タイトル:【観?虐】 ニセモノの詩・ホンモノの唄 7
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初投稿日時:2008/12/12-00:53:17修正日時:2008/12/12-00:53:17
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ニセモノの詩(うた)、ホンモノの唄(うた)

第七幕 〜実装石の詩〜 破滅の奇想曲(カプリス)

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「テチィ〜〜〜〜〜〜 その声はワタシの蛆ちゃんテチュ〜〜〜〜♪」

突然、包囲する集団の中から、掻き分けるようにして泥まみれの仔実装が2匹飛び出してきた。


涙を流し手を取り合って集団の中から飛び出した2匹の仔実装は、
サザエ達の元に駆け寄ると、そのウジクーターの籠に鎮座する蛆実装を見て笑顔を作る。

「フネちゃん、やっぱりテチ! コレはワタシ達の妹ちゃんなウジちゃん達テチ!!」

「テェェェェェン 怖かったテチ! やっと逢えたテチュー! ママテチ、こんな格好をしているから判らなかったテチュ!」

サザエ達は突然現れた、馴れ馴れしい仔実装2匹に首を傾げる。

「デ?デスゥ?」
「テチ?」


仔実装2匹は、お互いに感情の堰を切ったように、さらに激しく涙をこぼしながら次々と言葉を紡いでいく。

「ママ? どうしたテチュ? 訳が判らない顔してるテチ」

「訳が判らないのはワタシ達の方テチ… どうしてママがそんなヘンな格好しているテチュン?」

「そうテチ。 ワタシ達、とってもタイヘンだったテチ!
 ニンゲンから逃げてる時に、ワタシが転んだのにミンナ置いていったテチ。
 フネちゃんだけが起こしてくれたテチ… でも気が付いたらミンナ居なくて、迷ったテチュ。
 ママ、いつも、ママから離れたら助からないって言ってたからスゴク怖かったテチ。
 急いでママやお家、イッパイ探したテチ… でも、飼いジッソウもイッパイ来て、怖くて隠れてたテチ」

「ニンゲンさんが、カツオお姉ちゃんやワカメお姉ちゃんにヒドイ事をしていったテチ…。
 ママが居ないとお家探せないテチ。 飼いジッソウもイッパイ居て、ナミちゃんとずっと隠れてたテチ。
 そしたら、暗くなって飼いジッソウが居なくなったからお家探したテチュ。
 でも、やっとお家見つけたのに誰もいなかったテチ… とても悲しくなっちゃったテチ。
 ミンナ、お姉ちゃんみたいになったとおもっちゃったテチュー」

