「デエエエェェェェェ!!!ドゥエエエエエエエエエエーーー!!!!」 嫌がる実装石の声。ガラスに顔を押し付けられ、汚らしい顔から 涙と濁声が漏れる。四股を紐で縛られ、宙吊り状態で 大股開きにされた形で犯される。 「デッフデッフ!デッフーン♪」 頭をカクンカクンと上下に動かす。鼻である部分には血管の浮き上がる 勃起したマラ。 「象実装」にされた「生ゴミ」ことジッソーは最初こそこの姿を 嫌がり、「」やSにしきりに外す様に頼んだが、Sが射精の手解きを してやると、その時から始終マラを弄くり、精を放出する事に 夢中になった。 (デエエエェェェ!!嫌デスゥゥゥ!!こんなバケモノの 相手は嫌デスゥゥゥゥ!!!可愛い私を!!早く!早く 助けるデスゥゥゥゥ!!!) リンガルに表示される実装石の台詞を鼻で笑う飼い主。 「まだ7回しか出されてないだろ?今まで散々甘やかして育てたんだ。 その分ぐらいは楽しませろよ」 そう言いながら実装石を頭を殴る。 ゴン!!「デビィ!!??」ベチャ! 水槽に体液を擦り着けた顔がなんとも間抜けな表情で、周りのお客から 笑い声が漏れる。 「デフゥゥゥゥ〜ン、デフフゥゥゥゥゥゥゥン♪」 結合部からは相手の愛液と、自分の放出した精液が混ざり 泡を立てながら、総排泄孔から白濁した液体が滴り落ちる。 吐気を催すその強烈な臭いも、射精の快感の前には敵わないのだろう。 精液で汚れた顔面には不快極まりないニヤついた顔。 「デッフ〜〜〜ン♪デッフデッフデフデフ…デデデ… デエエエェェェエェエェェエ!!!!」 「デ!!」 ビクン! 目玉をひん剥いて顔が硬直し、怒張したマラが跳ねる。ジッソーは、 何度も身体を震わせながら射精する。 「ゴブ!ブピ!」 犯された実装石の総排泄孔から、収まりきれない精子が溢れ出す。 「デ、デデ……」 犯され実装は身体をプルプルと小刻みに震わせた。 色違いだった目が、徐々に同じ色に変わる。 「……デッス…グスン…デェェェン…デエエェェェェ…」 もう妊娠してしまった事に気付いたのか、だらしなく開いた 口から涎と、汚らしい顔から大粒の涙を零す。 白濁した液に顔を包まれても、それを拭うどころか舌を ダラリと伸ばして自らの精子と愛液を口に運ぶジッソー。 「ンデ…ピチャピチャ…デフーーン♪ピチャペチャ…… デ…デッフ〜ン…デッフーーン……デ、デデデ…」 吐気を催すその臭いと味も、この生物には媚薬だった。 「デッフーーーーーン!!!」 雄叫びと共に再び勃起が始まり、相手の総排泄孔を前後、 いや、ただ無理矢理奥へ奥へ…と突っ込んでいるだけだった。 犯され実装は、再び顔面を水槽の壁に押し付けられ、表情を グチャグチャに歪ませながら、くぐもった声しか出せない。 「デェ!……ンデエエェェ!!…デァ!」 歓喜と悲哀。水槽の中で繰り返される行為を、周りの人間達は 談笑しながら眺める。 その横の密封された水槽に、本来のマラの持ち主であるマーガレットと 11号が居た。 「シューー」 水槽に酸素を送る音が微かに聞こえる。 2匹とも全裸で丸坊主。そしてマーガレットの全身を覆う痣。 その色と大きさから、あの日から延々と虐待され続けているのだろう。 そのマーガレットの腹は大きく膨れ、両目は2日前から真っ赤に染まっていた。 父親はマラを移植されたジッソー。この妊娠で既に4回目だった。 「デ、デ、ズゥゥゥゥ!…デェ!デェ!ズゥゥゥゥゥ!! …デ、デアアアァァァァ…」 絶望の声を上げるマーガレット。濁った目に活力は無い。 2日前にSに総排泄孔をテグスで縫われ、出産どころか排泄も出来ないでいた。 元が悪い為か、元がマラ実装だからか、馬鹿な子供しか産まない マーガレットは処分決定となり、この仕打ちを受ける事となった。腹の中の 子供達は既に死んで腐り始めているのか、マーガレットの体臭が 夏の昼時のゴミ置き場と同じになっていた。 (デェェェェ、ゲップ…痛いデズゥ…お腹…裂ける…ゲフ…んな…… 裂け、ゲェェェ!…デズゥゥゥゥ…痛い…誰か…) うわ言を繰り返すマーガレット。