タイトル:【馬】 長老
ファイル:長老.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2254 レス数:0
初投稿日時:2009/06/09-20:55:23修正日時:2009/06/09-20:55:23
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梅雨の合間のある晴れた日の午後、何もする気が無く公園のベンチで
ボ〜っと缶コーヒーを飲んでいると、1匹の実装石が近付いて来た。
髪の毛はかろうじて無事だが、服はボロボロでかなりみすぼらしい。
「デスデスデス デースデスデス」
何を言っているのかは分らないが、どうやら食い物をねだってるらしい。
持っていたバッグの中をまさぐると、溶けかけたアメが有ったので与えてみる。
「デッスゥ〜ン♪」
嬉しそうな声を上げながら、アメを頬張る実装石。だが不思議な事に
他の実装石達は寄っても来ない。あちこちに実装石の姿は有るのだが、
無視するか、こちらをチラっと見て「デププ」と笑い声を漏らすだけだ。
「おい、実装石」
「デス?」
「お前、ひょっとしてハブられてるのか?」
「デ? デ… デシャアアアア」
ちょっと考え込んだ後、舌をちろちろ出して、体をくねくねさせる実装石。
「違う。ハブのまねをしろと言ったんじゃ無い。お前は仲間外れにされているのかと
聞いたんだ」
「デデ… デス」
とたんにしょんぼりして、首をわずかにたてに振り、うなだれる実装石。
まあ、これだけみずぼらしければ、仲間外れにもされるよなあ。
と、ふと、ある事を思い付いた。
「実装石、仲間外れから脱出出来る方法が有るが、試してみるか?」
「デ…? デスデスデス!」
とたんに興奮して、何度も首をたてに振る実装石。
「かなり痛い思いをするが、我慢出来るか?」
「デ…」しばらく考えていたが「デス!」と答える実装石。
「よし。それじゃやってやる」
バッグの中からカッターナイフを取り出す。筆記用具と一緒に普段から持ち歩いてる物だ。
カッターを見て、一瞬たじろぐ実装石に説明をする。
「お前の前髪を肉ごと切り取って、アゴに移植する。立派に見えるぞ。お前の事を
バカにする奴もいなくなるハズだ」
思わず引く実装石に、人間には「長老」と呼ばれている尊敬されている人物が存在する事、
「長老」は「必ず」顎にヒゲをたくわえている事等を説明してやる。
実装石相手に、ヒマだよなあ、俺…。
「デデデ…デス」
覚悟を決めたみたいだな。それじゃ早速。
実装石を仰向けに寝かせ、前髪を抜けないように掴み、根元を肉ごとカッターでそぐ。
「デシャアアアアアアアアア!」
「うるさい!我慢しろ!次はアゴの方だ!」
同じくらいのアゴの肉をカッターでそぐ。真ん丸な頭の実装石は、こんな時便利だな。
「デキャアアアアアア!デデ!デスデスデシャアアアアアア!!」
痛さで暴れる実装石を押さえ付け、前髪を顎に、顎の肉を額に押し付ける。
片手で暴れる実装石を、もう片手で両方の肉片を押さえるのは、なかなか大変だ。
「こら!暴れるな!ずれる!アメをやるからおとなしくしろ!」
「アメ」と聞いて、突然おとなしくなる実装石。現金なモンだな。
血涙は流してるけど。
少しの間、両方の移植肉を押さえていて、癒着し始めた事を確認した後手を離し
持っていた製図用テープで傷口を固定する。
アメを実装石の口に押し込み、飲み残した缶コーヒーをポケットティッシュにこぼして
傷口の廻りにチョンチョンと塗って行く。本当はリポDか砂糖水が有れば良いのだが
缶コーヒーの糖分でも十分だろう。
「いいか、俺が言うまでそのまま寝てろよ」
「レフョ…」
口にアメが入っているせいか、間抜けな返事をする実装石。
さて、もうひとつ。傷口が完全に癒着するまでの時間を利用して、公園に落ちている手ごろな
木の枝で杖を作ってやろう。「長老」に杖は付き物だからな。

「なかなか似合うじゃないか。大したもんだぞ」
完全に傷が治り、杖を持った実装石は顎ひげをたくわえ、みずぼらしい姿も手伝って
長老と言うより、仙人のように見える。我ながらここまでハマるとは思ってもみなかった。
「デ!デ!デッス〜ン!」
誉められた実装石は、何か舞い上がって踊っている。
「これで仲間外れにされる事も無くなる。良かったな、実装石!」
「デス!」
「さあ行け!仲間の元に!」
「デスー!」
仙人と化したみずぼらしい実装石は、俺にぺこりとおじぎをした後、杖を振り回しながら
仲間の方へと走って行った。
おいおい、杖は振り回しちゃダメだって…。
ま、良いか。ヒマつぶしにはなった。久しぶりに手先を動かした俺は満足して
公園を後にした。

梅雨も明けたある晴れた日の午後、何もする気が無く公園のベンチで
ボ〜っとタバコをふかしていると、1匹の実装石が近付いて来た。
お、この前の実装石じゃないか。元気だったか?
「デスゥ…」
「元気がないな。ありゃ?もしかして失敗だった?」
「デスデス!」
実装石は首を横に振った後、廻りを見て欲しいとでも言うように腕を振った。
まわりを見てみると、なんだ?公園の実装石が、みんな顎ヒゲをたくわえてる!
ははあ、察するに、こいつを見てうらやましがった実装石がまねをしたんだな。
実験派の連中にでも頼んだのか、それとも虐待派がコイツを見て面白がって
他の実装石もコイツと同じようにしたのか…。どっちにしろみんな同じになってしまえば
この実装石は、元通り、ただのみずぼらしい実装石だもんな。
またハブられたか。
「デスウウゥゥ…」
むせび泣く実装石に、バッグから出した溶けかけたアメを与えると
「まあ、こう言う事も有らあな」
実装石の肩をポンと叩いてやった。

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