おしゃべりな2匹は、涙を溢れさせながらも、その表情は安堵に緩んでいた。


「デ… ナミに… フネデス? 生きていたデスゥ!?」

朝に、ニンゲンに追いかけられてはぐれた末娘2匹が無事に生きていた…。

しかも、野良から見ればまるで世界の違う飼い実装の服を着た家族を、
普通なら、それだけで殆んどは判別不能になってしまう家族を見つけてくれたのだ。


普通の状態ならば感動の再会…。


サザエ達にとっても、この場の危機をリセットして脱する最大の好機… のはずであった。


すっかり忘れていた… とは言え、それを思い出せたサザエ達は、
思わず乗り物を降りて2匹を触って幻ではないかと言う事を確かめ合う。

「デェー! 生きていたデスゥ! ナミちゃんにフネちゃんデスー!」

「「テチュー!! キセキテチュ! はぐれたナミちゃんテチ! 確かにナミちゃんテチ、フネちゃんテチ」」


この公園で、日の光が出ている時間にはぐれて帰ってこなければ、ほぼ確実に死んだもの…。
サザエ達はそう思っていた。


その仔達が傷一つ負わずに現れたのだ。

サザエ達は驚きに、すっかり素に戻っていた。


ここまでは、何の計算もない素直な家族としての感情が起こした行動だった。


鬼の目… いや、サザエの目にもうっすらと涙が浮かぶ程に心からの素直な行動だった。


サザエは、2匹が野良の輪から飛び出してくれたお陰で、野良達の警戒心が一気に下がったのを感じた。

うまく気を…。 話題を変えてくれたのだ。


野良は新しい変化や情報が入ると、思考が流される傾向が強い。
それを利用し、自分が野良であるとアピールして、仔との再会を強調し、大人しくすれば助かると考えた。

それで、きっと先程の行為は、完璧にではないししろ、ある程度は帳消しになるはずなのだと。

この持ち物も取られず、囲みさえ消えてくれれば… この公園さえ出れば自分達の勝利なのだと。


「ママ!ママ! 良かったテチ♪ お家に帰るテチ。
 ワカメお姉ちゃんもお家に連れて行ったらきっと助かるテチ」

肩を抱いたナミが、そう言った時、野良の囲いの方から一同の爆笑を背に、
1匹の中実装がフラフラと向かってきていた。


禿裸、頭には激しい焦げ痕…蝋燭が溶けて顔に垂れ落ちて固まっている。

全身は実装叩きの網目状の紫の痣が無数に浮き、何かに擦れて磨り減り肉がむき出しの手と、
同様に短くなった足で上手く歩けないまま向かってきている。

目は曇り、表情は緩んで舌と涎を垂らしていた。



〔禿裸で、頭にロウソクとか言うのが刺さって火が点いていたテチ… 服の切れ端抱えて泣いて走り回っていたテチ〕



サザエは頭の中で、昼間、家の中でのやり取りを思い出した。

間違う事無く、朝にニンゲンに捕まったワカメの成れの果てである。


ニンゲンに酷い目に遭い、さらに、恐らくは飼い実装の手によって、そのあと拷問に掛けられたのだろう。

そして、飽きられたかしてワカメは運良く生きてナミ達に助けられたのだ。
いや、この場合には、不幸にも生き残ってしまったと言うべきであろう。


サザエは、そのワカメを見て「デッ!」と声を詰まらせた。


これを我が仔と認めたら、この場は大変なことになる… と。


只でさえ、周実装観衆の中、サザエは飼い実装として立ち振る舞い、暴虐を働き、包囲された立場…。

その上で、こんなモノを抱えては、この先、この公園でまともな実装生を営むことなど不可能となる。


ニンゲンや飼い実装どころか、付近全ての実装石が自分を笑いものにし、やがて弱者に認定され迫害される。


例え、この場の方便とは言え認めてはならないと… 瞬時に野良実装としてのサザエの頭にはそう浮かんだのだ。


下を見れば、ナミが純粋な笑顔でサザエを見上げている。

ナミが能無しな蛆実装の声すら聴き分けが出来るのは、愛情が特に強いから。
そして、サザエが、そのナミの特技を生きるに役に立たないと感じたのは、その愛情の異常な強さだ。

愛情が強すぎて、野良の… 実装石社会の解釈と感覚がズレてしまうからだ。


だから、この様なモノまでも守ろうとするのだ!

ブクブク太るだけの能無し蛆を… この姿になったワカメを…


その思うと肩を抱いた手にワナワナと力が入る。

純粋な笑顔が憎くも見える。

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 ワタシは手に入れたのではなかったのか?  飼い実装の生活を…

 いや、ようやくにして… これほどの苦労を重ね”取り戻した”のではなかったのか?


 ワタシは飼い実装になった。
 ワタシは飼い実装なのだ。
 ワタシが飼い実装だ。

 何を躊躇う必要がある?
 何を迷う必要がある?