体内に充満したガスが口から放出される。 栄養剤に浸けてある偽石を取り出した瞬間に、 石は粉々になってしまうだろう。 同じ水槽に居る2号の子供11号も、マーガレットと同じく妊娠していながら 総排泄孔を塞がれ悶え苦しむ。 「デェェェエエェェェ…デ、デデデ…デズゥゥゥ…」 2号の仔たちも成体になった。しかし、あれから程なく再びミスをした11号は 処分されることとなった。 『ただ普通に処分するのは面白くない。そうだ、倶楽部で公開してやろう』 「」の考えで、11号は倶楽部に連れて来られるとすぐさまジッソーに 交尾された。 (イヤデスゥゥゥ!!!こんなゴミに犯されるなんて嫌デスゥゥ!! お願いデスゥゥ!!良い仔になるデスゥ!!助けてデスゥゥゥ!!) 今まで散々馬鹿にしてきたジッソーに犯される屈辱。11号の場合も 妊娠、出産を3度試されたが、マーガレットと同じ結果の為処分決定となる。 4度目の妊娠が確認されると、直ぐに排泄孔を塞がれ偽石も栄養剤から 取り出された。水槽の横に置かれた小皿にドス黒い塊がある。 それが11号の偽石だった。健康体であれば綺麗な緑色の石が、 今までのストレスで変色し、表面には細かい罅も見える。 「デ、デデデズズズ…デデ……デェェーー……」 リンガルには(翻訳不能)の文字。もはや言葉はない。呻き声だけとなり、 11号の命は時間の問題だった。 その横を通り過ぎる8号が、水槽をチラリと見る。表情を曇らせ小さな溜息を 吐くと、「」の居る厨房に駆けていく。 倶楽部はSと「」で切り盛りするが、テーブルの掃除、 料理や飲み物を運ぶのは2号と8号も手伝う。礼儀や躾けのされている賢い この親子は、倶楽部のお客達にも普通に可愛がられる。 2号の子供達で、10号は一番最初に処分され、続いて11号。残った 8、9、12号の内、一番賢い8号は「」の元に残され、 9号と12号は倶楽部の常連に譲った。 (ご主人様、飲み物の配達終わりましたデスゥ) ペコリと頭を下げお辞儀をする8号。「」はグラスを拭きながらチラリと 8号を見下ろすと 「ん、ご苦労さん」 とだけ言った。その言葉を聞いて8号は頭を上げると、オズオズと 「」を見上げる。 (あの、ご主人様…11号はあのまま…) そう言い掛ける8号に、厨房の隅から2号が現れタオルを投げ付ける。 「デデ!?」 タオルが頭に掛かり慌てる8号に近づくと頭を叩く。 ベシ!! (デヒ!?マ、ママ…) (何お喋りしてるデス。さっさとこの灰皿を拭いてテーブルに持ってくデス) 無表情で、厳しく冷徹な目。優しい8号の親とはとても思えないその態度。 8号は小さく 「デスゥ…」 と返事をし、早速灰皿の拭き取りに掛かる。少しでも嫌がったり、 反論したりすれば半殺しにされる為だ。その様子を見ていた「」は 2号の頭を撫でる 「よし、いいぞ2号。あのまま8号のお願いを聞くのも 鬱陶しいからな」 2号はジッとして頭を撫でられる。表情は変わらないが、 内心は嬉しさで一杯だった。 2号にとって「」が全てだ。彼が言うことキチンと聞いていれば 褒めてくれる。優しくしてくれる。それが何より嬉しかった。 たとえ自分の子供を殺す事でも、「」の為なら 2号は喜んでその行為をする。子供の躾けに1度失敗してから、 尚更その傾向が強くなった。 「」の手が2号の頭から離れると、2号は深くお辞儀をした。心なしか 顔が赤らめている様な気がする。 (ありがとうございますデスご主人様) そう言うと、自分もタオルを持って灰皿を拭きに掛かった。 9号、12号は成体になるに従い、2号と同じく無表情に なっていった。そうすることでしか自分を守る事が出来ないのかも知れない。 しかし、2匹が2号と決定的に違うのは「賢さ」。その点で言えば2号の子供の 中では8号が抜けていた。しかも8号の場合、優しく思いやりのある性格までは 成体になっても変わる事はなかった。だから「」に気に入られたのだろう。 8号は処分されると分かっていながらも、11号の事が心配で仕方がない。 