タイトル:【糞】 Gの旋律
ファイル:虐殺派に託児.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3002 レス数:0
初投稿日時:2008/12/07-21:56:57修正日時:2008/12/07-21:56:57
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 − Gの旋律 虐殺派に託児 −


煌々と光の絶える事の無い夜のコンビニ。
その光の影に、1匹の仔実装を抱えた野良の親実装石が潜んでいた。
いわゆる「託児」と言うやつだ。

「デス〜・・・ なかなかチャンスがないデス・・・」
「ないテチ・・・」

しかしこの親実装は、食糧難故に子供だけでも生き延びて〜 などと同情の余地がある理由で託児し
ようという訳ではない。
また実際にそうであったとしても、貰えるのは同情ではなく靴底の一撃だろう。

この親実装は俗に言うところの「糞蟲」だ。
仔を託児したきっかけに自分も奴隷人間の家に乗り込もうという、荒唐無稽で愚かしい「まるで実装
石の様な」考えだった。

「デ?・・・ 来たデス!・・・」
「きたテチ!」

親実装が気づいたとおり、ふらふらと足元のおぼつかない若い男性がコンビニに入っていく。

「あいつデスw あのトロそうな奴隷ニンゲンにするデスw」
「ワタチのみりょくでメロメロテチィwww」
「デプププw」
「チプププw」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「お、お客さん大丈夫ですか?」
「・・・・・・・・よん・・・・・・」
「え?」
「41度・・・熱がある・・・ 何か適当な風邪薬を・・おねが・・・」
「ええ!? お客さん病院に行った方がいいですよ! とにかく解熱作用のある薬出しますから」

男の名はアキラ、実装石虐殺派の青年だ。
2日前から熱を出し、寝ていれば治るとタカを括ったものの一向に下がる気配も無く、この2日何も
食べていない。

高熱で朦朧としている為、胃が受け付けるかどうかまでは考えが回らない。
とりあえず、カツ丼、蕎麦、プリンを手にふらふらとレジに立つ。
薬剤師を兼ねた店員がそれを見かねて、アルミパックに入ったゲル状の栄養補助食品を追加してくれる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ありがとうございました〜 お大事に〜?」

「デ!?」
「テ!?」
「来たデス!」
「きたテチ!」

コンビニの自動ドアが開くと、親実装の緊張は一気に高まる。
目的の男はふらふらと、それもだらしなく袋を提げて歩いてくる為、託児の標的としては申し分ない。
物陰のダンボール箱の上によじ登り、標的の接近を待ち受ける。

アキラが近づき、目前に迫り、通り過ぎた次の瞬間。

 ガサリ・・・

勢い余ってダンボール箱から転げ落ちた親実装はしたたかに顔面を打ち付けた。
思わず出かかる悲鳴を堪えて顔を上げると、「いつもの様に」地面で潰れている我が仔の姿は無く、
アキラは何事も無くふらふらと歩み去ってゆく。

託 児 成 功 !!

デッフンとばかりに鼻血と共に鼻息を噴出し、コンビニの光に照らされた親実装は仁王立ちになる。
自分で自分の「偉業(めいわくこうい)」を褒め称えているのだ。

「やはりワタシは天才デス! これで特別なワタシにふさわしい、ゴージャスでセレブな実装生活が
 約束されるのデッスwww」

と、親実装がふんぞり返っている間にも、アキラはふらふらと歩いて行ってしまう。
ここでビックチャンスを逃してしまっては大変だと、大慌てでアキラの後を追いかける。
こうして、親実装は実装石にしてみれば永遠とも思える距離を走る破目になり、ようやくアキラの住
む安アパートに辿り着くのだった。

「デヒィ〜! デヒィ〜! も、もう動けないデズゥ〜・・・デェ・・・ヒィ・・・」

奴隷人間の家に着いたのだと理解した親実装は、緊張感が一気に緩んで階段下にへたり込む。
そして心なしか少々臭い。
総排泄口までが緩んでしまったようだ。

そんな事はつゆ知らず、アキラは錆びた鉄製階段を上り2階の一室に消えてしまう。

「あの奴隷ニンゲン、けっこう大きな家に住んでるデスw これが全部ワタシの物になるんデスw
 デプ・・・デプププププwww」

もう一歩も動けないほど疲れきった親実装は、それでもこのアパート全体が奴隷ニンゲンの持ち家だ
と勘違いして醜悪な笑みを浮かべる。
後は頃合を見計らって我が仔の臭いと声のするドアを訪れれば、パラダイスが待っていると言う訳だ。
問題は、この鉄製階段を如何にして踏破するかなのだが、今はまだその事には気づいていない。
もっとも、気づいたところでどうしようもないのだが・・・
とりあえずは、無事に家宅侵入に成功した仔実装に視点を移してみよう。

     ・
     ・
     ・

「薬だ・・・薬を飲まないと・・・その前に何か食べて・・・・」

ふらつく足取りでようやく帰り着いたアキラは、青白い顔でぶつぶつと呟きながら、ちゃぶ台の上に
置いたコンビニ袋をまさぐる。
風邪薬を取り出し、栄養補助食品を取り出し、プリンを取り〜・・・

 テッチュ〜ン!

無表情な青白い顔をしたアキラは、それでもピクリと反応して自分の手元を凝視する。
自分が今持っている、買ってきたばかりのプリン。
そのプリンのビニール包装を食い破り、カップの中に腰までドップリと浸かった仔実装。
手も顔も体も頭もプリンまみれ、カップの中は何故か緑色。
何だ? 何だ? 何なんだコレは? 仔実装入りプリン? プリンがどうして緑色なんだ?

高熱で朦朧とした意識の中、全くの予想外の出来事に事態が飲み込めない。
しかも忌み嫌い憎むべき実装石が、何故か自分の手の中に。

 テチテチテチー! (奴隷ニンゲン、アマアマのプヨプヨはゲキウマだったテチ!)
 テチテチャー!  (つぎはかわいいワタチをおフロにあんないするテチ!) 
 テチテチューン!? (このウスラボケ、きいてるテチ?)

アキラはプリンをそ〜っとちゃぶ台に置く。
何が起きたか分からない、何を言ってるかも分からない。
分からないが、今現在、目前に糞仔蟲がいてテチテチと喚いている。
ならばやる事は一つ、見敵必殺!!
青白い顔は見る見る真っ赤になり、こめかみに青筋を立て、わなわなと震える拳を・・・

 ガタガタガターンッ!!

朦朧とした意識から一気に沸点に達した事が災いした。
白目を剥いて意識を失ったアキラは、まるでぷっつりと糸が切れた操り人形の様に崩れ落ちる。

 テチャチャーー!? (かわいいワタチになにをするテチー!?)
 ブリブリブーッ!!

