実装掲示板 「デギャァァァ!!デス!!デスッデスデシャァァァァ!!」 どこにでもいる飼い実装石のミドリは散歩から帰って来るなり飼い主に八つ当たりし出した そしてその手には拾ったであろう実装石用ドレスのチラシが握られていた ミドリの飼い主はゲージの横に置いている電子リンガルを見てため息をついた 卓上電話機の半分程度の大きさでたくさんのランプが付いている最新型の「電子リンガル」には 「怒り」「要求」「見下し」の欄の赤ランプが点灯していた、これから導き出される答えは ここに載っている実装石用ドレスを持って来い、もしくは献上しろとでも言っている訳だ 「いい加減にしなさいミドリ!!ウチにそんな物買う余裕は無いって前にも言ったでしょ!!」 飼い主は声を荒げて怒った、ここ最近ミドリの我侭が酷くなってしょうがないのだ 昨日は高級フード、一昨日は高価なアクセサリー、そして今日はドレス、飼い主はもうウンザリしていた 「はあ・・・・・子供の頃はいい子だったのに・・やっぱ飼い方が悪かったのかしら?・・・・」 飼い主が物思いにふけっていたその時、ペシャッ べチャッ 「デピャピャピャピャピャ、デス!!デスデスデスデッシャァ!!」 とうとうミドリが投糞をやり出し、電子リンガルには「優越」「満足」「見下し」「糞蟲」のランプが光りだした 「ミドリ・・・あんたって奴は・・・」 飼い主の堪忍袋の緒が切れた瞬間だった 所変わって別の家 「テ・・・テチィ・・・・・」 生きる為の最低限の物しか置いていない大きな水槽に裸の仔実装石が一匹、膝を抱えて隅にうずくまっていた この仔実装のほかの姉妹や母親は既にいない、みんな飼い主に虐待の末に殺されたのだ 虐待される理由はさまざまだった、威嚇した、媚びた、泣いた、糞を漏らした とにかくなんらかのリアクションを起こせばそれが命取りになった 結果として家族の中で一番賢かったこの仔実装は服と頭巾を取られ、軽めの虐待だけで済んだが 水槽の向こうで家族が生きながらに引き裂かれ、焼かれ、拷問されているのを見せ付けられ 家族の断末魔や苦しみの末の恨みと絶望の悲鳴を聞かされ続けた結果 食事とトイレ以外は動く事もなく、滅多に鳴き声すら上げず常に隅にうずくまり恐怖に震えていた 「チッ、つまんねーなコイツ・・・服と頭巾取り上げても大した反応しねーし」 飼い主の男にとってこの仔実装は虐待する価値すらないただのゴミに過ぎなかった 「しょーがねー、こいつと交換できる糞蟲がいねーか掲示板見に行くか」 そう呟くと男は仔実装に取り上げておいた服と頭巾を投げつけた 「おい糞蟲、俺が帰って来るまでに服を着ておけ、着てなかったら殺すからな」 それだけ言うと男は仔実装を見る事なく出掛けて行った 男がやって来たのはデパート内の休息エリアに置いてある大きい掲示板の前だった 待ち合わせ、バイト急募、尋ね人、ありとあらゆる張り紙の中に実装石関連のコーナーがあった 「仔実装と蛆実装求む、数が多ければ良し(ペットの生餌用)値段は応相談」 「妻が妊娠して家事が出来ないのでお手伝い実装石が欲しいです、できれば2匹程、譲っていただけける方連絡を待っています」 「ウチのデス子が死んだので実装石用の服、おもちゃや備品の処分に困っています。欲しい方は連絡を下さい」 「*月##日、@@公園で野良実装石の一斉駆除を行います、参加希望者は当日10時までにお越し下さい粗品有ります」 そこには虐待派、愛護派以外にもたくさんの人の張り紙が貼り付けてあった まだロシアがソビエト連邦と呼ばれていた昭和の頃 今ほどに虐待派と愛護派の溝は深くなく、むしろお互いうまくやっていた時代だった インターネットも携帯電話も無い時代、この頃の連絡手段と言えば電話や手紙、 デパートや駅、人の集まる場所に設置してある掲示板が主だった 「チッ、出遅れたか」 男はあるコーナーを見て舌打ちした、そこは実装石のセカンドオーナーの掲示板で虐待派にもっとも人気のあるコーナーだった そこを簡単に言えば糞蟲化した飼い実装石を保健所に持っていくのが忍びない愛護派が新たな飼い主を探そうと始めた所だったが