どうする事も出来ない自分を責め、目に涙を貯めながら一生懸命に灰皿を拭く。 「2号ちゃんと8号ちゃんはホントに真面目で助かるわ〜」 料理を終えたSが、2匹を眺めながら嬉しそうに微笑む。 「真面目なのは良いんですけど、8号は感情が邪魔をしてる部分もありますからねぇ」 「そんな事ないわよ。流石2号ちゃんの娘ね〜」 Sは「」の台詞を軽く否定しながら2匹の頭を撫でると、2匹はペコリと頭を垂れる。 (大ご主人様、ありがとうございますデス) 「」よりも偉いSは2匹に「大ご主人様」と呼ばれる。2匹にとっても、Sは 「」と同じ位好きな人間だ。注意する事はあっても、滅多に怒る事をしない からだろう。 「」が実装倶楽部で週末だけ働き出して3ヵ月が過ぎた。 ほとんどのお客にも顔を憶えてもらい、仕事の面でも Sにせっつかれながらではあったが、なんとかこなせる様になった。 先輩のAとは依然音信不通で、結局倶楽部でも手掛かりは 掴めなかった。そのせいもあってか、Aの居なくなった本業の仕事より 倶楽部での方が楽しく、充実した時間が過ごせる事を感じていた。 「あ、そうそう。明日からの夏休みの事だけど、本当に良いの?」 Sが「」に尋ねた。「」は連休中にS宅に住み込み、 Sの仕事を手伝うことを申し出た。 「ええ、お袋は旅行に行くし、ゴロゴロしてるより 余程良いですから」 「」はそう答えたが、本音を言えばSと一緒に居たい為だ。 そんな「」の気持ちをSも知らない訳でもない。 「」からの申し出を聞きた時は、ありがたかったし嬉しかった。 事実、住み込み案を言い出したのはSだった。その事を言われた「」は驚く。 当然Sの夫のことが頭にあった為、そんな事を言われるとは思いも 寄らなかったからだ。 Sは正直に「」に打ち明ける。 『私は未亡人だから』 薄く笑うSの顔を見るのが辛い。Sの口から直接「」には言われてはいないが Aと娘さんの駆け落ちの事を考えると、Sがどれだけ寂しいか、容易に想像できた。 Sは申し訳なさそうに「」に声を掛ける。 「…それじゃお願いね」 「はい!頑張ります!」 「」の返事に力が入る。 ピンポーン チャイムの音。「」が12号を譲った常連客が来た。 「いらっしゃいませ。出張で沖縄に行ったんでしてよね?」 「やあ、君もこの仕事が板に着いてきたね。そうそう、12号だけど 良いよ。良く躾けされてるけど抜けてるところもあって。あれは 性格なんだろうね。家族にも評判良いしさ。 真面目に馬鹿をやって、苛め甲斐があって面白いよ。 あ、そうだ。はい、お店にお土産」 男がSに包みを渡す。包みを剥がすと、瓶に入った泡盛だった。 「まー珍しい!夏なのに雪が降るんじゃないかしら?」 空気が和み笑い声が木霊する。人間達の笑い声に、 首を傾げる水槽の中の実装石達の表情を見て、他のお客達も笑い出した。 「あらあらあらあらぁ…あははは〜♪」 千鳥足ですっかりご機嫌なS。危なっかしく歩くその横には、2号がSのバッグを 持って着いてくる。 8号は倶楽部に残り、水槽の掃除をしつつ11号を見取るらしい。 今ではお店で飼われているジッソーの世話と、水槽の掃除を条件に 「」は8号の好きにさせる。念のため食料とカメラをセットして帰路に着く。 「あはは、アッ!?」 Sが躓きバランスを崩すのを、慌てて「」が抱き止める。 「ちょ!大丈夫ですか!?いくらお酒に強いからってあんなに飲んじゃ…」 そのまま肩を抱えて車まで運び、車の助手席に座らせると、 シートにグッタリともたれ掛かり 幸せそうに目を瞑る。「」は助手席のドアを閉め、今度は後部ドアを開けて 2号を乗せ、最後に自分が運転席に乗り込み軽く息を吐く。 エンジンを掛けた時 「…ゴメンね」 Sのか細い声が聞こえた気がした。「」は慌てて横を向くが、 Sは小さな寝息を立てていた。 「」はS宅に向かう。事前に地図で場所は調べてあった為 迷う事はなかった。 『よく考えれば場所が離れてるとはいえ、働いてる会社と 同じ市なんだよな』 信号待ちで止まった時に、バックミラーで後ろを見る。 