タイトル:【愛】 実装かぞく16
ファイル:実装家族016.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1563 レス数:0
初投稿日時:2009/11/09-23:44:40修正日時:2009/11/09-23:44:40
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第16話「2匹はデスピュア」


「デスァ!! デスァ!!」
「テスゥゥーー!!」
「チャァァーーッ!! ァッァッーーッ!!」

今日の3匹は、居間のテレビの前で大騒ぎだった。
それもそのはず。今、実装界で話題のテレビアニメ。
「2匹はデスピュア・マックスハート」のアニメで大騒ぎなのだ。

「デスゥゥゥー!! デスデスゥーー!!」

あの冷静沈着なデさんですら、この騒ぎようである。
布団叩きを手に、デスピュアになりきり、大興奮この上ない。

「2匹はデスキュア」とは、ごく普通の飼い実装の雌2匹が、デスキュアという
正義の味方に変身し悪と戦うという、昔からよくある勧善懲悪ものストーリーなのだが、
その分かり易さが、今、飼い実装の界隈で大人気なのである。

「チャァァァーーーッ!!」

うちの仔たちも、その例外ではない。
ボラギは、下着を湿らせながら、テレビのブラウン管に食らい付いている。
まぁ、週に1度の楽しみにしているアニメだ。少しの粗相は大目に見よう。

「テスゥーー!! テステスゥーーッ!!」

頬を赤らめながら、テレビアニメを鑑賞する3匹。
悪役が倒される度に、ガッツポーズを決めて、唾を飛ばす。
日曜日の朝から、まさに微笑ましい風景が、我が家で展開されていた。


◇

「デスゥーー!! デスデスゥーーー!!」

その日の午後、居間のソファーの上では、3匹が遊んでいた。
黒縁の実装眼鏡をずらしながら、布団叩きを振りながら、デさんが大声で叫んでいる。

「テスゥーー!! テステスゥーー!!」

負け時とモニカが、どこから持ってきたのか、便所のタワシブラシを上下に振っていた。

「テチュゥゥーーッ!! ウッゥッーーーッ!!」

ボラギも、耳かきを手に声高に何かを叫んでいる。
そうか。これは「2匹はデスピュア」ごっこ。そう悟る俺。
銘々、デスピュアに成りきったつもりで、主人公に同化して、酔いしれているらしい。

しかし、困ったことがある。
そう。2匹はデスピュアなのだ。
ん?言い直そう。デスピュアは2匹なのだ。

「デスァ!! デスァ!!」
「テスゥ!! テスゥ!!」
「テチュゥゥーーッ!!!」

3匹のうち、2匹がデスピュアであり、1匹は役回り上、必然的に悪役となる。
そうすれば「デスピュアごっこ」は成立するのだが、自我の強い実装石が
そう主役を譲るとは思えなかった。

「ダァッ!! アッアッーッ!!」
「テェェ!! エッエッーッ!!」
「テェェェーーーーッ!! テェェェーーーーッ!!」

ふむ。このままでは体格差で、ボラギが悪役に廻されてしまいそうだな。
ここは飼い主である俺が人肌脱ぐときであろう。
そう思うと、俺は部屋からミス=マスカラスの仮面を持ち出し、3匹の前へと躍り出た。

『がははは。3匹のデスキュアめ。今日こそ成敗してくれるわ!!』

リンガルでそう声高にダミ声で3匹たちに啖呵を切った。

「デデェ!?」
「テェェ!?」
「チャァ!!?」

悪役である俺の登場で、3匹の心はマックスハート。
先ほどの醜い争いも何処へやら。デさんが「デスッ!! デスデスゥ!!」と声高に叫んだ。
(リンガルの表示には『フォーメンションAデスゥ!!』)

3匹の攻撃は多彩だった。
ぺしんぺしんと俺の足に、布団叩きで攻撃を加えているデさん。
これはデスキュアの必殺技。デスキュア・レインボー・ストームだろう。

モニカのこの変な踊りは、デスキュア・マーブル・スクリューへの導入部分だ。
あとでわざと大げさに技を喰らってやろう。

「テチュゥーー!!」

耳かきを槍のように水平に翳して(かざして)、駆けるボラギ。
ふん。ちょこざいな。俺がデコピンで軽くなぎ倒すと、ボラギは紙のように宙に舞った。

「テェ!! テェェェーーーーンッ!!」
「デデッ!!」

デさんがボラギの元へと駆け寄る。

「デデッ!! デッスンッ!! デッスンッ!!」

仲間の姿に、その場で地団駄。デさんの怒りに火が灯ったようだ。
デさん、ボラギ、モニカの3匹が手を取り合い、デスキュア最大の秘技を繰り出そうとしていた。

ふ。そろそろ頃合いか。

「デェェーーッ!!」
「テェェーーッ!!」
「チュェェェーーッ!!」

3匹が叫ぶと同時に、彼女たちはそれぞれ手にした獲物を宙に放り投げ、
彼女らの最大必殺技が炸裂した。投げつけた獲物は、俺には届かず、無惨にそのまま
居間のカーペットの上に落ちたが、俺は胸元を押さえつけながら、大げさに苦しみ始める。

