カワイソウナ、アナタ達……コレカラ起ル事ヲ、シッカリと目ニ焼キ付ケテオイテ。何
ガ起ルカ知ッテイル方ガ……深ク、深ク恐怖シテ、絶望デキルカラ……」

 木に吊された五匹の実装石が、両目を見開いて穴の中を凝視する。頭に刺さった紫水晶
針を媒介として、紫電の意志に肉体を支配されているようだった。

 バチャバチャと、穴の底にいる実装石に液化剤が掛る。原液がかかった皮膚がまるで水
を掛けられた砂糖のように溶け始めた。実装石の溶解は掛けられた部分に止まらず、浸食
していくように他の組織へと広がっていく。それだけではない。溶けた実装石に触れた、
無傷だった実装石にも溶解の侵食は広がっていった。

 ほどなくして、穴の底に実装液体が溜まった。肌色に緑や赤の混じった粘着性のある液
体。だが、液体になりながらも、まだ生きている実装石。偽石も溶けているため、容易な
ストレスでは自壊することもなくなっている。

「紫電、俺は残った死体を片付けに行く。あとは、任せた。ただ、この液化剤は薔薇実装
も溶かすから、くれぐれも触れるなよ」
「分カッテイル……。安心シテ家主サン、ワタシハ大丈夫」
「じゃ、好きなように調理しろな」

 俺は高精度の偽石サーチャーと、大型の実装処理スプレー、その他虐待小物をウエスト
ポーチに入れ、ススキの中に入っていった。ちなみに、サーチャーは主に死体に刺さった
紫電の水晶を見るためのものである。
 本来は俺が虐待したかったけど、仕方ないか。



 ------



 家主さんがススキの中に消えてから。
 紫電は荷物から一本の瓶を取り出した。『液状実装香』と記された小さな瓶である。実
装石の食欲を強烈に刺激する薬品。これを掛けられたものを見た実装石は、それが土でも
糞でもたとえ自分の体でも食べずにはいられなくなる。

『ごめんなさいデス! もう許してデス!』
『死にたくないデスゥゥ!』
『でちゅぅぅん。可愛いワタシを助けるデスゥ』

 動かない五匹の実装石。刺した水晶を介して、その思考を知ることができる。内容は月
並みだが、その絶望が紫電の心の闇を少しだけ満足させた。
 瓶の蓋を開け、中身を実装液体の沼へと落とす。

「ココハ地獄……。カワイソウ、ワタシハ地獄ヲ作ル……。アナタ達ヲ堕トスタメノ地獄
ヲ作ル……。カワイソウ……デモ、トッテモ楽シイ……」

 赤い液体が、実装液体に混じった。
 すると、肌色の沼の表面に細波が立ち始め、やがてその波が大きくなっていく。一分も
経つ頃には、液面全体がばしゃばしゃと細かく波打っていた。

「食ベテイル……。自分達デ自分達ヲ食ベテイル。カワイソウ、オゾマシイ……。モシ、
ココニ生キタ実装石ヲ入レタラ、ドウナルト思ウ……?」

 金色の瞳を向けた先。
 木に釣り下げられた禿裸だった。





 訳が分からない。
 元飼い実装のテッチーは、足りない脳みそをフル回転させていた。
 動かない体。勝手に動く体。アマアマに糞を投げつけてやったと思ったら、視界が一回
転して、禿裸になって木に釣り下げられていた。全身が酷く痛むような気がするが、不思
議と痛みは感じない。思考の限界を超えた出来事に、もはや自分がどうなっているかも分
からなかった。
 とにかく、テッチーは自分を見上げた紫色のそいつを睨み返す。

「このクソムラサキ、さっさとワタシをここから解放するデスゥ!」

 叫んだつもりだが、声は出なかった。
 紫色はふわりと浮き上がり、テッチーの前までやって来た。ぱちんと何かの弾ける音。
重力が無くなる、と思った瞬間鈍い衝撃があった。

「デェ!」

 慌てて真上を見上げる。
 テッチーの体に絡みついていた鎖。その端を紫色が握っていた。支配が薄れ、体が自由
に動き、声も出せるようになっているが、そことには気づいていない。