チョコンと座席に座った2号が、Sのバッグを大事そうに抱え、 まっすぐに前を見ていた。 「」は軽く頷きながら信号を確認して車を走らせる。 市内の中心部から離れた山間に近い地区。隣の家までは 2〜300メートルは離れているだろうか。そんなところに 大きな家、というよりは屋敷といった方が正しそうな建物。 そこがS宅だった。 「Sさん、着きましたよ、Sさん!」 「」がSを揺り動かすと、ゆっくりと目覚める。Sは 「」をトロンとした目で見つめると、いきなり抱きつきキスをした。 「!!!!」 「デ?」 チュプ、チュ…クチャ 一瞬、酒の臭いするが、Sの舌が「」の口の中で妖しく動くと、 それも掻き消される。Sの舌が動く。ゆっくりと。ねっとりと… 「」の唾液を自分の口に運び込む動きさえした。大きく目を見開く 「」の脳髄は痺れ、意識も思考も硬直してSの成すがままにされる。 Sの唇が「」から離れる。時間にすれば1分も経ってないが、 「」は時間の感覚が判らなくなった。 「…んふふぅ♪おっきしちゃった?」 Sが上目遣いで「」を見る。酒が抜けきらない蕩けた目。 「な、なな何言ってるんですか!!」 「」は車から降りると助手席のドアを開けSを担ぎ出す。 「あ〜ん、そんなに慌てちゃダメよぉ。慌てると暴発しちゃうからぁ。 あらぁ?顔真っ赤よぉぉ?クスクスクス♪」 暗くて顔色までは判る筈はないが、心臓が踊って興奮が収まらない 「」の顔は真っ赤だろう。「」は後部座席の2号の抱えてるバッグを 掴み取り2号に声を掛ける。 「そこで待ってろ。すぐ来るからな」 バタン! 2号の返事も聞かず乱暴にドアを閉めると、 「」はSを抱え玄関へ向かった。 「デ…デ、デデ……」 2号も返事が出来ないでいた。目の前で見せられたキスシーンに 動揺が隠せない。 『ご、ご主人様と大ご主人様が……』 無表情ながら小刻みに震える身体。顔は真っ直ぐに前を向いたままだが、 視点はどこも見てはいない。 ポロ…ポロポロ… 2号の目から涙が零れた。なぜだか判らない。ただ、ただ悲しかった。 2号は自分に問う。 (なぜ私は…泣くデス?なぜ悲しいデス?…なぜ?なぜ?なぜ……) ポタ…ポタポタ… 自分の零した涙がシートに落ちる音で我に返った2号は、 涎掛けを外すと、それでシートを拭き出す。 (グズ…メデス…ご主人…大切な、車…デッス…汚しちゃ…グス…ダメデ…) 涙が止まらない。拭いたシートにまた涙が落ちる。 (…デェ…私…ダメな…グスン…ゴメン…なさ…ェェェン…) 2号は自分の顔を涎掛けで覆った。2号の嗚咽は、小さな車の中に 響くだけだった。 「それじゃ明日9時に来ますから…ホントに大丈夫ですね!?」 「」が玄関の壁にもたれ掛かるSに声を掛ける。Sは右手を顔 辺りでヒラヒラさせながら 「だいじょ〜ぶよぉ。……なぁに?心配なら一晩中付き添ってくれるぅ?」 と答えると、「」の顔がまた真っ赤になる。Sの余裕のある表情と、 「」の焦りまくる表情が対照的だ。 「え!?あ!いや!えーと…」 「クスクスクス、やーねぇー♪」 再び笑い声。その声を聞いた「」は別の意味で顔を真っ赤にする。 「それじゃ、明日お願いします!!おやすみなさい!!」 バタン!! 玄関のドアが乱暴に閉められる。 閉じたドアにゆっくりと手を振りながら、Sは壁にもたれ掛かり 目を閉じる。 「フゥ…10代や二十歳の女の子じゃあるまいし…お酒の力を借りないと ダメなんて…ね……」 「…そりゃもう魔法が使える歳さ!でも、そうじゃなくても あんな事されりゃ誰だって」 ブツクサ言いながら「」は車のドアを開ける。後部座席では泣き続ける2号が 目に入った。 「ん?…どうした?お前が泣くなんて珍しいじゃないか」 2号は涎掛けで顔を覆ったままお辞儀を繰り返し、 (何でも…グス、ないデス…デッス…ごめんなさいデス…) そう繰り返すだけだ。辺りを見回しても変わったところはない。 仮に野良実装に襲われても、2号の方が強い…「」は色々と考えるが、 頭の中は先程のSとのキスがどうしても思い浮かんでしまう。 