タイトル:【愛】 実装かぞく7
ファイル:実装家族007.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1830 レス数:0
初投稿日時:2009/10/20-00:01:43修正日時:2009/10/20-00:01:43
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第7話 「3匹目」

「テェェェーーーン!!」

庭から泣き声が聞こえた。
しまった。ボラギノールが誤って外に出ちまったか。
そう思ったが、ボラギノールはデさんと一緒に絵本を読んでいる。
と言うと、この声の主は?

「テェェェーーーン!!」

俺たちは、声の主を確かめに、居間の窓に駆け寄ると、庭先に1匹の飼い実装石が泣いていた。

「これは、虹裏さんちのモニカちゃんじゃないか」

虹裏さん家は、この町内でも有名な愛護派のお宅で知られている。
俺もデさんの夜泣きや御寝小(おねしょう)が治らなかった時とか、
アドバイスを貰ったりしており、何かとお世話になっている人であった。
確かご主人は、会社を営んでおり、このモニカちゃんは飼い実装としては、
かなりレベルの高い生活を送っている飼い実装である。

そんなモニカちゃんが、何故俺の家の庭先に?
見れば、フリルのついた黄色の実装服も、道なき茂みを彷徨い続けたせいか、
泥まみれで汚れていた。

「おい。モニカちゃん。どうした」

「テッスン!! テッスン!! テェェェーーンッ!!」

もう何日も泣き続けたのか。
目元、鼻元、口元が、流れる体液で赤く爛れている。
俺の顔を見て安心したのか、枯れた涙がまた溢れ出し、梅干し顔で俺に助けを求めるように泣く。

中実装ほどの大きさのモニカちゃんは、トテトテと頼りない足取りで駆け出し、
俺の足下に縋るようにしがみついた。

そして、必死に

「テェックッ!! テェックッ!!」

と、虹裏邸のある方向を指さしていた。

もしかして、虹裏さん家で何かあったのか。
俺はとりあえずモニカちゃんを家に招き、泣きわめく彼女を宥めるべく給餌をする。

「フガッ!! フガッ!!」

よほどお腹を空かせていたのか、俺の家の安物のお徳用実装フードでも、がっつくように喰らいついた。

「ブハッ!! ジュルッ!!」

碗に盛ったただ水道水も、貪るように呑む。
泥だらけの前掛けを見るに、もしかして、この数日そこらの水溜まりの水を飲んでいたのか。
とりあえず、虹裏さんに迎えに来て貰うしかない。

「デさん。ボラギノール。ちょっと虹裏さんの所へ行ってくる」

「……………」
「………」

台所で、実装フードを散らかしながら喰らう黄色い実装服姿のモニカちゃんを警戒してか、
デさんとボラギノールは居間から台所に近づこうとはしない。

「仲良くしてるんだぞ」

そう俺は言い残して、数件隣りの虹裏さん家に向かった。

◇

「………なんてこった」

俺は虹裏宅の前で愕然と肩を落とした。
何度も何度も呼び鈴を押すが、呼び鈴すら鳴る気配がない。
裏に回り、窓から見えた家の中を見て、事の真相を悟ったのだ。

窓から見える、がらんとした部屋の風景。
ガレージには車もなければ、電気メーカーも止められていた。
郵便受けには、封書が満載し、何通かが溢れ出ている。
落ちている何通かを見ると、銀行や消費者金融から送られている封書。

「夜逃げ」

会社を経営していた虹裏さんから、連想される単語はそれだけだった。

「……だったら連れて行けよ」

モニカちゃんは、何度も何度も、家の前で、虹裏さんの名前を呼んだのだろう。
入り口のそばには、脱糞や吐瀉物の痕。
玄関の低い位置には、糞がついた手で何度も叩いたのか。
緑の手形が、無数についていた。

庭先には、かつてモニカちゃんに買い与えたのだろうか。
デスクーターが、藪に囲まれて置かれていた。

「……どう説明したらいいんだよ」

俺は、せめての慰めになるかと思い、虹裏家の庭に残されていたデスクーターを
とぼとぼと押しながら帰途へとついた。

◇

「ただい……まって、うぉぉ!!」

「デガッ!! デガッ!!」
「テェッ!! テェッ!!」

帰ってみると、デさんがモニカちゃんに馬乗りになり、平手でモニカちゃんの顔面を何度も何度も殴打していた。

「こ、こら!デさん!」

俺はデさんを払いのけて、モニカちゃんを保護する。

「テェェェーーーン!! テェェェーーーン!!」

俺のいない間に、デさんとモニカちゃんの取っ組み合いの喧嘩が発生していた。

「テェェェーーーーンッ テェェェーーーーンッ」

ボラギノールは、パンコン状態で、そのこんもりした糞の上に腰掛けて、天を向いて泣いている。

「シャァァァァァッ!!」

威嚇するデさん。

「テェック!! テェック!!」

足下で震えるモニカちゃん。
こりゃ先ほどの虹裏さん家の様子を伝えるどころじゃない。

「テェック!! テェ!? テスゥ〜〜ン♪」

モニカちゃんが、玄関前に置いてあるデスクーターに気づいたのか。
涙を拭いながら、デスクーターに駆け寄り、甘い声でデスクーターに頬をすり寄せる。
今となっては、ご主人様である虹裏さんから与えられた唯一の思い出の品なのだろう。

「テスゥ〜〜ン♪ テスゥ〜〜ン♪」

虹裏さんの匂いでも嗅ぎ付けたのか。
モニカちゃんはお尻を振りながら、甘い声をいつまでも喉から鳴らし続けていた。

(つづく)

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