タイトル:【虐】 実装石のお食事5
ファイル:実装石のお食事5.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3121 レス数:0
初投稿日時:2009/01/20-17:55:08修正日時:2009/01/20-17:55:08
←戻る↓レスへ飛ぶ

■実装石のお食事5


 『夢は暖かい家庭を築くこと』
 そんなことを中学生の卒業アルバムの時に書いたら、笑われた。

 男なら、もうちょっと大きな夢を持て、とか。
 なんで、そんな女っぽいこと平気で書けるんだよ、とか。
 お前、もしかしてマザコンか? とか。

 女手ひとつで育ててくれた母さんの姿を見ていた俺は、その夢を恥ずかしいと思ったことは一度もない。

 そして、いよいよ自分も大人になって妻を迎えることができた。
利明を虹子が産んでくれたときは、虹子も利明も、俺が絶対に守ってみせると、そう心に誓った。

 利明、なんで死んだんだ。
 利明、なんでお前は死ななくちゃいけなかったんだ。
 利明、痛かったろう。お前を守ってあげられなくてごめんな。
  利明、俺はどうしたらいい。

 できれば死んで、お前と母さんに謝りたいよ。
でも、孫の顔を見せてあげられずに、あげくに、
孫を死なせてしまった俺は、母さんにどんな顔で会えばいい?


目が覚めると泣いていた。
 目に涙が溜まっている。
 夢の内容はよく覚えていないが、今日も眠れた感じがしない。
 それでも朝はやってくる。

■

「ただいま」
妻が家を見て、嬉しそうにそう呟く。
今日は妻の退院の日だ。
自分の家を覚えていないかもしれないと思ったが、大丈夫のようだ。

「ちょっとホームシックだった」
そんなこといいながら、はにかんだ笑顔を見せる妻。
そんな妻を見ていると、心が少し軽くなる。

なるべく、実装石が出現しないような道を選んだから、時間がかかってしまった。
それまで、実装石は妻の懐にずっと甘えていた。
妻の服は、実装石のヨダレでベトベトになっていた。

妻は幸せそうな顔をしている。
それだけでも、俺は満足しなくちゃいけない。
今の生活を守ること。それが俺の使命。

妻は部屋に着くと、利明を椅子に座らせる。
利明の子供用チェアーだ。
利明が好きだったアンパンマンの絵柄が入っている。
あっという間に、利明の匂いが消え、実装石臭に侵されている気がする。

妻は、何をするかと思えば、服をたくし上げ乳房を出す。
実装石を抱え上げ、胸に当てる。
すると実装石は、それに吸いつく。

チュパチュパチュパ

目は三日月状だ。
デププ、と笑い声が、幻聴が聞こえる。

思わず、口をおさえる。

「どうしたの? 顔色悪いよ」
「いいや、なんでもない。ちょっとトイレに行ってくる」


■

会社。

「「」くん、つらいのは分かる。しかし、今のままでは部下に示しがつかんのじゃないかね」

仕事中に、部長に声をかけられたと思ったら、そんなことを言われた。
どうやら、俺の息子が実装石に食い殺されたというのは、会社では周知の事実になっているらしい。
人間というのは他人の不幸話を知りたがる。
プライバシーという言葉はどうなったのだ。

「君の会社への貢献と有能さで残してもらっているのだ。
 だが今、世界は不況だ。うちの会社も例外じゃない。
 いつまでも過去を引きずっている人間を雇い続ける余裕はない。
 いいかげん、昔のことは忘れたまえ。
 なかったことにする。それが君にとって一番幸せなことだと思うがね」

会社だけは、黙って仕事をさせてくれると思っていたのだが、そうではないらしい。

■

あいかわらず、虐待はやめられない。

今日も虐待部屋であるガレージにやってくる
そこにはトラバサミでぶら下げられている実装石。

「いつかオマエに復讐してやるデェス!!」
「呪ってやるデス!」
「デププ…デププ…」

やってみろ。
一発蹴りを入れて、一匹の頭から下を粉砕してやる。

「デスッ…」

そんなかすれたうめき声と一緒に、赤緑の目が一瞬に白くなる。
偽石を一緒に砕いてしまったようだ。

「デェ…」

他のやつらは声にならない鳴き声で、おし黙る。
最近は歯ごたえがなくなってきたな。

そんなやつらを一瞥していると、ガレージの隅に緑色の物体がうずくまっている。
どうやったか知らないが、トラバサミから逃れられたらしい。
近づくと、すごい勢いで、デシャァァ!と威嚇する。