奴隷であるはずの人間がいきなり眼前に覆い被さり、そのままコンビニ袋を引きずってちゃぶ台の下
に消えてしまう。
これを奴隷の反抗と勘違いして驚いた仔実装は、盛大にパンコンしそのままムリムリとプリンのカッ
プから浮き上がる。

ドキドキドキ・・・ 仔実装の動悸はまだ治まらない。

「ど、奴隷ニンゲンのぶんざいでワタチをびっくりさせるとは、とんだクソムシテチ!!」

盛り上がった緑糞が前方にお辞儀し、仔実装は糞の滑り台でぬるりとちゃぶ台に降り立つ。
奴隷の反乱には驚いたものの、愚かな人間にお仕置きをしなくてはならない。
仔実装はちゃぶ台に緑色の筋を引きながら這いずり、身を乗り出して奴隷人間を探してみる。
そこに見えた物は、頭から蕎麦を被り顔にカツ丼の汁飯を載せ、大の字で昏倒している奴隷人間だ。

「テ・・・テプ・・・テププ・・・テーッピャッピャッピャッピャッピャwww」

なんと馬鹿な人間なのだろう!
なんと間抜けな格好なのだろう!
仔実装は、何が起きているのか、相手が何者なのか、それすらも理解せずにプリンまみれ糞まみれで
笑い転げる。
この人間があと数秒意識を保っていたならば、粉微塵に粉砕されているなどとは夢にも思わない。

「このバカニンゲン、おおきいおうちにすんでるくせにバカテチw アホテチw」
「ごはんはたべるものテチw おかおにのせるものじゃないテチw」
「このかしこいワタチが、よ〜〜っく『しつけ』してやるテチw」

さんざん癪に障る甲高い声を部屋に響かせた後で、仔実装は床に降りるべく降り場所を探す。
テッチ テッチ とちゃぶ台の上を駆け回るものの、仔実装が床に降りられそうな所はどこにも見当
たらない。
たかだか50〜60cmのちゃぶ台の高さだが、体長10cm程度の脆すぎる仔実装ボディには断崖
絶壁に等しいからだ。

「チュワー! どこにもおりるトコロがないテチ! 奴隷ニンゲン、ワタチを下におろすテチィ!!」
 ブリブリーー

地団駄を踏んで奴隷を呼びつけるが一向に馳せ参じる様子が無い。
この家の主は高熱で失神中なのだし、第一『奴隷』など元から存在しないのだから。

「テ・・・ これテチ! これでおりられるテチ! やっぱりワタチはあたまいいんテチw」

何を思ったのか仔実装は、ちゃぶ台からアキラの頭に垂れ下がっている蕎麦に駆け寄ると、テチテチ
と嬉しそうにすがりつく。
短く不器用な四肢で何とか蕎麦を抱きしめ、ヨイショとちゃぶ台から身を乗り出す。

「チプププw かしこいワタチに『ふかのう』はないテチw これで・・・テチャアッ!?」

当然のごとく、いくら軽いとはいえ仔実装の体重を支えられる訳も無く、蕎麦は仔実装ごとズルリと
滑り落ちアキラの頭に山を作る。
しかし仔実装はそれだけでは済まない、ゴロゴロと床に転がる仔実装は激しい痛みに思わず叫ぶ。

「テヂィィィ! あしが・・・あしがいたいテヂィィィ!!」

転げまわる仔実装の両足はあらぬ方向に捻じ曲がっている。
本来なら瀕死の重傷を負うはずの高さだが、蕎麦のクッションのおかげでこの程度で済んだと言える
のだが。

「ヂィィー! クソニンゲン、かわいいワタチにこんなワナをしかけるなんて・・・・ ドゲザして
 あやまるテチィ!!」

転がったまま自由な両手でペタペタと床を叩き、好き勝手な事を喚き散らす。
もちろん臭い緑糞を撒き散らす事も忘れない、ブリブリと出したい放題だ。
しかし残念な事に、鉄槌をくれてやるはずのこの部屋の住人はピクリともしない。

「テェ・・・テェ・・・ し しぬトコだったテチ・・・」
「でもまだズキズキとイタイテチ。せっかくワタチがかわれてやるというのに、奴隷ニンゲンはどこ
 へいったテチ?」

部屋の主の人間様は、当の糞仔蟲の後ろにひっくり返っている。
人間と実装石のあまりの体格差に、間近に横たわっているとそれと認識できないらしい。
これで「かしこいワタチ」だと言うのだから聞いて呆れるというものだ。
そして横たわりブツブツと文句をたれる口は、いつの間にか蕎麦を咀嚼している。
出したら入れると言うところか、かなりの糞蟲と思われる仔実装は下着の端からモリモリと緑糞を溢
れさせたまま蕎麦を頬張り、いつしかウトウトと夢の世界へ落ちて行くのだった。

     ・
     ・
     ・

「デス〜 そろそろ仔は奴隷ニンゲンをメロメロにしたころデス。つぎは高貴なワタシが登場して、
 奴隷ニンゲンを土下座させる番デスw」

一方、死ぬほど走って息を荒げていた親実装は、ようやく重い腰と弛んだ腹を上げてアキラの部屋を
仰ぎ見る。
デッコラショと立ち上がり、鉄階段の一段目に足をかけようとしたものの・・・

「デ・・・エエ・・・ズウウウ・・・ ハァハァ・・・あ、足が届かないデズゥゥ!」

足が届かない、全く届かない、悲しいほど届かない。

勢いよく足を振り上げてみる。
自分で足を持ち上げてみる。
気合を入れて持ち上げてみる。
媚びてみる。

それでも全く足は届かない、笑えるほど届かない。

「デエエエ〜〜ン! 逆らうなデズゥゥ〜〜〜!」

遂に、半泣き半ギレで助走をつけて飛び上がってみる、3cmばかり。
しかし3cmの跳躍空しく、足が上がるどころかドムンと下腹をぶつけて倒れこみ、そのまま鼻先を
鉄階段の2段目にしたたかにめり込ませる。
目から火花を飛ばしてデギャァと悲鳴を上げかける親実装だが、それも叶わぬまま下腹の弾力で後へ
弾け飛び、これまた勢いよく後頭部を地面に叩きつけてしまう。
もはや悲鳴も上げられず、ブルブルッと海老反りに震えると、鼻からプピと血泡を膨らませてパタリ
と横たわる。

さすがに死んだかと思いきや、ブリブリと膨らむパンツを見るとまだ生きているらしい。
そして、いつしか親実装から聞こえてくるのは醜悪ないびき。
温厚な人物でも殺意がわいてくる光景であろう・・・

     ・
     ・
     ・

「テ?・・・・・・」

早朝の5時、誰かがアパートの鉄階段を駆け下りる音に仔実装が目を覚ます。
いつもならミツクチを開けて寝ている時間なのだが、託児の為に不規則な時間帯で寝起きした為に目
が覚めたのだ。

「テ・・・・チ・・・・」

ボ〜〜とした目つきで、テッコラショと起き上がる仔実装。
ゴワゴワとした尻の不快感に無意識のままパンツを脱ぎ、固まりかけの糞をボタボタ振るい落とす。
人間様の家の床に、だ。
そのままモソモソとパンツを履き、寝ぼけ眼で落とした糞をボケ〜ッと見つめる。

ピスピスと鼻を動かし、いつもとは違う匂いに気づく。
そう、ここは糞と生ゴミ臭と体臭に満ちた、いつものダンボールハウスでは無いのだから。

「テチ・・・ いいニオイがするテチ・・・ テヂッ!?」

ひっくり返ったアキラの向こう側から漂ってくる、カツ丼の匂いにつられて歩き出そうとした仔実装
だが、踏み出した足の痛みに思わず転倒する。

「ヂィィ・・・ 足がイタイテチィ、なんでテチ? テチィィィ・・・・」

ひと寝入りしてすっかり記憶が抜けたのか、両足に走る「謎の痛み」に涙目で横たわる仔実装。
それでも昨夜のプリンと蕎麦を馬鹿食いしたおかげで、捻じ曲がっていた足は一応は元に戻っている。
もとより欠損をした訳でも無いので、あとしばらくもすれば歩けるようにはなるだろう。
それはそうと、痛みのおかげで仔実装の寝ぼけた意識は徐々に覚めてくる。

「テ? やけにオウチのやねがたかいテチ? オ、オウチもものすごくひろいテチ???」

テチャ〜とアホ面を下げて天井を仰ぎ見る仔実装。
周囲を見渡し、見覚えのある蕎麦の山〜 山の中身は人間の頭なのだが・・・ を見て、全てを思い
出す。

「そうテチ! おもいだしたテチ! あのアタマのわるいママのさくせんが、めずらしくせいこうし
 たんテチ。それでワタチはおおきなオウチと奴隷ニンゲンをてにいれたんテチ!」

「都合の良い記憶」を思い出し、目ヤニいっぱいの目をギトギトと輝かせる仔実装。

「きょうからワタチは『かいじっそう』テチ! スシもステーキもコンペイトウもたべほうだいの、
 セレブなせいかつテチィw」

チーチーと妄想をたれながら、仔実装は再び鼻をピスピスと鳴らす。
蕎麦の山〜 中身は人間の頭なのだが、蕎麦の山に腹ばいでにじり寄り、ピスピスと匂いをかいでみ
ると、「いつものゴハン」の臭いがする。
それもそのはず、時期的には冬とはいえ、高熱を出している人間の頭に冷却材よろしく被せてあった
のだから、蕎麦からはわずかに腐敗臭が臭い立つ。

 ペシィ!

