ヒワと僕 二 「おっ、託児か?」 俺がコンビニに入るとき、出口付近できょろきょろしている成体実装がいた。足元には三匹仔実装がいる。 今までの経験上、託児と見てほぼ間違いないだろう。 久しぶりに託児をされてやろうじゃないか。 俺はコンビニで弁当と、爪楊枝を購入した。 片方は託児されやすいように半開きにし、その中に爪楊枝をばら撒いた。 実装石でも追いつきやすいようなスピードで半開きの袋を持って歩く。 しばらくすると、「デスッ!」「テチッ!」と親仔の掛け声が聞こえ、爪楊枝入りの袋が少し重くなった。 全く持って馬鹿だな。あの成体は。 袋の中に仔実装が入ったのを確認した後に、軽くシェイクしながら早足で歩く。 シェイク中に一本でも二本でも爪楊枝が刺されば良い。 「痛いテチッ!!」 刺さったな。よし、さらにシェイク。 「刺さるテチ!何テチ!マンマも無いテチ!テチ!?テッヂアアアアアアィィィィィ!!!」 少しでも刺さってしまえば、後は中の仔実装が勝手に暴れてさらに爪楊枝が刺さる。 暴れると、また刺さる…。という爪楊枝スティングエンドレスが開始される。 「テチュアアアアア!!テヂアアアアア!!テビィィィィィ!!!」 良い声だ。良い感じで刺さってくれてるだろうな。 「ただいま。」 「お帰りなさいませデスゥ。ご主人様。」 「ああ、マカ。ただいま。」 マカは俺の飼っている実装石だ。躾…という虐待の名の下に育てられた。 まぁ、今では自分でほとんど出来るので手がかからなくて良い。 「ご主人たま、先にご飯頂いてるテッチュー。」 「頂いてるテッチュゥ。」 「ああ、分かった。」 マカ達の餌はコンテナに詰め込んである。レバーを一回押せば、一回分の食事量になるように設定されている。 「リーとフゥはどうしてる?」 「寝てるデス。遊びつかれたみたいデスゥ。」 「そうか。」 「ご主人様、そっちの袋がイゴイゴ動いてるデス。託児されたデス!?」 「いや、わざとだ。」 俺は袋から仔実装を取り出した。 「いだいテチ!いだいテチ!いだいテチィィィィ!!!」 見事に爪楊枝の針山と化している。 「相変わらずご主人様はえげつないデスゥ。」 「早くとるテチ!クソニンゲンはやくとるテチ!タイグーのカイゼンをヨウキューするテッチィィィィ!!いだいテチィィィ!!」 「糞蟲デスゥ。」 「まぁ、どうせそうだと思ったよ。」 俺はバナナ吊るしに仔実装を引っ掛けた。糞を漏らしまくっているので、勿論下はバケツが置いてある。 「離すテチ!下ろすテチ!いだいテチィィィィ!!」 「まぁ、遠慮すんな。折角お前のために買った爪楊枝なんだからよ。」 俺はコンビニ袋の中の爪楊枝を一本ずつ刺していく。 「いだいテチ!何するテチ!いだいテチ!何するテチ!」 「ボキャブラリーが貧困だなぁ。お前らは。」 「やめてテチ!いだいテチ!もう駄目テチ!やめてテチ!いだいテチ!!」 目と口以外にはほとんど爪楊枝が刺されている。 餌を食べ終えた仔実装達が集まってくる。 「お前ら、手は洗ったか?」 「洗いましたテチ!」 「クソニンゲン!そんなブサイクな奴よりワタチを可愛がるテッチィィィ!いだいテチィィィ!!」 「見た目より元気テチ。」 「かわいそうテチ。」 「糞蟲だから仕方ないテチ。」 「そうだな。」 マカの娘はモス、クロム、セージ、リー、フゥ。 モス、クロム、セージは三匹でいつも一緒に行動している。 モスは状況把握能力が三匹の中で一番優れている。 クロムは三匹の中で一番やさしい。 セージは最初、糞蟲気質だったが、毎日力の差を見せ付けたら、従順になった。 リーとフゥは親指と蛆だ。こいつらはこいつらで仲が良い。 リーはフゥをいつも抱えて歩いている。ちなみにリーは聴力がずばぬけて高い。フゥは糞袋…でもないか。 「五月蝿いテチィ!早くタイグーのカイゼンをするテチィィィ!いだいテチィィィ!!」 バナナ吊るしに吊るされ、ぶらんぶらんと暴れる糞蟲。 「お前なんてママにやっつけてもらうテッチャァァァァァ!いだいテチィィィ!!」 「ご主人たま、こいつ五月蝿いテチ。」 「そうだな。モス、静かにさせてくれ。」 「分かりましたテチ。」 モスが一旦、実装達の部屋に戻り、串を持ってくる。 串とは言っても、竹串ではなく、バーベキュー用の鉄製の串だ。 「な、何をするテチ!?」 「この状況だけ見れば誰でもわかるテチ。」 モスが串を構え、糞蟲へ投げつけた。 「テヂッ!!」 鉄串は糞蟲の喉に命中した。喉をつぶされ、声も出なく、じわじわと窒息していくだろう。 「テヒュー、テヒュー!」 もはやリンガルでも何を言っているか判明できない。 まぁ、そう簡単にしなれても面白くないので、後で串は抜いておいた。 