「デシャアアア! お前、ワタシの髪と服を返すデスゥ! あと、お前のドレイに命令し
てワタシを飼わせるデス!」
「下ヲ見テ」

 淡々としたその言葉に。
 テッチーは視線を下に向けた。

「アナタヲ呼ンデイル」

 肌色と緑と赤い色の入り交じった浅い沼が真下に見える。ばしゃばしゃと波打っている
液面。訳が分からない。たくさんの同族が倒れた穴。人間がそこに水を入れたら、同族が
解けて水になった。そこにこの紫色が何か入れたら、波打ち始めた。

 だが、空回りする思考は、食欲にかき消される。

 鼻をくすぐる、香ばしい匂い。あの液体から漂ってくる物凄く美味しそうな匂いに、口
からだらだらと涎が垂れる。

「オイ、クソムラサキ! さっっさとワタシにアレを食わせるデス!」
「モチロン」

 パチン。

 と鎖が爆ぜ、テッチーは沼へと落下した。
 ばしゃりという水音と両足の痛みは無視して、すぐさま肌色の水を口に含む。金平糖や
超高級実装フードとも違う、表現できないような美味が口の中へと広がった。

「美味しいデス〜ン……ん?」

 液体がするりと喉から胃の方へと流れていく。不自然なほどあっさりと。

(何んデス?)

 そう呟いたつもりだった。
 だったが、声が出ない。舌を動かそうとしても舌が動かない。いや、舌自体が溶けてな
くなっていた。歯や唇も溶けて無くなっている。

『口ノ中、歯ト舌ト、喉ヤ声帯、内臓……。アナタノ体ノ中ガ溶ケテイル……』

 意識に直接届いてくるような、紫色の声。頭に刺さったままの水晶針が、紫電との中継
をしているのには気付けなかった。ただ、言葉の意味はなんとなく理解できた。
 正確には、紫電によって理解させられたのだ。水晶針を介して、テッチーの思考に自分
の現状を無理矢理刻み込む。死の危険に晒されている、と。

(これはピンチ、デス……)

 何だかよく分からないが、自分が怖ろしく危険なことになっていた。理性よりも本能的
恐怖が、逃げろと叫んでいる。溶けた同族の姿が脳裏に浮かんだ。
 そこに落ちた自分も。

『モチロン、溶ケル……』
(デェ!)

 とにかく逃げようとするが、足が動かない。
 ばしゃばしゃと勝手に波打つ液面。その飛沫に触れていた両手の肘から先が無くなって
いた。液内に浸かっている下半身の感覚も無くなっている。波打つ液面が腹の皮膚を溶か
しているのが目に見えた。なのに、痛みは全くない。
 全身が溶けていると、テッチーは理解した。いや、紫電の水晶針によって理解させられ
た。ほどなく完全に溶けることも。

『ソウ……、貴方ハ溶ケテ消エルノ……』

 恐怖に駆られ、真上の紫色を仰ぎ見る。

(デアアアア! そこのクソムラサキ、助けるデス! いや、助けて下さいデス! お願
いしますデスゥゥゥ! こんな所で死ぬのはイヤデスゥゥゥ!)

 根本から溶けた下顎が液面へと落ち、見る間に消えていく。既に胴体は内部と外部から
溶かされ、辛うじて形を保っているだけ。
 下顎の無くなった異形の形相で、テッチーは空に浮かぶ紫色に助けを求めていた。肺も
無くなり、声はおろか息すら出ていないのに。

『サヨウナラ……』

 紫電が右手を左右に振る。
 その後ろの空が、妙に青く高く透き通っていた。

(イヤデエェェェスッ! 死にたくない、死にたくないデ——)

 頭が液体へと落ちる。水音を耳が捉えるのも一瞬の出来事だった。溶けた胴体が体を支
えられなくなり、崩れたのである。
 実装石が溶けて液体に混じった——紫電の目にはそう見えた。

「マダ終ワラナイ。終ワレナイ……」

 何もできぬまま、液中に沈んでいくテッチー。手足も体も、もう無い。残った顔も、皮
膚が、肉が、骨が、目が、耳が、脳が瞬く間に溶けて周囲の液体と混じっていく。

(デエエエン、デェェェェン! 死んじゃったデスー、ワタシ死んじゃったデスー)

 喉も無く、涙を流す目もなく、テッチーは泣き叫んだ。何が何だか分からないまま、光
も音も匂いも無い世界に放り込まれる。呼吸もできず、存在するはずのない体に、酷い苦
痛が走っていた。それが死ぬということなのだろう。
 だが。

(デ? 美味しいデス?)