仔実装は臭いを嗅ぐやいなや、憤怒の形相で蕎麦を叩く。

「ヂイイイ! これはあの頭のわるいママがとってくるゴハンのにおいテヂィィ! こんなゴミは、
 バカなノラがたべるものテチー!」

まだ少し臭いが鼻につく程度の、実装石にしてみれば上等な部類に入るであろう物を、まるで手の平
を返したように粗末に扱う。
いつもなら、姉妹を押しのけてでも喰らい付くはずの物を、だ。
そしてそのまま周囲を睨みつけるように、再びピスピスと鼻を鳴らし匂いの方向へズリズリと進む。

「こっ これは、おニクテチ!? いいニオイがするテチwww」

仰向けにひっくり返っているこの部屋の主〜 頭から蕎麦をかぶっているアキラの反対側にカツだけ
になったカツ丼のパックが落ちている。
汁飯は未だアキラの顔の上にてんこ盛りだ。
上体を起こしてそのパックの中身のカツを発見し狂喜乱舞の仔実装。
テチテチと喚きながらパックの中に倒れ込み、勢いよくカツを齧ると・・・

旨い! 旨すぎる!!
こんな物を食べたのは生まれて初めてだ!!
もっとも、生まれてまだ一ヶ月程度だが。

コンビニにありがちな安物の硬い肉ではなく、クズ肉を集めたメンチカツは非力な仔実装の口にも程
よい軟らかさで、一口齧るだけで口いっぱいに広がる肉汁が堪らない。
仔実装は感激にわなわなと打ち震え、ピッスーと鼻息を噴出す。
もちろん総排泄孔もこの喜びを表現するにやぶさかでない、モリモリと朝の一番搾りだ。

「テッチュワァ〜w おいしいテチィ! まさにセレブなワタチにふさわしいステーキテチww」
「うま! うま! うまま〜〜テチw クッチャクッチャ・・・チプ〜〜プププw」
「まあこれなら、クチャクチャ・・・かわれてやっても・・ゴクン・・・いいテチよw ゲフゥ」

誰も落ちたカツを食べても良いとは言っていないし、誰も飼ってやるなどとは言っていない。
そんな現実などはお構い無しに、糞蟲特有のバイアスを通したバラ色の未来に妄想を馳せる仔実装。
油まみれでギトギトの笑顔でチュッチュッワーワーと騒ぎながら、大はしゃぎであちこちに飯粒を飛
ばす。
総排泄孔もこれでもかと喜びの糞をひり、床一面が酷い有様だ。

ひとしきり至福の時間を過ごした後、仔実装は金魚のように膨らませた腹を支えてヨタヨタと立ち上
がる。
すでに足の方は問題の無い程度に回復したようだ。

「テチ〜〜 ゴージャスなおニクぜめをたんのうしたテチ。つぎはワタチのあたらしい『ごーてー』
 をたんけんしてやるテチw」

仔実装は飯粒をポロポロと床に落としながら徘徊を始める。
糞と油の跡を点々と引きずりながら・・・

     ・
     ・
     ・

「デシャー!」
「デッギャースッ!」
「デギョェ!?」

早朝のゴミ捨て場、まさに実装の修羅場。
ゴミ捨て指定日の前日の夜に出された生ゴミを狙って、実装石の生ゴミ争奪戦が繰り広げられている。
今日はそのゴミ捨て指定日、生ゴミ争奪戦の日なのだ。

糞仔蟲を託児した親実装は鉄階段での自爆で失神〜爆睡したものの、空腹にさいなまれて明け方に目
覚めてしまい食べ物を探してここに辿り着いたのだが、普段は公園から離れたこのゴミ捨て場に来る
事は無い。
なので勝手の解らない親実装は、へこんだ鼻を押さえながら様子を見守っている最中だ。

「これはワタシがもらったデスーッ!」
「そうはさせないデシャー!!」
「四の五の言わずにワタシに・・・デゲェェ!?」
「ママがんばるテチーー!」
「ママにまかせるデッスー!!」

どうやらこの餌場は、親実装が普段利用している餌場よりも厳しい環境らしい。
腹は減ったが、これではどうにもならない。

ふと見ると、何匹かの仔実装が争奪戦から離れた場所で親の奮闘を見守っている。
性格は別として、早朝のエサ取りを習慣にしている実装石は賢い個体が多い。
仔実装達は実際のエサ取りを見学する教育期間という訳だ。

「お前達のママは一生懸命頑張っているデスね」
「「「 テチ? 」」」

親実装は何気に見学中の仔実装達の後ろに立ち話しかける。
仔実装達は少々驚きはしたものの、その声の穏やかさに逃げ出す事も無く親実装を仰ぎ見た。

「お前達のママは毎日ご飯を持ってきてくれる偉いママデス」
「そうテチ! ワタチのママはかしこくてエライんテチ!」
「ママははたらきものテチ!」

「でも、どうしてお前達はただ見ているだけデス?」
「テェェ?」
「そ、それは・・・」
「ママがあぶないから、みてなさいっていうテチ・・・」

「あんなに一生懸命のママに申し訳ないと思わないんデス?」
「「「 テェェ・・・ 」」」

元気に母親を応援していた仔実装たちは、そろってうなだれてしまう。

「ワタシの仔は違うデス! ワタシの為に大きな家と奴隷ニンゲンをゲットしたデッス!」
「ホッ ホントテチ!?」
「すごいテチィ!!」
「オバチャンはセレブテチ!?」

今度は一斉に色めき立つ仔実装達。

「お前達も、お前達のママにセレブな生活をプレゼントしたいデス?」
「「「 したいテチ! 」」」

「じゃあ、オバチャンについてきたら、お家や奴隷ニンゲンの所に連れて行ってあげるデス。運が良
 ければゲットできるかもデスw」
「いっ いくテチ!」
「ワタチもいくテチ!」
「セレブになるテチw」

「お前達はママ思いのいい仔デス。こっちに来るデス」
「「「 いくテチ! いくテチ! 」」」

親に対する愛情が強いのか、射幸心が強いのか、はたまた単に糞蟲性が強いだけなのか、3匹の仔実
装が後を付いていく事になった。
もちろん、この託児した親実装の言葉どおりに「奴隷ニンゲン」に会った所でどうなるものでは無い
のだが、そんな心配は全く無い、お花畑は幸せイッパイ咲き乱れているのだから。
仔実装達は口々に歌を歌いながら幸せ街道まっしぐらだ。