「モス、よくできたな。」 「ありがとうございまチュ。ご主人たま。」 「ごチュじんたま、そいつの親がきたみたいレチュ。」 「あらあら、リー、起きちゃったデスゥ?」 「そいつの叫び声が五月蝿くて起きちゃったレチ。」 リーが目をこすりながらベッドから体を起こす。フゥと一緒になっていて寝ていたようだ。フゥはまだ寝ている。 リーは他の姉妹に比べて聴力が非常に高い。実装石の歩くスピードを考えても、十分はかかるかもしれない。 「とりあえず、歓迎しておくか。マカ、奥の部屋をセットしておいてくれ。」 「了解デスゥ。久しぶりデスウ。」 マカは奥の部屋へ向かっていった。 俺は糞蟲の親が来るまでの間、玄関のドアにちょっとした細工を施しておいた。 「もう、廊下まできてるレチュ。」 「よし。いいタイミングだ。」 そして、その後すぐにドンッ!という音と共に「デギャ!」という音が聞こえた。 俺がドアを開けると、親実装が壁に叩きつけられており、それを心配そうに二匹の仔実装が見守っている。 「ようこそ、実装ちゃん。今日の俺はとても運が良く君達はとても運が悪い。さぁ、入ってくれ。嫌だといっても無駄だからな。」 「テチィ!?虐待派テチィ!?」 「またテチ!?もうおてて取られるのいやテチィ!!」 二匹は逃げ出そうとしたが、どうせ実装石である。ひょいひょいと捕まえる。親実装の方は気絶しているようだ。 俺は三匹を奥の部屋まで持っていった。そこは一応虐待用の部屋となっている。 ちなみに、さっき玄関のドアには実装石の届く範囲にアルミ箔を張って置き、大量の静電気を貯めておいた。 以前やったときは静電気の貯め過ぎで、仔実装が爆発してしまったことがある。 大型の水槽に三匹を投げ込む。 「いやテチィ!」 「助けてテチィ!!また虐待派テチィ!!四女チャンと同じテチィ!!」 虐待派のところから逃げ帰ってこれたのか?随分やさしい虐待派もいるものだ。 さて、折角なので感動の再会をさせてやろう。 「おい、糞蟲共。お前らの妹だかなんだか知らんが、まだ生きてるから会わせてやるよ。」 楊枝千本の仔実装を見せてやった。 「テヒィィィィ!!三女チャーン!」 「テヒュー!テヒュー!」 さて、これから起こることに耐えれるように先に偽石の抜き取りといくか。 まずは、母親からだ。気絶しているので、処置無しで抜き取り。 まぁ、意識があっても同じ扱いにするけどな。 とりあえず、カッターで親実装…親蟲と仮称…から偽石を抜き出す。 勘で斬るのだが、今まで間違ったことがない。 「「テチャァァァ!」」 二匹の仔実装がそれを見て激しくパンコンをする。抜き出した偽石は偽石強化剤へ漬け込む。 「さて、次はお前たちの番だ。長女はどっちだ。」 二匹がお互いを腕差す。 「はっきりしろ。どっちみち二匹とも抜き出すんだから順番が違うだけだ。」 「オネエチャ嘘つきテチ!」 「イモウトチャが嘘つきテチ!」 「お前ら確実に馬鹿だろう。」 オネエチャと呼ばれた仔実装を掴みあげる。こいつを糞蟲Aとする。次女を糞蟲B、三女…楊枝千本を糞蟲Cとしよう。 「お前ら、くだらなすぎるから、ちょいと痛い目にあってもらおう。」 俺は錆びたカッターを持ち出してきた。これで斬ってやる。 ずり。ああ、やっぱり切れ味が悪い。 「いたいテチ!やめるテチ!今なら許してやるテチ!!」 カッターがだんだんとめり込む。 「やめるテチィ!!」 ずば。カッターが糞蟲Aの体にめり込む。 「いたいテチ!!やめるテチィ!!」 「口の利き方がなってない。」 カッターで切り口を四角い形に切る。 「それっと。」 表面から肉ごと四角く引っ張り出す。 「テボアアアアア!」 何か、臓器も一緒についてきたが、気にしない。糞も凄く漏れる。 「さーて、偽石はどこかなー。」 指でAの体内を引っ掻き回す。 「デビアァ!やめてテチ!ゴボ!ゲブァ!」 「あれー、どこかなー。」 「テヂァ!デヂァァァ!!」 このままだと死にそうなので、偽石を抜き出して強化剤へ漬けた。 表面が黒ずんでいたが、漬けた瞬間に緑色へと変わった。 糞蟲Aをガムテープで簀巻きにして水槽へ転がしておいた。 「次はお前だぞ。」 「テチィ!ワ、ワタチは良い仔テチ。ニンゲンさん、痛いことはやめてテチ。テチテチィ♪」 糞蟲Bは震えながらパンコンしながら、俺に媚びてきた。 「いいだろう。痛いことはやめてやる。」 「テチ?本当テチ?」 「ああ、俺はしない。だから自分で取り出せ。」 俺はそう言って錆びた、姉の血まみれのカッターを渡した。 「それが嫌なら、とても痛い目にあわせて俺が取り出してやる。」 「テェ!?」 「俺が偽石を取り出すか、自分で取り出すか。どっちにする?」 