うだるような暑さが一息ついたと思って気がつくと、外は真っ暗。 あ、と思う間もなく、ばたばたばたっと大粒の雨粒があたりをたたき出します。 あわてて家中の窓を閉めてまわるトシの足元を、緑色の人形のようなものがまと わりつくように走ります。実装石のサツキです。 トシとサツキが窓を閉めて歩く間にも、おなじみの音が聞こえてきました——雷 でございます。サツキの鳴き声が泣き声に変わります。立ち止まったトシのスネ に抱きついてくる。 「あー、サツキは初めてか? あれは雷様だよ」 「デスゥ?」 しゃがんで背中をなでてやります。 「お空が怒ってるんだな。でも、大丈夫。そんなに悪いことしてないだろ?」 「デスッ!」 <してないっ!>とリンガルに表示されました。 「だったら、ここには落ちてこないよ」 「デス」 軽口を叩くトシも、実は雷が苦手でございました。 手加減して言うなら、大きな音が苦手、というところでしょうか。稲光は綺麗だ と思うけれども、どうしても音で身がすくんでしまう。恐いのはどこにいても恐 いが、とりあえず、綺麗なものを観て気を紛らわせよう……というわけで。 「サツキ、雷様を見に行こうか」 「デスッ!?」 スネにしがみついていたサツキが見上げます。折れて垂れ下がった耳ごしに見上 げる仕草は、中実装に育った今も可愛いものでございます。 「綺麗だよ? 音だけ聞いていても恐いだけだろ?」 「デス」 そこでサツキを抱き上げて、2階の寝室に参ります。ベッドの上に座れば、窓か ら稲光が見えるかも知れません。ベッドには念のためバスタオルを敷いて、その 上に二人で座りました。サツキは立ち上がって、トシの腿に手を乗せて、空を見 上げております。 ぴかり。 2……3……4……5……6……7…… ドドーン、ドロドロドロドロ。 8×3=24。おおむね2キロと半分で落ちましたから、これはなかなか近いです ね。 「お」 紫がかった光の枝が空を染めます。 「あれが雷様だよ」 バリッ、ドドドドドドーン。 「デ〜〜〜〜っ!」 背中をなでてやる。そうすることでトシも気が紛れます。 「本当に悪いことしてない?」 「で……デスゥ」 「悪いコトしてると、雷さまがおヘソ取りに来るんだぞ?」 「でぇえええっ!?」 そうこうするうち、閃光があたりをカッと照らし、空そのものを引き裂くような 轟音と地響き。おまけに一瞬、停電も起きました。 「…………っ!」 「〜〜〜〜っ!」 二人とも声も出ませんでしたが…… 「おヘソ、ある?」 「デ……」 おそるおそる、服の裾をまくり上げますと…… <あったデスぅ> そういったサツキの下着に緑色のシミが広がっています。 「あ〜〜〜〜〜っ!?」 <こ、これは悪いコトじゃないんですぅ?> 「オレが雷を落とすぞぉ!」 「でぇえええええっ!?」 お後がよろしいようで……。 先日は「おかわり」がごひいきにあずかり、恐縮でございます。調子に乗っ て二つめは愛護風にしましたが、とりあえず死ぬほど怖がらせてはおります ので、ご勘弁いただければ幸いです。