「…あー!もういいや!!帰って寝よ!!」 ベルトを締めエンジンを掛ける。 (…ご主人様) 2号が話し掛ける。 「あん?どうした?」 「」は振り向かず、ミラーで2号を確認する。 (…ゴメンなさいデス…) 「あー、もういい。家に着くまで寝てていいぞ」 「」の言葉と共に車が動き出す。 (ありがとう、ございますデス…) 2号の返事はか細く、涙声で聞き取りにくいものだったが、「」は 気にしなかった。 2号は眠る事無く、ずっと考えていた。 『ご主人様…大ご主人様……キス…涙……私…私は……』 暗い闇の中、2号は寂しい気持ちで一杯だった。 荷物を抱え部屋に案内される。 「畳みの部屋なんて暫く使ってなかったから、慌てて掃除しちゃったわ」 Sが笑いながら部屋の窓を開けると、夏の朝の、新鮮な山の空気が入り込む。 「」の住んでいる部屋では味わえない香り。 「そうなんですか…あ、すみません、我侭言って…」 「」は荷物を置きつつ頭を下げる。昨夜の事が頭から離れず、どうしても Sと目線を合わせずらい。それを知ってか、Sは気を使わず普段通りの 態度で接する。 「いいのよ。こうして来てくれて本当に助かるんだから。 あ、2号ちゃん達は突き当たりの部屋になるから、後で荷物を 運んじゃいましょう」 Sも「」も実装石達とは一緒の部屋では寝ない。躾け上、 人間と実装石の立場を教える為だ。トイレや身の回りの事が自分で 出来ない実装石は、「」の元では生きてはいけない。 S宅は確かに大きい。1人で住むには勿体無い、というよりは 寂しくなってしまう広さだ。2階建てだが、2階は使われていない。 1階にはリビングとキッチン、Sの寝室兼事務室、 「」が住む部屋、2号達の部屋、更に空き部屋がまだ1つ残っており、 地下には倉庫と、編集部から送られた実装石の保管室となっている。 保管室は2つあり、少し壁や床の汚れた沢山のケージが置いてある 部屋と、綺麗でベッドは2つしかなく、空気清浄機が常に作動していて BGMに静かなクラシック音楽流れいる入り口が2枚ドアの、まるで 病院の集中治療室を思わせる様な部屋があった。普段は小汚い部屋を 使用しており、綺麗な部屋は滅多に使われないという。 「」が窓から外の庭を眺めると、色取り取りのガーデニングと、 ちょっとした芝生の広場がある。 「普段はここで放し飼いをしてるんですか?」 「」の問いにSが頷きながら答える。 「そう、家の周りは弱電流の流れる電線が張ってあるから 野良達が入ってこないの。その時に地下の部屋の掃除を行う訳。 我侭放題に育ってるから、外に連れ出すのも大変よ〜〜」 Sの言葉に一瞬不安になる。 『果たして、キレれないで仕事をこなせるか…』 「大丈夫、私も手伝うし、糞蟲ちゃんの誘導は2号ちゃんや8号ちゃんに して貰うから」 Sの言葉を聞いて、内心ほっとする。今までやりたい放題に 虐めてきた実装石を、今度は商品として扱わなければならない。 頭では分かっている事だが、精神的には相当キツイ。 「それじゃ、後で私の部屋に来て頂戴ね。お仕事の説明をするわ」 「はい」 Sが出て行った後、「」はもう1度庭を見渡す。 『旦那さんや娘さんが居た時は、ここで花を弄ってたんだろうな…』 そう考えると、複雑な気持ちになる。Aの後輩と名乗り倶楽部に来てしまい、 そのままずっと居座っている。 『ありがたい』 そうは言ってくれるが、本心は…… それを考えるのが怖かった。 「…やめやめ…もし迷惑なら昨日みたいな……」 それを考えると、今度は違う妄想が頭を過ぎり、一部分に血液が 集中し出す。慌てて頭を振り、気分を入れ直してから部屋を後にした。 S宅での仕事は、保管室の掃除と、実装石達の躾けと選別、 引き取り主が現れた時の仕分け及び配送の手続き、 処分用の実装石の各店への配達だった。 「デエェェ!」「デーーーーーッス!!デッスデエエェェッス!!」 「「「テチ?テチューーン♪」」」「デスゥゥゥゥン♪」「デププププ♪」 糞蟲達の声が車の中に響く。