いつしかいらなくなった糞蟲を「上げ済み」の実装石として虐待派に提供(処分)するコーナーに変わっていた 虐待派も幸せの味を知っている飼い実装の方が野良を虐待するより面白いのはみんな知っている事 つまりここは虐待派と愛護派の利害が一致した数少ない場所なのだが 捨てられる糞蟲よりも虐待派の方が多すぎるので常日頃から「早いもの勝ち」が常識化していた そして男は見事に出遅れたので完全な無駄足を踏んだ訳だ 「まあこの時間に来てある訳ねーか・・・」 帰ろうとしたその時奇跡が男に舞い降りた、すれ違った女性が用紙を持って掲示板に近付いて来たのだ 男が振り返った時、彼女がお目当てのコーナーに用紙を貼り付けている所だった [糞蟲化した実装石・名前はミドリ・ペットショップで購入・生後約1年・出産経験なし・ややデブ] 「はあ・・・・本当に貰い手なんているのかしら。てかあんなの欲しがる人っているのかな?」 初めてここを使う彼女は半信半疑だったがモノは試しだと思い貼りに来たのだ 「うそ・・・こんな奇跡ってアリ?・・・・・ラッキー!!」 男は内心小躍りしたくなる位に嬉しくなった。完全にあきらめていた所に運良く糞蟲提供者が現れたからだ 「あの、すいません、セカンドオーナーの依頼の方ですか?」 はやる心を抑えて男は女性に声を掛けた 「え?はい、そうですけど何か?・・・あ、まさか」 「はい、セカンドオーナー希望の者ですけど」 「ホントですか?嘘、こんなに早く来るものなんですか?」 「いえいえ偶然です、俺も今ここに来たばかりですから。でもいいんですか?セカンドオーナーに渡すって事は・・・」 男は一応女性に確認を取った、飼い主によっては虐待派が受け取ると分かった途端嫌がる場合があり 虐待派も受け取る時には後腐れがないように飼い主にきちんとした承諾を取る事は常識と言うか礼儀だった 「いいんです、あんな恩知らずなんてもう顔も見たくない」 どうやら彼女の決意は変わらないようだ、男にとって願ったり叶ったりだった 「そうですか、では早速受け取りに・・・・」 「あの・・・それでちょっとお願いがあるんですけど・・」 女性が申し訳なさそうに喋りだした 「お願い?なんでしょうか」 「はい、あたしまたミドリがいなくなったら新しく仔実装を飼おうと思っているんですけど あなたの知り合いか知っているお店でいい子実装石を売っているか譲ってくださる方を知っていらっしゃるのなら 是非とも教えて頂きたいのですが」 またしても男に幸運が降り立った 「仔実装石ですか、それでしたらいいのを一匹すぐに用意できますけど。だったらどうでしょう 1時間後にここでお互いの実装石を交換するってのは」 「ホントですか、そうしてもらえるとこっちも大助かりですよ」 「じゃあそうしましょう、では1時間後の3時過ぎにここで」 そう言って二人はお互いの実装石を取りに自宅へ帰って行った 女性が家に帰るとミドリとミドリの入っているゲージ内は糞まみれとなりミドリが大声で喚きまくっていた 電子リンガルには「怒り」「不快」「見下し」「要求」「糞蟲」のランプが点灯している 「はあ・・・風呂と洗濯済ませてからか・・・・・・」 彼女は1時間で間に合うか少し心配になって来た 男が家に帰ると相変わらず仔実装は水槽の隅にうずくまっていた しかし男の言い付けをキチンと守って服と頭巾をちゃんと着ていた 「まっこいつの唯一の長所が手間のかからないことなんだがな」 約束の時間まで十分余裕があるので男は一休みする事にした そして約束の3時過ぎ、二人は例の掲示板の前で再び落ち合った 「すいません、こいつがヒドク汚れていたもので・・・」 移動用ゲージの中で裸のミドリがギャイギャイ喚いていた、大方まだ乾いていない服を返せとでも言っているのだろう (くっくっく・・・なかなか楽しませてくれそうな糞蟲だな) 予想通りの活きが良く、幸せしか知らないような糞蟲を見た男はついつい口元が緩みそうになった 「いえいえかまいません、ではこちらが仔実装の方です、確認してください」 女性も改めて仔実装を確認した 見るからにおとなしそうな仔実装、彼女は一目で気に入った 「いいんですか、この子貰っちゃっても」 「どうぞどうぞ、それともし言う事を聞かなくなったらこいつを使って下さい」 そう言って男は少々汚れた30cmの竹定規を子実装に見せないように取り出した 「あの?