「大事な石は渡せないテチィ!」 「五月蝿い。口答えは許さん。どっちにする。」 「いやテチ!渡せないテチ!この前はおててがとられたテチ!今度は大事な石テチ!いやテチィィィ!!」 見ると、糞蟲Bは右腕がノースリーブになっている。服ごと腕を毟られたんだろう。 「口答えは許さないと言った。次は無い。どっちにする。」 「いやテチィィィ!お前は奴隷テチィィィ!!さっさとタイグーのカイゼンをするテチィィィ!!」 おお、見事な糞蟲の血筋。 「はい、残念賞。」 俺はBの頭を右手、体を左手に持って、軽く捻った。 「テビィ!」 「偽石も取れないし、取られるのも嫌。どうせ死ぬなら一思いにとでも思ったか?糞蟲にしては頭が回るようだな。 まぁそれも、ここまできたら意味ないけどなぁ。」 そして、そのまま、体を捻じ切った。 「テビョオオオオオオ!!」 Bの頭を栄養剤を染み込ませたスポンジの上に置く。 こいつの偽石は頭にあるだろう。そりゃあ、自分じゃ取ることできないよな。 分かってたけどやってみた。思ったとおりの行動をしてくれてとても楽しい。 俺は良く切れるカッターを使って後頭部を切り裂き、偽石を取り出して強化剤に漬けた。 「テヒュー!テヒュー!」 楊枝千本ささったC。こいつは面白いのでこのままにしておく。 しばらくして、親蟲が目を覚ましたようだ。 「よう。糞蟲。」 「デデッ!?何が起きたデス!?」 「お前は託児された糞蟲を追って、俺の家まで来た。で、気絶してぶっ倒れた。以上。」 「デデ!?ここはオマエの家デス!?ワタシは飼い実装デス!?オスシは!?ステーキは!?金平糖は!? なぜ無いデスゥゥゥ!!さっさと持って来いデスゥゥゥ!! フカフカのベッドもさっさと用意するデスゥゥゥ!綺麗なオベベも用意するデスゥゥゥ!! さっさと持ってくるデスゥゥ!このクソドレイは何をしているデスゥゥゥウ!!!!」 モスが使っていた鉄串を投げて親蟲の腕を突き刺す。 「デバイァァァァ!!」 「言っておくが、俺は虐待派。オマエの偽石は抜き取り済み。他に質問は?」 「デェ!?む、娘達は!?娘達は無事デス!?オスシにステーキ金平糖はぁぁぁ何処デスゥゥゥ!!!」 「そこの床に転がってるのが長女。頭だけなのが次女、そこで吊るされてるのが三女だ。」 「デエエエエエエ!!ワタシの飼い実装ライフが台無しデスゥゥゥ!!!!」 台無しにしたのは自分だと思うのだがなぁ。これから楽しい虐待が始まる。何時までこの家族はもつかな。 ヒワを拘束してから二日が過ぎた。 最初のうちは叫び声をあげていたが、もうほとんど聞こえなくなった。 僕はわざわざヒワの部屋のドアを開けておいた。 何も無い空間で無視されるより、僕の姿が見えるところで無視されているほうがダメージが大きいと思ったからだ。 正直、四日はやり過ぎだと自分でも思う。親指実装の体力を考えるのであれば三日が限度だろう。 時々「チィ」という声が聞こえたるので、生きてはいるのだろう。 僕はよしゆきに相談するために公園へ向かった。 一応暴れだしたときのデータを携帯に送っておこう。 よし、多分この時間なら公園にいるはずだ。早速僕は公園へ向かった。 「よしゆき。」 公園のベンチにゴルフグラブを持って寛いでいる。 「よぉ、あきとし。どうした?」 「いや、僕が親指を託児されたって話はしただろ?」 「ああ、それがどうかしたのか?」 「結構順調だと思ったんだけどさ、突然暴れだして糞を投げつけられたんだよ。」 「ほう。」 「で、今その親指はどうしてるんだ?」 「ヒワ…は、拘束して糞のプールに沈めてある。顔は漬けてないけどな。」 「ふーん、糞蟲化したのか?良く分からんな。」 「一応その時の動画を撮ってあるんだけど、見てくれるか?」 僕はよしゆきに携帯で動画を見せた。 「うーん、とりあえず家に来るか?あいつらが居たほうが多分良い。」 「分かった。よろしく頼むよ。」 僕はよしゆきの車に乗せてもらって、よしゆき亭まで行った。 「ただいま。」 「お帰りなさいませデスゥ。ご主人様。予定よりちょっと早いデスゥ。」 よしゆきの家のマカが出迎えてくれる。彼女は、かなり躾けられている。 「ああ、あきとしに会ってな。ちょっと悪いが、モス達を集めてくれ。」 「いらっしゃいませデス、あきとし様。では、集めてくるデス。」 ちなみに彼女達と話をするために、リンガルは起動している。 「「「いらっちゃいましぇテチ、あきとし様。」」」 「いらっちゃいまチェレチ、あきとしたま。」「いらっしゃまレフ。」 テチテチレチレチレフ。元気で、それでいて大人しい。 「とりあえず、お前達の力を借りたい。 あきとしの家の親指が糞蟲化したらしい。