タイトル:改訂版3
ファイル:[実装姉妹の逃避行.3].txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4211 レス数:0
初投稿日時:2006/08/01-03:05:41修正日時:2006/08/01-03:05:41
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                「実装姉妹の逃避行.3」


蛆実装を迎えに行く道すがら、親指実装は考えていた。

今帰ったら、母実装は自分達を、許してくれるのだろうか。

間引きの場面を見た親指実装は、帰りたい気持ちよりも、
恐怖心への、もやもやした気持ちの方が、上だった。

塀の隙間から茂みを捜すと、蛆実装がいびきを掻いて、気持ちよさそうに寝ていた。

「わたちの苦労も知らずに・・」

何も考えずに寝ている蛆実装を、見ているとなぜか苛つく。
親指実装は、横っ腹に数回蹴りを入れる、

ドス!!ドスッ!!

「ゲボゥ!!ゲホ!ゲボボッ」

蛆実装は体をくの字に曲げて、突然の痛みに糞を漏らし、苦悶の声を上げる。

「レ・・ヒ・ャァア・・・」

「・・・・レフゥ??」
「やっぱりお姉ちゃんレフ!ひどいレフー!!」

親指は腰に手を当てて、蛆実装を睨みつけた。

「起こしても中々起きない、オマエが悪いレチ!」
「言われたらすぐ、おきるレチ」

姉の勢いに、蛆実装は何も言えなくなる。

「それより・・」
「すぐにここを、引き払うレチ」

「レフゥ?」

「今から人間さんの所に行くレチ」

人間と聞いて、蛆実装はゴハンが貰えると思い、ピョン、ピョン跳ねて喜んだ。

「レフー、レフー、人間さんレフ、ゴハンレフ」





暫くして戻ってきた親指実装は、ヤスを見上げた。

蛆実装を頭に抱えて、八百屋まで来た親指実装を見たヤスは、少し眩暈を覚える。

蛆を抱えた親指実装が店の前にいる、客の手前まずい・・・

『か、かわいい妹だな・・』

親指実装は、どうだと言わんばかりに、胸を張る。

「わたちの妹レチ」
「かわいいいに、決まってるレチ」
「さっ、蛆ちゃん、ご挨拶レチ」

「レフ〜ン、始めましてフゥ、これからも宜しくレフ」

蛆実装は尻尾を上下に振って、精一杯媚びた。

『これからも・・って、何言ってんだこいつ』

取り合えずこのままじゃ、マズイし・・

『うーん・・・でもな・・よし!』
『商売の邪魔になるから、そこのダンボールに入ってな』

ヤスは店の奥にある、ゴミ入れにしていた、ダンボールを指差す。

「ダンボールレフ!ダンボールレフ!お姉ちゃん、ダンボ−ルレフゥ!」

ダンボールを見た蛆実装は、親指の頭の上で興奮する。

親指もダンボールを見て、なぜか嬉しくなってしまうが、
ヤスや蛆にそれを見透かされるのが、恥ずかしかった。

「ハウスにしては小さいレチ、ママのハウスの方が大きくて立派レチ」

『・・大きい??・・ダンボールに、大きいも糞も無いだろう』

ヤスに摘まれて、2匹はダンボールに降ろされた。

ダンボ−ルの中は野菜屑と、さっきの捨てたキャベツが丸ごと入っていた。
ダンボールに視界をふさがれ上を見上げると、八百屋の雨どいと青空が見えた。

『そこにある野菜屑な、お前ら食べて良いぞ』

「レッレフッゥウ、ほんとうレフゥ!!うれしいレフ」

昨日の昼から、何も口にしていない2匹は、一心不乱にキャベツに齧りつく。

おいしい!味付けも何もしていないキャベツだが、普段は母実装の拾ってくる、
コオロギの死体や、腐った弁当の残り、ご馳走は愛護派のくれる食パン。
新鮮なキャベツは、とても甘く感じた。

