天と地と 6 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生まれてすぐの仔実装2匹を隔離して手に入れた主人公。 初期の刷り込み知識に微妙に誤った知識を与え、 さらに、2匹を分け、片方には贅沢でやさしい言葉と裏腹に、ぞんざいな扱いをし、 片方には侮蔑と罵りの言葉と裏腹に、飼い実装として与えられる全てを与えたのだ。 そして、その2匹に仔を孕ませる。 果たして、出来る仔は、どれだけ、親の受けた影響を継承しているのであろうか? −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 2匹を妊娠させて10日目…。 2匹は、それぞれの環境なりに無事に出産に漕ぎ着けた。 2匹は、それぞれ、実に面白い…。 胎教は、姉がやはり、恐ろしいほどの音痴振りを示す。 コレには手を加えていないはずなのだが、褒めれば褒めるだけ成長せず、音痴になるというのは、 実にデタラメな生き物らしい姿であろう。 「ニンゲンママとの愛の結晶デスゥ〜♪ニンゲンが我慢できずに生まれた仔デスゥ〜♪ ワタシに似てキレイになるデスゥ〜♪キレイに生まれるおまじないデスゥ〜♪」 と、膨れた腹に、毎日、自分の糞を丁寧に塗りたくっている。 その間も、毎日、腕や足に傷をつけている。 妹の胎教は、実に虐待を受けた実装石らしい物だ。 「ニンゲンは怖いデスゥ〜♪カワイイワタシに嫉妬して苛めるデスゥ〜♪ここは救われないデスゥ〜♪ 汚い水に、臭い家、食べ物は不味く、周りは怖いヤツが見張ってるデスゥ〜♪」 それを小声で言い聞かせている。 「だから、お前達は少しでも可愛く生まれるデスゥ〜♪ニンゲンをメロメロにして、ママを救い出すデスゥ〜♪」 と続いていく。 出産も、姉には特別な物を何も用意しない。 唯一の水たる、汚水のトレイを跨いで産み落とす。 8匹の仔は元気に生れ落ちた。 何匹か先天的親指実装が混じっているし、少し、肌の色がくすんでいるようにも見えるが、 全員、実に元気で立派な糞蟲性格だ。 親は、自分で膜を舐め取った仔を、丁寧に撫でながら、下着などがきれいなのが気に入らないと、 汚水に何度も浸したり、挙句には、好き放題に漏らしてある糞の山に突っ込んだりする。 「キレイな仔じゃないと、あのクズ達の水槽に送られるデスゥ!」 「テチィテチィ〜ン♪」 仔も嫌がる様子が無い。 この時期は、まだ、匂いなどには敏感なはずだが、そんな様子は感じさせない。 初期成長を終えた最初の一声が「ニンゲン、お菓子よこすテチュン♪」とくれば、 俺がどれだけ笑顔を作っても、自然と眉間や頬の肉が引き攣る。 下手な踊りを踊り、親と共に耳障りな言葉を並べた音痴な歌を歌う。 初期教育は、全て親に任せる方針だ。 少し労いの言葉をかけてやると、姉実装は、8匹の仔を引き連れて、歌いながら、 今や新聞紙が壁の大半を占める、今にも崩れそうな家に入っていく。 文字や写真がキレイだとかで、大変気に入っているのだ。 この中で、どうやって餌を貰うか、どうやって人間の気を惹くか…。 間違った知識を、さぞや自慢げに語ることだろう。 一方の妹実装の出産には手間が掛かる。 キレイな温水プールに肩まで浸からせての水中出産だ。 今のコイツは、水に漬けても、微塵も水が汚れない。 妹実装は激しく暴れる。 「デズゥゥゥゥ!生まれるデス!仔が死んでしまうデスゥ!このままだとニンゲンに殺されるデスゥ!!」 『まぁ、完璧な水中分娩というのは、実装石は単独で経験しないからなぁ…』 生まれて初期成長するまでの”おたまじゃくし実装”の時は、頭が浮きになって自然に浮くようになっている。 親は、もう泳げないため、洗う以外で水に浸かるのを怖がるために暴れている。 