つかんで持ち上げると、そこには、

「テチィ?」
「テチュゥ」
「テテェー」

いつの間に産んだんだ。
仔実装が5匹もいる。

つかみあげた親実装がデスデス言いながら、「」の腕をポフポフと叩いてくる。しかも、

「この仔たちはワタシが守るデシャァァアアア!」

と言っている。
初めて実装石達の親子愛を見た。
情の深い親子というのはいるというのは聞いていた。
まあ、それも偽物の愛だと専らの噂だが。

リンガルを口に当てる。

「お前らにとって、仔は食料じゃなかったのか?」

「そんなわけないデスゥ! 仔はワタシの命デスゥ!」

「そうなのか。でも、人間の子は食料なんだな」

「ち、違うデスゥ! ワタシは無関係デスゥ! 周りの糞蟲が勝手にやったことなんデスゥ。
だからせめて、この子だけは助けて欲しいデスゥ」

この仔だけでも。
そんなセリフを実装石から聞くとは。

「それじゃあ、これからお前を殺す。お前が死ねば、仔を自由にしてやろう」

「!」

固まる実装石。
ほら、自分の命と仔の命を天秤にかけ始めた。
ワタシだけ助けるデス、という展開か。

「分かったデスゥ。一思いにさっさと殺すデス」

………。
ほう。

「本気か?」

「本気も本気デ」

手を離す。

ベチャリ。
コンクリートに叩きつけられた。

「デジャアアアアアア」

足があらぬ方向を向き、むき出しの骨が内臓に突き刺さっている。

「足が、お腹が痛いデスゥゥゥゥゥ」

お腹を抱えてジタバタ悶える。
暴れるほど、傷口が広がるってことが分からないものか。

次に今日の虐待道具だった、あら塩をふんだんに振り掛ける。

「デズァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

見た目は地味だが、このうえない絶叫が聞ける。
体にダメージがありすぎると、叫び声が濁ってしまうから。
痛みだけ倍増させるには、こういう方法もありだ。

さて、次は皮でもむいてやるか。

「テッチィーーー!」
「テチャァァ」
「テェェェェ」

仔らが、母親に駆け寄る。

「テチィィィィ! テチィィィ!」

一匹は威嚇までしてきた。

「お前、こどもに好かれてるな」

「デ、デズゥアア…当たり前…デスゥ」

「お前の仔に免じて、お前を助けてやってもいい」

「ほ、本当デス!?」

「ああ、お前の仔を全部食えばな」

「!?」

「ゲガが手当てもしてやる。三度の飯も用意してやる。
 金平糖やステーキを用意してやってもいい。
 ケガが直ったら仔どもを生みなおしたらいい。
 仔育ても手伝ってやろうじゃないか

さあ、どうする。」

「…殺すデス」

「ん?」

「早くワタシを殺すデス!」

「いいのか」

「お前はアクマデス! 
交換条件を持ち出して、ワタシの心を揺るがそうとしたってそうはいかないデス!
 いつまでもお前の掌に踊らされてると思ったら大間違いデス!」

「…そうか」

右腕をすりつぶす

「デスァァァア!!!!」
「テチィィィ!」
「やめるテチィィィ!」

仔が騒ぐ声が鬱陶しい。

「次は左腕行くぞ」

「デズゥゥゥウウウ!!」
「ママァ、ママァ!」

「どうだ。気が変わったか」

「デズゥゥ、変わるわけないデズ…。
 自分の不幸を他石に押し付けるような卑怯者の話なんかきくわけないデス…
 さぁ、さっさと殺すがいいデス…」

「そうか…」

実装石をつかみあげる。
ふわりと浮く感覚に、目を瞑る実装石。

「ママー! ママー!」
「テチィ! テチィィィ!」
「ママを帰せテチィ!」

仔が足元に寄ってきて、ポフポフ叩いている。
そんな光景を見下ろしながら、俺は…、ガレージに放ってあったダンボールの中に、実装石をなるべく優しく入れてやった。
暴れる仔たちもダンボールに入れる。

「命には別状はないはずだ。粗塩は傷を早く直す効果もある。
 ケガが治ったら、公園に帰してやる。それまで大人しくしてるんだぞ」

実装石はわけがわからず、目を白黒させている。
そうだろう。
一番わからないのは俺自身なのだから。

■

うめき声で目が覚める。
時計は、3時。
俺の声ではない。
隣を見ると、虹子が震えている。
なされているようだ。

「ごめんね、利明、ごめんね、利明」

手を前に出して、何かを必死に掴もうとしているように見える。
夢の中でも利明を追いかけ続けているのだろう。
夢の中ではないかもしれない。
虹子が逃げこんだ中でも、こうしてずっと自分を責めていたのかもしれない。
目から涙のあとがついているのが痛々しい。