 ワタシは、あのコロとかいうクソダンゴが奪い去っていたものを取り返したのだ。

 コロはワタシだったのだ。

 コロの持っていたモノがワタシのモノなのだ。


 古びた首輪はアイツの罠。 アイツがワタシから奪った新しい首輪は取り返してココにある。

 古い首輪の記憶はアイツの罠。 ワタシの記憶は取り返してココにある。

 それは全てワタシの手にある。


 コロの家族は何人だ?  カンタンだ! 同じ歳のカワイイ仔が3人、蛆実装が3匹…。

 デスクーターも大きいのが1つに、小さいのが3つ…。

 それ以外はない。


 そうだ、コレやソレやアレはワタシの仔の数ではない。

 そう、ワタシの仔の数ではない! 薄汚れた野良の服、虐げられた醜い容姿は野良のもの。

 これはコロの家族に過ぎない。

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サザエの天秤は… 既に、片方には重りを載せる皿すら付いていなかった。


サザエは肩を抱いた仔をそのまま持ち上げ… 投げ捨てた。

「ブキュ! ブベッ!」

ナミは足元から叩きつけられ、跳ね上がって空中で回転し、後頭部も叩きつけられ、なおも2回ほど転がった。

足はつぶれ、頭部は変形し、口と鼻から体液を噴出して虫の息となっていた。
表情だけが、持ち上げられた時の抱っこをされたと思った笑顔のまま、
瞬間の出来事で顔の筋が、その笑顔で固まって体液を吹き流しているので、得もいわれぬ表情を醸していた。


「テー! マ、マ、ママ、ドウシテ?」フネが突然のことに反射的に声を出す。

「テッ!! ママァ! ナミちゃんがぁ!!」タラコ達も叫ぶ。

「騙そうたってそうはいかないデス! 仔は3人デス! 飼い実装のワタシの仔は3人だけデスゥー!!
 ワタシがアイツに騙された時に、アイツの生活を刷り込まれたマボロシデス!!
 ワタシ達から、また、この生活を騙し取る罠なのデスゥ!!
 ワタシは野良なんかじゃないデス… 野良なんかじゃないデス… コイツは野良デス… コイツは野良デス…
 ワタシ達なんかと服が違うデス… 服が違うデス… オマエ達もそうは思わないのデスゥ!!?
 コイツラは、あの野良の群れから現れたデス! 服が野良デス、服が違うデス。
 オマエ達もワタシの仔なら理解出来るデス!?
 ヤツラは野良、ワタシ達は飼い実装デス。 この違いを理解出来るハズデッスゥー!!」

サザエの目は… 公園の芝生を照らす街灯の光を反射して狂気を増していた。

ハフー…ハフー… と息荒く睨むその目で捉えられた3匹の仔実装は、
自らの服と、目の前のフネの服を何度も見比べた。


見比べる度に、その目はサザエと同じ狂気に染まっていった。


「テ、テ… オ、オネ、オネ」

フネが姉達の殺気に気が付いた時には手遅れであった。

後退りをしようとした矢先に、既にその両手を、スカートの裾を3つの手が捕えて離さなかった。
完璧に3匹が、まったく同じ思考をし、同じ行動を同時にしていたのだ。


「「服がチガウテチ… 服が野良テチ… ワタシ達は賢いから判っているテチュン♪」」

「テチャァァァァ!! お姉ちゃんがヘンテッ…」

手を取ったイクラとタイコが、それぞれフネの左右に回って離れる。

フネは両手をそれぞれ反対方向に引かれて大の字にされる。

「デビャァァァァァ!! 裂けるテチィィィィ!!」それも裂かんとする勢いで引き続けている。


さらに、服を掴んだタラコがその手を離し、悠然と両手でフネの首を絞め始める。

「デビッ! ブキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…」ただ締めるのではなく上に吊り上げようとする様に。


「プギッ  プヒュッ  ヒュー… ヒュー… ペホ」

フネは天を仰ぐようにして、顔を赤から紫にうっ血させ、目を飛び出させるほどに剥き、
唾を吹き上げていた口からは泡がこぼれだし、失神も出来ないまま苦しみ、
両手が肩から裂け千切れた頃に、やっと窒息ではなく痛みで事切れた。


「「野良のクセにワタシ達に歯向かうとこうテチィ!!」」


自らの手で… 家族を… 酷たらしく殺した直後…。

3匹は返り血を浴びながらも、笑顔で叫んだ。


サザエ一家は、飼い実装になったと思った瞬間にそこを到達点と息をついた。

到達したと思った瞬間から、知能は”実装石規格外の策略家”から徐々に”元飼い実装のサザエ”に戻り、
自分の仔を、そうと理解しながら、手前勝手な理由を付けて殺した瞬間には、
さらに”どこにでもいる野良実装のサザエ”に退化してしまっていた。

