ウメに手を引かれ、さつきは商店街に入ってみると、 人がごった返し、想像していた物とは大分違う事に戸惑ってしまう。 呆然と商店街を眺めるさつきの耳に、聞いたことのある声が呼びかけた。 「さつきー!こっちテチ、こっちテチ!」 声のほうを振り向くと、マリモがダンボールから体を精一杯に出して、 さつきに手を振っている。 マリモを見つけて、さつきはやっと知り合いが見つかり、ほっとする。 ウメに連れられ、マリモの所にやってきた。 「マリモお姉ちゃん・・・こんな所で何してるテチ」 「仕事テチ、糞蟲が入ってきたら、ぶち殺すテチ」 「この商店街は、私が守っているテチよ」 商店街で仕事をしている、人間さんの役に立っている実装石、 そんな実装石が自分の姉・・・さつきは、やっぱり姉は凄い実装石だと思った。 「今の時間は丁度お昼時で、人がいっぱいテチ」 「暫くしたら、お客がいなくなるテチ」 「その間に店の人が、お昼を取るテチ」 「その時間まで、さつきも大人しくし待ってるテチ」 さつきは体を、ピンと直立させ答える。 「は・・はいテチ!」 「マリモお姉ちゃんや、人間さんの邪魔にならないようにするテチ」 「マリモも見張りで、その時間まで相手が出来ないテチ」 「その間は、ウメおばちゃんの仕事でも見ているテチ」 ウメに連れられ揚げ物屋まで行くと、お客が列を作って待っていた。 お客に挨拶をして、ウメはさつきを部屋の中に入れた。 『今はここで待っててね、後でマリモの所に一緒に行きましょうね』 『お菓子とジュースは用意してあるから、食べててね』 あげられた部屋の丸いテーブルの上には、串に刺さった3色の団子とジュースが置かれていた。 見た事も無い人間の部屋・・いつものダンボールハウスとは違う大きな部屋。 さつきは不安で、お菓子を食べる気にならなかった。 開いている障子から、ウメの揚げ物売り場が見える。 さつきは身を乗り出して、ウメの仕事振りを見ていた。 ウメは汗だくで、並んでいるお客を次から次へと相手をしている。 この時間と夕方が、揚げ物屋の書き入れ時である。 お昼を暫く過ぎて、商店街にも人が少なくなり、ウメもやっと売り場から出てきた。 身を乗り出して、こちらを見ているさつきを見つけ、ウメは笑顔で答えた。 『なんだか昔を思い出すわ・・』 『私の子供も、いつもそうやって待っていたわね』 「ウメおばちゃん忙しそうテチ・・」 「さつき・・・帰った方がいいテチ」 『バカね子供の癖に、そんな事心配しなくても良いのよ』 『あら!お菓子食べなかったの?』 「ごめんテチ・・・一人じゃおいしくないテチ」 『じゃー帰る時、お土産にしてあげる』 「すみれに・・・すみれに、あげるテチ」 『妹のお土産ね、優しいお姉ちゃんね』 「そ・・そんな恥ずかしいテチ」 さつきは考えていた、自分は場違いな所に、無理に来たのではないか? ウメおばちゃんやマリモお姉ちゃんの、迷惑になっているのではと。 『さあさつき、マリモの所に行きましょうか』 ウメは売り物から、余っている物を適当に包んで、さつきを連れて行った。 外ではマリモがダンボールから頭半分を出して、こっちをじっと見つめている。 ヤスと魚屋もなぜか、にやけた顔で待っていた。 『ふふふ・・いつもああやって待ってるのよ』 『今日は、さつきがいるから緊張してるみたいね』 「ウメおばちゃん、こんにちはテチ」 「さつきもウメおばちゃんの仕事を、よっく見たテチか」 「ウメおばちゃん、一生懸命だったテチ」 「なんだかさつき・・・邪魔したかもテチ」 さつきの様子に元気が無い・・・マリモはさつきを呼んだ。 