「虹子、大丈夫。大丈夫だから」

何が大丈夫だというのか。
俺にはそう言う事しかできない。
手をギュッと握る。

■

朝。

台所に向かうと、いつもと違う光景を目にした。
 
妻がキッチンに向かっている。

「虹子、体は大丈夫なのか。俺が作るぞ」

「あら、おはよう」
虹子がこちらに気づいて笑顔で挨拶する。

「いいわよ。座ってて。新聞はテーブルに置いてあるわよ」
「だから、俺が作るって」
「なんでよ」
「お前、まだ病み上がりだろう」
「大したことないわよ。それより、私はあなたが心配よ」

俺が心配って。
お前は昨日、ろくに眠れてないだろう。
肌に出てるぞ。
今でも、お前は自分を責めているんだろう。
なんで、俺の心配をしてくれるんだ。

俺はバカだ。
虹子はこんなにも苦しんで、そんな虹子を責めていた。
まるで、自分だけが苦しんでいるかのように。

包丁の音。
味噌汁のいい匂い。
まぶしい朝焼け。

昔はこれが日常だった。
いつもの風景、これがどんなに、かけがいのない姿だったか。

今は遠い姿に見える。

いいや。

もう手放さない。
俺が、虹子を守ってみせる。

■

ダラダラと仕事をやっている。
なぜか調子が出ない。
これは部長の言うとおり、仕事をやめるしかないのかもしれないな。
そしたら、どうしようか。
実装石がいないという大分の土地でも買って、自給自足の生活でもおくろう。
虹子を連れて、のんびりと畑をたがやして、敏明の弟や妹たちを作って。

そんなことを考えていると、肩を叩かれた。
部長だ。

「今日は、うちの課で慰労会をやることになっている。君も来たまえ」
「まだ、仕事が残っているのですが」
「急ぎじゃないんだろう。つきあいも仕事の一環だ。来たまえ」

人の気も知らないで。
罪もない利明が死んで、どうして、こういう人の痛みが分からないような人間がのさばっているのだ。
まるで、実装石だな。

■

居酒屋につくと、なぜか拍手で迎えられた。

「「」くん、こっちだ。座りたまえ」

部長に、上席に案内される。
わけも分からず、座る。

「これは、何事ですか?」
「何言ってる。今日は君の誕生日じゃないか」

忘れていた。そうか、誕生日なのか。
それはそうかもしれないが、会社の連中に祝ってもらう心当たりがない。
俺が誕生日を祝ってあげたこともない。

そうこうしているうちに、ビールが注がれる。

「それじゃ、「」くんの誕生日と、これからの会社の発展を祝って、カンパーイ!」

部長がそう挨拶すると、グラスがカツンカツンと触れ合う。

…まったく、わけがわからない。
キョトンとしていると、部下が話しかけてきた。

「「」さん、いきなりすみません。
 本当は迷惑だって思っているかもしれませんが…、これはみんなで決めたことなんです」

「どういうことだ?」

「「」さんは、面倒見がよくて、仕事熱心な、そんな憧れの先輩なんです」
 いつも私達に丁寧に仕事を教えてくれたり、
 私達の失敗も、いやな顔せずにフォローしてくれます。
 私達、みんな「」さんのこと好きなんです。
 今度は私達が「」さんを支える番です!
 絶対に仕事、やめないでくださいね」

少し、顔を赤らめながら、離してくれる。

「この企画、部長が言い出したんですよ。
 なんだかんだ言って、一番心配しているの、部長なんですよ。
 居酒屋で誕生日会なんて、ちょっと味気ないかもしれませんが、
部長なりに盛り上げようとがんばった結果ですから、大目に見てあげてくださいね」

「コラ、メイ子君、そのセリフは余計だぞ」

涙がポロポロと、頬を伝わっていくのがわかる。
俺はなんて、狭量な人間だったのだろう。
俺はなんて、身勝手な人間だったんだろう。
俺はなんて、バカなやつだったんだろう。

俺はなんて、恵まれた男なんだろう。


帰ったら、妻に花を買っていこう。
実装石にもスポンジボールを買ってあげよう。
妻が好きなケーキ屋に行って、1ホール買ってこよう。

二人の退院祝いを、まだしてあげてなかったから。



『主人公発狂まで後一作』

つづく



________________________________________________________________________

過去スク
実装石のお食事1と2と3と4
実装石を殺そう
山月実装せ記

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
前回のでは、たくさんのご意見・ご感想ありがとうございます!
小躍りしながら読ませていただきました!
今年も、みなさんに、読んでよかったって思ってもらえるような作品を目指していきたいと思います。

実装石の日常シリーズ再開おめでとうございます!
大ファンです! あの伝説のシリーズが読めて、すごく嬉しいです!
お正月はこれだけで楽しめました。お年玉なんかよりもずっと嬉しいです。
しかも続々と続編が。そして、どれもこれもおもしろい!
頭があがりません。
少しでも近づけるように、がんばりたいと思います!

■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため5973を入力してください
戻る