そして、野良実装の世界であっても、表向きだけでも低俗な行為と貶される仔ゴロシに手を染めたのだ。
それも、本当に命を奪うに至るまでを何のためらいもなく遂行した。

コロを… 完膚無きまでに貶める為に利用した罪科である”仔ゴロシ”。

それを自ら進んで観衆の目の前で繰り広げたのだ。


「飼い実装サマが、また仔ゴロシデスゥ! 本当に最低なヤツラデスゥー!!」

誰かが話をよく飲み込めずに、突き動かされる慣性だけで叫んだ。

「知っているデスゥ!アイツはこの近くに住んでいるヤツデッス!
 確かにアイツは、自分の仔を殺したデスゥーーーー」

説明したがりが、それに乗って叫びを上げる。


サザエは、ナカマの事で計算違いをしていた。

ナカマはバカで記憶力が弱い…。 単純な事で利用しやすい性質だと…。
それは実装石そのものの習性としては間違っては居ない。

実装石の記憶力の悪さは単純に忘れる事ではない。

出来事を都合の良い方に解釈し、都合の良い一部だけを記憶するから忘れたと同意義になるだけ。

自分の都合によければ覚えている。 または、思い出せるという、実に都合のよい構造。


サザエの戦略では、自分達にさえ狙いを付けられなければそれで良いのだから、
コロを追い込む為に壁として利用する内は、その計算違いは何の問題もなかった。


「我が仔を殺すような飼い実装はボコボコにして奴隷ちゃんでも許されるデスゥ〜♪」
「喜んで仔を殺す様なのは野良以下に落としても良いと誰かが言っていたデッスゥー!!!」

「アイツラはナカマをボコってたテチ、野良のナカマも殺してたテチ、ジブンの家族まで殺したテチ…
 ママァ、アレは飼い実装テチ?  それともワタシ達のナカマなのテチ?」

「デッ… デー… そんなことママに聞かれても判るわけな…
 と、とにかくジブンの同族をボコってワタシ達を殺して笑っているヤツならサイテイなクズデス!
 飼い実装をボコっても、ナカマや家族をワタシ達の目の前で殺せるようなヤツでもサイテイなクズデス!
 アイツは仔を殺したから、アイツが自分で言った事に照らせば、
 どっちのクズとか以前に自分でウンコちゃん以下の程度なヤツだと言っているデス」

「テスゥ? 殺されたのは死んだヤツが言ったとおりアイツの仔テスゥ?
 それとも、アイツラが言ったとおり、関係ない仔テスゥ?」

「デプププ… 周りを見るデス… そんな疑問に何の意味があるデスゥ?
 ミンナが、死んだコジッソウの言う事を信じればシアワセになれるんデッスゥ〜♪ 賢さを学ぶデスゥ」

「また、土下座デス… ハゲハダカデス… 着飾ったイケスカナイのは飼いでも、野良でも関係ないデス。
 アイツの態度はさっきからムカつきまくりデス… 仔ゴロシはボロ以下なのはさっき決定した事項デス」

「テチャチャチャ ニンゲンや飼い実装なんて恐れるに足りずテチュ♪ この時間はワタシ達の物テチュ♪」
「テプププ もしナカマでも、平気で家族を殺せる危ないヤツなんか、怖くて近所に置いておけないテチー」

