タイトル:【虐】 「肥溜めの記憶」 実装物語1
ファイル:実装物語1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3523 レス数:0
初投稿日時:2009/11/06-04:24:24修正日時:2009/11/06-04:24:24
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「肥溜めの記憶」



峠道の退避車路に車を停めると僕は「ふぅ」と溜め息をついて目をつぶった。
箱崎インターからノンストップでこの田舎町まで5時間。
車に乗りっぱなしの僕は少し疲れていた。

「まだ昼前か」
デジタル化されたダッシュパネルの時計は11時を指していた。

「前に乗っていた70系チェイサーの方が運転してても楽しかったな・・」
新車で購入したマークXだが便利な分面白みも無く半年もたたずに飽きてしまっていた。
呟くとドアを開け外に出る、生まれ育った田舎をぼんやりと眺めた。

山と山に挟まれたこの場所が僕の田舎だ。
平坦な道など無くどこを歩いても坂道と段差が続く。
目指す家はここより1キロ先にある。
離れた場所に停めたのは少し歩いてノスタルジックに浸りたいと思ったから・・・・
いや・・近くで停めると集落の人に見つかると思ったからだ。
道沿いに清らかな川が流れアユ釣りシーズンになると釣り人訪れる。
それ以外は車が峠を通過するだけの集落だが20年振りだとどこか恥ずかしさがあった。

下った脇道に入るとそれまでの整ったアスファルト道が一変する。
脇道は何年も放置された細いひびだらけのアスファルト道。
路肩はアスファルト片がボロボロと崩れそれが砂利と混ざっている。
そのひびは深くそこから雑草が生えていた。

集落に入ると人の気配がない。
当たり前だ、今は寂れ殆ど老人しか住んでいなんだから。
そして一人暮らしの母もその老人の一人だ。

『デス・・』

不意に聞こえた不快な声・・
耳を澄ませばそこらじゅうからデスデスと小さな声で聞こえてきた。

「チッ」っと一回舌打ちをすると早足になって歩いた。
少し歩いた先に2反ほどの畑があってその先に僕の実家ある。

枯れ葉が堆肥になった土は普通の土より黒く土壌の栄養が高い事を伺わせる。
畑は母が食べるだけの野菜を植えており、畑の大きさの割には種類が豊富だった。

『デスゥ・・』

畑の一角にある肥溜めの脇にその実装石はいた。

現代の畑は人糞が有害だと言う事で使われなくなり、人工的な堆肥を混ぜて土壌を豊かにしている。
だが多くの過疎集落では今でも人糞が使われている。
この集落では昔から珍しい事に人糞を使わず代わりに実装石の糞と枯葉を発酵させて畑に撒いていた。

普通なら実装石の糞なんてとんでもないと思うだろう。
実は実装石の糞は人間の糞に比べ雑菌は少ないのだ。
少ない栄養素しか得られない実装石にとって栄養を取るという事は死活問題である。
そこで最後まで栄養を搾り取ると消化できない繊維や尿素が豊富な糞になる。
実装石の糞が緑色なのは葉素を多く含んでいる証拠で、それがリン酸やカリウムを土の中で作り出す手助けになっていた。
まぁ集落の者は特にそんな事を知らなかったのだろうけど・・

この集落には一軒に最低一匹以上の実装石が外に飼われ余った野菜屑などを与えられていた。
餌を与える代わりにその糞は必ず肥溜めにひり出すという躾がされていた。

実装石は畑の脇にある肥溜めに繋がれているのが普通なのだが、
なぜか母は実装石を繋がず放置していたので、この実装石は暇そうにウロウロしていた。

「デス?」

僕の存在に気付くとその実装石が近づいてくる。
相変わらず母は実装石を甘やかしているらしい。
他の家では実装石を乱暴に扱っている為、人間を怖がって近づく事が無いからだ。

「デスデス」と両手を揃え差し出す姿は僕に何かをよこせと言っているのだろう。
近くの肥溜めを覗くとそこには薄緑色の液状便が貯まっている。
発酵が進んで行くと糞は液状に近くなって色が薄くなるのだ。
その液状便の中で蛆実装が幾つもの団子状の集団を作りうぞうぞとうごめいていた。

その塊を見て僕が子供の頃その蛆団子に向かって石を投げつけていた事を思い出した。
石が当たる度に悲鳴を上げて団子はばらけ、また集団になろうと集まりだす。
僕は飽きるまで何度も何度もその塊に石を投げつけた。

「糞まみれになって怒られたっけな・・」

その実装石を無視して玄関の引き戸をガラガラと開ける、この集落で鍵をかける家など一軒も無い。
玄関から廊下の突き当たりまで舐めるように見る、20年振りの家は記憶よりとても狭く感じた。
そう言えば集落自体も小さく感たな。