「こっちに来るテチ」 マリモは自分の入っている、ダンボールをポンポンと叩いた。 「うん!」 ダンボールにさつきは入り、周りを眺めた。 ここがマリモお姉ちゃんの仕事場・・ マリモは商店街を見ながら話し始める。 「ここに入って良いのは、特別だからテチ」 「さつきは特別テチ、さつき以外は誰も入れないテチ」 「この商店街は、私で持っているテチ」 「その私の特別な妹が、邪魔な訳ないテチ」 聞いていたヤスと魚屋はガクッと腰を落とす。 『この〜居候の分際で・・・』 『飯を食べさせているのは、誰だと思ってんだ・・ああ』 「マリモは商店街の仕事をしてるテチ」 「仕事をしてるから、食べさせて貰ってるテチ」 『お・・おう・・分かってんなら良いんだ』 ウメと魚屋は笑いをこらえている。 『ヤスさん、マリモの言ってる事も、まんざら嘘でも無いんだよな』 『マリモを見に来る客も意外と多いし・・・』 『それに野良実装の件も・・・・マリモ頑張ってるよ』 『チッ!魚屋まで・・たく』 『ヤス!!マリモはさつきと話してんのよ』 『ちょっと黙ってなさい』 「マリモお姉ちゃん・・凄いテチ」 「人間さんとこんなに仲が良いなんて、さつき羨ましいテチ」 「マリモお姉ちゃんは、なんでも前向きテチ」 「すねてた、さつきが恥ずかしいテチ」 聞いていたヤスが、違う違うと手を振って話し始めた。 『ハハハ違うよさつき、今日のマリモは良い子ぶってるだけ』 『気持ち悪いから、いつもみたいに話せってば』 『今日も朝から大変だったんだぜ』 『お昼だから早く帰れ帰れって、うるさかったしな』 『俺なんかもっと酷いぜ』 『妹の前に魚屋は魚臭いから、出てくるなだもん』 「マリモお姉ちゃん・・それは幾らなんでも酷すぎテチ」 『この前おやつに、みりん干あげたら「今回は特別に食べてやる」だって』 「魚屋さん・・・かわいそうテチ」 『怒るとすぐ、すねるしな』 「テチャァァ!うるさいテチィ」 「いい加減にするテチ、早くゴハンに帰れテチ」 「大体いつまで、ここにいるつもりテチ」 『はははじゃーな、さつきちゃん』 『からかうのも、これ位にするかな・・ははは』 「早くいけテチィ!」 ヤスと魚屋は店に帰って行った。 「ははは、お姉ちゃん本当に仲が良いテチ」 『さつき、朝から何も食べてないんでしょ』 『今日は、それ所じゃ無かったかしら』 「笑ったら、お腹ぺこぺこテチ」 『マリモと仲良く食べなさい』 紙袋からまだ暖かいコロッケとメンチカツを出した。 大好きなお姉ちゃんと、ウメおばちゃんに囲まれての食事は、 狭いハウスで食べるゴハンより、数倍おいしく感じた。 『おいしい?さつき』 「おいしい、凄くおいしいテチ」 「さつき、こんなおいしい物、食べた事ないテチ」 「ほっぺが落ちちゃうテチィ」 「ウメおばちゃんの揚げ物は、マリモも大好きテチ」 3人で楽しく食事をしている様子を、わなわなと血涙を流し、 唇を噛み締め、背後からすみれが見ていた。 「やっぱり・・レチ」 「ご馳走を食べてるレチ・・・昨日のご馳走よりおいしそうレチ」 「お姉ちゃん・・・一人でずるいレチ」 「それに昨日の、あいつもいるレチ」 「許せないレチ、許せないレチ」 「すみれだけ、のけ者にして許せないレチ」 「でも・・出て行ったら、また殴られるレチ」 「もう痛いのは嫌レチ」 「大体お姉ちゃんの癖に、妹を何だと思ってるレチ」 「あの嫌な奴とあんなに楽しそうに・・・私といる時は、哀しい顔しかしない癖にレチ」 「もうお姉ちゃんなんか、知らないレチ」 「すみれは勝手にするレチ」 すみれは生唾を飲み込んで、昨日食べたご馳走を思い浮かべた。 