まずは、これを見てくれ。」 「携帯デスゥ。」 よしゆきは僕の携帯の動画をマカ達に見せた。六匹は思い思いに頷く。 「ちょっと相談させてく下さいデス。少し待って欲しい下さいデス。」 「だってよ、あきとし、どうする?」 「ああ、待たせてもらうよ。」 僕はよしゆきにお茶を入れてもらって、二人でくだらない世間話をしていた。 それから十分くらいしただろうか。 「なんとなく分かりましたデスゥ。」 と、マカが声をかけてきた。 「そうか、どうなだったんだ?」 「まず、ヒワちゃんですが、あきとし様の家で幸せだったようデス。」「レフー。」 「ならなんで、暴れたんだろう。」 「それについてはリーが解決したデス。」「レフー。」 「リーがしぇチュめいするレチ。」「レフー。」 親指のリーがクロムに抱きかかえられている。 「ヒワたんはヒワたんのママのオウタを聞いたレチ。」「レフー。」 「どういうことだ?俺が見た感じだとそんなもの聞こえなかったぞ。」 「ごチュじんたま達のおみみだと、聞こえないかもしれないレチ。リーのおみみには聞こえまチたレチ。 そのオウタを聞いて、ヒワたんが暴れだチたレチ。」「レフー。」 「歌?」 「そうテチ。自分は飼い実装でこれから毎日美味しいもの食べ放題…という感じのくだらないオウタテチ。」「レフー。」 「しかも妙にリズミカルなオウタでしたテチ。」「プニフー。」 「フゥ。少し黙っていてくれるか。」 「プニプニがないレフゥ。蛆ちゃんプニプニして欲しいレフ。大事なお話は分かるレフ。でもプニプニも大事レフゥ。」 「セージ、フゥをプニプニしてやってくれ。」 「わかりましたテチ。フゥちゃん。プニプニテチ。」 「プニフー♪プニフー♪」 「話を続けさせてもらいますデス。」 「ああ、頼む。」 「その歌を聴いた、ヒワちゃんはどうやら自分の状況と歌の状況のギャップに耐えれなくなったと思いますデス。」 「そういうことか。」 理由は分かった。しかし、だからといってどうしようもないだろう。 その親糞蟲が今どうなってるかでも分かれば良いのだが。少しは気が安らぎそうであるが。 「その糞蟲共はどこに行ったかって分かるかな?」 「ちょっと分からないデスゥ…。」 「レピャ!レピャピャ!蛆ちゃん!知ってるレフゥ!」 プニプニをされているフゥが口をはさんでくる。 「何?」 「知っているのデス!?フゥ!」 「ごしゅじんたまに託児してきた奴レフ。」 「フゥ。何で分かるんだ?」 「あのオウタを聞いたことがあるレフ。鉢植えが良く歌ってるレフ。」 「鉢植えって何だ、よしゆき。」 「…ちょっと待てよ。あきとし、お前託児した親を家から追い返すときに仔実装の腕をもいだか?」 「え?ああ、右腕をもいだ。服ごとだけど。」 「フゥ。ビンゴかもしれん。」 「後でたっぷりプニプニをしてもらうレフゥ♪」 鉢植えと呼ばれたのは本当に鉢植えだった。 頭だけの仔実装。おそらく栄養剤であろうスポンジの上に乗っけられている。 頭…脳が剥きだして、それから何か植物が生えている。 「えげつないな。」 「うーん、最初は面白いかと思ったんだよ。だからわざわざ頭に偽石がある奴を使ったんだけどさ。 首の部分も焼いて再生できないようにしてな。でもやってみたらあんまり面白くなかった。」 鉢植え仔実装は虚ろな目で宙を眺め、何か口ずさんでいる。 さっき、モス達が口ずさんでいるのと同じメロディーだ。 他には全身に爪楊枝が刺さっている仔実装。 密閉された容器で何か薬品に漬けられていて容器をペスペス叩く仔実装がいた。 そして、大き目の水槽の中には一匹のボロボロの成体実装が。 あれが、ヒワを託児した奴がどうか僕には区別が出来ないが。 しかし、成体実装は僕を見ると、目を見開いて逃げ出した。 「ぎゃ、虐待派デスゥ!あのときの虐待派デスゥ!!四女チャンとおなじ目にあうデスゥ!!」 ブリブリと糞を漏らしながら逃げ出す。今の発言でフゥが言っていたことが証明された。 結局、託児で良い生活を夢見てたけど、虐待派の家に行ったって事か。 「よしゆき、お願いがあるんだ。」 「何だ?」 「こいつは死ぬより酷い目にあわせて欲しい。」 「言われなくても。」 「デッギャー!!!」 僕はその後、プニプニをねだるフゥにプニプニをして、家へ帰った。 ヒワ、やっぱり実装石はその身にあまる幸せは受けれないんだぞ。それをわかって欲しい。 その後、ヒワは全く動かなくなっていた。 一応部屋においてあるカメラのデータを見てみたが、呼吸もほとんどしていない。 明日まではもたないだろう。とはいえ、自分ルールなので、ヒワを開放するのは四日目の明日にしよう。 そのままヒワを放置しておいた。 