タイトル:【愛】 実装かぞく4
ファイル:実装家族004.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1797 レス数:0
初投稿日時:2009/10/14-06:07:58修正日時:2009/10/14-06:07:58
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第4話「デさんとボラギノール」



デさんとボラギノールは奇妙な生活を送るようになった。

「テチュー!! テチュー!!」

ボラギノールが懸命にデさんの後を追いかける。

「デスァ!! デスデスッ!!」

ついてくるなと言わんばかりに、デさんがボラギノールに吠える。
しかし、ボラギノールはテスンテスンと涙を拭きながら、必死にデさんの後を追いかける。

「デブデブ…」

ブツブツと言いながら廊下を歩くデさんの歩みは、仔実装にも追いつけるような、
ゆっくりな足並みであることに、俺は苦笑を隠しきれないのだった。

案外、2匹はうまくやっていける。
そう思った矢先の事だった。

◇

「デギャァース!! デスデェースッ!!」
「テェェェーーーーンッ!! テェェェェーンッ!!」

鼻から鼻血を流したボラギノールが、大声で泣きながら、俺の足下へと駆け寄る。
デさんが、ボラギノールに暴力を振るったのだ。

「デスァ!! デェデェースッ!!」
「こら!デさん!」

俺が叱ると、デさんの黒縁眼鏡がずれ落ちた。

「おまえは年上だろ!ボラギノールに暴力を振るうとは何事だ!」
「テチュ〜〜ン♪ テチュ〜〜ン♪」

鼻血を出したボラギノールは、俺の足に頬を擦りつけて甘い声で泣いている。

「デ…」
「馬鹿野郎!」
「デェェーーンッ!!」

俺に叱られたショックか、デさんは大声で大粒の涙を流しながら、その場でパンコンする。
2匹がうまくやっていけそうと思ったのは、甘い考えだったのか。
俺は、足下で泣くボラギノールの喉を撫でながら、深いため息をついた。

◇

デさんは、反省していなかった。

「デギャァ!! デギャース!!」
「チベッ!! ヂッ!!」

「こら!デさん!」

デさんが、ボラギノールに馬乗りになり、力任せに殴りかかっていた。
俺はデさん蹴り飛ばして、ボラギノールを保護する。
蹴り上げられたデさんは、宙を舞い壁に顔からぶつかり、鼻から大量の血を吐き出した。

「テェェェーーーーンッ!! テェェェーーーーンッ!!」
「よしよし」
「デェェェーーンッ!! デェェェーーンッ!!」

デさんも白い歯を朱に染めながら、大粒の涙を流して泣いている。

そんな事件が、それから何日も続いた。
その度に、俺はデさんを叱りつけ、泣くボラギノールをあやし続けた。

…………おかしい。
デさんは、ペットショップで購った、曲がりなりにも血統書付きの飼い実装。
幼少の頃より、一通りの躾を受けた飼い実装が、理不尽な粗相を繰り返すだろうか。
テリトリーを犯した、たった1匹の仔実装の出現で、こうも理性を狂わせるのか。
2度だけでなく、3度、4度、デさんがこのような事件を起こす事に、俺は少なからず疑問を持った。

◇

『お腹一杯テチ』
『ウンコするテチ。トイレ ウンコ?』

俺は引っかかる疑問を払拭すべく、居間にリンガルを仕掛けることにした。
リンガルを使ったコミュニケーションはいらぬ感情が入るため、あまり使わない方針なのだが。

『ウンコ 出たテチ。 ウンコ一杯テチ』

数秒震えたボラギノールは、その場で小さくパンコンしながら、居間の宙の1点を見つめている。
そして、ボラギノールが甘い声で、テチュゥ〜ン♪と鳴いた。

『………ニンゲンッーー!!』

リンガルには、そう流れていた。

『ニンゲンッ!! パンツゥゥゥーーーッ!! ニンゲェェーーーンッ!!』

その時だ。

(どんどんどん)(ドガッ!!)

鬼の形相のデさんが、どこからともなく現れ、ボラギノールの胸ぐらを掴んで、頭突きを鼻頭にかましていた。

『テェェッ!! テェェッ!!』

『ニンゲンじゃないデスッ!!』(ガスッ)

2発目。デさんが叫んでいた。

『ご主人様デスッ!!』(ガスッ)

3発目。ねっとりとした血が、デさんの黒縁眼鏡へと飛び散る。

『テェェェーーーーンッ!! テェェェーーーーンッ!!』

『今度、ニンゲンと呼んでみるデス……』

『テェックッ… テェックッ…』

『殺すデス』

俺はリンガルのスイッチを切り、ため息をついた。
まったく飼い主として、失格である。

「テェ? テチュゥ〜〜ン♪ テチュゥ〜〜ン♪」

俺の姿に気がついたか、ボラギノールが甘い声を出して、こちらを方を向き助けを求め叫んでいた。
俺は冷たい目でボラギノールを一瞥し、視線をデさんと合わせた。
俺が軽く頷くと、デさんも無表情で軽く頷いた。

すまんな。デさん。


◇

何度かその後、同じようなデさんの躾が続いた。
そのたび、ボラギノールが助けを求める声を発していたが、俺は敢えて無視を決め込んだ。

2度、3度続いた後だろうか。
ある日、デさんの躾はピタリと止んだ。それからだろうか。
ボラギノールが俺を見つめる眼には、今までのような飼い実装として一線を越えるような
絶対的な甘えの色はなくなっていた。

「……デプン」

居間で、実装新聞を読んでいるデさん。
まったく、デさんには恐れ入る。まいった。


(つづく)


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