「さっきのを、今度はワタシ達がやるテチュ〜」

「「仔・ゴ・ロ・シ!  仔・ゴ・ロ・シ!」」
「「飼い・実・装! 飼い・実・装!」」
「「ショ・ケ・イ! ショ・ケ・イ!」」


飼い実装、仔ゴロシ、尊大な態度、そして先程のショーと、
今、知能程度の違いを乗り越え、集まった野良達の意見が一つに纏まるキーワードの様な物が揃ったのだ。

ナカマ達は忘れてなど居ない…。
先程の楽しみを、興奮を、それが今、再び味わえる機会である事を。

その為に足りなかったものを与えた…。

それで取り囲む野良達は、司会者が居なくても番組が出来る理解した。
自分が司会者になってゲストを弄り倒せば、見るより楽しめるのだと…。


タラコ達が勝ち誇った先に見えたのは… そうした攻撃的な目線。


「「テェッ!! テテテェェェェ!!??」」

急激に膨らんだ”殺意” ”憎悪”の塊に、すっかり野良以下の感性に堕ちたタラコ達は、
尻に生暖かい物が溜まるのを止めるどころか、喜び挙げた手を動かす事すら出来なくなった。


バン!

「デギャァァァ!!」

バンバンの轟音が鳴り響き、タラコ達の前の1匹の野良が倒れて転がり回り出す。
付近の野良達もワラワラと後退する。


「何をやっているデスゥ! このウスノロ共がデスゥー!
 さっさと乗り物に乗るデスゥ! ワタシ達はカミサマに選ばれた飼い実装なのデスゥ!!」

この後に及んで元気なのはサザエである。

慢心して策を生み出す事を忘れながらも、とにかく何物よりも大切な地位を渡してなるものかと、
諦める事も恐れも知らずに、圧倒的多数の野良達に挑み掛からん気迫で叫んだ。

「ワタシは選ばれたんデス。  飼い実装デス。 こんなクズ共に取られてなる物かデッスゥ。
 ワタシ達にはニンゲンの武器があるデス!! 勝てないハズがナイデスゥー!!
 オマエ達”1匹も”欠ける事は許されないデス! この数は絶対なんデスゥ!!」

そこにコロを言葉と策でボロ雑巾にした知性はない。

長期的な視野、相手の立場に立って行動を読む策、自らにできることを理解する知…。
それらは達成感とともに衰退し、反対に直感、反射は、より鋭く研ぎすさまれ始めている。

それは本能に頼りだした事を意味する。


考えられる事は生き残る事…。 とにかく生き残る事。

もはや行くところまで行ききって”狂気”に染まりきっていた。


タラコ達にとっても、この状態では引くに引けない。
野良達が怯んだのを見て、言われるがままに蛆クーターに足を掛ける。

そして、片手にバンバンを抱えて銃身をハンドルに乗せて安定させ母親の後を追う。

仔実装がバンバンを片手で撃つのは無理がある。
そして、ハンドルを支えに撃つ限り、ほぼ前の範囲しか撃てない。

仔実装でも、成体の疾走と同等な速さが出せる蛆クーターが有る事を生かした、完全な強行突破の体勢。


サザエは、とにかく公園の出口に向かう舗装された道に進路を向けた。


囲みの手薄な場所を探す暇など無い。

仔実装の扱いやすさを重視し、蛆実装をキックボード状に加工した蛆クーターは、
タイヤが小さい為にデスクーターよりもさらに走破性も低く、小さな段差にも躓いてしまう。

自分と3匹の仔、3匹の蛆と、偶然一致したコロの家族構成を元に成り代わりを決意したサザエは、
元の理由や意味など関係なく、この数を維持する為の選択が優先された。


”飼い実装として生き残る為には、とにかく出口へ、とにかく平坦な道を”と。


とりあえず、バンバンを撃てば、野良達はどれほどの数が居ようが動揺をはじめるのは判った。


だが、コロには”何発の弾が入っているのか?”と冷静に弾を把握している事を言っておきながら、
今、自分達のバンバンから何発の弾が出るのかをサザエは把握していなかった。

肝心のサザエのバンバンは、コロの物であり、つまりは今撃って出た弾が最後である。

音での威嚇効果を重視した玩具、音で充分に野良達を怯えさせられるし、
全部のバンバンに弾が満タンでも、取り囲む公園中の生き残り達に対して弾は4丁合計24発しかなかった。
まして、サザエたちは結構撃ちまくっている。

この野良の数に弾が元から足りない事は、一応、サザエの頭にあるからこその強行突破を選択したが、
先頭を行くサザエのバンバンに、弾がどれだけ残っているかは非常に重要であった。


