タイトル:【愛】 実装かぞく5
ファイル:実装家族005.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1796 レス数:0
初投稿日時:2009/10/16-07:41:41修正日時:2009/10/16-07:41:41
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第5話「デさんとボラギノール2」



デさんとボラギノールの奇妙な生活は、まだまだ続いた。

「テチュ〜ン♪ テチュ〜ン♪」

ボラギノールが居間で、デさんの玩具箱を覗きながら、嬌声を上げている。

「………デプン」

本名デスアことデさんは、殊更、ボラギノールとは接点を持とうとはしなかった。
ボラギノールがデさんに甘えようと近づいても、デさんはわざとらしく席を立ち、距離を開けた。

ボラギノールが廊下で転けて、大声で泣き出しても、デさんは完全に無視して横を通り抜ける。
しかし、幼くして母実装とはぐれたボラギノールは、本能のためか、庇護者に値する者へ
必死に自らをアピールし続けるのだった。

家の中の事とは言え、実装石同士の関係である。
俺は敢えて、この2匹の関係に口を出すことはできなかった。

◇

困った出来事がある。
それは、ボラギノールの事だ。

『ウンコォ!! ウンコォ!!』

リンガルにはそう表示されている。
台所で、ボラギノールが、自ら排した排泄物の周囲を小躍りで踊っていた。

『見るテチ ご主人様 見るテチ』

ああ、見てるさ。
見事なとぐろを巻いた緑色の一品をな。
離乳食から実装フードに変わり、食欲旺盛なその結果を、十二分に堪能しているさ。

困ったこと。それはボラギノールの躾である。
ボラギノールは野良実装出身である。実装ショップで購ったデさんとは違い、飼い実装としての
躾を何も学んでいないのは仕方のないことであった。

『ウンコォ!! ウンコッコォ!!』

たまにツイスト気味のステップが入る所が、子憎たらしい。

「こら。駄目だろ」
「テェ!?」

軽くデコピン。
ここはトイレじゃない。トイレはあそこだ。

「……テェ……テェックッ!! テェックッ!! テェェェーーーーンッ!!」

地道に躾けるしかないか。
居間のソファーで横になっているデさんが、冷たい目で俺たちの様を見つめていた。


◇

それから何回か躾を行ったが、ボラギノールの野良さ加減は改善できなかった。
こうなったら、食事抜きも辞さない。そう思い、朝食を抜いたその日の事だった。

それは、デさんが用を足すトイレ。
デさんは用を足した後、実装スコップで便をよそい、コンビニ袋へと分けて口を縛る。
口を縛ったコンビニ袋は、蓋付きのゴミ箱へと捨てる。デさんは排便の後、そこまで行う賢い飼い実装である。

そのトイレ。
脇に置いているその実装スコップに、わずかについているデさんの糞を、ボラギノールは、
舌でこぞるようにして、食糞していたのだ。

「テチュ〜〜ン♪ テチュ〜〜ン♪」

「……………」

これは駄目だろ。
食糞は実装石の本能だ。
食べ物を得る事が難しい季節は、親の糞を食べて子供達は育つ。
今、ボラギノールは本能に従って、その行動を行っているだけのことは理解できる。
だが、ボラギノールはこれから飼い実装として暮らしていかねばならない。
俺の家の中で、慣例的に食糞をされてはたまったものではない。

俺はボラギノールに近づき、彼女の右腕を摘んだ。

「テェ?」

そして、軽く、右腕を時計回りに半回転させた。
乾いたパキともポキとも聞き取れる音が、ボラギノールの右腕から聞こえた。

「テェェェェェェーーーーーッ!!!!」

だらんと右腕が不自然に垂れている。

「チャァァァァァーーーッ!! アッアァァァァァァッーーーーッ!!」

あまりの痛みに床に緑の染みを広げながら転げ回るボラギノール。
その回転により、だらんと垂れた右手が床と自らの体重に圧迫されて、さらに苦痛をボラギノールへ与えていた。

「テチャァァァァーーーッ!! デヂィィィィィィィーーーッ!!」

その時だ。

「デデッ!!」

ボラギノールのこの世の物とは言えぬ悲鳴を聞きつけ、デさんが居間から飛び出してきた。

「ヂィィィィーーーッ!! ヂッヂィィィィーーーーッ!!」

「デッ!! デデッ!!」

転げ回るボラギノールを、オロオロとした表情で見つめるデさん。
叫ぶボラギノールをどうすることも出来ず、最後にはデさんもデェェェーーンと泣き始める始末。

「テェェェーーーーンッ テェェェーーーーンッ」
「デェェェーーンッ デェェェーーンッ」

お、おい。
狼狽えたのは、俺の方だった。

「デスンッ!! デスンッ!!」

終いには、デさんが俺に向かい、何回も土下座を始める始末だった。
何度も。何度も。眼鏡にひびが入り、額に赤い血が鬱血するまで。

「デェック!! デェック!!」
「テスン!! テスン!!」

俺は頭を掻きながら、ボラギノールの躾を中断をせざるを得なかった。


◇

その夜、泣き疲れたデさんとボラギノールは、居間で同じ毛布の中で丸くなって寝入っていた。

ははは。写真。写真。


(つづく)

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