その日、僕は夜トイレに行き忘れて、寝てから数時間後に目が覚めた。 ふとヒワが気になった。遠目に見ても死んでいるように見える。 「ヒワは僕のところに来なければ幸せだったんだろうか。 でも、あのまま野良として生活していても幸せじゃなかっただろう。 ヒワ、お前は凄く小さい。それでいてとても弱い。 そんなお前が望んでいる幸せってのは、お前の小さい体には過ぎた望みだったんだ。 もし、お前が僕の言いつけどおりに生活していれば、お前の体に相応しい幸せは手に入れれたと思うんだ。」 口からこぼれていた。僕の中では真実だ。 ヒワが飼い実装として生活する上で僕は出来る範囲での愛情をそそいでいたつもりだ。 ヒワは、結局それを分かってくれなかった。 暗い。暖かい。暗い。暖かい。暗い。暖かい。暗い。暖かい。 暗い。暖かい。暗い。暖かい。暗い。暖かい。暗い。暖かい。 ここはどこ? アタチはだれ? ママの声が聞こえる。 実装石は幸せ一杯、夢一杯。 ご飯は毎日オスシにステーキ、金平糖。 ドレイニンゲンは絶対必要な条件。 毎日馬車馬のように働かせるの。 それで、毎日フカフカベッドでおやすみする。 ママがそうやってオウタを毎日歌ってくれる。 もうじきお外に出れる! 幸せ一杯、夢一杯のお外に出れる!! 「テッテレー!」 アタチは幸せの叫びを上げる。 体の周りのベタベタをママが取ってくれる。 「お前は四女デスゥ。お姉ちゃん達と仲良くするデスゥ。」 「四女チャンは蛆ちゃんテチィ。」 「大丈夫デス。四女チャンも大きくなれるデス。」 「それまではワタチ達が運んであげるテチ!」 アタチはママから生まれた四女チャン。 大きなお姉ちゃんが三石いるの。 大きいお姉ちゃん達も幸せ一杯で生まれてきたみたい。 お姉ちゃんがアタチを掴んで歩いてくれる。 プニプニしたり、コロコロしたり。 でも、何か物足りない。 何か忘れているような気がする。 でも、今はプニプニコロコロ楽しい。幸せだもの。 今はお水とウンチしか食べてないけど美味しい。 「ウンチ美味しいレフー。」 思わず声が出ちゃう。 そうするとお姉ちゃんもママも笑ってくれる。 そうしているうちにアタチにもおててとあんよができてきた。 こうしてアタチは親指ちゃんになった。 親指ちゃんになると思い出したことがある。 オスシにステーキ、金平糖はどこにあるの?ドレイニンゲンは?フカフカベッドは? ママに聞くと、アタチがこれから行くニンゲンの家にあるって言った。 アタチが行けば毎日みんな、幸せになれるって言った。 うまくいかなくてもママがニンゲンをやっつけてくれるって言った。 アタチは勿論行く。これでみんな幸せになる。 「テッテレー!」 アタチはドレイニンゲンに幸せの声を聞かせてやった。 これからお前は、毎日ドレイニンゲンとして働かせてやる! そう思ったら、ドレイニンゲンはさいきょーだと思ったママをボコボコにしていた。 ママはさいきょーじゃないの? ドレイニンゲンはいないの? オスシはないの? ステーキはないの? 金平糖はないの? フカフカベッドはないの? ママはうそつきだったの? 暗い。寒い。臭い。暗い。寒い。臭い。暗い。寒い。臭い。 暗い。寒い。臭い。暗い。寒い。臭い。暗い。寒い。臭い。 ここはどこ? アタチはだれ? 誰かの声が聞こえる。誰? アタチは幸せになれる? どうしたら幸せになれるの? 「ぼく」の言うことを聞けば幸せになれるの? 「ぼく」ってだれ? アタチはだれ? アタチは四女チャン? 「ぼく」ってだれ? アタチはだれ? アタチは四女チャン? アタチは---------? -----------------------「ヒワ」レチィィィィ! 四日目になった。 ヒワの水槽は糞まみれだ。コップに沈めたヒワも糞に漬かっている。 勿論あふれ出している。 この小さい体のどこにこんなにつまっていたんだろうか。 もう動かなくなったヒワをコップから取り出し、割り箸から外した。 最期まで面倒を見る気だった。 葬式…まではいかないが、責任を持って死体を処理しよう。 まずは、洗ってやるか。服は取らないと。 桶に水を張って、体を洗ってやる。汚れが落ちていく。 髪の毛も糞まみれだから、洗ってやる。 洗剤を使わないと綺麗にならないな。 緑の染みがついていた髪の毛も綺麗になってきた。 「ヒワ、あの時、親が通らなければな…。」 ヒワの体を拭いて、テッシュのベッドに寝かせておいた。 明日でも、市役所にでも持っていくか。そう考えていたときだった。 「…チィ」 かすかに声が聞こえる。どこだ? まさか!? 「…チィ」 「ヒワ!?」 ヒワの口がかすかに動いている。生きていたのか? 聞いたことがある。