しかし、さすがに仔実装の足では道中の半ばも進まぬうちに疲れが出てくる。

「もうあるけないテチィ・・・」
「あんよがつかれたテチ・・・」

「しょうがないデス。オバチャンが歌を歌ってあげるデス」
「「「 わーいテチ! 」」」

「ハム・ソーセージ美味しそう〜♪ デスw」
「テチw」
「テチテチ♪」

「ハム・ソーセージ食べたいな〜♪ デスw」
「「「 テチ〜♪ 」」」

「ハム・ソーセージ便利でしょ〜♪ デスw」
「「「 テチ〜♪ 」」」

「ハム・ソーセージ仔実装〜♪ デスwww」
「「「 テ? 」」」

クルリと振り返り、ニンマリと笑って1匹の仔実装を抱き上げる。

「ここまで来ればバカ親共に声も届かないデスw」
「テヂィィィィッ!!」

抱き上げた仔実装の左半身にがっぷりと喰らい付き、満面の笑みでもしゃもしゃと咀嚼する親実装。
喰い付かれた仔実装はヂィヂィと手足をバタつかせて暴れるが、悲しいかな全く意味を成さない。
残った2匹の仔実装は、何が起きているのか理解できずにポカンと見上げているだけだ。
その2匹の顔に、暴れる仔実装の血糊が跳ねる。

「・・・・テッ テチャアアア!!」
「・・・マッ ママーー!!」

その色とぬめりと温もりが、ポカンとしている2匹に絶命の危険を嫌と言うほど思い知らしめた。
2匹は半狂乱になりながら ママ!ママ! と絶叫を上げて走り出す。
そして親実装は、モッチャ・・・モッチャ・・・と掴んだ仔実装を噛み締めながら、目を細めてその
様子を眺めている。

「ママッママッママァーーーーーッ!!」
「ママーッ!! ママたすけてテチィーッ!! たべられちゃうテチーーー!!」

 ペペン!
「「 テチャァ!? 」」

後頭部に平手打ちの衝撃を受けた2匹はもんどりうって顔面から地面に転がる。

「デップップップw 活きのイイ仔実装デスw 大人しくワタシのお腹の中に入るデス。それから
 奴隷ニンゲンのお家に行くデス。ちゃんと約束は守るデスw」

所詮は仔実装の足。
死に物狂いの逃走も、成体実装の数歩で追いつかれてしまう。
親実装は逃げる仔実装達の頭をはたきつけると、1匹を踏みつけてもう1匹にガブリと齧りつく。

「ヂギィィィーーーッ!! いたいテチいたいテチいたいテチ!! ママたすけてマッ・・・」
 ガブチュ・・・ モッシャ モッシャ
「ンンンまいデッスwww 活きのイイ仔実装ウマウマデッスw」

「チャーーァ! オバチャンたちけてテチー! ママ・・・ マーマーーーッ!!!」

ふと、親実装が食べる手を止め、残った仔実装に話しかける。

「お前・・・・助かりたいデス?」
「テチ!? たすけてテチたすけてテチ! オバチャンしにたくないテチ! おねがいテチィ!!」
「だーめーデープーw  デ〜〜ップップップw」
「チギャァァァァ〜〜〜〜ッ!!」

     ・
     ・
     ・

その頃、アキラに託児された仔実装は室内を探索中だった。
それも部屋の主が高熱で失神中なのを良い事に、油と糞にまみれた体で我が物顔で、だ。
身長10cmそこそこの、ダンボール箱を家として育った仔実装にとっては、人間の住居はまるで巨
大な迷宮の様に感じられただろう。

最初に外の空気の匂いがする玄関を訪れ、本能からドアの外が元の世界だと分かるのだろうか、とり
あえず「ぺすん、ぺすん」とドアを叩いてみる。
叩いてみても何も起きないので、次に靴によじ登り中の匂いをクンスカと嗅いでみるが、これも何の
面白みも無い。
すぐに玄関に飽きて、玄関の土間から板の間にやっとの事でよじ登り探索を再開する。
その際の、気張りグソのおき土産も忘れない。



次ぎは果てしなく歩きつめ、トイレ兼ユニットバスの前までやってくる。
少し開いたドアからだらしなく垂れたバスタオルをよじ登り、一段高くなっているユニットバスへの
侵入成功した。

「なんだかイイにおいがするテチw」

ピスピスとふざけた鼻をひくつかせ、石鹸やシャンプーの匂いに敏感に反応する仔実装。
やはり実装石にとって「風呂」と言うものは、本能的に特別の憧れなのであろう。
電気のついていないユニットバスの中で、本能をくすぐられながら暗闇を見上げてみる。
もしも本当の飼い実装ならば、照明のやわらかい光の中で温かいお湯とうっとりするような石鹸のア
ワアワに満たされて、飼い主とキャッキャッウフフできるであろうバスタイム。

「ここは・・・まっくらでなにもないテチィ・・・・」

夢の楽園、バスルームの情景などつゆ知らず、仔実装は後ろ髪引かれる思いで次の探索場所を目指し
た。



最後に訪れたのはアキラの寝室・・・ と言っても、たかが1DKの安アパート。
台所を兼ねたリビングと寝室の2部屋しかない。
しかし仔実装にしてみればとんでもない広さだ、疲れ果ててもはやふらふらの状態だ。

「テヒィ・・・テヒィ・・・テヒィ・・・まったく・・・奴隷のくせになまいきなおうちテチ」
「でも、きょうからここはワタチのものテチ。チププププw」

仔実装はトテトテとアキラのパイプベットに歩み寄り、呆けた顔をして上を見上げる。

「これは・・・たぶん、ニンゲンのおふとんテチ。ワタチがぼっしゅうテチw」

没収テチと言ったところで、手すら届かない遥か上空のベットをどうするつもりなのか。
垂直にそびえ立つベットの足を登る気にもなれず、ベットの下をおろおろとするばかり。
ふと、ベットの枕元に寄りかかるように、斜めに立てかけてある棒が目に付く。

「テチャw ちょうどイイふとさのぼうテチ。ななめだから、のぼりやすそうテチ・・・・・」

ピスピスと、仔実装の鼻が動く。
何だろうこの臭いは?
赤色と緑色をした棒から臭って来るこれは・・・
この臭いは良く知っているぞ、ママに隠れて蛆ちゃんや妹ちゃんを食べた時の臭いだ。
この棒の形は見た事があるぞ、奇声を上げて走り回る怖い人間が振り回す棒だ。

 ブリ・・・

同族の、血肉の臭いだ!

 ブリブリ・・・

同族を、殺す為の棒だ!

 ブリブリブリ・・・

この家の人間は、同族を殺す怖い人間だ!

 ブリブリブリブリーーーッ!!

一気に糞を吹き上げて自分の背丈よりも盛り上がる仔実装。
驚愕の事実にどうしていいか解らずに、糞柱の上でとりあえず媚びてみる。

 テヂッ!

媚びた拍子に糞柱から転げ落ち、はっと我に返る。
同族の血肉の臭いが染込んだ、L型の赤緑の鉄棒〜 いわゆる「バ−ル」。
公園で暮らす実装石にしてみればまさに恐怖の象徴だ。
この仔実装は糞蟲ではあるものの馬鹿では無い。
故に目の前の「事実」は、幸せ回路を一気に吹き飛ばしてしまうには十分だった様だ。

「チャワー! たいへんテチ! はやくココからにげないと、こっころされるテチ!?!?」

     ・
     ・
     ・

「ゲェフ! ケポ・・・」

久しぶりに美味い肉を喰らえた託児親実装はご満悦の表情で腹をさする。
腹もはった事であるし、そろそろ奴隷が出迎えているアキラのアパートに再度乗り込んでやろう。
そんな妄想満開と言ったところか。

 テチテチー
 テッチー
 デーデスデス
 テチー

道中、庭付き住宅のフェンスの向こうから声が聞こえる。
同族である託児親実装には、当然リンガル無しでその内容が解る。

 お姉ちゃん、蝶がいるよ。
 まあ綺麗。
 お前達、虫さんを驚かしてはダメですよ。
 は〜い。

何という生ぬるい会話だろうか。
「飼い」と「野良」にはその境遇に天と地ほどの差があるとはこの事だ。
野良の仔なら姉妹で腐った生ゴミを奪い合う生活なのに、この飼い仔実装達ときたら菓子を齧りなが
ら「まあ綺麗」なのだから。
野良達の羨望と憎悪の眼差しも当然だろう。

 テエッ!?
 テチャア!!
 テチィー!!
 デエ!?