「おいしいレフ!おいしいレフ!やっぱりお姉ちゃんは凄いレフ」
「お姉ちゃんの言った通りレフ!おいしいゴハン持って来てくれたレフ」

蛆実装は、自分の体重以上の、キャベツや野菜屑を食べた。
蛆実装にとって、おいしい物を腹いっぱい食べた事は、生まれて初めてだった。

「お腹いっぱいレフゥ」
「幸せレフゥ」
「お姉ちゃん、ありがとレフ」

お腹の膨れた2匹は、キャベツを枕に眠ってしまう。



暫く経ち起きると天井が目に入る、回りはガラスに囲まれ見たこともない風景だ。

親指実装は、目をこすり回りをきょろきょろ見回す。

『やっと起きたな、いつまで寝てんだオマエら』

八百屋のヤスだ、どうやら家に入れてくれたらしい。

『水はそこ、餌はそこ、寝床はそのタオルだ、
 糞はその灰皿でやれ。置いとくからな勝手にやってろ』

『いつまでも面倒はみない、暫くしたらママの所に帰れよ』

水槽の中は別々の皿に、水と餌であるジャガイモの煮物が入っている。

水槽の中からヤスを見つめて、親指実装は不思議に思う。

昼間、野良実装を、叩き殺した人間と同じなのに、
自分達には危害を加えない、それどころかゴハンや寝床まで提供してくれる。


この人間はママの言っていた、愛護派・・・

「・・人間さん、人間さん」

『んっなんだ』

「何であの時、実装石を殺したレチ」

『あーあれな、あいつは泥棒、糞虫だからだ』

『最初は殺さずに、ひっぱたく位だったんだが』

『成功した味を占めて、同じ奴が何度も来やがる』

『何度ひっぱたいてもだ』

『一日に何匹も来やがるから、しまいには叩き殺すようになったんだ』

『あいつらは放っておくと、増長して始末におけん』

『オマエは店の物を盗む訳じゃないし、行儀が良いから特別だぞ』

親指実装は黙って聞いていたが、特別という言葉に反応して口を開く。

「・・・当然レチ」

『へっ』

「叩き殺して当然レチ」

「糞虫は叩き殺すレチ」

『おいおい、オマエの仲間じゃないのか』

「違うレチ、わたちはあんな糞虫とは違うレチ」
「特別のわたちを、糞虫と一緒にしないで欲しいレチ」

「だから・・だから、わたちの妹も特別レチ」

「人間さん、お願いがあるレチ」

何か勘違いをしているな、ヤスは思った。

しょせんは実装、本性はやっぱり糞虫なんだろうな
お願いなんぞ、ろくなお願いじゃないだろう・・・・

『何だ言ってみろ』

「わたちを毎日、あのダンボールに置いておくレチ」

「糞虫が来たら、人間さんに知らせるレチ」

「見つけたら、叩き殺すレチ」

変な事を言い出しやがって、と思ったが最近、野良実装が自分の店以外にも、
出没して、被害報告が商店街会議でも、話題に上がった。

事実、自分の店も少なからず被害があった、ここ暫く店を開けている時は、
店から離れられない状態で、昼飯もろくに取れずにいた。

試して見ても損はしないし、置いておけば野菜屑の処理にもなるかな。

『よし良いだろう、でもな大変な仕事だぞ』

『小さいオマエに、出来るのか?』

「わたちは特別レチ」

「特別のわたちに、出来ない事なんて無いレチ」

『よーし、明日から頼んだぞ』


タオルを布団代わりにして、蛆と抱き合って床に就き、親指実装は考えていた。
ヤスに摘まれダンボールに降ろされる時、公園の入り口が見えた。

公園にはママがいる、もしかしたらママを見つけられるかも知れない。

隣では蛆実装が、レフレフと気持ちよさそうに眠っている。
きれいなタオルの寝心地はとても良い、親指実装は久しぶりに、深い眠りについた。



『それじゃ頼むぞ、このブザーは紐を引っ張ると
 鳴り出す仕組みだ、やってみろ』

親指実装は掛かっている、ブザーの紐を力いっぱい引っ張る
