… … 決死の思いで車を避け、たどり着いた生垣にはもう、赤い薔薇は無かった。 はかなく散った花びらが、アスファルト一面に張り付いている。 「オウジサマはまた来てくれるデスー。今日は諦めるデス。」 親実装は花びらをこそげ取り、自分と蛆実装の口にそれぞれ運んだ。 「レッフーン!イイニオイレフー」 「テ、テェ……」 仔実装の三ツ口はだらしなく開けられ、眼は泳いでいた。 「オウジサマ…オゥ…ジ…オゥゥオゥォ・・・」 「お花食べるデス〜。ちょっと幸せになるデスン…。」 静かに日が暮れてゆく。 やわらかいオレンジ色の光の中に、それを見つけたのは、もはや必然だったのかもしれない。 「オウジサマー!!」 娘実装は走り出し、いきなり薔薇の枝に飛びついた。 ぷちぷちっ! とげが手に刺さる。 ?痛み? 手、つなぐ?痛み、痛い、手…。 彼女は思い出した。禿裸が読み聞かせたセリフの一部を。 ———(何でだろ、アナタと手をつなぐと、胸が痛いの) これだ!これがコイの痛み! もう手を離さない、ワタシのオウジサマ! 手にした枝には、夕日に染められた白い薔薇のつぼみが1つ、ついていた。 だらだらと手から血が流れるのも構わずに、枝をぐいぐいと引っ張る。 非力な実装石の力では、到底薔薇の枝はちぎり取れない。 ぐい、ぐいぐいぐいぐいぐい……。 <<ぶちん!>> 「デデェェ!」「レフー!」「テチャー!」 娘実装は、枝を手にしたままゴロゴロと道路を転がって、気がつけば公園側に戻っていた。 (近くで見ていた虐待派は、車が通らなかったことを残念に思ったことだろう。) 間髪置かずに、薔薇のつるの中から鋭利な刃先と殺気がが飛び出し、蛆実装の尻尾の先を二つに裂いた。 「レピャッ!」 「な、何ごとデッスン!?」 つるの奥、ぼんやりとオッドアイが睨んでいる。飼い実蒼石だ。 生来実装石を恨み、飼い主に完全服従し、庭木と鋏を愛する生物。 「ちっ、蛆も殺しそこねたボクゥ…。」 「でも、実装石の血で汚れた薔薇なんか要らないボクッ! とっととどっかに行かないと、その蛆をタコ足に仕上げるボク!」 「デギャー」「ママはやくにげるレフー! ウジチャン足が出来ちゃったレフー!」 親実装はドタスタと蛆を片手に道を渡り、あっさりオウジサマを手にしてしまった娘を引きずって公園へ戻っていった。 …まだ固いつぼみであることも知らずに。 娘は、身体と下着と服と口と総排泄口を洗い清めた。 母は、新しいダンボールハウスに雑誌を敷き詰めた。 蛆は、おかしな足にはしゃいで、ウンコを垂れただけだった。 「では、初夜を過ごしに行ってくるテス…。」 どうにも野良の域を超えられないが、娘はそこそこにキレイな格好になった。 胸元に白い薔薇のつぼみを掲げ、頬を赤らめる。 …キモイのは我慢だ。外野の諸君… 「デー。無理はしちゃだめデスー」 「だいじょぶテス!おばちゃんがみっちり教えてくれたテス〜」 「歩きウンコ、キモチイイレフ〜!」 親実装は応急処置として、蛆の二つに裂かれた尻尾を無理矢理堅結びにした。 そこに、トンデモ生物としてのおかしな再生力が働き、歩き回れるまでになってしまったのだ…。 蛆はそれでもウンコまみれでくねくねと踊っていた。 親実装はウンコ蛆を古い部屋の隅へ蹴り飛ばし、振り返ると頭巾を振って娘を見送った。 蛆は謎の足を振って見送ったつもりになっていた ——— ——— ——— どきどき。どきどき。 「恥ずかしいテスゥ…ワタシのドキドキ、アナタに聞こえちゃうテッスゥ?」 新しいほうのダンボールハウスに、裂いた雑誌が山と積まれている。 拾ってきた空き缶に水を入れた、「彼」の席も作られていた。 「彼」をその席に座らせ、親実装が作ってくれた初夜の床に座る。 どきどき。どきどき。 「恥ずかしいテスゥ…ワタシのドキドキ、アナタに聞こえちゃうテッスゥ?」 王子様に話しかけながら、彼女は三日三晩で築き上げた妄想の世界に入り込みはじめた。 「ワ…ワタシの全てを見て欲しいのテスゥ!」 彼女の妄想の中では、自分はもうニンゲンだった。 さらりとした亜麻色の髪、ふっくらとした胸、きゅっとしたウエストに豊満な腰つき…。 熱い妄想が脳内をぐるぐるとかき回す。自分の秘部がしっとりしているのがわかる…。 ============================================== いよいよエロへ突入体勢でございますー。 あああ長かった(冷汗) うちの蛆ちゃん、丈夫です・・・。 最後までお付き合いの程、お願い申し上げますデスゥ。 byひ乃字