 味覚——のような部分を刺激する旨みに、テッチーは泣くのを止めた。
 最初に口にした液体と同じ味のものが、意識を包み込んでいる。動いているのか動いて
いないのか分からない部分を動かし、周囲にある美味を貪り始めた。

(美味しいデス、美味しいデス、美味しいデス! 美味しいデスゥゥゥ!)

 液体と一体化したテッチーは、溶けた液体実装香の生み出す食欲に支配されていた。も
う苦痛も意識に入っていない。自分自身を喰い、周囲を喰い、自分自身に喰われ、周囲に
喰われている。お互いにお互いを食い合う実装液体の一部と化していた。

(美味しい、美味しい、美味しい、美味し……デギャァァァ! エぐゴアあげデデァ、マ
ズい、マズいデスッ! でも美味しいデスッ、食べちゃうデス! イヤデス! ウゲあご
うあデアアァ 苦い、渋い、美味しいデスァァ! 何が起ったデスゥゥゥ!)

 前触れ無く味覚を襲った強烈なマズさに、テッチーは再び悲鳴を上げていた。





「カワイソウ……」

 とぽとぽと水音を立て、瓶から落ちていく透明な液体。
 実装石忌避剤という薬だった。実装石にのみ感じられる強烈な刺激臭を放つ液体で、主
に花壇や家庭菜園の周りに撒いて使う。無論、それを実装石が口に入れれば、胃の中身を
全て吐き出すほどのマズさに悶絶することとなる。

 一段と激しく波打つ液面。実装香の旨みと、忌避剤の不味さ。それを全身で味わってい
るのだ。無理矢理不味いものを食べているような状態。
 紫電は地面に降り立ち、跳ねる液面を見つめた。

「ミンナ、来ナサイ……」

 空き地に倒れていた実装石たちが、のそりと起き上がる。皆瞳に生気が無く、意志自体
感じられない。まるで壊れた機械のように、もしくは出来損ないの人形のように、ぎこち
ない動きで地面を移動し、そのまま実装液体の沼へと落ちていく。途中で潰れた仔実装や、
死んだ実装石を掴みながら。



 ------



 ま、紫電の復讐に俺が関わるべきではないな、と。
 俺は偽石サーチャーを動かしながら、茂みを移動していた。画面に映るのは紫色の点。
薔薇実装の偽石を示す点だった。これは、偽石のエネルギーを結晶化させた水晶にも反応
してしまう。機能不足のひとつだが、使い方によっては便利である。

「お。あった、あった」

 灌木の陰に隠れた段ボールハウス。ビニールで防水加工がなされ、迷彩のための枝など
がくっつけてある。あんまり意味無いけど、努力の跡は評価できた。

 その庭のような場所に倒れている仔実装四匹。どれも、紫電の水晶針に偽石を破壊され
事切れていた。段ボールハウスをひっくり返すと、同じく偽石を砕かれ自分に何が起った
かも分からず事切れた親実装が落ちてくる。
 あいつは賢い連中には武士の情け掛けるからな。

「……武士の情けって、苦しまずに殺すって意味だけどね」

 俺は実装処理スプレーを取り出し、適当に集めた五匹に中身を吹き付けた。実装処理ス
プレーの中身は、特殊な処理の施された、液体の実装細胞だった。
 シュワシュワと泡立ちながら、処理液が死体を浸食していく。

 液体の実装細胞は死んだ実装細胞を取り込み、増殖しながら瞬く間に自己崩壊を迎える。
処理液は熱を放ちながら、死体を水分と二酸化炭素と喰いカスへと分解していくのだ。
そして、死体全てを食い尽くすと、自壊して終わる。残るのは埃状の塵のみ。

 この処理液は実装石細胞の自己増殖と自己死を利用したものなので、死んだ実装石以外
には無害という安全性もあった。人間を含む普通の生物や、他実装に掛けても何の効果も
及ぼさない。

 実装石の死体に吹き付けるだけで、跡形もなく消し去れる、非常に便利なスプレーだっ
た。外での虐待の友と言えるだろう。

「テ……」
「おやぁ?」

 ふと目を移すと、中実装が俺を見ていた。
 どうやら、こいつは狩り残しらしい。これだけ数がいれば、全部を捕まえるというのも
無理だろう。一匹二匹の狩り残しは覚悟していた。実際、サーチャーを見ると、緑色の点
がいくつか残っている。