簡単に紐は抜けて、けたたましいブザー音が鳴り響いた、魚屋が飛び出してくる

『何だよヤスさん、朝っぱらから』

『おう、今日からコイツに店の見張りを頼もうと思ってな』

『実装リンガルは、暫く借りておくからな』

『リンガルは良いけどさ、見張りってコイツが・・・』

『野良実装どもは、入り口のここを通らなきゃ、
 商店街に入れないだろ、だからコイツに見張らせるのさ』

『うーん、見張りにアルバイト雇うわけには、行かないからな、
 昨日の商店街会議じゃ、アルバイトの話も出たくらいだしな』

『今日つかってみて、駄目ならやめるさ、損する訳じゃないから良いだろ』

『分かったよ、それじゃ俺は商店街のみんなに、話してくるよ』

すでに親指実装は、ダンボールの中に椅子代わりの箱を置いてもらい、頭半分を出して
公園の方を睨んでいた、椅子の回りを蛆実装が、レフレフと這いずり回っている。



時間がたち、お昼に商店街の店主達が、昼飯にちらほら中に入り始めた、
すると公園の方から、緑の影が何匹、電柱やゴミ箱に隠れながら近づいてきた。

「デプププー、やっぱりお昼になると、警戒が薄くなるデス」
「ほんとデスー、きのう殺された奴はバカデスー」
「人間なんて、赤子の手をひねる様なもんデス」

『それじゃー、昼飯を食べて来るから、後は宜しくな』

「任せておくレチ、糞虫は一匹たりとも通さないレチ」

そー言うと、ヤスは店の中に入っていった。

「一番危険な入り口の人間が、中に入ったデス」
「狙うは5件目の揚げ物屋デスー」
「あそこの人間は、婆さんだから簡単デス」

商店街の中に入った野良実装達は全部で3匹、入り口から奥に入っても、気づかれなかった。
ただしダンボールの中の、親指実装以外には・・

揚げ物屋の前まで来た野良実装は、店主の婆さんが後ろを向いた隙に、近づいていった。
あと5mその時、ブザー音がけたたましく商店街に響き渡る。

一斉に商店街の店主達が出て来て、野良実装の退路を塞いだ。

『今まで毎日揚げ物を、盗んでいたのはオマエだね』
『3匹で連携してやがったのか』
『打ち殺してやる』

10人位の店主達に。囲まれる野良実装3匹。

「な・・ななんデス、お前達!」
「私には分かってるデス」
「どうせ私の体が目当てデス」
「やらして欲しければ、やらしてやらん事もないデス」
「まずそれには、ご馳走を持ってくるデ・・デジャーー!!」


「デスーン、可愛い私が人間ごときに、媚を売ってやるデスーン」
「金平糖を持ってくれば、飼われてやらん事も無いデス」
「早く高貴な私に、持ってくるがいいデグチャー、ゲヒャー」


「私の仲間に、なんて事をするデス」
「泣いて土下座しても、もう許してやらんデス」
「許して欲しければ、ステーキと寿司を、今すぐ持ってくるデス」
「そんな事位では絶対にゆるさゴギャ!ギャ!ギャーーーー!」

物の数分で、赤緑色の染みになる野良実装達。

『何だコイツら、デスデスいーやがって、うるせーんだよ』
『まったく昼間に、ちょくちょく来ていたのは、こいつらか』
『野良実装でも、相当に狡賢い奴だな』

店主達が、八百屋の前に集まってきた。

たくさんの人間を、見たことが無い親指実装は、蛆を抱え身構える。
「レチッ・・なんレチ」

親指実装が珍しいのか、姉妹を覗く店主達。

『偉いもんだなーオマエ』
『これからも、宜しく頼むぜ』
『小さくて、可愛いわねこの子』

みんなが親指実装を褒め称える、それに答える親指実装は、可愛いという言葉に反応する。

「当たり前レチ、わたちは特別レチ」
「糞虫はこれからも、一匹もここを通さないレチ」
「もっと可愛いわたちを、褒め称えるレチ」
「おまえたち、これからも安心するが良いレチ」