各自が喧嘩しないようにケージに入れられ、 ライトバンに詰め込まれた実装石達は、今まで通り我侭放題に 喚き、怒り、騒ぎ、媚び、嘲笑う。これから自分達がどうなるか、考えもしない。 「あ、そこの角を右に曲がって…そう、そこの地下駐車場に入って」 「」は2件ある支店へ処分用実装石を配達中だ。助手席にはSが同乗して ナビをしている。 県内でも有数の繁華街。とあるビルの3階に店はあった。 車を止めると台車を下ろし、ケージごと実装石を下ろす。 「デスゥ!?…デププ♪デスデデスゥゥ?」「デデッス!!デスデーーッス!!」 喚き散らす実装石達。リンガルには (ここは何処デス!?…分かったデスゥ♪美味しい物が 沢山食べれるところデスゥ?))とか (お菓子!!おい馬鹿ニンゲン!!腹が減ったデス!!) などと表示される。台詞から、今までの生活がどの様なものだったか、 容易に想像出来る。 「さ、こっちのエレベータに乗って」 言われるままに乗り込み3階に上がり、裏口から店内に入る。 パチ 「…デェ?」「「テェェ…」」 「デーー…」 電灯を点けると、店内に居た実装石が声を上げる。水槽の中で 空ろな目をしたボロ雑巾が動き出す。2つの水槽に親子の3匹と単独の実装石の 合計4匹。どれもボロボロで、1匹の仔実装はまだ腕が再生されず、 赤緑の肉が露出している。プルプルと小さな身体を震わせながら弱々しく鳴く。 (…テェェ…腕…痛い、テ…カラ…ダ……いた…) どうやら再生がままならない程弱っているらしい。この店で散々見世物に させた結果、この姿にされたのだろう。 「」が水槽に近づくと、単独の実装石が飛び起きて壁をペシペシと叩き出し、 デスデス喚き出した。服は無く、右と左で足の太さが違う。 この実装石も再生力がかなり落ちているらしい。 焦げて穴だらけの頭巾から縮れた髪の毛が チョロっと出ている姿は中々間抜けだ。 実装石は叫ぶ。 (…デス!私デスゥ!!11号ママの子供『11の2号』デスゥ!!) 良く見ると千切れ掛けてボロボロの頭巾に「11−2」と記してある。 「おー、11号の子供じゃないか?元気そうだな?」 「」が嬉しそうに笑いながら水槽に顔を寄せると、11−2号は 必死の形相で壁を叩く。さっきまで壁に寄りかかって「デーー…」と漏らして いたのが嘘みたいだ。 (出してデスゥゥ!!ご主人!また可愛がってデスゥゥゥ!!) Sも傍に寄ってきて「」と一緒に眺める。かつてはSの店で飼ったのだが、 所詮は11号の子供、あまりにも馬鹿な為ここに連れて来られた。 変わり果てた、というよりも、予定通りの姿にSの表情も緩み、満足気に頷く。 Sは11-2号を抱え上げる。 (デェェ…や、やっぱり大ご主人は良い人デスゥ!あの馬鹿ニンゲンとは 違うデスゥ!でも、これも私が可愛いからデスゥ♪) 汚れた顔で薄気味悪くデスデスニヤつく11−2号を、Sは 優しく暖かい眼差しでみつめる 「『様』が抜けてるわよ、ゴミ屑ちゃん♪」 Sの手がパッと開くと、 「デ?」 訳が分からない11−2号は、小首を傾げる暇も無く水槽に落下する。 その高さは30センチ。普通の実装石なら足を挫くぐらいで済むだろう。 だが、再生力の落ちた身体には大ダメージだ。 ゴッ! 「ビィ!?」 細い方の足が折れ、骨が太ももを突き破り飛びだし、肉片と 体液が水槽に飛び散る。ゴミ屑は、そのまま水槽の床にベシャリと倒れた。 硬直した顔が微かに震えた。 「……デ、デデ……デベェェェェェェェェエ!!!!」 突然表情が崩れ、口を大きく開き、濁った目玉から 涙を溢れさせ、傷付いた足を押さえて泣き叫ぶ11−2号。 身体を左右にバタバタと寝返り、悶え苦しむ姿は中々の役者ぶりだ。 「あら、まだ元気ね〜、もう暫く頑張りなさい♪」 Sはニコリと微笑むと、水槽を掃除する為バケツと雑巾を取りに行った。 今までの一部始終を見ていた新しくこの店に連れて来られた実装石達は、 先程まで騒いでいたのが嘘みたいに静まる。だらしなく開いた口と、 まじまじと見開く目玉。顔面蒼白で、冷や汗を流し震える。 仔実装などは恐怖で漏らしていた。