さつきやマリモが食べる動作に合わせて、自分も口を動かした。 しかしそんな事をしても、余計にお腹が減るだけである。 すみれは段々と自分が、惨めになって来る。 「何で・・・何で私が、こんな惨めな気持ちになるレチ」 「良く考えたら、ここには食べ物がいっぱいあるレチ」 「お姉ちゃんが食べていいなら、妹の私も食べて良いに決まってるレチ」 「それに・・・いい事を聞いたレチ」 隙を突いて、すみれは商店街に進入に成功する。 いつものマリモなら、こんな隙は作らないのだが、さつきとウメとの楽しい団欒・・・ 偶然にもすみれは、その隙を抜けていってしまった。 すみれは商店街に入り驚いた、何だこの世界は・・・ おいしそうな物で溢れ返っている、公園で雑草やコウロギを食べていた自分が、 なんともバカバカしく思えた、そしてママに対しても怒りの思いが、こみ上げてくる。 「ママはこんなに食べ物があるのに、すみれを騙していたレチ」 「今までも、すみれに隠れて食べていたに、違いないレチ」 「すみれはコウロギの屍骸を、おいしいって言ったレチ」 「ママは食べられる雑草を教えたレチ」 「団子虫も食べたレチ」 「ママは嘘つきだったレチ」 「糞蟲はママに違いないレチ」 「もう二度と騙されない・・・・騙されないレチィィィ!!」 すみれが最初に目を付けたのは惣菜屋だった、軒に沢山の惣菜・・・ 丁度店主もお昼に行ってしまい、誰も見張っている者はいなかった。 すみれは手当たり次第に、惣菜を食べ散らかし、自分の体重以上の量を平らげてしまう。 満足すると、そのまま寝てしまった。 店主がお昼から帰って来ると、食べ散らかした惣菜と、そこで眠る親指実装の姿があった。 『な・・な・・なんだこりゃぁああ!!』 『店が無茶苦茶だ・・・見張り実装の網を抜けてきたのか』 『実装石が寝てるぞ・・・小さいな親指実装か』 店主は親指実装をつまみあげた。 「ン・・・レチィ・・ニンゲン!もっと旨い物を持って来いレチ・・」 見ると、すみれのお腹は異様なほど膨れて、パンツからは緑色の糞が、はみ出ていた。 『今日はもう駄目だな・・・はあぁ』 『お前は野良実装だな』 『子供とはいえ、糞蟲の行き先は決まってるんだぜ』 惣菜屋はデスミキサーの方に、目を向けた。 「フン!私のお姉ちゃんは、この商店街の守り神レチ」 『何だって!お前みたいな糞蟲が、マリモの妹の訳あるまい』 『嘘もいい加減にしないとな!お前は俺がぶち殺してから、マシンに入れてやる』 「嘘じゃないレチ、嘘じゃないレチ!」 「嘘だと思うなら、マリモお姉ちゃんを連れてくるレチィ」 『よし!嘘だったら簡単には殺さない、苦しみぬいて殺してやる』 血相変えて惣菜屋は八百屋に来た、そしてマリモとさつき、ウメ、ヤス、魚屋で店の前に来た。 『こりゃあー、ひでーなー見張りの目をかいくぐったのか』 『しかし・・丁寧な事に少しずつ齧って、みんな駄目にしてるな』 マリモは自分の仕事が、完全でなかった事を恥じた、神経を研ぎ澄まし商店街の為にと、 どんな些細な事も見逃さなかった筈なのに、お昼の食事の間を抜かれるとは、 慢心が自分にもあったのか、マリモは言葉も出せずにいた。 『いや・・別にマリモを攻めたいんじゃ、無いんだよ』 『今まで良くやってくれてるし、昔はもっと頻繁にこんな事があったから』 『何が言いたいの?』 『いや・・この犯人がマリモの妹だって言うんだ』 『えっ・・マリモの妹は蛆実装しかいない筈だ』 『蛆実装も死んじまったし・・・』 『ほら・・こいつだよ』 「テッチュゥゥーン・・マリモお姉ちゃん」 「早く助けるレチ、何をしてるレチ」 「ニンゲン!!