キャッキャウフフの花園に、いきなり何かが投げ込まれ家族を驚かせる。
次に家族を襲うのは、脳にダイレクトに突き刺さるかと思われるほどの悪臭。
糞だ、まごう事なき実装の緑糞だ、しかもドえらく臭い。

 テヂュゥ!・・・

再び投げ込まれた糞塊が、悪臭に嘔吐して蹲っていた仔実装を直撃する。

「クリーンヒットデスw デェ〜ッププププw」
「だっ 誰デス!? こんな事をするのは誰デス!!」

飼いの親実装が慌てて周りを見回すと、フェンスの向こうで大笑いする託児親実装と目が合う。
犯人はこの薄汚い野良かと、ようやく理解すると一気に頭に血が上る。
飼い親実装は残った姉妹に糞まみれになった仔の救出を言いつけると、お上品な実装服をヒラヒラと
なびかせて門扉の実装石専用出口を走り出て来た。

「なんて事するデス! この薄汚い野良めがデス!!」

肩から提げた実装石の顔型のポシェットからデスゥタンガンを取り出すと、鼻息を荒げて託児親実装
に詰め寄る。
ご主人様からいざという時の護身用に与えられた、実装石用のスタンガンだ。
仔実装達もフェンス越しからテチテチと応援の大合唱だ。

 ベチョリ! 「デゲッ!?・・・」

憤然と走り寄る飼い親実装の顔面を、てんこ盛りの糞玉が襲う。

「デッ・・・デブプベェ! デブハァ・・・ くっ 臭いデ・・・デゴォ!?」
「「「 ママー!! 」」」

蹲る飼い親実装の顔面に、今度は託児親実装の蹴りがお見舞いされる。
さすがに百戦錬磨のこの糞蟲相手では、例え武器があったとしても分が悪い。
ひっくり返ったところを、更に、更に、更に、更に、更に、これでもかと喰らわせる。
完全に戦意を喪失した飼い親実装はデスゥタンガンを取り落とし、デヒィデヒィ仰向けに喘ぐばかり
で、もはや手も足も出ずに出るのはブリブリと糞ばかりだ。

「デェ〜ピャッピャッピャ!! この高貴なセレブ様である私に歯向かうなんて愚か者デスw」
「デヒ・・・ もう許して欲しいデズゥゥ」
「おや? これはなんデス?」

知らぬが仏で強気に出られた託児親実装が、今更ながら地面に転がるデスゥタンガンに気づく。

「そ、それは・・・」
「これは飼い実装の武器デス? どうやって使うデス?」
「お、おおお教えたら返してくれるデス? 無くなるとご主人様に怒られるデスゥ」
「お、おおお教えなかったらどうなるか解ってるデス? デェップップップww」
「「「 ママー! 逃げてテチー! 」」」

逃げるも何も腰が抜けて立つ事も出来ない飼い親実装。
こうなってはもはや選択の余地も無い。

「〜〜〜なるほど、使い方は解ったデス。では約束通り返してやるデス」
「ど、どうもデス。ンデババババババババッッ!!!!!!」
「そんなに喜ばなくてもいいデプwww」

喜んでいる訳では無い、受け取ろうと差し出した手にデスゥタンガンの電撃を喰らったのだ。
哀れな飼い親実装はとうとう白目を剥いて地面に突っ伏す。

「デッヒョ〜〜w これは凄い威力デスw」
「マッ・・・ママーー!?」
「何するテチー!」
「ママおきてテチー!!」

仔実装達の呼びかけも空しく、母親はヒクヒクと痙攣するだけ。

「おやおや、だらしないママさんデスw オバチャンが起こしてあげるデスw」

 バチバチバチバチ!! バチバチバチバチバチバチ!!

「「「 マァマァーーーッ!? 」」」

託児親実装は失神している飼い親実装の頭巾を剥くと、その頭皮にデスゥタンガンを押し当てこれで
もかと電撃をねじり込む。
飼い親実装にしてみれば堪った物ではない、失神と覚醒を幾度も強制的に繰り返させられ、バタバタ
暴れる様はそれこそ釣り上げられた魚だ。
白いはずの下着も緑色に染まってパンパンに膨らみ、物凄い勢いで中身が溢れ出す。

 ゲボッ ゲボボボ! ゴポ・・・・

遂にはガボリと血を吐いて、ひと跳ねした後は空しく電撃の音のみが響く。
繰り返しの電撃で、とうとう偽石が割れてしまったのだ。

「マッ・・・ママーー!! マァーマァーーーッ!!!」
「このクソノラーッ!! ぶっころしてやるテヂィー!!」
「テチャァァ!? もうやめてテチィィィ!!」

仔実装達はフェンスをペスペスと叩いて抗議するが、割れてしまった偽石はもうどうにもならない。

 バチッ  「ヂッ!!」
 バヂッ  「ヂュワッ!!」
 バヂヂッ 「ヂュギィッ!!」

「デッピャッピャッピャw 躾のなってない仔達デス。上流階級のワタシが躾してあげるデスw」

託児親実装は振り向くや否や、フェンスに群がる仔実装たちにまでデスゥタンガンをお見舞いする。
親とは違い仔実装の体格でこれはキツ過ぎる、3匹のうち2匹はゴポゴポと血を吐いて、あっと言う
間に両目を白く濁らせてしまう。

「デピャ〜w 親子そろって死んでしまったデス。事故では仕方ないデス〜www」
「せっかくコレを返そうと思ったのにデス、でもこれでは返す相手が居ないデスw ついでにこれも
 頂くデプw デプ〜ップップップwww」

何が仕方が無いのだ、全て自分が撒き散らした惨劇ではないか。
もっとも、この糞蟲は最初から略奪目的で喧嘩を売ったのだ、この一家にしてみれば堪った物ではな
い。

託児親実装は嬉々として実装服を脱ぎ捨てると、飼い親実装から衣服とポシェットを剥ぎ取り、いそ
いそ着替えを済ませてしまう。
奪ったデスゥタンガンはポシェットの中にしまい、それを嬉しそうにポスポスと叩く。
思わず蹴り飛ばしてやりたくなるような笑顔で、だ。

「デプw これで更にワタシのセレブ度はアップデスw それではそろそろ、あの奴隷の待つ豪邸に
 帰ってやるとするデス〜w」

     ・
     ・
     ・

仔実装はあせりまくっていた。
この安アパートの住人、アキラが虐待派であると気づいたものの、いざ逃げようとしたその段になっ
て外に出られない事に気づいたからだ。
プリンまみれで「まんまと奴隷に飼われてやったテチ」と喜んだ記憶など消し飛び、今では何とか外
に出られる場所は無いのかと半狂乱で探し回る。

「テヒィ テヒィ テェ・・・ ないテチ。おそとにでるトコロがどこにもないテチィ・・・」

当然ながら、身長10cm+α程度の大きさの仔実装が、人間が使用するドアや窓を開け閉めできる
訳など無い。
かと言って、ネズミの様に身軽な訳でも無い、ハエの様に飛び回る事も無く、ゴキブリの様な登坂能
力も無い。
脱出に必要な身体特性も、それを補う知性も、何も無い。
要するに、何も出来ないのだ。
緑糞をひり出す以外に何も出来ないただの糞蟲が実装石なのだから、当然と言えば当然だ。