「テー!」

 俺と目が合い、逃げ出す中実装。

「テッチ、テッチ!」

 ま、遅いのはお約束。
 俺はスプレーを一度しまい、ウエストポーチから注射器を一本取り出した。大きさは普
通の注射器。にんまりと他人に見せられない笑みを浮かべながら、やや早足で中実装に追
いつく。その頭を左手でがっしと掴んでから、背中に注射針を突き刺した。

「テ!」

 もちろん、心臓に直接中身を注入。
 体を刺された痛みと異物を注入された痛みに、中実装が仰向けに倒れる。

 俺はポーチから取り出した処理スプレーを中実装の右腕に吹き付けた。本来、スプレー
の液体細胞は生きた実装石には効果が無い。多少表面を削りはするものの、実装石本来の
デタラメな免疫力に阻まれてしまうからだ。
 だがしかし、免疫除去剤で免疫を削った実装石にかけると。

「テェェェェ! テェェェェ!」

 右腕を押さえてその場を転げ回る中実装。免疫が大幅に削られているため、処理液の浸
食を抑えられないのだ。焼けるような熱とともに皮膚が喰われ、下の肉組織へと浸食して
いく。ただ、一応免疫は残っているので、死体ほど早く浸食はされない。それだけに苦し
む時間は長かった。
 右腕を押さえた左手に、処理液が付き、左手を浸食し始める。

「テァァァァ! テヒィィィィ!」

 色付き涙を流しパンコンしながら、中実装はのたうち回っていた。生きながらにして、
両手をじわじわと焼かれているようなもの。その痛みは相当なものだろう。

 ああ、和むなぁ。

 やがて浸食が体内へと及ぶ。

「テッ! テァ!」

 血液に乗った処理液が全身に運ばれ、あちこちの組織を内部から浸食し始めた。のたう
ち回る力も無くなり、うつ伏せで止まった中実装。今はびくびくと痙攣するだけ。
 人食いバクテリアと呼ばれる細菌があるが、これも似たようなものだろう。

「テ……!」

 パキン、と偽石の砕ける音が聞こえた。
 あらら、案外早いもんだな。偽石が砕ければ、あとは簡単だった。
 体中に巡った処理液が、内部から体を浸食し、中実装の死体がその場で崩れ始める。三
十秒も経たずに、そこには塵の小山が残った。

「さて、次行こう」



 ------



「デェェ……オオォォォ……」

 意味のない、苦悶の呻き声が響いている。
 穴の中で展開する異様な光景に、枯れ木に吊された実装石四匹はただ震えていた。

 半分溶けた数百の実装石が蠢きながら、お互いに溶けながら食い合っている。実装液化
剤の原液もそれほど量が多かったわけではないので、数百の実装石を全部きれいに液体化
させるほどの力は無かった。

 紫電が口にした地獄という風景は、まさにこのようなことを言うのだろう。

 実装沼の傍らに浮かんだ紫電が、右手を持ち上げる。

「サア、アナタタチ……」

 パチン。

 水晶の鎖が千切れ、五匹の実装石は地面に落ちた。

「デア!」

 それなりの高さから落ち、足や腰を折る実装石たち。だが、痛みに苦しんでいる余裕は
無かった。蠢く実装沼を凝視してから、這うように反対方向へと逃げていく。
 だが、実際に体が向かうのは実装沼の方向だった。

「何でデスゥゥゥ!」
「そっちに行きたくないデスウウ!」
「イヤデスゥゥゥ!」

 必死に抵抗するが、急げば急ぐほど実装沼へと近づいていく。
 単純に紫電の刺した水晶針が、実装石たちの方向感覚を狂わせているだけだった。

 しかし、当の実装石たちは、自分たちが蠢く実装沼に引き寄せられているように錯覚し
ている。全力で逃げるほど、沼へと近づいていく現実に恐慌状態になりながら。
 沼まであと一メートルほどまで近づくと。

「デオオォ……アアォォォ……」

 半分溶けかけた実装石が、沼から連なって這い出してきた。肌色の粘液を実装石の形に
固め、十数匹分ほどこね合わせたような怪物が、近くにいた実装石二匹にしがみつく。
 実装沼に溶け込んだ紫電の水晶が、実装石たちを動かしているのだ。