「タラコ、イクラ、タイコ! ヨコ一列デスゥ!
 オマエ達はヨコ一列になってママの後ろに居れば、ミンナ一気に通れるんデスッ!
 支えあって、ゼッタイに怯むなデス! 脇目を振るなデスゥ! ママの後ろに居る事だけを考えるデスゥ!」

「「テチュァァァァァァァァァ!!」」

サザエの指示で、タラコ達は、バンバンのないタイコを挟む形で並走した。
丁度、サザエを壁に、タラコとイクラが壁からはみ出して、そのお陰で2匹もバンバンを撃てる。


バン!バン!

サザエがバンバンを撃つと、サザエの進路上の実装石達が慌てて頭を抱えてうずくまったり逃げ出していく。

だが、すぐに野良達も当たったはずなのに誰も倒れないと気が付き出す。

それでも、後続のタラコとイクラが撃てば、”やっぱり弾が出る”としばらくは慌て出す。


前に立てば痛い目に遭う… という威嚇だけで囲いに大穴を空けて一気に突き抜ける。


しかし… あと一歩、あと一歩でサザエ達が通行できるだけの道が開けると思った時には、
タラコ達の弾も切れていた。
サザエに至っては、ガスすら切れていた。


撃たれて倒れる者が居なくなると、音が出るからと怯む者は居ても、逃げ出す者は途端に少なくなる。

さらに弾が出ない確信が持てはじめると、野良達は道端に糞を垂れ、あるいは誰かが漏らした糞を手にして、
逆襲とばかりに、サザエ達に向かって投げ出しはじめる。

野良実装にもちゃんと飛び道具はあるのだ。


糞投げが始まると、一旦、逃げ出した連中もサザエの進路に戻り出す。

只戻るのではなく、サザエが逃げようとするにはソコしかないと理解し、
ソコに近い実装石達はそれを妨害しようとサザエの進路付近に集中し出す。

それぐらいの状況判断は可能である事も、ナカマを見下したサザエの計算外であった。


逆に、弾が切れていることに気が付かないのはサザエ達の方であった。

デスクーターの操作との併用で、しかも、意識は目前の突破に向いて視野を狭く集中している。
しかも、糞玉があちらこちらと雨の様に降り注いでいて、
正直、音が出ているかいないかすら気にしている暇など無いのだが。

それほどに余裕がなくなっていると言う事は、それだけ相手の動きを理解できていない事になる。


サザエ達がほころびの見える前線に差し掛かった頃には、勇気… いや、無謀な目立ちたがり屋達が、
我こそがデスクーターを止めてショーの司会の権利を得ようと、その後ろに二重目の防衛線を形成していた。


デスクーターがそれなりの速度で間近に突っ込んでくると、
流石に乗り物の速度がもたらす威圧感に再び逃げ出すものも多く、
サザエは、それを強調するように叫んで脅かし道を広げさせようとする。

「逃げるデス! 怯えるデス! 醜く這い回るデスゥ〜〜〜〜」

この公園の野良達は、全盛期から比べれば数は半分以下、囲み全体の数には限りがある。
自分の正面は、たかが逃げ腰の野良ばかりで、奥行き精々3・4匹分の列と見積もっていた。


サザエは、もう、その想定した数をかなり恐慌状態に追い込み、完全に野良達が崩れたと思った。

サザエは、逃げ惑うクズ共が左右に開けて、その先に光の道が開くのをイメージした。


しかし、崩れかけ、薄いと思った囲いは、二重目の防衛線で厚みを増していて、
易々と突破できそうで、切り開かれた先から沸いてくる緑の物体…。

そんな野良達に気が付いた時には、もう、その防衛線に突っ込んでしまっていた。


既に逃げ腰だった囲いはサザエの見積もりどおりだったが、その後ろにさらに列が加算されていた。

しかも、それらは、バンバンの威嚇音にも怯まず、前列の逃げ惑う者達が邪魔で、
間近に迫るまでデスクーターの威圧も感じなかった。

彼らが気が付いた時には、デスクーターはもう至近距離で、
糞投げの姿勢の野良達は、その姿勢で驚いて固まるか、腰を抜かすしか出来ない。

デデデデデ!
ボブッ! ボブッ!