マリモお姉ちゃんに、捨てられたくなきゃ土下座するレチ」 「マリモお姉ちゃんがいなきゃ、商店街は困るレチ」 「すみれは、みーんな知ってるレチ」 ビニール袋に入れられた実装石はすみれだ、マリモとさつきは愕然とした。 『マリモこいつ・・お前の妹なのか・・』 なんて事だ、すみれは捕まったらマリモの名前を出したのか。 マリモは膝を突いてうな垂れてしまう、そして口を開いた。 「その仔は私の・・い・・いも・・いもうとテチ」 マリモの言葉をさえぎるように、さつきが前に出た。 マリモにさつきは、何かを悟ったように、小さな声で話した。 「マリモお姉ちゃん、ありがとうテチ、楽しかったテチ」 「その仔の名前はすみれ・・」 「私の・・・私の妹テチ!」 ビックリしたのは、すみれだマリモを困らせてやろうと思ったのに、 何でさつきお姉ちゃんが、これじゃ計画が台無しになってしまう。 いつの間にか惣菜屋には、商店街の店主全員が集まって、人だかりが出来た。 すみれを抱いてさつきはガタガタと震え、謝罪の言葉を繰り返した。 「ごめんなさいテチ、ごめんなさいテチ」 「どうか・・・どうかすみれを勘弁して下さいテチ」 「この仔は賢くないテチ・・だから、だから何をやったか分からないテチ」 「お店の品物は、私が働いて返すテチ」 さつきは惣菜屋の店主に泣いてすがった。 『別にさ、品物は良いんだよ・・ただね』 『当の本人は、反省の色は無いみたいだよ』 すみれはさつきの横で、手を頭に組み面白くなさそうに、地面を蹴っている。 「すみれ!何をしてるテチ」 「お前も土下座をするテチ」 「イヤー・・お姉ちゃんが悪いんだもん」 「すみれを置いて、自分一人だけご馳走レチ」 「お姉ちゃんは勝手にやるなら、すみれも勝手にやるレチ」 「お姉ちゃんはすみれの事なんて、どうでも良いレチ」 「マリモとせいぜい仲良くやってるレチ」 「大体ニンゲンになんで謝るレチ」 「可愛い私にニンゲンはメロメロレチィ」 「レチチププププ」 すみれの言動に周りの店主達も怒り出し、その矛先は姉のさつきにもむいた。 『何だこの糞蟲は、ぶち殺しちまえ!!』 『反省のかけらも無いな・・・』 『土下座してる姉も、きっと糞蟲に違いないぜ!!』 『所詮は実装石・・マリモだって分からないよ』 『何とか言えよ、この糞蟲が!!」 店主の一人がさつきの前に来た、怒りが収まらないような顔をしている。 『ふざけんじゃねーぞ!!この!』 ドカッ! 男はさつきに蹴りを入れた、さつきは、すみれを抱えるように倒れる。 「レッチィィ!」 「うっ・・ごめんなさいテチ・・ごめんテチ」 さつきはその場でまた、謝罪を繰り返すだけだった。 その行動が男の怒りをさらに引き上げ、また蹴りを入れようとした時。 「いい加減にするテチ!!」 「さつきを苛める奴は許さないテチ」 さつきの前にマリモは立ちはだかり、店主達を睨み付けた。 「マ・・マリモお姉ちゃん」 「出てきちゃだめテチィ」 「ごめんテチさつき、マリモも一緒テチ」 「さつきは私の妹テチ!」 「だからすみれも妹テチ」 マリモは男を睨みつけているが、足はガタガタと震え、立っているだけでもやっとだった。 『どけ!!マリモ』 「絶対どかないテチ」 『お前も一緒に蹴飛ばすぞ!コラァ!!』 マリモは男の迫力に心が折れそうになるが、自分をかばってくれた、さつきの為・・ そして、さつきが庇ってくれた時、自分は声が出なかった・・お姉ちゃんなんて失格だ、 本当の勇気はさつきが教えてくれた、わたしはさつきのお姉ちゃん、私が守らなければ。 『テメー・・・舐めんじゃねーぞ!!』 