「夢の知らせ」 由紀子が結婚して5年くらい経った頃に念願のマイホームを手に入れた。 親の援助もあり若くして建て売りだが新築の家を手に入れた。 優しく勤勉な理想的な夫、そしてこの年でマイホームと幸せの絶頂だった。 掃除が終わりソファーでうとうとしているといつの間にか寝てしまっていた。 由紀子はふと何かの存在に気付いた。 フローリングになっている部屋をパタパタと走るなにか・・・ 意識が朦朧としてなんだか分からなかったがやがて浅い眠りに入った。 ぼうっと白っぽく浮かんだ明かりがあってそれが段々と近づいてくる。 やがてその明かりは由紀子の目の前で止まると、その形が段々とハッキリしてきた。 「うん・・?・・チ、チーコ?チーコなの?」 フローリングから見上げる顔は見覚えがある。 それは子供の頃に飼っていたチーコと言う実装石だった。 チーコは由紀子が小学校の帰り道に拾った子実装。 公園の外でテチテチ泣いていたから抱き上げるとしがみついて来た。 連れて帰るわけには行かないから置いて行くと、どこまでもどこまで泣きながら追いかけてきた。 とうとう根負けした由紀子は家に連れて行き、反対する父親を説得して飼う事になった。 由紀子はチーコを拾ってきてからも大事に扱った。 それはまるで自分の妹の様に、いや子供の様にが正しいかも知れない。 自分のおやつをチーコに分けたり、大事にしてるおもちゃもや人形もチーコと共有して一緒に遊んだ。 何年かそんな関係が続いたが由紀子が高学年になった頃から、徐々に由紀子はチーコと距離を置くようになる。 部活や友達や勉強でチーコを構う暇がなくなってきたからだ。 それだけではない実装石と言うものを由紀子も分かる年になったのだ。 ある日由紀子は父親に告げた「もうチーコいらないかも・・」と そして次の日チーコは家からいなくなっていた。 父親に聞くと由紀子が要らないから保健所に持っていったと答えた。 由紀子は可哀相だと思ったが反面ほっとしてもいた、 愛護派でも無いし、もうチーコが重荷になっていたからだ。 「生きていたのチーコ・・ちがう、チーコは死んだはず・・」 実装石は何も答えず由紀子をじっと見つめると、ソファーをよじ登り由紀子の体に乗った。 お腹で寝転がると這い蹲りデスデスと笑って由紀子を見た、そのまま這いずって目の前まで近づいてくる。 由紀子はこの行動に記憶がある事に気付く、チーコは毎朝こうやって由紀子を起こしに来た。 由紀子の頬をポンポンと両手で叩いて頬と頬を合わせすりすりした、これはチーコが精一杯に甘える仕草だ。 暫くしてまたお腹の辺りまで移動すると由紀子のお腹をポンポンと軽く叩いた。 由紀子が起きるとチーコの姿は無かった。 「夢だったのね、それにしてもリアルだったわ」 次の日、検査薬で由紀子は妊娠していた事が分かった。 そしてそれっきりチーコの夢を見る事は無かった。 4年の時が流れ生まれた女の子にチエコと夫が命名した。 なぜチエコなのかと聞いたら夢のお告げがあったと繰り返すだけで夫にも分からないそうだ。 チエコは今年で3歳になりよたよたと家中を歩き回っては、そこら中ですっ転んで由紀子を心配させた。 元気なのは良いがチエコの行動に何か不自然に映る所が合った。 何かを目指して急に走り出したりするのだ、そしていきなり座り込むと手を伸ばして何も無い空間を掴もうとする。 夫に話すと幼児期の行動は大人じゃ想像も付かないからと答えるだけだ。 由紀子は何か胸騒ぎがしてどうにも納得が出来なかった。 大切な娘に何かあっては遅いといつも感じていた。 そしてその何かが発生した。 二階のベランダで洗濯物を干している時だった。 いつもはありえない事だが、その日はついうっかりベランダのドアを開けっ放しにしていた。 由紀子が足元に何かいると気付いた時には遅かった。 チエコが今まさにベランダの手すりの隙間にするりと滑り込んで行く所だ。 「チ!チエコォォォ!!」 手を伸ばすがタイミング的に間に合わないのは由紀子にも分かった。 と、チエコの服が何も無い所から引っ張られてベランダから落ちるのを防いでいる。 その瞬間、チエコを掴み上げると両手でチエコを強く抱いた。 「もう!ほんとにほんとに心配させて、バカ!!」 チエコの顔を見るといつものチエコの感じと違う、そしてチエコは両手を由紀子の頬にポンポンと軽叩いてこう言った。 「だいじょうぶデスゥ、もう中に入ったから・・」 由紀子はその時やっと理解した、チエコが追いかけていたのはチーコなんだと。 そして今はチエコの中に入っている事を。 チエコはいつもの無邪気な顔に変わると由紀子に抱きつき頬をすりすりと擦り合わせた。 終わり
