タイトル:【愛】 お母さんvs実装石
ファイル:お母さんvs実装石1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1948 レス数:0
初投稿日時:2009/10/11-00:48:09修正日時:2009/10/11-00:48:09
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お母さんvs実装石 1



小学校2年になる息子が実装石を拾ってきた。
息子の顔ほどある実装石が、手を口元に当て、「デプン」と短く鳴いた。
顔は薄汚れ、目には目やに、口元にはヨダレの跡がある。
下着は糞色に染まり、服には生ゴミが付着、体中から当然のようにアンモニア臭が漂う。

「お母さん、これ、飼っていーい?」
「元に戻してきなさい」

えー、なんでー、飼ってよー、の大合唱が始まる。

「あんた去年、金魚もらってきたときも、結局全部私に世話を任せてたじゃない」
「今年は大丈夫だもん」
その自信はどこから。
今年と去年でお前はどれだけ変わったというのか。

「俊昭、この子は野良なの。自然に返してあげるのが、この子の一番の幸せなのよ」
「お母さん、この子、カラスにいじめられてたの。ケガしてるんだよ。返したら死んじゃうよ」

デス、と実装石が短く鳴いた。
死ねばいいのに、と思った。

そうこうしているうちに、実装石の無表情の顔が一瞬力んだ。
そして、ホッとしたような、弛んだ表情に戻る。

もしや、と思って実装石のパンツを見ると、案の定、コンモリしていた。
そして、時既に遅しというやつか、パンツから漏れた糞がボトリボトボトと不吉な音をたてて、
私のお気に入りのハイヒールにクリーンヒットした。

「捨ててきなさああああい!!」
「ヤダああああああああああああああああ!」

ヤダァヤダァヤダァの大騒音。
そして泣く泣く泣く。
小さい体のどこに隠れていたんだというくらいに大きい声でわめき散らす。
泣く子と地頭には勝てぬ、とよく言ったものだ。
泣きたいのはこっちなのに。

「なんだなんだ、どうしたどうした」
今までどこにいたんだ、という感じでノッソリと出現してきたセイウチ、もといウチの主人。
今日は日曜日だった。

「どうした、俊昭、お父さんにいってごらん」
休日は寝床で一日中ごろごろして、家事も子育ても何もしないくせに、たまに出てきて、息子に甘い顔をする。
動物園に飼育されてればいいのに。

「お母さんが捨ててこいって」
「そーか、そーか。お父さんがお母さんと相談してやるから泣くな」
主人が息子の頭を撫でてあやす。
なに、この私が悪者的な構図。

「母さん、そろそろ俊昭も2年生だ。ペットを飼って情操教育も悪くないんじゃないか?」
「悪いわよ! あなたはいいわよ! あなたが世話するわけじゃないんだから。
 掃除も餌やりも結局は私がやるのよ! 冗談じゃない! 虹子もまだ幼稚園にあがったばっかりで手がかかるのに!」
今でも手に余るというに、実装石の世話なんて、きつい臭い汚らわしいの3拍子揃ったことなんてやってられない。
男はいつだって人のことを考えずに物事を進めていく。

「じゃあ、俊昭が世話をやれば問題ないんだな」
と、急に真剣な顔をして言う。

「あの子が世話なんてやるわけないじゃない。去年だって」

「分かった。俺に考えがある。俊昭」
俊昭に向き直り、こう言った。

「母さんに約束しろ。こいつの世話はお前がやる」

俊昭は赤い目をこすりながら、ウンと大きく頷く。
実装石も意味がわかるんだかわからないんだか、デフゥとゲップのような返事をする。
「約束したな? 男なら約束を絶対に守れよ」
ウン、と力強く頷く俊昭。

「というわけだ」

どういうわけだ。

「あいつも男だ。信頼してやれよ」

男の約束ほど当てにならないものはないと思うけど。
そんなことを言われたら、言い返しづらい。
親として、息子を信用してあげたい気持ちくらいはある。
でも、やはり夫は息子の何も見えていない。

「じゃあ俊昭、私とも約束して」
俊昭に話しかける。
「餌を忘れたら、お前の食事も無し、掃除をサボったら、トイレ掃除一週間」
「えー」
「じゃあ、捨ててくる」
「やだ!」
「約束を守るか、捨ててくるか、どっちか!」
「ヤダァ!」

ヤダァヤダァヤダァの大騒音。
お前はヤダァしか言えんのか。

俊昭に約束事なんて通じない。
俊昭に約束事を守らせようなんて、甘い。
そんなことができるなら、私がとっくにやってる。

夫はそんな俊昭を見て、呆れたような目をしている…と思ったら、
いつになく真剣に俊昭を見つめ、

「俊昭」

その声に反応して顔を向けた俊昭に向かって、ゲンコツを食らわせた。
ゴン、という擬音語が似合いそうな鈍い音。

わお。そういう展開になるんだ。

俊昭は一瞬ビックリした顔をして、頭を押さえうずくまる。
泣き叫びそうになったところで、

「どっちかだ、俊昭。どっちかに決めろ」

怒気を含ませた声。
ふだん滅多に起こらない分、迫力あるなぁと思う。
俊昭は真っ赤に腫らした目で夫を見る。
鳴き声を押し殺している。

俊昭は消え入りそうな声でこう言った。

「…飼う。約束守る」

こうして、私と実装石との戦いが、幕を開けた。


…マジか。



(つづく)

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○過去スク
実装石のお食事シリーズ
実装石を殺そう
山月実装せ記
台湾に行ってきました。
マーブル実蟲記


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