ただ、糞蟲は糞蟲故に「生」にしがみつく事に関しては必死だ。
一番最初に玄関に行き、右手が砕けるまでドアを叩いてみた。
次に台所兼リビングを駆けずり回り、蕎麦を被っている小山がこの部屋の住人だと理解して再び脱糞。
その次にユニットバスに辿り着き、薄暗い中をあてども無く彷徨ってみる。
しかし、どこにも出口は無い。

「テチャァ〜! このままでは殺されてしまうテチャ!? こうなったらワタチの『みりょく』でキ
 チガイ奴隷ニンゲンをメロメロにするテッチュン!」

 テッチュ〜ン! ・ ・  ・   ・    ・      ・

何も考えずに、とにかく媚び発動。
お目々をキョトンと小首をかしげ、右手は可愛いでしょ?と口元に添えて、両足を揃えて少し恥ずか
しげに体をよじって、テッチュ〜〜ン♪ アタチかわいいテチィ♪
全身全霊、会心の媚!!
・・・しかし、当然ながら周囲には何の反応も無い。
慌てふためいてお出迎えする奴隷もいなければ、その脳内の美貌と魅力と気品を称える拍手も無い。
ただかすかに、通りを走りゆく自動車のエンジン音が聞こえただけ・・・

 「テッヂュアアアーーーーッ!!! むしするなテヂイイイイイッッ!!!」

自らの理不尽さも省みず大激怒する仔実装。
ブッリブリと緑糞をひり出しながら、アキラの倒れている台所兼リビングに向って走り出す。
実装石の単純な脳みそは、怒りによって恐怖がかき消された状態なのだ。
あのクソ奴隷に正義の制裁を加えてやろうと言う魂胆なのだろう。
願わくば、返り討ちにあって粉微塵と散って欲しいところだが。

 トテトテトテトテトテトテ・・・・・

目指すべき小山が、蕎麦を頭から被ったアキラが見えてくる。
走りに走ってようやっと遠路はるばる奴隷ニンゲンの元に辿り着く。
テヒィ、テヒィと、息を切らせてまさにご苦労様だ、そのまま死んでしまえばいいのに。

「テヒィ テヒィ このキチガイのギャクタイニンゲンめテチ! えらばれたセレブであるワタチが
 せいぎの『せいさい』をくわえてやるテチ!」

ところが「加えてやるテチ」と言ったものの、仔実装の身長では横たわったアキラの顔をただただ見
上げるばかり。
これでは制裁を加えるはずの相手を仰ぎ見て、頬にぺちぺちと触るのがやっといった感じだ。
自尊心の強い実装石には少々癪に障る体勢だろう。
当然ながらこの糞仔蟲には我慢がならず、何かイイ物はないかと辺りを見渡す。

「チャ? これテチ、イイものがあったテチ。これにのってテチ・・・」

仔実装が見つけたものは、コンビニの店員が気を利かせて入れてくれたアルミパックに入った栄養補
助食品だ。
その心遣いも託児騒ぎで無駄になり、今となっては糞仔蟲の道具に成り果てている。

アルミパックは中身が入っていて重量はあるものの、滑りやすい材質のおかげで何とか仔実装でも動
かす事は出来るようだ。
それをズリズリと押してくると、アキラの肩口に寄せて踏み台代わりにするつもりらしい。
テッコラショとよじ登り、肩口から胸元へよたよたと四つん這いで歩き喉元に辿り着く。

「チプw チプププw このクソ奴隷めテチ! ちょうサイコーセレブのワタチがせいぎの『せいさ
 い』をくわえてやるテチ!!」
 ブリブリ!

「『ず』がたかいテチ!! 『ひかえおろう』テチィw」
 ブリブリブリッ!

アキラの喉元に立って喚き散らす糞仔蟲。
仰向けに倒れたアキラの顎をペシペシ叩きながら絶好調だ。

おまけに総排泄孔も絶好調、緑糞がダラダラと首筋を流れ落ちる様はまさに地獄そのもの。

「クソ奴隷のぶんざいで、こうきなワタチをムシしたつみはおもいテチ!」
「ワタチをかわせてやっているおんをわすれるようなクズには『せいさい』テチ!」
「ありがたく、ちょーだいするテチw」

左手で服の裾を捲る。
右手を下着に突っ込み〜・・・
たんまりと糞をとりだす。
ベチョリ!
それを顔面に投擲。

「チピャァ〜www いいきみテチw ワタチじきじきのおしおき、ありがたくおもうテチw」

2発、3発、4発、仔実装の手にできる量とは言え、これはあまりにも無残な仕打ち。
そうこうする内に5発目がアキラの鼻に命中し、間の悪い事に鼻腔に入ってしまう。
数瞬の後、昏倒していたはずのアキラだが、さすがに生理反応で咳き込み体が跳ねる。

「チャ!?・・・ おちっ おちるテチャ・・・・ジュギッ!!」

振り落とされた仔実装はまっ逆さまに転落し、その激痛に目を剥けば右手はおかしな方向に曲がって
いる。

「いたいテヂィィ! おててがっ! ワタチのおててがケガし ヂュギュア゛ッ!?」

今度はむせ返り跳ねるアキラの背中が仔実装を押しつぶす。
手が折れたなどと痛がっている場合ではなかったのだ。
踏み台にしたアルミパックの栄養補助食品ごと下敷きになった事が幸いし、全身ヒキガエルになる事
は免れたものの、その両足はプレス機にかけられたかの様にペチャンコになってしまった。
これではまるで、緑のちんけな布靴が張り付いた、足の皮だけがぶら下がっている様なものだ。

「ヂギィィィィーーー!! いたいヂュア! いたいテヂいたいテヂいた・・・・!?」

 ゴドンッ!!

「テッ!! テヒッ!!・・・・」

最後には、咳き込んだアキラが無意識のままに放り出した右手が仔実装の直近を襲う。
仔実装にしてみればまるで巨石の落下そのもの、間一髪で接触を免れた形だ。
恐怖のあまりあらん限りの糞を振り絞り、ヌルヌルと糞噴射エンジンで数センチばかり後退する仔実装。

「テチャ! テッ! テッ! しぬテチャ・・・しぬかとおもったテチャァ!?」

死ねばいいのに。

「こっ このクソニンゲンッ・・・ おぼえてろテヂィ!・・・」

この期に及んでこんな言葉を吐く元気がまだあるのか。
死にぞこなった仔実装は、唯一満足に残った左手で這いずり、必死でアキラの側を離れる。

「クソニンゲンめテチ。こんかいは『ひきわけ』だったテチ」
「つぎはぜったいに、ゆるさないテチ!」
「ギッタギッタのズタボロにしてやるテチ!・・・」

散々と寝ぼけ散らかした事をほざきながら這いずる事、約30分ばかり。
しかしながら、ずるずると伸びた血肉と糞の川はやっとの事で1m程度。

「テェ・・・ ここまでくればあんしんテチ。あのクソ奴隷め、おぼえてろテチ・・・」

見れば目の前には自分が入ってきたコンビニ袋が落ちている。
昏倒したアキラが他の商品と共に引きずり落とした物だ。

「イイところにイイものがあるテチ。テ・・・つかれたからココで・・・ねる・・・テチュ・・・」
「バカニンゲンめ・・・・おぼえてろ・・・テチ・・・・ギッタギタの・・・・・・・・zzz」

仔実装は最後の力を振り絞りコンビニ袋の中に潜り込むと、意識を失うように寝入ってしまう。
とりあえずは隠れ家のつもりらしい。
が・・・、人間と実装石の体格差以前に、仔実装の復讐は恐らく無理であろう。
なぜならば、仔実装は一時期はたらふく腹を膨らませたものの、折れた足の回復と広大な室内探索で
その摂取したはずの栄養の殆どを消費しきっている。
そこへもってきてこの瀕死の重傷だ、すきっ腹の現状では到底回復はおぼつかない。
復讐どころかこのまま仮死、そしてパキンの可能性が大だろう。

     ・
     ・
     ・

昼もとうに過ぎた頃、糞仔蟲を託児した親実装は例の鉄階段の前に突っ立っていた。
平伏して出迎えているはずの奴隷人間がいないからだ。

「どこデスッ!? 奴隷ニンゲ・・・デ?」

「ちょっとぉ、そこどいてくれないかなぁ〜?」

と、怒りをぶちまけようとした所に、拍子抜けする声を掛けられて戸惑う親実装。
振り返れば背後には人間が立っている。
ハーフコートにジーンズ姿の、二十歳前後の可愛らしい女性だ。

「このアパートに住んでるお客さんに用事があるのよね〜。なのでこの階段を上りたい訳なのよ」

 デー? デスデスデッスー!