実装リンガルを覗いた店主達は、複雑な顔をしたが、これ位は大目に見てやろう。
これからも商店街の見張りを、お願いするんだから・・・・

微妙な顔で店主達は、自分の売り場に戻って行ったのを確認して、ヤスが声をかける。

『今日はもーいいぞ、一日に何回も来ないからな』

「だめレチ、糞虫は油断出来ないレチ」
「ここからは、離れる訳にはいかないんレチ」

親指実装は公園の方を、蛆実装と一緒に見つめている

『分かったよ、好きにしな』

「蛆ちゃん、お姉ちゃんと見張りをするレチ」

「フゥ、お姉ちゃんと一緒レフ、嬉しいレフ、嬉しいレフ」

「蛆ちゃん!油断しちゃ駄目レチ、片時も目を離さず公園を見るレチ」

「レフン! 分かったレフゥ!!」

それから何度も野良実装は、商店街の進入を試みては、親指実装の罠にはまった。

既に100匹以上の野良実装が、商店街の染みになっていった。

公園の野良実装も、数を減らし、バカな固体が少なくなってきた頃。

親指実装が見張りをする商店街が話題になり、見張り実装を見に来る客で
商店街は栄えていった。

3ヶ月がたち、親指実装も子実装に成長していた。
蛆実装は蛆のままだが、そのままサイズだけ大きくなった。

ある日の早朝、野良実装が行動しない時間に、仔実装は蛆を抱えて公園に戻ってきた。

ママに会いたい、仔実装にとってママの存在は、大きな物だった。

出てくる時、仔実装は商店街の入り口で、
商店街にお辞儀をした、二度と戻らないつもりだ。

そして以前自分達の住んでいた、ダンボールハウスに到着する。

ダンボールはあったが、潰れて暫くの間、使われていない事が分かった。
ダンボールをめくって回りを調べたが、母実装の姿どころか、形跡も見つけられなかった。

「ママ!ママ!」
「私はここテチー!!」
「帰って来たテチ!」
「ママーー!!」

いくら叫んでもママの返事は無い、蛆を抱えて仔実装は座り込んだ。

「蛆ちゃん・・何も無いテチ」

「レフゥ」

「ママはどこかに、行っちゃったのかなー」
「覚えてる蛆ちゃん・・・ここでママと一緒に暮らしてたテチ」

蛆実装はキッと目を開き、仔実装を睨みつける。

「もう忘れたレフゥ!!」
「蛆の家族はお姉ちゃんと、商店街の人間さんだけレフ!!」
「ママなんかいらないレフ!蛆は・・蛆はお姉ちゃんが入れば、何もいらないレフ」

「蛆ちゃん・・・・」

蛆実装を抱きしめ、仔実装は震えていた。

「お姉ちゃんは、お姉ちゃんの癖に甘えんぼレフw早くヤスさんの所に帰るレフw」
「糞蟲をやっつけてる、お姉ちゃんがおかしいレフ」
「いつもみたいに、強いお姉ちゃんに戻るレフ」

「・・・強くないテチ」
「本当はお姉ちゃん、弱いテチ」
「強い振りをしてるだけテチ」

「・・レフゥ?」

「・・・・」
「強い振りをしてないと・・お姉ちゃん壊れそうテチ」
「・・う・うう・グズ・・蛆ちゃん・・」

「・・・お姉ちゃん・・泣いてるレフ?」
「フゥ!蛆のせいレフ、どうして良いか分からないレフ」
「泣いちゃ駄目レフ、泣いちゃ駄目レフ」

蛆実装は一生懸命、尻尾をふって慰めたが、自分も悲しくなってしまう。

「蛆も悲しくなってきたレフ」
「レフゥ・・・レフーン・・レフゥン」
「早く・・・早く、こんな所、出て行くレフ」
「なんでレフ・・・涙が出ちゃうレフゥ・・」
「お姉ちゃん!早く・・早く商店街に帰るレフゥ」

姉妹でひとしきり泣いた後、仔実装は涙を拭いた。

「・・帰るテチ蛆ちゃん、ここにはもう・・ここには私たちの、帰る所は無いテチ」



結局、実装姉妹は、商店街に帰って来た。
帰って来る実装姉妹を、ヤスがにやけながら迎えた。

『なんだお前、帰って来たのか?』
『ははーん、ママが見つからなかったのか?』

仔実装はヤスを見上げ、恥ずかしそうに言い訳をする。

「ち・・ちがうテチ、べ・・べつにママを、捜しにいったんじゃないテチ」
「さ・さ・・最近、野良実装が来ないから、公園に偵察に行ったテチ」
「う・・蛆ちゃんがどうしてもって、言うから、
 ついでに仕方なくダンボールを、見に行っただけテチ」