奥に進むといつも母が座っていた居間に入る。
そこには母がちゃぶ台に座ったままで壁を見つめていた。

ここに来たのは母にかけた電話がきっかけだった。
東京に住む僕は定期的に母の所に電話をかけている。
いつものやり取りをして母の健康を聞いたり、何気ない会話を繰り返すだけだった。
だが今週になって電話口の母がおかしい事に気付いた。
僕の名前を思い出せず僕自身に聞いたのだ。
名前を言うと思い出したように何度も何度も繰り返し記憶しようとしていた。
どうやら母は認知症を患ったらしい。


「母さん・・」

僕の呼びかけに少し間をおいて「けんじ・・かい」と疑わしそうに聴いた。

「あぁそうだよ息子のね」と答える。

今日来たのは母を東京の家に連れて行くからだ。
その連絡は電話で何度もしてるから母も分かっているはずだ、忘れていなければね。

「用意は出来てるよ」

視線の先にはカバンが二つ置いてあった。
荷物はあれだけなのかと思ったが、多いと困るからほっとした。

話を聞くともう集落の人とは話が済んで畑や土地は譲渡済みだそうだ。
大した金にもならなかったが放って置いてもしょうがないから良かったと話した。

荷物を持って玄関を開けるとあの実装石がニッコリと笑って僕達を待っていた。
いや母を待っていたの方が正解か。

「おいで花子」

母の手には煮込んだ野菜が大量に入ったボウルが握られていた。

「今日で最後だからよ〜く味わってな・・」

そう言った母の顔は寂しそうだった、この実装石とも今日でお別れだからだろう。

花子と呼ばれた実装石は冷たくなった煮物にがっついて顔をうずめるように食べていた。
その間に僕と母はこの家を後にした。

10分ほど歩いて集落の外の道路に出た。
僕は忘れ物があったと母に告げ、「ちょっと待ってて」と言って母を残して実家へ戻っていった。

早足で肥溜めにまでやってくるとあの花子はまだ餌を食っていた。
僕はそれをじっと見ていた、食い終わるのを待っているのだ。

ボールの底まで舐め尽すと満足したのかお腹をさすり『ゲフッ!』とゲップをした。

「もう食い終わったな」

僕は花子の後ろ襟をヒョイと摘み上げる。
気付いた花子は僕に向かって『デッス〜ン』と媚を売り始めた。

ボチャン!

花子を肥溜めに落とした、いきなりの事で花子はうろたえ実装蛆団子にしがみつこうとする。
だが蛆では浮いているだけで花子を支えるだけの浮力は得られない。
『レピャレピャ』と悲鳴をあげ蛆実装が沈んでいく。

僕は傍らにあった石を手に取ると花子の額に向かって思い切り投げつけた。

『デァ!』

石は額の真ん中に命中して花子の額がぱっくりと割れた。
そこから大量の血液に混じりピンク色の脳がぼとぼと落ちた。

また石を手に取ると何度も何度も花子に向かって石を投げる。
それは小学生の時に蛆団子に向かって投げた時のように。
いつの間にか僕は笑いがこみ上げて来る。

『デジャ!』『デガァァァ!』

石が命中するたび悲鳴を上げる花子、なぜ自分がそんな目に合っているのか分からないだろうな。
そんな事を考える暇も無いか。
眼球が飛び出し腕が吹き飛び液便が傷口に染みてくる。

『デジャァァァ』

最後に投げた大きな石が丁度顔のど真ん中に当たる鼻から血を噴出し白目を剥いた。
大きな悲鳴を上げて花子は液便の中に顔を突っ込んで突っ伏したままピクピクと痙攣した。

「これで終わったか・・」

花子の死体を確認すると僕は母のいる場所へ歩き始めた。
この集落の掟に家が絶える時、その家の実装石も絶える時になると言う掟がある。
母はもう忘れてしまったのだろうが、掟は守らなければいけない。
それがこの集落で生まれた運命なのだ。
それは人間も実装石も同じで花子の運命は母がこの集落を去る時に決まっていたのだ。

実は母を迎えに来たのはついでなのだ。
僕は実装石を殺しに来た、小学生の時の記憶が幾つになっても頭から離れない。
今日それが現実の物になった、しかも成体実装相手に。

汗だくになった僕は立ち止まると息を整えニヤリと笑い空を見上げた。

空が青い・・この集落で見る空は東京よりとても高く感じた。
白く薄い雲が蛆実装の固まりにも見える。
底なしの青い天蓋はあの薄緑色の肥溜めと同じなのかもしれない、花子は生まれた肥溜めに帰っていった・・。



終わり

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