男の足が振り上げられた時、大きな声が響いた。 『オイッッ!!』 瞬間ビクリと男は動作を止めてしまう。 声の主はヤスだった、男はヤスを見てなぜか、うつむいてしまう。 『もう良いだろう・・マリモ達の事は、ウメ婆さんに任せよう』 男はヤスに恥を掻かせられた、控えめに抗議をする。 『ちょっと待ってくれ・・これじゃ俺がバカみたいじゃないか』 『何だと!お前は子供の頃から弱い奴にだけ、威勢が良かったな』 『大人になっても変らないようだな』 『文句があるなら、相手になってやるぜ』 『オラ!!かかって来いよ』 『わ・・悪かったよヤスさん・・』 男は逃げるように店に帰って行った。 「かっこいいテチ・・ヤスさん」 「やるときはやるテチ」 『フン!あいつは前から、気に入らなかったんだ』 『いつか恥じ書かせてやろうと思ってたから、気にすんな』 『婆さん、惣菜屋・・これで良いだろう』 『ああ俺もこの件は、ウメさんに任せるよ』 『ヤス・・悪ガキが役に立つ時もあるのねー』 「ウメおばちゃん、話があるテチ」 『話?なんだい言ってごらん』 「近くに来るテチ」 マリモとウメは何かを小声で話し合った、そしてうずくまっている、さつきに声を掛ける。 『さつき、さつき・・・顔を上げなさい』 「ウ・・ウメおばちゃん、ごめんテチ、ごめんテチ」 「みんなに迷惑を掛けたテチ・・・」 「ママになんて言えばいいテチ」 「ママ・・ママ、ごめんテチィ」 その顔も泣き腫れ泥も付いて、ぐしゃぐしゃになっていた。 『今日は家に泊まりなさい、ママには私が言っておいてあげるから」 「そんな、だめテチ、だめテチ、また迷惑を掛けるテチ」 『このままじゃあなた、ママに顔向け出来ないでしょ』 「はい・・・テチ」 『私に任せておきなさい!』 『それとも私じゃ信用できない?』 「そそ・・そんな事無いテチ・・でも」 『さあ・・いらっしゃい、まずはその汚れた服と、涙で汚れた顔を洗いましょう』 さつきは泣きながらウメに、連れられ行ってしまう。 すみれも、さつきに置いて行かれてしまうと思い、後を追いかけた。 「待つレチィィ!さつきお姉ちゃん」 「すみれも一緒に、ご馳走食べるレチィィ」 「お前はこっちテチ」 マリモはすみれの襟首を掴んで、引きずり倒した。 「レッチャァァアアァ!!」 「こっちへ来いテチ」 「イヤァァ!イヤァァアア!お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」 「殺されるレチ!殺されるレチ!コイツ私を殺そうとするレチャァァアア!!」 マリモは、すみれを引きずって行ってしまった。 残された店主達は、口々に実装石の悪口を始める。 一匹でも混じっていたら糞蟲は糞蟲なんだ。 マリモがあの糞蟲を手引きしたかも、なんせ姉妹だから。 公園の実装石も今は大人しいが、表面だけかも。 実装石なんて、人間には必要ないものだ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ウメに連れて行かれたさつきは、お風呂場でシャワーを浴びていた。 汚れた服は洗濯をしている、ウメはさつきの髪にシャンプーを掛け、優しく洗った。 『目はつぶってなさい、それにしても硬い髪ね』 清潔な方とはいえ、石鹸も無い実装社会、結構汚れていて垢も出てくる。 