「」がケージの蓋を開けて水槽に 入れようとすると、ケージの奥に逃げ込み蹲り、首を左右に振りながら 「デスデデス!!デエエエェェェッス!!!!」 と叫び、涎と鼻水と涙が飛び散り床を汚す。「」はケージを掴み、持上げて 引っくり返す。ケージの柱の間隔が狭い為、何も掴めない実装石は滑り落ちる。 「デ、デデ!!デエエエェェェェ!!!」 ベシャ! 「デヒン!?」 顔面から水槽に落ちた実装石は、鼻を片手で押さえつつ震えながら 立ち上がる。横を見るとボロ親子と目が合った。 「…デェー…」 「テ…テフゥゥ…」「テェェェ…」 弱々しい鳴き声と、毟られ引き千切られた服と髪。治りきっていない 傷口……流石にこれからの自分がどうなるか、想像出来たのだろう。 新参実装石は水槽をペチペチ叩き声を上げる。張り裂けんばかりに… 「デーーーーーーッス!!!デエエエエエエェェェェス!!!」 ピョンピョン ジャンプまでして無駄な努力を試みる。「」はその姿を見て苦笑すると、 さっさと次のケージを手にした。 「ケージを担ぐのは結構な肉体労働ですね。それにしても11−2号が まだ生きていたのはビックリですよ」 配達と買い物を終え、一旦帰宅する車内での会話。 「そうねぇ、でもあの子が「2号」なんて名乗ったら あの2号ちゃんがすねちゃうんじゃ…あら?…夕立?」 もうすぐ家だというところで、フロントガラスに雨粒がポツポツと着いたか と思うと、ザーっと本降りになる。空が真っ黒な雲で覆われ雷が光る。 「やだ、今日は降らないって天気予報で言ってたから実装石を 外に出したままだわ…」 「急ぎましょう。2号が避難させてくれれば良いんですが…」 程なくS宅に着く。Sと「」は急いで庭に回り実装石達を探す。 実装石達は玄関の軒下に避難していた。 ゴロ、ゴロロ……ピカ! 「デヒィィィィ…ガクガク…」 各自が耳を塞いで震えてしゃがみ込む。どうやら雷が怖いらしい。 その中で1匹だけ、普通に立っている2号が居た。雷に怯える事無く 主人の帰りを待っていた。 「ありがとう2号ちゃん!流石ね〜!」 2号はペコリとお辞儀をする。 (ありがとうございますデス。ただ仔実装が2匹どこかに隠れて しまったデス。私は探しに行こうとしたデス…) 「」達は状況を見れば理解した。実装石達が2号を取り囲む様に しゃがんでいる。2号は「実装石達には手を出すな」とSと「」から 言われている為、身動きが出来なかったのだ。 大方 「私達を置いて逃げるつもりデスゥ!?」 とでも言われたのだろう。 「いや、分かってる。お前は良くやったぞ。ご苦労だったな」 2号はまたお辞儀をした。お辞儀の時間はSの時より少し長かった。 「それじゃ、ちょっと探してきます」 「」はそのまま庭に飛び出していく。 「あ、ちょっと!」 「実装石達を閉まっておいて下さいね!」 激しい雨の中、「」は傘も差さずに仔実装を探した。 「ふぁ〜あ……へ、へ、ヘっくしん!」 倶楽部での後片付けの最中、「」は生アクビとくしゃみが止まらない。 仔実装は2匹とも庭の脇にある小さな木の陰で震えて縮こまっていた。 もっとも見付けるまでに30分近く掛かってしまったが。 その後簡単にシャワーだけ浴びて、実装石達に餌をやり、すぐに倶楽部へ やって来た。当然倶楽部では冷房が効いている為、簡単に体調を崩してしまった。 『あー、頭イタ〜…初っ端からこんなんじゃカッコつかないなぁ…』 水槽を掃除する「」の横にはジッソーが幸せそうにイビキをかいていた。 「デェェェフゥゥゥゥ…ムニャ…デフフ♪…」 外見の面白さあるが、意外と良い確率で賢い仔を種付けしてくれるので 倶楽部でも人気がある。その為、「」のアパートにいた頃の様なハードな 虐待はされず、比較的幸せな生活を貪っていた。 そんなジッソーを見て、「」は舌打ちしながら水槽を磨く。 トテトテトテ… 2号と8号が床掃除を終え、「」の元にやってきた。 (ご主人様、床掃除終わりましたデス) (…ましたデス…) いつもと変わらぬ2号と、目の下にクマを作り、明らかに睡眠不足で 元気の無い8号。