実装石は偽石の活動を停止させ、仮死の状態になることを。 「ヒワ!僕の声が聞こえるか?聞こえるなら返事をしろ!」 「…チィ」 生きている。ヒワは生きている。 餌も水も無い状況に四日放置されて。 脆弱な親指実装石なのに。それでも生きている! 「ヒワ!待ってろ。水を飲ませてやるから!」 必死だった。拘束する前は明らかに糞蟲だった。それなのに今は必死だった。 水…駄目だ、少し温度を上げよう。ぬるま湯位に。 栄養剤も入れてやらなければ。スポイト、スポイトは…あった。 ぬるま湯を吸い上げて、ヒワの口元に持っていく。 しかし、ヒワは飲まなかった。 「ヒワ?飲んでいいんだぞ。」 「チィィィィ…」 ヒワが力なく鳴く。 「チィィィィ…」 ヒワの手が挙がる。 「ヒワ!無理するな!」 ヒワの手が何かを指している。携帯? 「ヒワ?携帯?…リンガルか?」 「…チィ。」 リンガルを起動させる。 「ヒワ、リンガルを動かしたぞ。」 「…ニンゲンママ…ごめんなさいレチ。」 「謝るな、今は水を飲め。」 「ヒワ…悪い仔だったレチ。ニンゲンママの言うこと守れなかったレチ。」 駄目だ、このままじゃ危ない。 「ヒワ、話しは後で聞いてやる。今は水を飲め。いや、お前が嫌がっても無駄だぞ。」 ヒワの口に無理矢理スポイトで水を流し込む。 「飲め、ヒワ、今は生き延びろ。」 「はいレチ…。」 栄養剤の効果が高い。満足に動けないが、話が普通に出来るようになった。 「少しは落ち着いたか、ヒワ。」 「はいレチ。ニンゲンママありがとうレチ。」 「いや、いいんだ、」 「ヒワ、間違ってたレチ。ニンゲンママの言うことを聞いていれば、ヒワは幸せになれたレチ。 ニンゲンママは毎日おマンマをくれたレチ。遊び道具をくれたレチ。お家を綺麗にしてくれたレチ。」 「うん。」 「ヒワ、ニンゲンママにお願いがあるレチ。ヒワ、これから良い仔なるレチ。 ニンゲンママの言うことちゃんと聞くレチ。だから、ヒワをもう一度飼って欲しいレチ。」 「ヒワ、お前は僕の飼い実装だ。今までも、これからも。」 「レッチュ〜ン♪」 「でも、躾はまだ終わってない。これからも躾は続くぞ。」 「分かってるレチ!ヒワがんばるレチィ!」 「よし、ヒワ、今日はとりあえず休め。明日からはまたリンガルは使わなからな。」 「はいレチ。」 「もう少し栄養剤を飲め、それとよく休め。」 「レチ。」 スポイトで栄養剤を混ぜた水を飲ませる。 「…レム、…レム、…レム。おいしいレチ。」 それと栄養剤をしみこませたガーゼのベッドを作りった。普通に寝かせるよりは効果が期待できるだろう。 テッシュのベッドからヒワを抱き上げる。 「レチィ♪」 「どうした、ヒワ。」 「ニンゲンママのおててあったかいレチ。」 「そうか。」 「今までごめんなさいレチ…。」 「別に良い。僕の言っていることが分かってくれればいいんだ。」 栄養剤ベッドにヒワを寝かした。 「今日一日はここで寝ろ。明日にはきっと体が楽になっているだろう。」 「レチ。あの、ニンゲンママ、ヒワのお家は…。」 「いいよ。特別に僕がやっておいてやる。今は寝るんだ。」 「はいレチ。」 ヒワを寝かしつけ、水槽の掃除を始めた。無駄に二階構造にしたため、少し面倒だな。 まぁいいや、洗い終わったらアルコールスプレーとドライヤーを使って乾燥させるか。 明日からはまた、ヒワとの生活が再開されるのだ。 せめて生活しやすいように綺麗に掃除してやろう。 その夜、よしゆきに電話してヒワが生きていたことを伝えた。 そして暴れ始めたときのような糞蟲ではなくなっていたことを。 よしゆきが言うには仮死状態の時に僕が呼びかけたのが胎教代わりになった可能性があるということだった。 まぁ、理由はどうでも良い。要するにヒワが糞蟲でなければいいのだ。 次の日、ヒワの顔色はだいぶよくなっていた。 普段から飲む水も栄養剤入りの水に変えた。これで安心だろう。 ヒワは寝ていたようだが、僕が近づくと目を開けた。 「…レチ。レチュチュオ。」 「うん、ヒワ、おはよう。」 勿論リンガルは使っていない。 「ヒワ、本当は今日一日一緒に居たいんだがあいにく仕事があるので無理だ。 だから、また今までどおりに留守番をしていて欲しい。」 「レチ?」 「それと、ヒワに服を返しておくよ。あと、嫌かもしれないけど、オムツを穿いていてくれ。」 「レチィ。」 相変わらずオムツの履き心地には少し慣れないようだが、服が綺麗になったのがうれしいようだ。 「レッチィ♪レッチィ♪」 ぴょんぴょん飛び跳ねている。昨日の今日でここまで元気になれるとは驚きだ。 相変わらず妙な生物だよな。実装石って。 「よし、ヒワ、朝ごはんだぞ。食べれるか?」 