「デ——」

 溶けかけた手が、実装石の肌と同化した。
 そのまま、二匹の実装石はずるずると引きずられ、実装沼へと落ちる。下半身から沼に
落ち、ずぶずぶと沈み始めた。

「デェ……デェ……」
「デェェェェ! 助けてデスゥゥ! デアアァァ……アア……ァ……」

 諦めたように呻く一匹と、両手を空へと伸ばしながら必死にあがき続ける一匹。ほどな
く頭まで呑まれ、二匹の実装石は沼の一部と化す。
 その有様を見て、動きを止める残りの二匹。

 皮肉にも動きを止めたことで、実装沼に近づくこともなくなった。だが、それを自覚す
ることもなく、逃げることもできない。沼に近づくように這えば逆方向に進むのだが、そ
れに気づくことはないだろう。
 にゅるりと伸びてくる一本の触手が、実装石の一匹へと突き刺さった。

「デァ、アアッ、デスァ……」

 実装服を貫き、体と一体化した触手。二メートルほどの長さだが、元々は沼に落ちた実
装石の腕だった。音もなく触手が脈打つ。

「す、吸われるデスゥ……」

 実装石が小さくなっていた。触手から出された液体実装が、実装石の体内を溶かし、溶
けた液体がさらに体を溶かしている。触手はそれを吸い取っていた。

 無言のままその姿を見つめる紫電。

 体内を溶かされ吸い尽くされ、しぼんだ風船のようになった実装石。そのまま骨も皮膚
も実装服も触手に取り込まれ、触手も実装沼へと消える。
 そして、最後に残った一匹の実装石。

「デ……」
「カワイソウ……」

 振り向くと、そこに紫電が立っていた。
 右足を後ろに引き、思い切り振り抜く。

「デゴァ!」

 単純に蹴り飛ばされ、最後の実装石は宙を舞った。ほんの一秒にも満たない時間。最後
の実装石は、青い空と秋の雲を意識に焼き付けていた。思考とは違う本能が、これが自分
の見る最後の風景になると理解して。

 ドボン、と実装沼に落ちて、沈んでいく。

 それで、終わりだった。

「終ワッタ……。デモ終ワラナイ」

 実装沼に落ちた実装石たち。体も何もかもが溶けてしまったが、死んでしまったわけで
はない。液体になりながら、生き続けるのだ。
 紫電の右手に小さな水晶が作られる。
 深い、深い紫色の小さな水晶。単純な命令を書き込んだ水晶。
 それを蠢く実装沼へと放り込んだ。



 ------



 一時間ほど経ってから、俺は空き地に戻った。草地にいた実装石は全部処分した。生き
ているのも死んでいるのも含めて。ま、とりあえず今は全滅させてある。また捨てるヤツ
が出てくれば増えるんだろうけど。

「終わったか?」
「終ワッタ……」

 俺が使っていた折畳椅子に座った紫電がじっと見つめる先。
 実装石たちが掘った穴は、肌色と緑と赤の混じった液体が満たされている。液化剤によっ
て溶けた実装石たちの沼だった。量的に完全に溶けるかと心配だったが、一応全部溶けた
らしい。ゆらゆらと表面が揺れている。

 俺は荷物箱から、瓶入りの固定剤の原液を取り出し、実装沼に中身を落とした。透明な
液体が、液化実装に染み込み、その体を今の形状として固定化させていく。
 ふと紫電が何か取り出すのが見えた。

 赤と緑の実装石の眼球。

 それを実装沼の端っこに落とす。
 眼球は半固定された実装沼と同化し、数秒で唯一の視覚として働きを開始する。まった
くデタラメな構造だ。もっとも、溶けた実装石は数百で、眼は一対。数百匹の実装石が、
視覚を共有しているようなものだろう。

 実装沼の傍らにしゃがみ込んだ紫電が、無感情な金色の瞳で、色付き涙を流す目を見つ
めている。まだ復讐は終わっていないようだった。

「カワイソウ……」

 睨めっこ——ね。

 俺は荷物箱から小さい袋を取り出し、中の白い粉を実装沼へと振りかけた。時間をかけ
て実装石を分解するバクテリアである。元々は花壇なんかを荒らして殺された実装石を肥
料にするためのものだ。園芸の本によると、実装石は栄養的にスカスカなようで、ちゃん
と生物分解するとかなりの肥料になるらしい。何でだろ? この実装沼には、数ヶ月以上
かけてこの草地の肥料になってもらう。