しかし、産み落としより、仔実装に掛かる体の負担が少なく、生存率や産後の要因での奇形率も少ない。 飼い実装用の病院や、教本ではお勧めと言われている方法なのだ。 そうこうしている間に、仔実装がプリュンと排泄口からひりだされてくる。 水中を漂い、静かに頭を上に浮かび、顔が出ると「テッテレー♪」と元気な声が響く。 親は恐慌状態なので、片手で腹を押さえつけて動けないようにしておきながら、 しばらく泳がせて、膜が弱くなる頃合で片手で救い上げて、清潔なタオルで身体をふき取り、別のタオルの上に置く。 流石に贅沢に育て上げただけに、栄養豊富な血色の良い仔実装だ。 全部で6匹…全て俺が取り上げる。 そして、タオルに並べて、親をプールから出し、いつものゴスロリ実装服に着替えさせてから親仔対面させる。 「どうだ、貴様に似て、どいつもこいつも、不潔な糞蟲だ」 そう言うと「デェェェェェ」と親が意気消沈する。 きっと、1匹は人間に気に入られるような仔が居るかもしれないという野心が打ち砕かれたのだろう。 その親の声に応える様に、6匹の仔がいっせいに「テチェェェェェェ!!」と力んでパンコンさせる。 「ウンチデターレチュン♪ニンゲン見るレチュン♪」 「ウンチ!ウンチ!ワタチ カワイイレチュー♪」 「クチャイウンチレチ、モレタレチー!ニンゲンメロメロレッチィ♪」 その壮絶な脱糞光景に、親である妹実装の目が輝いたのは実に見ものだ。 俺は、まだ、完全に仔実装になっていないソイツらを摘み上げて、 「勝手にキレイになりやがって!糞蟲の仔は糞蟲らしくしろ!」と、温水プールにつけて、やさしく洗う。 俺の言葉は、親と仔の、全ての希望を根こそぎ叩き壊したことだろう。 仔は必死に力みまくり「ウンチウンチ!キレイキレイ!ワタチはキレイレチィィィ!カワイガルレチィィィィン」と抵抗する。 妹実装の絶叫と、狂ったような殴打が俺の手に浴びせられる。 「離すデスゥ!ワタシの仔にぃぃぃぃ、仔にだけは酷い事するなデスゥゥゥゥ!!」 でも、ウレタン並みの軟度の腕で、実装石の力で殴られるなど、さしたる抵抗にもならない。 一方の洗われている仔実装の方も、恐ろしいまでの絶叫を上げる。 「イヤァァァァァァァー!!ママーママー!汚いレチィィィィ!イヤテチィーーーーーー」 どうやら、かなり高い汚染度で、親の経験したことが発現している様だ。 6匹を洗い終わり、仕上げの香水を振り掛けた時点で、2匹の仔実装の偽石が崩壊してしまった。 さすがに、まずいので、以降は親の手に委ねる事にした。 放置して怠慢になられても困るので釘を刺しておく。 「おい!少しでも糞でキレイになろうとしたら、お前が、ちゃんと汚水に付けるんだぞ! 判っていると思うが、全部見ているぞ!手を抜いたら、この2匹みたいにお前が酷い目にあうからな!」 2匹の死体を親の眼前に差し出す。 親は、震える4匹の仔を両手で、全身で抱きとめながら、首だけ向けて震えながら「デスゥ…」と首を縦に振る。 こうして、2匹の姉妹、それぞれに、自身で教育する期間を与える。 姉の仔は、性格は傲慢で活発だが、いかんせん、親の糞食が多かったせいか、身体自体は丈夫ではない。 その為、親に与えた”贅沢食”を分け合っているうちに、 2匹ほどが次々と栄養失調や体調変異で死んでしまった。 どうも、精神的には受け入れられても、悪環境に肉体自身が持つ生理的なものが耐え切れないらしい。 それでも、食事に身体が慣れた者は、親と変わらない元気さを保っている。 そして、その行動は1匹として同じ行動を取るものが居ない。 仔同士での対立や、餌の分配で親と対立することも珍しくは無い。 さらに、そこから発展するケンカでの肉体の傷付け合いが、彼らにとって遊びなのである。 