「レチィ。」 おくるみちゃんゼリーですけどね。今までと同じ量はすぐには無理だろうから、半分にして渡す。 「ヒワ、食べていいぞ。」 「レッチチァ。」 ゼリーを舐める。手にとって食べる。 「久しぶりの餌はうまいか?」 「レッチ!」 「ヒワ、一応ボールを入れておくけど、無理に遊ばなくてもいいからな。」 「レチ!」 着替えて、出勤の準備をする。 「よし、ヒワ行って来るよ。」 「レチ?レッチィ!レッチィ!!」 水槽の中で泣きそうな顔をしながらぴょんぴょん飛び跳ねるヒワ。 「レピィ!レピィ!」 「ヒワ、寂しいかもしれないけど僕が仕事に行かないとヒワもご飯が食べれないって言ったよね?」 「レチィ。」 「うん。そこは分かってほしい。帰ってきたら一緒に遊ぼう。」 「レチィ!レチィ!」 「じゃあ、ヒワ、行って来るよ。」 「レチ?」 「僕が家を出て行くときは「いってらっしゃい。」だ。」 「レッチチチ?」 「いってらっしゃい。」 「レッチチチ!」 「よし、良い仔だ。留守番は頼むよ。」 「レッチィ!」 ヒワはそれから、だいぶ手のかからない仔になった。 糞はトイレでできるし、餌もこぼさない。挨拶も出来るし、待てもできようになった。 お風呂はまだ自分で体をうまく洗えないが、次第点だろう。 自分の水槽の掃除と選択も覚えさせる予定だ。 少し前なら、ここでリンガルを買ってくる予定だったのだが、 ヒワががんばると言ったので、躾の第二段階に移ろうと思う。 ヒワに日付の感覚を覚えさせることにする。 一週間のうち、一日ごとに遊ぶ内容を変えてやろうというものだ。 月曜日…積み木遊びの日。親指積み木で遊ばせる。 火曜日…親指ジムの日。ジャングルジムの親指版である。 水曜日…アマアマの日。金平糖などの甘いお菓子をあげる。 木曜日…絵本の日。絵本をよんであげる。 金曜日…折り紙の日。折り紙を折って遊ぶ。 土曜日…散歩の日。散歩に連れて行く。 日曜日…サイコロをふらせて、月〜土までの当たり目を決行。 というサイクルで日々をすごさせることにする。 ちなみに火曜日、木曜日、日曜日は洗濯をする。 ヒワの水槽に七つの色違いのマス目を作り、そこを丸いマークを移動させる。 ヒワには、このマークがここにきたら、どれで遊べる。と伝えてある。 月曜日。親指積み木の日。 「ヒワ、今日は積み木で遊ぼう。」 「レチ?」 積み木…とは言うが、親指でも持ち上げれるようにプラスチックで作られている。 三角やら四角やら色々な形がある。とはいえ、サイズ的には少し大きい。 「これが積み木だ。」 「レチ?」 ヒワは積み木を積んだり、色々な形を作って遊んでいた。 自分が子供のときにも積み木で遊んでいたが、今考えると正直何が楽しいのかさっぱり分からん。 ヒワが作業を終え、「レッチィ!」と、僕に見せ付けてくるが、何を作ったのかも分からん。 一応「ヒワ、良く出来たぞ。」と褒めているのだが。褒めないと教育上の問題もあるだろうし。 しばらく遊ばせていると、一時間以上経過している。さて、片付けさせるか。 「ヒワ。今日の遊びの時間は終わりだぞ。」 「レチ?」 「積み木遊びの時間はおしまい。さ、片付けるんだよ。」 ヒワの水槽の中に収納箱を入れる。 ちなみにこの収納箱。綺麗に入れるにはパズルのように入れないと上手く入らない。 セットの中にはレベルごとに種類が分かれていて、今はレベル0のものだ。 「レッチィ!」 積み木の前で首を横に振るヒワ。 「だめだよ。今日はおしまいだ。」 「レチィ!」 「聞き分けの無い仔には何があるか分かってるね?」 でこぴんである。 「レヂァ!」 久しぶりにヒワの「レヂァ」を聞いたなぁ。 「ヒワ、もう一発されたく無ければ片付けなさい。」 「レチィ…?」 「片付ける…が分からないか?」 「レチ!」 えばるところではないぞ。 「そうか。その積み木をこの箱のなかに綺麗に入れるんだ。」 「レチ?レッチィ。」 箱の中に積み木を入れていくヒワ。あーあ、そんなごちゃごちゃに入れたら綺麗に入らないぞ。 半分くらい入れてやっと気が付いた。 「レチ?レッチアァァァ!」 「ちゃんと考えて入れないと入らないからな。」 「レチ?レッヂアアアアア!!」 デコピン襲来。 「レヂ!」 「いちいち僕に威嚇するんじゃないよ。綺麗に入れれないのは自分が悪いんだろ?」 「レチィ…。」 「今日は僕が教えてやるけど、次は自分でやるんだぞ。」 「レチィ。」 僕はヒワにどこにどの積み木を入れるかおしえてやった。 「レッチィ!レッチィ!」 「よし、入ったな。」 なでりなでり。 「レッチューン♪」 「では、片付けるぞ。」 「レェ!?レェェェェェ!!」 積み木を水槽から引き上げる。