タイトル:【虐】 そういやそんな11月
ファイル:そういえば、そんな11月もあった.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:18276 レス数:0
初投稿日時:2009/11/22-15:01:04修正日時:2009/11/22-15:01:04
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 三角コーナーに積みあがった生ゴミの山を見るたびに「臭ってきたなあ」とか
「そろそろ片付けなきゃなあ」などと思うのだが、中々腰が重い。底のほうなん
かきっとカビまみれだし持ち上げたときに汚水が垂れるのを想像しただけでやる
気がなくなってくる。
「うーん……」
 今日も今日とて見ないふり。俺はカップめんの湯を少し捨てて(湯を入れすぎ
ていた)シンクの底に沈んでいる塗り箸を二本拾い上げる。並べてみると左右が
不揃いだ。色が似ているので取り上げたのだが、どうやら別々の箸だったらしい。
「まぁいいか」
 スポンジで適当に拭って水洗い。ラーメンを食べるのに塗り箸は不向きなこと
に洗っているとき気付いたが、それも前言どおりの言葉で誤魔化す。結局あれだ
な。俺は面倒くさがりなんだな。外からは雨音が聞こえてくる。それほどの勢い
ではないが、傘なしで出歩いていたら警官に声をかけられかねないくらいには強
く降っている。約束がなかったからではあるが、その音だけで出かけるのが嫌に
なって、俺は今日の自分の予定を自分でキャンセルしてしまった。何かにつけて
こうだからいかん。つくづく、自分の場当たり的な行動と無気力さに嫌気が差し
てくる。しかし、それでも何かを実行に移せないから無気力なのだ。本当に嫌に
なる。
「食ったらなぁに、やろっかなぁ」
 1.ニコ動で楽しみにしていた動画の続きがうpされているか見てみる。
 2.飽きたゲームでも発掘してやり直してみる。
 3.やっぱり出かける。
(3はねーな……)
 即座に頭で否定してしまうあたりもう全然駄目だと思う。特に何も決められな
いまま三年は上げていない煎餅布団の上に腰を下ろしてめんを啜る。日本人なら
畳だぜ! と思って和室オンリーのマンションに入居したのだが、畳を傷つける
と出て行くときにカネをとられるのでベッドが置けない。今更ながら失敗したな
と思うのだが、どうしようもない。
「はぁ、食ったぁ」
 カップめんのケースは布団の脇に放り出す。かやくがカピカピに乾いたぐらい
が捨て時だ。まだパソコンにもゲーム機にも火を入れていない。どうもやる気が
しない。テレビは見るものないし、眠くも無い。運動なんかしたくもないしなあ。
だからってぼーっとしてるのも嫌だし……。
(これってうつ病なのかねえ)
 とりあえず、布団に背を預けて天井を見上げる。前の住人がエアガンで開けた
小さな穴が見えた。
(静かだなァ)
 いつも何がしか電子機器に火が入っているので耳鳴りがするほど静かなのは久
しぶりだ。秋の深まる11月の頭。マンションの前は国道なので窓ガラスは防音
仕様だ。おかげで雨音はこっちの部屋に居ると聞こえない。それとクルマの通り
が異様に少ない。片田舎だし、少し南にこの街を一気に通り抜けられる無料のバ
イパスも通っているので仕方ないのだが。「ほんと、なにやろっかな」
 友達連中は仕事だ。ちなみに俺は無職じゃないぜ? 不定休なだけだ。マジで。
「……」
 思考さえ面倒になって、目も閉じる。その気もないのに寝ちまうパターンだこ
れは。
「……っぅ」
 いかんいかんと思うのに起き上がる気力はおろか、目を開く気力さえ沸いてこ
ない。その時だった。かさ、と音が聞こえた。自然と体が反応した。まるで計る
ように片目だけ開けて周囲を見回す。音源を探り自分でも笑えるほど集中する。
ゴキブリは見つけたときに潰す主義だ。別に足に這い上がってきても気にしない
くらいだが、ほっとくと際限なく増えるからな、あいつらは! 続いて水音。雫
が落ちた程度のかわいい音だったが、かさっという音も一緒に聞こえてきたので
間違いない。
「シンクか」
 別に嫌いではないが、シンクで水泳をされるのも面白くない。すぐに立ち上が
って、シンクの前まで向かう。水は薄く張ってあるだけだが、その中に黒いあん
ちくしょうの姿は無い。沈めたままの食器類を片付けていくと、残るのは緑色の
汚水が底から垂れている三角コーナーだけだ。
(……緑?)