「デギャァァァァァァ!!」 「グビィ!! デビィィィィ!足、アシ、アシィ!!」

固まった野良を風除けで跳ね飛ばし、腰を抜かし、ハイハイで避けようとする野良の足を踏んでいく。


そうなって、初めてサザエ達は、バンバンのガスすら切れたこと、
そもそも、それ以前からバンバンの脅しが効果を持っていなかったこと、
野良達の囲みが厚くなっている事など諸々…。

一言で言って、引き返し様がない絶体絶命の位置に来てしまった事を知った。

「デ! デデ!? デシャァァァァ!!」

威嚇の咆哮は、ほぼヤケクソである。


すぐさま、逃げ遅れの実装石に、今度は、まともに正面からぶつかる。

ボム!
「デキョェェェェェェ!!」


さしもの乗り物の持つ力といえど、デスクーター程度では成体実装を容易にひき潰すことなどできず、
逆に、バランスを崩して転倒しそうになる。


サザエは、吹かしながらハンドルを捻って、ぶつかった実装石の肉を焦がしながら、巻き込み引きちぎりながら、
片足を着いて支点に、強引にぶつかった抵抗を逸らして進路を曲げながらも”留まる”という危機を最小限にした。

デベベベベベェー!!
「ビギャァァァァァァ! デギャ!デギャ!」


ロスは最小にしなければならない。

周りは、突っ込んだ自分にパニックを引き起こしているが、何匹かはやる気マンマンで向かってくる。

立ち止まればそれに捕まる。  兎に角、余計な時間はないという直感が働いた。

動いてさえいれば、無防備な横から自分達を引き摺り倒そうとする手も及びにくくなる。


無理をしてでも撥ね、轢いて、ヤツらを傷付け、パニックを起こさせ、道を広く作らないと仔達が…。
それどころか、こうなっては自分自身が生き残る事が出来ないとも感じた。


そこから先は、もはや思考の類ではない。
気迫と意欲に後押しされた、直感と反射の世界だ。


サザエは、速度が落ちた事で迫る手を振り払い、足蹴にし、
ガスが切れたバンバンを前方に投げつけてでも進路を開けさせた。


奥行きは僅か数匹分なのだ。

もう、目の前は、公園の出口に向かう一本道が開けて見えているのだ。


一旦、サザエが開いた道は逃げようとする者達のパニックですぐには閉じない。

すぐに閉じないが、その後を走るタラコ達が抜けるに余裕のある広さ、時間、開いているわけではない。
タラコ達は、3台が横一列に併走する事で、デスクーターより遅い速度の通過時間を最小に留めさせた。
ただ、併走するために横幅は、サザエが通れるより少し広い道を必要とする。


タラコ達も、兎に角、デタラメに足を蹴り出しバンバンも投げつける。

服に手を掛けられながらも、噛み付いて、蛆クーターの速度で引き離す。

何が起こっても、今、ハンドルを握る手だけは絶対に外してはならないと必死だった。


ここさえ… ここさえ抜けてしまえば… あと2匹轢き殺せば…

あと1匹轢き殺せば… もう、自分達を止められるものは居なくなるのだ。


「ワタシは、飼いジッソウになったんデスゥゥゥゥゥゥゥ!!」


返り血と、糞の雨と、阿鼻歓喜、破滅の奇想曲の旋律が支配する中、
サザエは、既に6匹程と接触、そのうち2匹ほどを直接、前輪で擦りつけて退かしていた。

フロントがボロボロになったデスクーターで、進路を邪魔する逃げ遅れ… 最後の障害物1匹を、
すっかり慣れた手順で前輪を擦りつけ、腕力でハンドルを捻り、足を軸に追突の力を逃して、
その哀れな実装石の足を潰しながら、ズラしつつ、棒立ちの脇をすり抜ける。


「カミサマァァァァァァァァァァ」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

つづく

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