「あはw ごめんね、リンガル通さないと何言ってるかわかんないの。見る気も無いけどw」

 デズデズデスァ゛ー!

茶化すように話しかける女性はジーンズのポケットに手を突っ込むと、その手をグーに握ったまま親
実装の前に突き出す。


「じゃあねぇ、そこどいてくれたらコレあげちゃおっかな? どいてくれる?」

 デア? デースデス!!



「商談成立ー! 欲しかったらとってきてね? ほぉーら!」

何を言っているか解らないはずなのに何故か勝手に商談成立。
そして何故か話は通じていて、女性が道路の向こうに投げた「何か」を探しに慌てて駆出す親実装。

女性はクスクスと笑いながら階段を上り、独り言を漏らす。

「見つかるとイイね〜、『空気』w」





 ピンポーン! ピンポーン!

アキラの住まう居室にドアホンの呼び出し音が響く。
先程の女性がアキラを尋ねて来たのだ。
だが当然ながら、その来訪に応じる者はいない。
何故なら、その住人がコンビニ弁当と実装糞にまみれて昏倒しているのだから。

 ピンポーン!

「あれ〜、困ったなぁ。お客さん留守なのかしら?」

 ドンドンドン!

「おはようございま〜す! 実装ペットショップの『グリーンハウス』で〜す!」

 ピンポンピンポン! ドンドンドン!

「お客様にご注文頂いた・・・あら?」

何の気無しに手をかけたドアノブが、ガチャリと開いてしまった。
高熱で徘徊していたアキラが鍵を掛け忘れた為だ。

「え〜と、あの、こんにちは〜? お客様〜・・・・臭っ!!」

そ〜っとドアから顔を覗かせたものの、室内に立ち込める臭気に思わず仰け反る女性。
仔実装があちこちにたっぷりと練り付けた緑糞の臭気が、これでもかと顔を襲うのだから堪らない。
この女性が実装石を相手にするペットショップの店員でなければ、その場にうずくまって嘔吐してい
ただろう。

なんとか気を取り直して、再び中の様子を伺ってみる。
散乱した部屋の奥に、人間らしきものが横たわっているが、どうも昼寝という様子でもないらしい。

「これは・・・ただ事じゃ無いわ・・・」
「実装ペットショップの『グリーンハウス』です、お邪魔しまぁ〜〜す」

あちこちに飛び散っている糞を踏まぬよう、そろりそろりと部屋の奥に歩を進める。
そこにはどことなく見覚えのある風体の男が、顔に緑糞を塗りたくって飯粒と蕎麦にまみれて横たわ
っている。

「・・・激しく謎だわ、この人は・・・」

確かに何が起きたか解る者など誰もいないだろう。
女性は恐る恐る〜 と言うより興味津々でアキラを揺さぶってみる。

「もぉしもぉ〜し? 『グリーンハウス』の者ですよ〜? お客さん生きてますかぁ?」

女性はアキラの手を握って呼びかけてみる。
傍から見れば、臨終間際の病人を励ましているような光景だ。

「あら? 凄く熱い・・・ 風邪? 風邪で倒れたんですか? ・・・お返事は?」

お返事は無い、当然だ。
女性は側に落ちていた風邪薬を拾い上げ、部屋の惨状を見渡す。

「う〜ん・・・しょうがないなぁ・・・」



     ・
     ・
     ・
     ・
     ・

バタンというドアが閉まる音が聞こえる。
朝方、お隣さんが出勤する物音だ。

アキラはぼんやりと天井を眺める、いつもの寝室の見慣れた天井を。
その天井を眺めながら、いつもとは違う体の具合に気づく。
なんだか体がだるい、頭も重い。
そうか、そういえば風邪をひいていたっけ、と。

「そうだ・・・風邪薬を買いに行かないと・・・・・・・いや・・・買ったような?・・・・」

やはり記憶が定かで無い。
高熱はもとより、激憤して昏倒したのは2日前の夜、約1日半も寝込んでいたのだから無理も無い。

「そういえば買ったんだ・・・コンビニで薬と・・・食べ物を買って・・・・」
「何を買ったっけ? ・・・・カツ丼と・・・蕎麦と・・・・・緑の・・・プリン・・・」
「・・・緑のプリン?・・・・・・・」



「ぶっ殺すぞ糞仔蟲がぁっっっ!!!!!!」



まるでフラッシュバックする様に、昏倒直前の記憶が甦る。

ガバリと跳ね起きるとベット脇のバールを掴み、ドカドカとリビング兼台所に殴り込む。
頭がガンガンと割れる様に痛むが関係無い、と言うよりどうでもいいのだ。
赤鬼の様な形相で室内を睨み渡すが、敵と探す仔実装の姿はどこにも見当たらない。
それどころか、散乱した弁当も実装糞も、何もそれらしい痕跡が無い。
一転してキツネにつままれた様な顔で、呆然と立ち尽くすアキラ。

ふと見ると、ちゃぶ台の上に開封した風邪薬が置いてあり、その下に何かメモ書きが置いてある。

「何だコレ?」

  実装ペットショップ・グリーンハウスの蒼井と申します。
  お客様にご注文を頂きました実装石を入荷しましたが、お引渡し期日を過ぎてもご連絡が
  ありませんでしたのでお伺いしました。
  今週末までお預かりいたしますので、お風邪が治りましたらご来店ください。

ここまで読んでアキラは硬直した、そして理解した。
確か自分は糞仔蟲を殴りつけようとして、それから記憶が無い。
そしてよく考えれば、今の姿はTシャツにトランクス、寝ていたのはベットだ。
あの女性だ、あの女性店員がわざわざ世話してくれたのだ。
今度は赤鬼よりも紅い顔で硬直するアキラ。

そして最後の一文で我に返る。

  P.S.
  仔実装はゴミと一緒に指定ゴミ置き場に出しておきました。
  トドメを刺すならお早めに♪

耳を澄ませば外でディーゼル音が聞こえる。
時計は朝の8時を回ったところ、ちょうど近所にゴミ回収車が来る時間だ。

「ゴ、ゴミ回収車!? 畜生っ!! 機械なんかにあの糞仔蟲を殺されてたまるかっ!!」

「ぬぅをををををーーーっっ!!!!!」

アキラは玄関のサンダルを引っ掛け外へ飛び出す。
ガランガランとやかましく鉄階段を踏み鳴らし、雄叫びを上げて目と鼻の先のゴミ回収車に走る。
この寒空の朝に、Tシャツとトランクス姿で、バールを持ってだ。

「なに、あんた?・・・ ひぃっ!!」
「ちょっ! ちょちょちょっ! 落ち着いて!! 冷静に!!・・・」

「ふーーっ! ふっーーっ! ・・・・俺の部屋のゴミ袋はどれだ・・・・」

回収業者の2人は腰を抜かさんばかりに驚いて、どれでもお好きにどうぞとゼスチャーで示す。
そしてアキラが探す目的のゴミ袋はすぐに判別できた、実装糞のゴミと共に着ていたはずの服が出て
きたからだ。