 今もぽちょぽちょと一定間隔で下痢便のような柔らかい何かが雫となってシン
クに降り注いでいる。
「……っげえ!」
 思い出したぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺はもう捨ててもいい割り箸を二本つまんで
三角コーナーに突き刺す。そして、かき回すようにして生ゴミをかきわけていく。
ぼそっと中で生ゴミが崩落して三角コーナーの中から「テチャ」という悲鳴が聞こえ
た。
「だめだ、これじゃ見つけられん」
 俺は覚悟を決めて、両手に軍手のかわりにビニール袋をはめて生ゴミを掘り出
していく。大容量タイプの三角コーナーなのでなかなか底が見えない。それでも
二度、三度と掻きだすと一気に底が近づいてくる。中間地点は悲惨だ。黒い、黒
いさすがにバナナの皮は黒い。しかもぬちょぬちょだ。
「うぅうぅ」
 五度目、一気に掻き出してシンクに積み上げる。そしてようやく見つけられた。
「チャーァァ……チャ、テチャァァァァ……」
「お前、まだ生きてたのかよ……」
 底でイゴイゴと丸い体をくねらせる仔実装の姿が見える。底にへばりついた水
垢ともカビとも知れない黒い苔のようなものを必死に歯で剥がして口にしている
その姿。
「……キんモッ……」
 心からの言葉だった。服はかろうじてピンクとわかる色を保っていたが、長時
間(多分三週間くらい)暗闇の中にいたためかその目は光を認識していないよう
に見えた。俺の声が聞こえていないとも思えないが、仔実装は俺の声が近いこと
で怯えてか更に力強く水垢を口にしていく。よく見れば手がない。本人?は自分
は高級飼い実装で、奴隷人間を騙して解放させたと支離滅裂な事を言っていたの
で捨て実装なのは間違いないが、生ゴミ食を嫌ってまず手を食べたと見てもあな
がち間違いではないだろう。投糞をくらったおかえしに嬲り殺してやろうと思っ
て捕まえてきたんだが、結局面倒になって三角コーナーに捨てたんだよなあ。
「よく、いきてられたな……」
 二重の意味でな。
「チャ? ……チャァァァァァァァァァ!!!!」
 気付いたらしい。
(リンガルつけてねーよ)
 見てわかれ、と思ったが所詮は糞蟲。それを見分けられるくらいに知能がある
なら今、こいつはこんなとこにはいない。
「チャァァァァア!!! チャァァァァァァァァァ!!!」
 俺を見ているのかいないのか。単に俺の声に反応しているだけなのかもしれな
いが、俺のいるあたりに向かって血涙を流しながら吼え猛る仔実装。ぶりぶりと
糞をして、その糞を器用に足でつまんで俺に投げようとしている。当然ながら1
センチと上がらず糞は底に落着して、何発かは仔実装自身の体を汚した。
「チャァァァァァアア!!! ヂィィィィィ!! ヂィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
 それが届かないと知れると、仔実装は後頭部を三角コーナーの底に駄々っ子の
ように叩き付けながら強烈な威嚇をしてくる。歯牙を剥き、汚物まみれになって
の威嚇は妙な迫力があったが、腕がないので悲惨さのほうが少し強い。俺は急速
に何かが冷めていくのを感じた。
 俺はシンクの底を抜いて水を押し流した。今度は栓をしないで、底にカバーだ
け被せる。
「……」
 ずり、っと三角コーナーの端をつまんで蛇口の真下に持ってくる。
「ヂィィィィィ!!! チギィィィィィ!!! ヂィィィィィィィーーーッ!!!」
 なるべく仔実装に直に降り注ぐように位置を合わせて蛇口を捻った。即座に水
が仔実装に注がれた。
「チベェェェェェエ!!!?? チ……ヂィィィィィィッ!!!!?」
 足はあまり言うことをきかないのだろう。もたもたとその場で暴れるだけでそ
れほど強烈な勢いでもない水から逃れることも出来ずにもがいている。
「いつ、しぬかな」
 俺は本当にどうでもよくなって取り出した生ゴミを手袋がわりに使ったビニー
ルにおさめていく。ぼろい安マンションだが、水だけはタダなんだよな。
「はやく、しねよ」
 あくまでも「早く死ねよ!」ではなく「はやく、しねよ」である。なんとも気
力が萎えた。散々だ、とは言わないでおこう。一応こいつのおかげで三角コーナ
ーは片付いたし、ちょいと離れたゴミ収集場まで出かける用事もできた。
「……帰ってきたら、なにしよっかな」
 11月の、ひどく冷える水の直撃を受けながら一気に白くなっていく仔実装の
姿を視界の端にとらえながら少しも「帰ってきたときまだ生きてたらこいつで遊
ぶか」なんて気力も沸かない自分に嫌気が差した。こいつが元飼い実装なら俺も
元虐待派だった。
 実装石保護法案が可決して二年目の11月のある日の事であった——とさ。

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