これは?」 「最初は見せるだけで十分でしょう、それでも駄目になったら一発引っ叩いて下さい」 この竹定規は男が虐待によく使っていた物、つまり仔実装にとって恐怖の象徴のようなモノだ 「はあ、分かりました」 「何か困った事があったらここにお電話下さい、では俺はこれで」 そう言って男は仔実装とミドリを入れ替え、電話番号を書いたメモを渡して生渇きの服を受け取りそのまま帰って行った 仔実装は困惑していた ここは何処?あのコワイ人間がいない、この人間は誰?きれいなオウチ、いい匂いのゴハン、 あきらかに朝までいた環境と一変した場所にとまどっていた 「そう言えばあの人に聞き忘れたけどあなたの名前はあるの?」 女性は仔実装を怖がらせないように優しく問いかけた 「テ・・・・テチィ・・・」 電子リンガルに「不思議」「判らない」「否定」のランプが点灯し、仔実装は首を横の振った 「そっか・・・じゃあミント、今日からそれがあなたの名前よ、よろしくねミント」 「テ・・テチ?・・・・テチュ!!テチュ〜ン」 電子リンガルに「驚き」「幸福」「満足」のランプが点灯し、仔実装ことミントは初めて仔実装らしい声をあげた この後、仔実装は彼女のもとでスクスクと育ち、又一度も糞蟲化する事もなく幸せな実装生を送ることになった ミドリは困惑していた ここは何処デス?あのドレイはどこデス?あそこの新しいドレイ2号はなんなんデス? この部屋は臭くて汚いデス!!高貴でこの世の美の化身であるこの私をこんな所に閉じ込めるなんてふざけるなデス 私のドレイ!!今すぐにここから出せデス!!そして今すぐにこの仕打ちを深く懺悔して土下座して 私の糞を舐めて服従をもう一度誓うデス!! 「あーさっきからデスデスデスデスうるさいね〜」 にやついた男が緑インクと真新しい竹定規を持ってミドリの入っている水槽に近づいてきた 「デシャァァァ!!デスデス!!デエッシャァァァァ!!」 「いいね〜元気があって、これならいい糞蟲をたっぷり産みそうだ」 水槽の蓋にしていた網をどかした男は挨拶代わりに竹定規で顔面を引っ叩いた 「デギャァァァァァァァァァ!!」 引っ叩かれた拍子に転がったミドリの顔や体に竹定規が襲い掛かる パン!!パン!!パンパンパンパンパン!!!!! 「デギャッ!!デギャッ!デギャッ!デギャァァァ!!・・デエエエエエエエン」 産まれて初めて受ける虐待にミドリは大声を上げて泣き出した 「ぎゃはははははは!!なんだこいつ、体罰は初めてなのかよ」 これは男のとって嬉しい誤算だった 「まあゆっくりしていけや、後これはプレゼントだ」 そう言って男はミドリの赤目に緑インクを垂らした 「デデ?デッ・・・・デギャァァァァァァ!!」 両目が緑色になり強制妊娠が始まったが妊娠経験のないミドリにとっては何が起こったのか判らない 突然お腹が膨らみ出した事に恐怖の悲鳴を上げた 「妊娠程度であの悲鳴かよ、今度のは大事に遊ばな(虐待し)ければな、すぐ壊れても困るし」 そう言って男は再び水槽の蓋を閉めた この後、ミドリは男のもとで虐待漬けの日々となり、唯一度もいい事無く地獄の実装生を送る事となった まだCDじゃなくレコード全盛期の時代、虐待派と愛護派は今のような憎しみ合う仲ではなかった むしろお互いがお互いをうまく利用してやっていた、いわば共生関係だ 愛護派は糞蟲化した実装石を渡し、虐待派は代わりに虐待の過程で徹底的に躾を叩き込んだ仔実装を渡す それはまるで実装石のリサイクルのようなモノだった その関係が崩れだしたのは電子リンガルの進化した「実装リンガル」の出現や政治的思惑などがあるがそれはまた別の話で・・・