 固まった連中は数週間で全滅するだろうけど。

 さて、俺にはこの実装沼を埋める仕事が残っている。
 終わりと思った所からが本番、頑張れ俺ー!
 スコップを持ち上げ、俺は掘り出された土を実装沼へとかける仕事へと移った。




 二人が去ってから。
 そこにはこんもりと山になった土が残っていた。その頂上には、コンクリートブロック
がひとつ墓標のように置かれていた。
 その周りには、人間が入らないように棒とビニール紐の柵が作られている。そして、一
枚の看板が突き立てられていた。やや雑な文字が書かれている。

『肥料用生ゴミ埋めてあります。危ないので登らないで下さい』











 春も近いある日。

「カワイソウ……」

 紫電は草地へとやってきていた。
 家主さんは仕事でどこかに出掛けている。
 家主さんには危ないから一人で出歩くなと言われているのだが、元々放浪していた時期
が長いため、人目につかずに移動するのは慣れていた。

 土の小山と上に置かれたブロック。周囲のビニール紐の柵、ボロボロになった看板。
 実装石たちを埋めた場所。

 紫電は薔薇実装服の上に紫色のコートを着込み、リュックを背負っていた。地面から三
十センチほどの高さをふわふわと移動しながら小山を登り、一番上のブロックに腰を下ろ
し、一息つく。

 リュックを下ろしてから、中から氷砂糖の入った小箱と、ポケット地図を取り出した。
 実装石に滅茶苦茶にされてしまった地図だが、家主さんがどこかの知合いに頼んで修理
してくれた。実装糞もきれいに洗い落とし、千切れたページも修復してある。

「アリガトウ……」

 あの時は生まれて初めて、本気で感謝の涙を流した。

 地図を傍らに置き、紫電はリュックの中から水晶を取り出す。
 薔薇実装としての力を使って作り出した、濃い紫色の水晶。その中央には、五個の偽石
が封じ込められていた。地図を無茶苦茶にした五匹の実装石の偽石である。紫水晶にはあ
の時の凄まじい憎しみのエネルギーが込められてあった。
 水晶に耳を近づけると、

 ……苦しいデスゥ、辛いデスゥ
 ……殺して、殺してデスゥ
 ……地獄はイヤデスゥ、誰か助けてデシャァァ

 あの実装石たちの慟哭が聞こえてくる。

 家主さんは数週間程度で固まった実装石は死ぬと考えていた。この実装沼のことも半ば
忘れている。実際、普通に放っておけば一ヶ月も経たずに死んでいただろう。

 だが、紫電はこの実装沼に細工をしていた。
 例の五匹の実装石を残し、残りの実装石の精神を全部破壊しておいたのだ。実質、この
沼を構成しているのは五匹の実装石。残りの実装石は全て五匹を維持するための栄養分と
なっていた。そして、取り出された偽石は水晶に封じ込められ、紫電の憎しみのエネルギー
に完全に保護されている。劣化してもそれを水晶が修復してしまう。

 最後に実装沼に放り込んだ水晶に込められた命令は——自我を保ちつつ、生きろ。

 光もなく冷たく何も聞こえない土の中、バクテリアにゆっくりと分解されながらも、決
して死ぬことも狂うこともできない。数年、あるいは十年以上経って、紫電が憎しみを失
い、偽石に供給されるエネルギーが切れるその時まで、あの五匹は生き続けるのだ。

「カワイソウ、カワイソウ……」

 水晶を傍らに置いてから、紫電は小箱から取り出した氷砂糖を口に含み、ポケット地図
を両手で広げた。





 おまけ(追加)


 登場人物

 俺
 主人公。二十代後半のプロ作家。
 緩い虐待派兼観察派。血や裂けた肉など汚れたものが苦手で、薬品類を使った虐待を主
に行う。緩いと自称しつつも、エグいことを平然と行う。
 友好関係が広く、薬品類はそこから入手している。