親の残した本能記憶で、肉体を傷付ける側も、傷付けられる側も、それを快感に感じている面がある。 それだけに、身体の弱いものから順に、生後1週間で、さらに3匹が死んだ。 生き残った3匹は、おそらく、個性こそ存在するが、心身共に親の完璧なコピーなのであろう。 この水槽の環境で生きていくために最適化された存在だ。 妹の仔も同様だ。 身体こそ、実に裕福でハリとツヤのある仔実装だが、最初に希望を打ち砕かれたのと、 その後の親の教育で、すっかり内向的で受動的な行動を取る。 こちらは、肉体的には丈夫だが、精神的に弱いのだ。 救いは、同じ境遇にあるということなのだろう。 親と仔実装は、殆どくっ付く様に行動し、常に5匹で身体のどこかに触れ合っている。 しかし、愛情がそれだけ高いかといえば、それは別の話だ。 生後1週間…まだ、仔実装の彼らは、十分に便意をコントロール出来ない。 それだけに無意識に糞を漏らす。 1匹が漏らすと、糞に敏感になっている全員の時が止まる。 一瞬にして、その1匹から距離を置き、”近寄るな”と歯を剥いて威嚇する仔。 感情で漏れるのを堪えて、アタフタと駆け回る仔。 親にしがみ付いて恐怖に震える仔。 助けを求め近寄ろうとするが、どうしようもなく泣き崩れる漏らした仔…。 親の顔も醜く歪む。 なにせ、糞を何とかしないと人間に大変な目に遭う。 親も仔も、実際に仔が死んでいく姿を見てしまっただけに、恐怖は現実的にのしかかる。 何もしないで、その仔だけが酷い目に遭えばいいが、親として連帯責任になるかもしれない。 そして、仔を洗えば、自分の服も汚れて、あの地獄のような汚い水で、身体を洗わないといけない。 それが親となった妹実装には耐えられない。 だが、洗うしかない… 震える仔実装を掴んで、温水プールに運んで、服を剥ぎ、下着を剥いで洗い出す。 裸で頭を抱えてさらに糞を漏らす仔実装。 ソレを親の力で強引にプールに落とす。 60cmと10cmでは圧倒的に体格差がありすぎる。 何とか、溺れない程度に、でも乱雑に仔実装を洗う。 自身が、その”汚い水”にまみれると「デズゥゥゥゥ」と悲しげに泣く。 それを日に何度も、仔が入れ替わりですることになる。 この親仔も、やはり、個性はあるが、基本は親のコピーであると証明された。 どちらも、その証明に役に立った…。 もう、どちらも用は無い。 そもそも、こんな状態では、長くは生きられないだろう。 特に妹の方は…。 そこで、俺は、両方の中から仔を1匹だけ残して、 それぞれの家族を箱詰めにした。 姉実装一家は、一度、薄い塩酸風呂に漬けて、匂いと汚れの染み込んだ皮膚ごと洗い落とし、 コンビニ袋で作った服を着せ、機嫌を良くさせてから、自分達の手で服を燃やさせてから箱詰めした。 「お前達はとてもかわいいから、すばらしい人間達や仲間の居る世界にいけるよ」 「デッスゥ〜ン♪」 このまま、手紙を添えて、ある施設の前に置いて行く。 妹実装一家は、取っておいた実装服を少し汚して与えると喜んで着た。 そして、粗末なダンボールの箱に詰めてやると、やはり喜んだ。 「お前達は、あまりにも俺を失望させた!貴様らは野良にでも何でもなってしまえ糞蟲が!」 「デ・デスゥー…」 しかし、声とは裏腹に、一家で笑いをかみ殺しているのが判る。 開放される…そう思うと、自然と笑いも零れるだろうなぁ。 そして、やはり手紙を添えて、ある家の前に置いて行く。 それぞれ、処分するに相応しい場所で、ふさわしい人間の手で片付けてもらおうか…。 それが、俺からの最初で最後の”愛情”なのだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 〜 天と地と 6話 完 〜
