タイトル:【観史】 リンガル開発秘話 修正
ファイル:実装用リンガル開発.txt
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初投稿日時:2009/04/20-22:07:22修正日時:2009/04/20-22:07:22
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              実装用リンガル開発秘話

 実装石がペットとして飼育される様になって間もない頃、当時販売されていた動物用の
リンガルを参考に実装用のリンガルを開発しようというプロジェクトが実装石産業用品メ
ーカーのローゼン社と実装石飼育用品メーカーのメイデン社に於いて密かに開始された。

 当初は両社とも実装石の鳴き声を音声パターン化して識別後翻訳するという動物用リン
ガルの構造を踏襲する形で開発が始まったが、これはまもなく暗礁に乗り上げた。音声パ
ターン化の過程で実装石の感情表現は動物のそれよりも遙かに複雑で有ることが判明した
こと、徹頭徹尾デタラメな生体パターンを持つ実装石の鳴き声は動物の音声解析ノウハウ
程度では完全網羅することが出来なかったのだ。

 この問題に対しローゼン社は音声解析による翻訳プロセスを早期に放棄し実装石の生態
から根本的に洗い直す方針を選択したが、メイデン社は新たな音声解析プログラムの開発
により対処する方向で開発を続行する方針を選択した。これがその後の実装石用リンガル
開発の行方を決定的に左右することになる。開発方針の抜本的見直しにより背水の陣を強
いられる形となったローゼン社は、ある人物達との接触により事態打開の糸口をつかもう
とした。

 実装石用のリンガルが開発されていなかった当時は実装石の生態に於いて未だ解明され
ていない事柄が多く、当時の実装石に対する大多数の認識は単なる野生動物もしくは町中
の害獣というものであった。気まぐれで飼育している人間にしてもただ餌を与えてゲージ
で飼うという通常の動物飼育法止まりで、鳴き声などのデタラメさなどから意思の疎通な
ど出来ないと言うのが当時の常識だった。おまけに飼育されていた実装石がなんの前触れ
もなく暴れ出して手におえなくなる事案が頻発し「実装石は気まぐれで飼育に向かない生
き物」というペットとしての実装石を市場基盤と見ていたメイデン社にとっては深刻な悪
評が立ち始めていた。これはリンガルが無かった為に実装石の糞蟲特性が知られていなか
った事が大きな要因だった。

 ところで、ローゼン社が接触を試みていた人物達とは当時害獣駆除として実装石の捕獲
や殺害を行っていた所謂虐待派であった。実装石の糞蟲特性が知られていない当時は実装
石に対する駆除行為は仕方がないこととしても、虐待行為はその内容故に現在程おおっぴ
らに行えるものではなかった。しかしながら当時の虐待派において実装石に関する生態研
究についてはインターネットが普及する以前からパソコン通信などにより高度な情報が虐
待派の間でやりとりされていた。実装石の糞蟲特性も当時の虐待派にとってはすでによく
知られており、それを識別する方法も早くから研究開発されていたのだ。なぜなら糞蟲は
虐待時に他の実装石よりも様々な反応を示すため、より虐待の楽しみを増す意味があるた
めだった。また、普通の実装石であったとしても虐待時の反応によって虐待の方法を変え
る趣向をこらすため、必要最小限の意思疎通方法が必要とされていた訳である。尤も、こ
れは虐待目的の意思疎通だったため実装石にとっては迷惑以外の何物でもなかった。

 当時虐待派の間で知られていた最も有効な意思疎通の手段は実装石から摘出された偽石
を用いたものであった。偽石の存在も実装石の身体を損傷させる機会が必然的に多い虐待
派以外一般ではまだ知られておらず、「偽石」として実装石の生命活動に重要な影響をもた
らす事などが一般にも知られる様になったのはインターネットが発達した後のことである。
当時は虐待派の間でも偽石は「石」とだけ呼ばれており、これにマイクに直結した通電回
路と電位差を検出する半導体回路をつなぎ原始的な「リンガル」を制作する方法が考え出
されていたのだ。