「汚れているテチ・・恥ずかしいテチ」 『恥ずかしいなんて、さつきも女の子ね』 『ほら次はリンスをかけるわよ』 「はいテチ」 「すみれは・・・すみれはどうなるテチ」 「だから・・すみれは連れてこなかったテチ」 「こんな事なら意地悪しないで、連れて来れば良かったテチ」 「そしたらずっと付きっ切りで、悪さをさせなかったテチ」 『どうなるのかしらねぇ・・・連れて行ったのはマリモだから』 『あの仔は厳しいわよ・・・もしかしたら殺されるかもね』 「マリモお姉ちゃんが・・・良かったテチ・・良かったテチ」 『すみれはマリモに任せなさい、あなたは明日からやる事があるわ』 「やる事?・・・」 『明日になったら教えてあげる』 『ほら終わったわ・・・さらさらヘアーよ』 「ウメおばちゃん・・・さつきの事・・嫌いになったテチ」 「さつきのせいで、ウメおばちゃん嫌われるかもテチ」 「さつきは商店街の人間さんに、嫌われたレチ」 『今はそうかもね・・・でもねさつき』 『明日はどうか分からないわ』 『さつきなら大丈夫よ、私には分かる』 「・・・ママと一緒テチ」 「ウメおばちゃんは、ママみたいテチ」 八百屋に入ると、すみれは水槽に放り込まれた。 暫くの間はガラスをペシペシ叩いて、罵声を叫んだが虚しく響くだけだ。 疲れて眠ると、仕事の終わったヤスとマリモが帰ってきた。 「レチャァァ!!レチュァァ!!」 「ここから出せレチィィ!聞いてるレチ!」 「さつきお姉ちゃんはどこレチィ!」 ガラスを叩いたが何の反応も無かった、マリモがヤスに摘まれて、水槽に入れられた。 すみれはマリモが怖くて、隅のほうでガタガタと震えていた。 マリモが近付いてきて命令をする。 「服を脱ぐテチ」 「・・・レチ」 「聞こえなかったテチか、服を脱げテチ」 「なんですみれが、お前の言う事を利かなければ、いけないレチ」 「脱ぎたけらば、お前が脱げばいいレチ」 「バカの相手は、出来ないレチィィ」 ボグゥッ!! 「レジャァァ!!」 すみれの顔面にマリモは、げんこつを叩き込んだ。 すみれの顔は鼻血を出して、少しへこんだ。 「いきなり・・いきなり、なにするレチィ!」 「服を脱げテチ」 「脱ぐレチ、脱ぐレチ」 「痛いことはやめてレチ」 「いいから早く脱げテチ!」 ガスッゥゥ!! 「レッチャァァァア!!」 「脱いだレチ、脱いだレチ、もう殴らないでレチィ!」 すみれは服を脱いでマリモに渡した、それを見たマリモはさらに殴りつける。 「まだパンツが残ってるテチ」 マリモは馬乗りになり、すみれの顔を何度も殴った。 ゴス! 「レチュア!」 ドゴゥッ! 「レジッ!」 ボコ! ドカッ! ゴッ!ゴキッ! ドガン! 「レチィ!レチャア!レジャァ!レジッ!」 「もうやめでレチ、反省じだレチ、反省じだレチ」 「ごれ以上やどぅど死んじゃうレチャゥァァアア!!」 マリモは最後に、思いっきり顔面にぶち込んだ。 「これで思い知れテチィィ」 「ジャッァァァァアアアァア!!」 すみれは体をえびぞり、大きな悲鳴を上げて気絶した。 マリモは、大きく腫れた顔のすみれからパンツを脱がすと、ヤスに渡した。 「ヤスさんこれ・・お願いテチ」 『何だよこれ・・・くせええぇ・・汚いし』 『やりすぎじゃないか・・・マリモ』 「実装石はこれ位、どうって事ないテチ」 「さつきの受けた痛みに比べれば、こんな痛み・・・」 「ヤスさん、これからマリモのやる事は、黙って見てて欲しいテチ」 『死んだり・・・しないだろうな』 「直らなければ、マリモが殺すテチ」 「死ぬか直るか、すみれが決めるテチ」 すみれが起きると裸だった、着ている物は何一つなく、寒さで体を丸める。 前を見るとマリモがゴハンを食べている、いい匂いだ・・・・ 自分にも分けてくれるだろう、自分をこんな目に合わせて、罪悪感の一つもあるはず。 すみれはマリモの横に行き、食べている野菜の煮物に手を伸ばした。 