『お…己… デスキュアめぇ……』

俺は口の中で舌をかみ切り、大層に血を口から吐き出す。
俺の迫真の演技に、デさんたちも顔を引きつらせて返してくれる。
そして、そのまま大の字になって、その場に倒れ込んだ。

『この俺が滅んでも……、悪は滅びぬ……、人の心に……』

「デスァ!! デスァ!!」

倒れた俺に、ぺしんぺしんと容赦ない追い打ちを加えるデさんたち。
いや、まだ台詞を吐ききってないぞ。ま、いいか。以下、省略。

『見事なり!! デスキュアッ!!』

死亡する俺。
悪を滅ぼし、デさんたちは、大はしゃぎだった。

「デッスゥ〜〜ン♪ デッスゥ〜〜ン♪」
「テスゥゥ〜〜♪ テスゥゥ〜〜♪」
「チュゥ〜〜ン♪ チュフゥ〜〜ン♪」

ふふふ。大喜びだ。これぞ飼い主冥利につきるってものだ。
しかし、俺は困惑していた。俺の周りで気が狂ったように踊り続ける3匹。
そう。どのタイミングでこの「ごっこ」を終わらせればいいのか。俺は困惑していたのだ。
こんな大喜びするデさんたちに、水を差すのも悪い気がする。
ま、少しはこのままで、彼女たちに勝利の余韻を味わせてやるか。
そんなことを考えながら、目を瞑っていると、段々睡魔が訪れた。
日曜日の昼下がり。このまま惰眠を貪るのも、悪くはあるまい。


◇

「……ェェェーーン!!」

ふと気がついた。
何か耳元で声が聞こえる。
俺が薄っすらと目を開けると、3匹が俺の耳元で大声で泣いていた。

「デェェェーーンッ!! エェェェーーンッ!!」
「テェック!! テェック!!」

なんだ?
そういえば顔がすーすーする。マスクは?
どうやら俺が寝ているうちに、デさんたちが悪の正体を確かめようと、俺のマスクを剥いだらしい。

「テェェェーーーーンッ!! テェェェーーーーンッ!!」

そうか。
マスクを剥いだということは、悪役の正体が飼い主である俺であったことに、3匹は気づいたらしい。
そして3匹はきっと、自分たちのせいで、俺が死んでしまったと勘違いしてしまったのではないか。

「デェック!! デェック!!」

薄目で見れば、デさんたちの頬には、インディアンのように緑色の線がいくつか描かれていた。
それは、まるで黒魔術の死に神化粧のような出で立ちであった。その姿に、俺はピンと来る。

これは「2匹はデスキュア」第43話。「復活デスキュア」の巻であった死者の復活の儀式。
あの回では確か、自らの糞を顔に塗りたくり、ゾロアスターの死者の復活儀式により、
デスキュア達が復活する話ではなかっただろうか。

「テスン!! テスン!!」

モニカが何度も、下着から自らの糞を取り出し、口にしたり、顔を塗ったりしている。
何度、儀式を繰り返そうが、ピクリともしない俺に、大粒の涙を流して悲しんでいる。

嗚呼…。
俺は心の奥が暖まっていく感覚に身を包まれていた。
俺は、こいつらに心底愛されているんだな。まさに飼い主冥利に尽きると感じていた。
もう少し、この感覚を味わいたい!しかし、そう思ったのが間違いだった。

「デスン!! デスン!!」

3匹は倒れた俺をそのままに、続いて台所へと向かう。
何をしようとしてるんだ?俺は気づかれないように起きあがり、台所の様子を伺う。

見れば3匹が銘々前髪を掴み、何本も何本も前髪を引き抜いているではないか。
あれは確か「2匹はデスキュア」第98話。「タイムトラベル」の巻であった、時間逆行の方術。
3匹が引き抜いた髪の毛を床に置き、3匹が両手を繋ぎ合い輪になって
「ベントラ・ベントラ」と呪文を唱えながらマイムマイムを踊ることによって、過去に遡る術である。

いかん。いかん。
このまま放っておけば、「2匹はデスキュア劇場版」の秘技、「即身成仏の入仏」や
「2匹はデスキュア秋のスペシャル」であった「雪山で遭難。山小屋で触れ合う肌」まで再現しかねない!
俺は口のまわりの血を拭い、頃合いを見計らって、抜いた髪の毛の周りを回る3匹の元へと声をかけた。

「あれ。おまえたち。何してるんだ、こんなところで」

「デェェ!!」
「テスゥ〜〜ン♪」
「チャァ!! チャァ!!」

3匹には、時間逆行の方術が成功したかのように映っただろう。
涙を流して喜ぶ3匹。こうして、昼下がりのデスキュアごっこは無事に終わりを告げた。

◇

これに懲りてか、彼女らはデスキュアごっこはしなくなった。
俺も悪ふざけが過ぎたのは反省である。そして、次の日曜日の午後。

「デスァ!! デスァ!!」
「テェ!! テェェェッ!!」
「テチュゥ〜〜ン!! ンッンッ〜〜ッ!!」

デスキュアの裏番。実装戦隊デスレンジャーを見て、唾を飛ばしているデさんたちの姿があった。
そして、俺は戦隊ごっこが始まらないうちに、こっそりと逃げ出すように自室に籠もるのだった。

やれやれ。


(つづく)


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