11号が死んだ為だ。「」達が店に来た時、 水槽に張り付いて泣いていた8号。水槽の中には大きな腹を 抱える様にして、苦悶の表情のまま横たわる身動きする事の無い 汚物と化した11号がいた。同じ水槽にいたマーガレットも虫の息だが、 まだ生きていた。そのマーガレットも倶楽部が閉まる1時間ほど前、 お客の投げたダーツが腹部に命中すると、盛大に破裂して死んだ。 (…ご主人様?どうしたんデス?) 次の指示を待っている2号が声を掛ける。「」の様子がおかしい事に 気付いたのだ。 「…ん?あぁ、お前らか。それじゃ、あとは生ゴミに餌をやって終わりだ…」 足元がフラフラと覚束ない。頭が割れそうに痛む。 (分かりましたデス。…ご主人様、大丈夫デス?) リンガルを見るのも億劫なくらいだ。視線を動かす度に頭が痛む。 「…大丈夫だ。ほら、さっさとしろ」 その返事を聞いた2号と8号はお辞儀をしてから、餌をやりに行く。 その姿を追う事無く、「」はその場にしゃがみ込む。 「…どうしたの?体調でも悪いの?」 洗い物を終えたSがやって来た。Sは「」の顔を覗き込む。 赤ら顔と充血した目。手を額に当てる。 「ちょっと!熱があるじゃない!」 「…すみません…でも、薬飲めばすぐに引きますよ…」 「何言ってるの!早く帰るわよ!2号ちゃん!8号ちゃん! 帰るわよー!」 Sは「」をソファーに横にさせると、慌しく身支度を始めた。 「うん、これで良し」 Sは「」に軽めの食事を与えた後、自分達の遅い晩御飯を作る。 その横で2号と8号は使った器具やお皿などを洗ったり、拭いたりと、 分担作業も手馴れたものだ。 「あ、2号ちゃん。私手を離せないから、これとタオルを換えてきてくれない?」 洗い物を終えた2号にSがアイスノンを渡す。家に帰る途中で慌てて 買ってきた物を急速冷凍させていた。 (はいデス) ぺこりとお辞儀をすると、Sからアイスノンを受け取り、2号は トテトテと「」の部屋に急いだ。 トントン 2号が「」の部屋の戸をノックする。しかし返事は無い。 2号はゆっくりと戸を開け布団を見る。「」は寝たまま起きる気配もない。 静かに部屋に入り、2号はお辞儀をしてから「」の額に乗るタオルを取る。 「…ン…ンン……」 「」の表情が少し歪む。熱で魘されているらしい。「」の頭が 2号の方に動き、2号は思わず驚く。 「デ…」 こんな近くまで「」の顔に近づいた事など無かった。 2号の脳裏に、この間の「」とSのキスシーンが浮かぶ。 2号はじっと「」の顔を見る。しばらくの間2号は「」を見詰めると、 「」の頬に顔を寄せ口付けをした。初めて触れる「」の頬。 頭の中が真っ白になる。ほんの僅かな時。ゆっくり顔を離す2号。 無表情のままの顔が、少しずつ赤くなる。2号は素早く「」の額にアイスノンを 乗せると、慌ててお辞儀をして部屋を出て行く。偽石が張り裂けそうなぐらい胸の 鼓動が走る。 今まで考えもしなかった事。「」のアパートに居た時は考えた事も なかった。もちろん実装石の自分と人間の「」の身分の違いも、 身をもって知っているし、Sの事が嫌いでもなんでもない。なぜあんな事をしたのか? 自分でも分からない。でも、2号は嬉しかった。「」に頭を撫でられた時よりも、 ずっと、ずっと嬉しかった。キッチンに向かう暗い廊下も、心なしか明るく見えた。 (ただいまデス) お辞儀をしてキッチンに入る2号を横目で見て返事をするS。 「あ、おかえり。ありが…あら?2号ちゃん、顔が赤いわよ? まさか貴方も風邪?」 Sが心配そうに覗き込む。 (ママ!大丈夫デスゥ!?) 8号まで駆け寄ってきた。 (……私は大丈夫デス。心配掛けてゴメンなさいデス) そう言いながら頭を下げ、2号は流しにタオルを持っていく。 「?…まぁ、フラついてないから大丈夫そうね。さ、ご飯にしましょ」 Sがテーブルに着く。続いて8号。最後に、顔こそ無表情だが 嬉しさで一杯の2号。この日の晩御飯がなんだったか、それが分からない くらい2号は嬉しかった。