それに対して、抗議の声を上げるヒワ。 「レッチィ!レッチィィィィ!」 プスリ。爪楊枝。 「レッヂァアァッ!」 「今日は積み木の日。積み木遊びの時間はおしまい。分かった?」 「レピ…レピ…。」 「分かった?」 「…レチィ。」 「よし、ヒワ、お風呂に入ろうか。」 「レッチーン♪レッチェロチー♪レッチェロチー♪」 さっきまで泣いていたのに現金な奴だ。 それからヒワの生活は変わった。 今までのように毎日同じ生活ではなく、日々変わったことをする。 積み木を積んで、崩して片付けて。 ジャングルジムに登って、降りて。落っこちたりしたけど、下のマットに助けられ。 甘いお菓子に舌鼓を打つ。金平糖もクッキーもシュークリームも美味しく食べた。 絵本を読んでもらう。何度も何度も同じ本をせがんだりした。 ヒワが特に喜んだのは折り紙だった。 僕が折った折り方をまねて、色々な形を作るようになった。 最近では自分で箱を折ってその中にテッシュを敷き詰め自作のベッドを作ったりした。 もうここまでいけば躾は十分だろう。 僕は会社帰りにリンガル機能付きの首輪を買っていった。 「ただいま。」 「レッチレチィ♪」 水槽の中からヒワが飛び跳ねている。 「ヒワ、今日はお前に卒業記念品をあげようと思う。」 「レチ?」 良く分からないという顔をしている。 「ほれ。ヒワの首輪だ。」 「レチ!?レッチィ!レッチィ!」 首輪は飼い実装の証だ。今まで色々あったけどやっと首輪をつけてもらえるのだ。 「しかもリンガル付きだぞ。」 「レチ?レッチチチチィ♪」 首輪をつけて、リンガルの電源を入れる。 「ヒワ、つけ心地はどうだ?苦しくないか?」 「平気レチィ!首輪レチィ!リンガルレチィ!」 「ヒワががんばったからだぞ。」 「ニンゲンママだいすきレチー!」 ヒワはリンガルで話してみたが、結局暴れたときのような糞蟲化はしなかった。 きちんと僕の言うことを聞く。勿論、我侭を言えば躾としてデコピンか爪楊枝である。 風呂のときも最初は「いやレチィ!ニンゲンママにアワアワでキレキレイしてもらうレチィ!」とか 叫んでいたが、デコピン三発で大人しくなった。 今では自分で体を洗える。洗濯も少しは出来るようになった。 土曜日。 ヒワを連れて散歩をする。ヒワは胸ポケットの中にいる。 遠くへ出かけるときはキャリーケースだが、近くの散歩は胸ポケットがヒワの特等席だ。 これじゃあどこからどう見ても僕は愛護派の仲間入りだな。 「ニンゲンママ、あれは何レチ?」 「あれはね…。」 そういってヒワに教える。ヒワは色んなものに興味を持つ。 最初に僕の家に来たときより明らかに頭がよくなっている。日々の賜物であろう。 とはいえ、よしゆきの家のマカ家族には明らかに劣る。 というか、あいつらが異常過ぎるんだと思うことにしている。 そういえば、ここはよしゆきの家の前の通りじゃないか。 ヒワの母親はどうなっているんだろうか。よしゆきのことだから…。 「ニンゲンママ!ニンゲンママ!」 ヒワがポケットの中で叫ぶ。 「ヒワ、どうした?」 「あの袋レチ!」 電柱の下にゴミ袋が置いてある。袋には下手な字で「よしゆき」と書いてある。 よしゆきよ、苗字も書かなきゃ回収してくれないぞ。…多分マカに書かせたんだろうな。 「…ママレチ。」 「ママ?」 袋は実装用ゴミ袋だった。中には禿裸で体中に火傷の跡がある実装石の死体が入っていた。 顔は醜く歪んでいて、この世の終わりでも見たかの顔をしていた。 「ヒワのママレチ…。」 「そうか…。」 よしゆきは僕の言ったとおりにしてくれたんだな。 まぁ、今回僕がここに通りかかったのはたまたまなんだけども。 ヒワはしばらく無言だった。僕はそこを黙って通り過ぎた。 「ヒワのママは嘘つきの駄目実装レチ…。結局虐待派のところで殺されたレチ…。糞蟲だったレチ…。」 「ヒワ。自分の母親のことをあまり悪く言うものじゃないよ。」 「でもレチ…。」 「ヒワの母親は、ヒワを僕のところへ託児しただろう?それは間違いじゃなかったと思うよ。」 「…レチ。そうレチ。それでニンゲンママに会えたレチ。」 「そうだよ。」 「今は…幸せレチ!ヒワ幸せレチ!ママの託児でヒワ幸せレチィ!ママが居て良かったレチィィィ♪」 「ママが居て良かった…か。それを聞けて僕もうれしいよ。」 ヒワは胸ポケットの中で鼻をピスピス、耳をピコピコさせている。 「ヒワ幸せレッチィ♪」 僕は家に帰ると、携帯を手に取った。 「ニンゲンママでんわするレチ?」 「ああ。ちょっとね。」 呼び出し音。そして聞こえるのはいつもの少し憎たらしい、口うるさい声。 「ああ、母さん…いや、なんとなくね。僕は元気だよ-------。」