グサッ!! 腕には竹串が刺さっていた、実装石の柔らかい腕を、竹串が貫通している。 「レッ・・レッ・・レチャァァァアアアァァァアア!!」 「痛いレッチィ!痛いチャァッァ」 「行儀が悪いテチ」 「お前には一から十まで、教えなきゃいけないテチ」 「ゴハンをくれてもいいレチ」 「お腹が減って死にそうレチィ」 「行儀の悪い仔には、メシ抜きテチ」 「ママに習わなかったテチ」 「ママもよく怒ったレチィ」 「でもメシ抜きは、なかったレチ」 「言う事を利かない、お前が悪いテチ」 「なにを言っても無駄テチ」 「今日はゴハンなしテチ」 すみれの前でゴハンを平らげると、ヤスを呼んだ。 「ヤスさん、ヤスさん、もう食べたテチ」 「片付けして欲しいテチ」 ゴハンが片付けられてしまう・・・すみれは情けない顔をして、泣き始めた。 「酷いレチ、酷いレチ、ゴハン食べたいレチ」 「いい仔になるから、お願いレチ」 「すみれもゴハン食べさせてぇぇぇええ」 「泣いても無駄テチ・・・お前に食べる権利は無いテチ」 とうとう、すみれは怒り出してしまう、さっき殴られ酷い目に会った事も、 ゴハンを食べられない、それだけで忘れてしまっていた。 「お前なんか、さつきお姉ちゃんに言って、酷い目にあわせるレチ」 「ママはお前より体も大きいレチ、ママにも言ってやるレチ」 「忘れてたレチィ・・・レチチチププ」 「お前のママは、いないんだっけレチ」 「いても、もうお前のことなんか、忘れてるレチ」 「お前なんか、ずっと一人ぼっちでいればいいレチィ!!」 「まだ躾が必要テチね」 「お前は糞蟲テチ」 それから一時間以上すみれは殴られ続けた、今度は体中を蹴られ殴られ、 呼吸も弱くなり、水槽に転がっていた。 「ヒュゥゥ・・ヒュゥゥ」 「死んじゃうレチ・・・」 「体中痛いレチィ」 「なんだか体も動かないレチ」 「何でこんな事になったレチ」 「すみれが何をしたレチ」 「ヒュゥゥ・・ヒュゥゥ」 「さつきお姉ちゃん・・・」 「助けて・・・助けてレチ」 「腕に串が刺さったままレチ」 「でも体が動かないレチ」 「ヒュゥゥ・・ヒュゥゥ」 「さつきお姉ちゃん・・・来てくれたレチィ」 「すみれは、良い仔にしてるレチィ」 「お姉ちゃんの可愛い妹レチ」 すみれは幻覚が見え始めている、手をさし伸ばして、さつきに捕まろうとしたが、 どうしても、、さつきに触れない。 「どうしたレチ」 「お姉ちゃん、すみれはここレチ」 「ヒュゥゥ・・・ヒュゥゥ」 「泣いてるレチ・・さつきお姉ちゃん」 「すみれのせいレチ」 「お姉ちゃんの言う事、聞かなかったからレチ」 「すみれは悪い仔レチ」 「今度会えたら、あやまるレチ」 「お姉ちゃんが、あやまってたみたいにレチ」 「会いたいレチ、会いたいレチ」 「さつきお姉ちゃん・・・」 「レッチャァァァアアァァ!!」 悲鳴を上げて、すみれは気絶をした。 「フン!今更おそいテチ」 「明日になったらケロッと忘れてるテチ」 「お前なんか死んだ方が、さつきの為テチ」 その頃公園では、ある事件が起きていた。 夜になると仔実装や、力の弱い実装石がいなくなっていった。 公園の実装石は話し合って、懸命に原因を探したが、 何も掴めずにいた、実装石の自警団を作り、 集団で行動するようになった。 今の所、失踪は少なくなったが、夜になると公園の実装石は、 固まってすごした、子供はとられまいとする、親実装にとって、大問題となった。 さつきの母実装は、ウメから事の成り行きを聞いており、公園にいない事を、 幸運に感じている、今の公園は仔実装にとって危険な場所となった。