 もちろんこんな装置はメーカーとしてそのまま制作するわけにはいかず、いくら何でも
偽石を製品に組み込む訳にはいかなかった。ところが偽石の分析を進める内に偶然にある
特定の超音波が偽石から発生していることを突き止めた。これによりローゼン社のリンガ
ル開発は一気に進行することとなる。因みにその後開発される偽石センサーもこの原理を
応用したものである。

 開発に手間取るローゼン社に対し先行していたメイデン社は早速完成させた音声感応型
の実装石用リンガル『実装リンガル』を発表した。商品名称では当初『デスリンガル』の
案もあったがあまりにも語呂が悪すぎたため却下された。この新商品は実装石をペットと
して考えていたユーザーにとって決定的なキラーアイテムとなり瞬く間に市場を席巻した。

 一方、遅れを取り戻すべくローゼン社もリンガルの開発を急ぐが偽石から発生する音波
信号の言語パターン化に時間を取られ、開発は大幅に遅れてしまうこととなった。その後
スタッフによる不休の努力により開発が概ね終了し製品化を待つばかりとなったローゼン
社のリンガルであるが、既にメイデン社のリンガル市場席巻に大きく水をあけられた形と
なっており、ローゼン社の販売市場が確保できるかどうかは難しい状況となっていた。

 ところが、リンガル製品化の2週間前に或る事件が発生した。ある晩ローゼン社で飼育
されていた実験用実装石が逃げ出し当直警備員の弁当を盗み食いして捕まったが、捕まえ
た警備員が虐待派であったため時間を掛けてなぶり殺しにされた。これだけならただ弁当
を盗んだ実装石の突発的な殺害事件である、しかしその晩は当時テスト中だったリンガル
のスイッチが入ったまま開発スタッフが帰宅していたため結果、その虐待の一部始終が克
明にログとして記録されることとなってしまった。

 「そこのニンゲン、この食べ物はまずいデスゥ!」
 「このニンゲン何するデッシャァァァ!!!」
 「デエェ・・・、ウマウマ欲しかっただけデスゥ・・・・。」
 「髪の毛取るのは止めてデスゥ。」
 「命だけは助けてデスゥ。」
 「デ、デ!デッギャァァァァ!!」

 翌日、ログに気づいた開発スタッフによってこの警備員の虐待行為が露見するわけであ
るが、そもそもの原因が実験用実装石の脱走という管理ミスによるものと、後述する事情
によりこの警備員の行為は事実上不問に付されることとなる。

 警備員の虐待行為がリンガルによって克明にログとして記録されたことはローゼン社の
リンガルの能力が当初から高かったことを物語っていた。先行して開発・販売されたメイ
デン社の「実装リンガル」は音声信号を翻訳するというプロセスのため、翻訳ラグが発生
する上に翻訳内容も極めて限られたものとなっていた。その後の改良により大幅な改善は
されたものの、偽石の発振波を介したローゼン社のリンガルには翻訳の正確さという点で
は現在に於いても未だに見劣りするものとなっている。

 ようやく開発が終了したローゼン社のリンガルが発売されたのは「実装リンガル」発売
の1年以上後となっていた。ところが当時普及し始めたインターネットに於いて件の警備
員による行為発覚が噂として広まったため虐待派の間でローゼン社のリンガルが評判とな
り、当時ネット予約のみで販売された3000セットはメイデン社のリンガルよりも高価
であったにも拘わらずわずか4時間で完売する異例の事態となった。因みに、ローゼン社
のリンガルは当初『実装翻や君』という商品名で売り出されたが、その品名が普及するこ
とはなくローゼン、メイデン両社ともリンガルと呼ばれる事となる。

 その後、以上の経緯から愛護派として実装石と意思の疎通を図る場合はメイデン社のリ
ンガルを使用し、虐待派や産業的な実装石管理などで正確な翻訳が必要な場合はローゼン
社のリンガルを使用するという棲み分けがなされる様になった。その後も両社の改良合戦
は継続され、実装石用のリンガルは開発当初からは驚く程安い価格で入手可能となり性能
も日進月歩で進化を遂げている。

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