「レッ・・レフッー!」
「何を言ってるレフ!」
「蛆は別に、見に行きたくないレフ!」
「お姉ちゃん、嘘付いちゃ駄目レフゥ」

「蛆チャン、黙ってるテチ、黙ってるテチィ」

慌てて蛆の口を塞いだが、そのまま黙ってうつむいてしまう。

「レフゥ・・お姉ちゃん・・」

ヤスは思った・・・やっぱりそういう事か・・・賢くても所詮は実装だな。
今更、親が見つかる訳が無い、可哀相だがそれも実装の現実だ。

『ありゃ・・・少し意地悪だったかな』

「・・・・・」

『その・・・悪かったな、ちょっと、からかっただけだ』

「別に・・気にしてないテチ・・」

『ほら朝飯、用意してるから食べるぞ』

「テチィ・・・そんなに言うなら・・・食べてやってもいいテチ・・」

『今日は一緒に食べるか』

仔実装は、やっと顔を上げた。

「可愛い私と一緒に食べたいなら、ご馳走を用意するが良いテチ」

『おっ、機嫌直ったか』
『おかずはアジの開きだ、ご馳走だぞ』


「嘘を言うなテチ」
「魚屋のせっこい余り物テチ」
「でも・・結構おいしいテチ」
「特別に我慢して、食べてやるテチ」

「レフゥー!!蛆はお魚さん、大好きレフ」



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それから一ヶ月がたち、蛆実装は寿命で、天寿を全うして死んだ。

朝起きたら、隣で冷たくなっていた。
何回、蹴飛ばしても反応は無く、あっけなく死んでいた。

悲しかったが、どうしょうも無い物と、あきらめは付いていた。

仔実装は、今も手狭になったダンボールから、公園を一人で見ている。

もう何ヶ月も野良実装は、商店街に入ってこない。

人々が行きかい、ごった返した商店街の片隅で、つぶやく子実装。

「最近は暇テチ、糞虫共も私を恐れて、来なくなったテチ」

緑色の実装石達が、公園でうごめいているのが見える。

「汚らしい奴らテチ」

「ママとは大違いテチ」

八百屋に目をやって見ると、忙しそうに野菜を袋に入れて、
笑顔で働くヤスの姿があった。

野良実装が来なくなってからという物、
商店街にはお客が帰って来て、実装の手も借りたい位の忙しさだ。

今やアルバイトも雇って、店も拡張の予定でいる。

いなくなった野良実装は、近所のスーパーマーケットのゴミを漁り、
怖がった客の足が、商店街に向いたのも要因の一つとなった。

「ヤスさんも忙しくて、構ってくれそうも無いテチ」

ダンボールの近くにある、小さくこんもりとした山に目をやる。

ダンボールの近くが良いだろうと、仔実装の為に、
ヤスが蛆を埋めて、墓にしている所だ。

「最後まで迷惑を掛けて、駄目な妹テチ」

「毎朝、蹴飛ばさないと起きなかったテチ」

「いつも纏わり付いて、鬱陶しかったテチ」

「死んでくれて、せいせいするテチ」

「まったく・・死ぬ時位は、お別れの挨拶くらい、するもんテチ」

「・・・・・・」

「・・・・嘘つきテチ」

「・・・・ずっと一緒って言ったテチ」

「・・・・・・」

また公園に目を移し、一人つぶやく。


「ママはバカテチ」
「こんなに可愛くて特別な娘を、なんで迎えに来ないテチ」
「わたしは、ずっとここにいるテチ」

「迎えに来てくれたら、帰ってあげてもいいテチ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ずっと、ママを待ってるのに・・・ママ・・」

「・・ママ・・・ギュッして欲しいテチ」

これからも仔実装は、ずっとダンボールから、公園を見続けて生きていく。

迎えに来る事の無い幻を夢見て。

一人でいつまでも、いつまでも。
 


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最初の長めの作品なので、直す所が色々あって改訂版を作りました。

ついでなんで、続編も作っておきました。

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