 紫電
 飼い薔薇実装。物語を食べる突然変異種。氷砂糖が好き。
 薔薇実装としては非常に弱く、攻撃性もなく大人しい。しかし、やはり薔薇実装なので
他の実装種を殺すことには躊躇が無い。小さな水晶を効率よく利用する技術を多数持ち、
得意技は、他実装の頭に水晶針を刺して自分の命令を強制させる、命令強制水晶針。
 その他短剣術なども習得している。
 実は二十年以上生きてる長寿薔薇実装だが、それは秘密。
 主人公の書く物語を気に入り、家に住着いている。
 紫電の由来は紫色の稲妻。戦闘機等ではない。


 道具、薬品

 バール
 いわゆる普通のバール。

 万能リンガル
 全実装種の言葉を翻訳する万能リンガル。大きさは手の平大。初期型や雪華実装の言葉
を翻訳できるかは不明。

 ビーカー、ガラス棒など
 理科の実験に使われるものと同じ。

 廉価版実装活性剤
 実装生物の回復力を爆発的に高める薬。普通は希釈して使う。正規品は数百回以上の強
制再生を行えるが、廉価版なので強制再生は三十回くらいが限度。

 廉価版偽石保護剤
 ストレスによる偽石の自壊を防ぐ薬。廉価版なので効果はやや低い。

 廉価版精神安定剤
 ストレスによる発狂などを防ぐ薬。廉価版なので効果はやや低い。

 強壮剤
 いわゆる元気になる薬。体内の新陳代謝を高め、脂肪をエネルギーに分解するのを手助
けする。主な効果は持久力上昇。

 栄養剤
 病気になった実装石などに投与する高濃度の栄養剤。

 裏ドドンパ
 ドドンパの逆の効果を持つ薬。実装石を便秘にする。

 裏ゲロリ
 ゲロリの逆の効果を持つ薬。嘔吐を強制的に阻む。

 超カンフル剤
 上記の薬品類にマムシ酒と、ハバネロエキスを加えたもの。超アッパー系のドラッグ兼
超強力ドーピング剤。注射された実装石は、リミッターが四、五段くらい外れ、人間並み
の身体能力とほぼ無尽蔵のスタミナと異様な回復力を得る。
 しかし、文字通り命を削って力を出すため、著しく寿命を削る。

 実装液化剤
 実装生物の細胞の結合を分解し、身体を液体状に変えてしまう薬。液化剤に触れて溶け
た組織そのものが液化作用を持つため、液化実装に普通の実装を入れると普通の実装は溶
けてしまう。ただ、溶かせる量には限度がある。
 固定剤をかけると、その状態で固まり、元の固体へと戻る。


 液体実装香
 実装石の食欲を猛烈に促進する薬。赤い色でスパイス系の香りがする。実装香が掛けら
れたものはそれが何であろうと、実装石は理性を失い口に入れてしまう。また、猛烈に美
味しく感じるらしい。

 実装忌避剤
 実装石にのみ感じられる強烈な異臭を放つ液体。実装石意外にはただの水に見える。実
装石にとっては凄まじく不味いもので、間違って呑むと、胃の内容物を全てはき出しなが
ら悶絶することとなる。

 実装処理スプレー
 死体処理用の薬。特殊な処置のされた液体の実装細胞からなる。実装石の死体に掛ける
と液体細胞が死体を喰いつつ、増殖と自壊を繰り返し、一分ほどで死体を水と二酸化炭素、
食いカスへと分解してしまう。
 生きた実装石にはほとんど効果が無く、実装石以外の生き物には無害
 しかし、免疫を失った実装石には、浸食作用を及ぼす。

 免疫除去剤
 実装石の生物離れした免疫力や回復力のほとんどを止めてしまう薬。この状態の実装石
は普通の雑菌などにも抵抗できなくなり、非常に脆くなる。

 実装分解バクテリア
 見た目は白い粉末。実装石の死体を、高栄養度の肥料に分解するバクテリア。花壇や家
庭菜園を荒らし殺された実装石をぶつ切りにして、このバクテリアと一緒に埋めておくと、
数ヶ月後には良質の肥料となる。
 実装石自体は栄養的にスカスカだが、ちゃんと生物分解すると良質の肥料になる、とか。


 草切りナイフ
 元々は実蒼石がハサミの補助として使うために作られたもの。草を払うためのナイフで、
実装サイズの鉈とも表現できる。あんまり切れ味は高くない。

 

 


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