「いない!? どこにも入って無いぞっ!?」

しかし憎むべき仔実装はどこにも見当たらない。
ゴミ袋の容量に比べて入っているゴミは半分程度だから、出されたゴミ袋はこれ一袋だけだと推察で
きるのだが。

「・・・・・穴だ・・・ 何かが引き裂いた・・・食い破った後がある。ここから逃げたのか?」

「に、兄さん。もういいかな?」
「事情はよく判らないけど、俺達も仕事があるからさ? ね?」

アキラはそちらに顔を上げて二人に尋ねてみる。
さすがに睨みつける真似はしないが、それでも険しい表情は消えていない。

「この袋に、仔実装が入っていませんでしたか? とびっきり糞蟲の」

「え?・・・ ああ、悪さをした実装石を探してたのかい? 俺はてっきりアレかと・・・」
「そう言えば、大人の実装石がここを離れていったけど。もう居ないよなあ」

ようやく、薄っすらと事情が飲み込めてきて安堵する回収業者の2人。
しかしアキラはそれどころでは無い。

親が、仔実装の親が来ていた。
ゴミと一緒に家の外に出された仔実装を、託児が失敗したと判断して親が連れて行ったのだろう。
つまり逃げてしまった訳だ、これでは腹いせをぶちまける相手がいないではないか。
うっかりと託児をされた挙句、一撃喰らわそうとして昏倒し、挙句にアパートに一晩泊めた上で逃げ
られてしまったのだ。
虐殺派にしてみれば、耐え難い程の屈辱。

「!!!!!・・・・ く・・・ごめんなさい、お仕事邪魔してすみませんでした・・・・」

アキラは震える手を何とか隠し、回収業者に謝罪を済ませる。
そして極々短い帰途の途中、アキラの脳裏を様々な考えがよぎった。

仔実装は本当に逃げ切れたのか?
女性店員の書置きに「止めを刺す」とあったのは、既に半殺しになっていたのではないか?
いや、仮に五体満足でも仔実装一匹でウロウロは出来ない、犬猫や同族に捕食されて終わりだ。
きっとそうだ、女性店員に半殺しにされた仔実装は、ゴミ漁りに来た同族の成体に喰われたのだ。
親が迎えに来たにしては時間が経ちすぎている、喰われたのだ、そうだ、そうに違いない。

・・・願望にも似た推察は、アキラの知らぬ現実とは大きく外れていた。
確かにそうなった原因は違えど、仔実装が半死半生でコンビニ袋で寝ていたのはご存知の通り。
だが、ある出来事が仔実装の運命を大きく変えてしまう。
女性店員が部屋を片付ける際に、中身が漏れ出した栄養補助食品やコンビニ弁当の残飯を、無造作に
コンビニ袋に突っ込んでまとめたのだ。
ゼリー状の栄養補助食品に浸かった仔実装がどうなったか、これは言わずともお判りだろう。

仔実装のキズは癒え、時間を掛けてゴミ袋を食い破り、無事に脱出を図っていた。
仔実装は五体満足で生きているのだ、逃げ切ったのだ。

 ズル〜ペタ・・・ ズル〜ペタ・・・

アキラが引きずるサンダルが、力無く足音を鳴らす。
その足音がアパートの鉄階段の前でピタリと止む。

 テッチューン!

鉄階段の前に、一匹の仔実装が、立ってた。
あいつだ、逃げたはずの仔実装だ。
右手を口元に寄せて小首をかしげ、小汚い顔に赤緑の目を爛々と輝かせて。
私を飼う事を許可するテチ、いや飼う事を命令するテチ、多分こんなところだろう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アキラと仔実装の間に、しばしの沈黙が訪れる。
そして、わずかに開いた唇から漏れるかすれた声。

「・・・お前、メガトン級の馬鹿だろ?・・・・」

 テチィ?

アキラはバールの鉤先を仔実装の実装服の裾に掛け、ひょいと宙空へ放り上げる。

 ヒュバ! ババババババシュッ!

次の瞬間に、目にも留まらぬバール捌きで宙空の仔実装を細切れに粉砕してゆく!
まさに髪一筋も残してなるものかとばかりに。

「仔実装は、糞蟲だ!」

実装服と思わしき小さな切れ端がひらりと一枚。
それを靴族ですり潰すアキラ。
逃がしてしまったと悔やんだ怨敵は、今や跡形も残らず四散した、終わったのだ。
頭が割れるような頭痛に襲われながら、アキラはぶはぁと大きな息を一つ吐く。

 パ・・チ・・・パチパチパチ・・・

え?、と振り向くと、離れた場所から先ほどの回収業者2人が拍手を送っている。
どうやら一部始終を見ていたのだ。
生ゴミを散らかす実装石は回収業者にとっても敵、思わず拍手を送った訳だ。
アキラははにかみながら頭を下げると、頭痛とは裏腹に清々しい面持ちで鉄階段を上った。
これでやっと落ち着いて、しつこい風邪の養生ができる、と。

こうしてアキラの最初で最後の託児被害は幕を閉じた。
厄介ごとは、すべて終わったのだ。
表面上は・・・




「デス・・・」
「テチ・・・」

「ワタチのいったことはホントだったテチ?」
「ほ、本当だったデス! 危ないところだったデス!」

一組の親子が物陰から姿を現す。
飼い実装用のお上品な格好の成体実装と、全身を糞や残飯で汚した仔実装が。

何を隠そう、こやつらこそが本物の託児親実装と仔実装だったのだ。

「お前があの奴隷ニンゲンをキチガイニンゲンだと言うから、試してみてたデス」
「あたまのいいワタチはウソはいわないテチ。ママはいのちびろいしたテチ」

「念の為に、野良の仔を囮にしてみたデス。やっぱりワタシは天才デッスw」
「『てんさい』のママのコのワタチも『てんさい』テッチw」 

「デププププw」
「チププププw」

話の流れはこうだ。
親実装は相変わらず鉄階段を上れず、アパートの周りをウロウロしていた。
そんな理由で、無事に逃げおおせた仔実装は、当然ながらすぐに親実装と再開を果たす。
仔実装は事の一部始終を報告し、親実装は半信半疑ながらも万が一を考えて、野良の仔を『飼い実装
になれる』とたぶらかしてアキラの前に立たせてみたのだ。
結果は先程の通り、「瞬殺」だ。

「奴隷ニンゲンなんて掃いて捨てるほどいるデス。わざわざキチガイニンゲンに関わらなくても、ワ
 タシの素晴らしい魅力で他のドレイ人間共はメロメロデスw」
「メロメロテッチw」

「ワタシの魅力がわからない様な馬鹿ニンゲンは無視して、次を探すデス〜w」
「さがすテチ〜w」

なんたる事か。
メガトン級の馬鹿どころか、このとびっきりの糞蟲親子は狡猾にも未だ健在だったのだ。
神も仏も無いとは正にこの事か?

「こうえんの、おうちの『ひじょーしょく』はどうするテチ?」
「ウンコたれ蛆はほおっておくデス。ほったらかしなので、どうせ死んでるデスw」
「ほうちテチw」
「さあ、行くデス」
「いくテチ」


一組の親子が朝の住宅街を歩く。
親が飼い実装の格好をしている為、少なくとも人間から危害を加えられる事は無いだろう。
カツ丼のカツがジューシーだった、飼いの仔実装は活きが良くて旨かった、そんな他愛も無い会話が
いつまでも続く。

この生活力旺盛で悪運の強い糞蟲親仔が、この先どうなるのかは誰にもわからない。
願わくば、偽石が凍りつく様な死の翼が舞い降りん事を・・・



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