次の日。俺と仔実装は公園へと出掛けた。 拾った仔実装の母親を捜す為である。 ここは、この実装を拾った場所から一番近い公園。 実装石は、通常公園に群がる習性があるため、この仔の母親もこの公園にいる可能性は高い。 「この公園も久しぶりだな」 「テチュ〜?」 ポケットから顔を出し、そこから見える風景を見るや否や、仔実装はポケットの中で騒ぎ始めた。 「こら。そんなに騒ぐなよ」 「テチャァァァーー!? テチュアアアアーーー!?」 仔実装の目線の高さからは想像もできない風景が、上着のポケットから見えるのだろう。 「チュァァアーー? テチュゥゥゥゥーーー!!」 頬を赤く染めながら、ポケットの中で大興奮の仔実装。 ポケットの中が少し湿ってきた。どうやら興奮のあまり失禁したらしい。やれやれ。 そんな仔実装を押さえながら、公園の中を練り歩く。 公園の茂みを注意深く見ると、所々に赤緑に光る眼が見える。野良実装だ。 「なぁ。この仔の親を知らないか?」 一つの茂みに近寄り、声をかける。 「デデッ!?」 薄汚れた成体実装石。 明らかに警戒心を解こうとしなかったが、金平糖を与えると、表情が柔和になる。 「なぁ。この仔なんだが」 両手で仔実装を差し出す。 「ンチャ!! モグッ!! ムファッ!!」 鼻を垂らし、両目を寄り眼にして、口の中の金平糖の味を確かめるに必死だった。 通常、実装石は母性が強いため、はぐれた実の仔を前にすれば、何かしらの反応があるのだが。 「こいつじゃないみたいだな。次、行くか」 「テチュー!! テチュー!!」 手の中の仔実装は、野良実装に与えた金平糖が名残惜しいのか、両手を差し出し、宙を掻き続けていた。 ◇ もうどれくらい同じ事を続けただろうか。 持参したお徳用の金平糖の袋も、既に軽くなっている。 ポケットの中の仔実装が、テチューテチューと俺に声をかけた。 「ん?どうした」 「チュー!! チュッチュッーッ!!」 彼女がポケットから身を乗り出し、しきりにある方向を指さしていた。 「ん…」 その方向は、公園が隣接している道路であった。 この街の繁華街と住宅街を結ぶこの市道は、時間帯に寄っては、かなりの交通量がある。 その道路の脇に、黒い物体が横たわっていた。 嗚呼。 俺は、騒ぐ仔実装をポケットに押しやり、その物体に近づいた。 「…………」 もう口を利くことのないその物体は、でれんと舌を出して絶命していた。 胴体が歪に窪んでいる。その実装服には、タイヤ痕が生々しい。 野良実装。それも成体実装石の死体だった。 「チュー!! チュー!!」 ポケットの中で抗議の声を出す仔実装を余所に、俺は何故かこの死体が、この仔の母親だと実感していた。 ◇ と言うわけで、この仔が家族の仲間入りをするになった。 「デスァ!! デスァ!!」 家に帰ると、デさんが、相変わらず抗議の声を荒げていた。壁に向かって。 はい。実装眼鏡。 黒縁の実装眼鏡をかけると、近眼のデさんは、俺に向かって悲痛な声を上げ続ける。 手の中には、疲れ切って、寝入った仔実装。 そうだ。この仔の名前を考えないとな。 そう思いながらも、俺は頭を捻りながら、騒ぐデさんを納得させる理由を考えなければならなかった。 (つづく)
