ニセモノの詩(うた)、ホンモノの唄(うた) 第五幕 〜歓喜の詩、敗北の唄〜 敗軍の行進曲(マーチ) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「諦めるテチィ♪ オマエのバカ親は、バカなりにジブンがノラに相応しいクズだと気が付いたテッチュ♪ そもそもオマエの事よりジブンがタイセツだから、助ける気なんかサラサラなかったテッチュン♪」 タラコはコロの銃口を気にする事もなくなり、悠々とベスの髪に手を伸ばす。 タラコが後ろ髪の束を掴み引っ張り出すと、ベスは甲高い声で最後の抵抗を試みる。 「テェ!! やめるテチ! や・やぁ!! 髪かみカミカミカミカミカミ… ビィ!ビィギャァァァァァァァァァ」 だが、釣り下げられたベスには為す術はなく、 髪束を引かれ、サザエの持つ頭巾に吊られている為になかなか抜けずに綱引き状態になって苦しむ。 「ギビッ、ペプッ、プキュゥゥゥゥゥゥゥゥ」 タラコに髪を引っ張られ、サザエに捕まれている頭巾の顎紐に締められ、顔が鬱血して赤黒く変色する。 「ボゲェ! ブギュゥゥゥゥゥゥゥゥ…」 宙吊りの為に掛けた力が逃げてしまい、仔実装の力ではそう簡単には抜けない為に、 タラコは足をベスの脇腹に足を蹴り入れ、足で胴体を押さえながら引っ張り出す。 「ゲブッ! ゲブッ! ギュブッ!」 サザエが程よく窒息寸前で頭巾を離した為に、脇腹にタラコの足を差し入れられていたベスは、 タラコの足によって激しく地面に叩き付けられる形となり、 ベスは、そのまま足で脇腹を踏みつけて固定して、頭を持ち上げるように髪を引っ張る。 「コブッ! ゲブッ! ビグブッ! ビェェェェェェェェ…」 引かれる度に脇腹につま先が刺さるようにめり込み、嘔吐物をブッ、ブッと断続的に噴き出させ、 ベスに地獄のような時間を続かせ、やがては終わるなら早く終わらせてくれ… という気にすらさせる。 宙づりから一転、固定された為に仔実装の力でもベスの頭皮がメチメチと伸び毛根が引き出されてくる。 早く終われと諦めはしても感じる痛みは別物である。 片手を頭に、片手を脇腹を踏みつける足に伸ばして、汚物を上下から撒き散らして反射的に抵抗をする。 「ビギィィィィ! ブギャッ! コブッ! デギュゥゥゥゥゥ!!」 「クソムシのクセにナマイキテッチャァァァァァァ! (ブチブチブチブチッ!) テチュ!!」 後ろ髪の束は何百本かは途中で千切れ、何百本かは毛根が付いたまま抜けていたが、 最後の抵抗をする数百本が地毛ごと一気に引き千切られて、タラコが尻餅をついた。 嘔吐物にまみれた顔で、ベスは尻餅をついたタラコの掴む髪束を指差し絶望の悲鳴を上げた。 「ブギャァァァァ!! 髪、髪、ワタシの髪… テェェェェェェェェェェェェェェェェェ」 「デプププ」と響く大勢の笑いにもかき消されない悲鳴。 目は既に白く濁りだしていた。 ベスへの制裁は、観衆に見せつける為に狂気を増し、背中に馬乗りになると、 今度は髪の束を少なく掴んではリズミカルに引き抜き、悲鳴を上げるベスの顔前に捨てる。 「ビジャァァァァ… 髪テチ、ワタ… ビェェェェェェ… これもワタシのか… デビィィィィ…」 打たれ弱い飼いの仔実装には充分な制裁。 その哀れな泣き声に観衆もヒートアップしていく。 取り囲んだ野良達から次々と歓声が飛び出す。 「もっと醜くするデスゥ!」 「そこテチィ! もっと抜くテチュ〜♪」 自分達で何かするわけではないし、ヤジを飛ばしている間は他者を使役している感覚に浸れるのもあり、 そうさせて手出しをさせない間は、その野良全てを味方にサザエたちの思いのままに出来る。 そうしている間に、いつしか所々に、それぞれ別の野良達による囲いが発生していた。 すでに精神がすっかり崩壊して投げ出されたチコとリンは、 それぞれ、まるで道端に置かれた美術品の展示物のように次々と野良の列が見下して眺めながら通り過ぎていく。 美術品と違うのは、通り過ぎるたびに嘲笑の言葉が投げかけられる事だ。 その嘲笑に晒されながら、リンは汚れてしまったとは言え飼い実装の証であるオリジナル実装服を、 タイコに剥ぎ取られ、タイコの脱いだボロ服を叩き付けられて放置された。 ただ、鳴き続けるだけのリンだったが、服を叩き付けられた瞬間だけ、 「ホヒェ〜♪」と、実装石的に実になまめかいし嬌声に変わった。 2匹共に、今は嘲られる見世物となっている事が理解できない事が救いとなっていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 別の輪では、ベスが連れていたリンの所有物だったウジニがイクラの手によって裸に剥かれていた。 「レ! レレレッ!? 何をするレフ? ここはお風呂じゃないレフ。 蛆チャン、おべべ脱ぐのイヤレフー」 服を奪われたウジニは乱暴に放り出され、 イクラはさらにすでに死体となっているウジサンからも服を脱がせ出したて居た。 「ベフッ!! レェェェェェン! 痛いレフ! 寒いレフ! お姉チャン、蛆チャン大変レフー! 早くなんとかす… レフゥ?!」 投げ出され痛みに身悶えた蛆実装は、家族と思い込む”飼い主”たる仔実装に助けを求めようとして、 顔を上げた先に、数多くの目が嬉々として自分を眺めているのに気が付いた。 ペット実装の所有物として過ごした蛆実装は、 丸裸の肉体を捩って、その短すぎる手足をピョコピョコと動かして恥じらいの様子を見せる。 「レレレ? 蛆チャン見られているレフ 恥ずかしいレフ。 おべべレフ、おべべレフ、おべべナイレフ…」 そこに服を剥かれたウジサンが投げ出される。 ウジサンは、ベスが乱暴に引っ張った事でとっくの昔に死体となり、 投げ出された衝撃で、緩くなった眼底から目玉がドロリと体液と共に垂れ落ちている。 ウジニは投げ出されて動かないウジサンに身を寄せて震え、気を紛らわす為に話し掛ける。 「新入りチャン、お前もハダカレフ… 寒いレフ 何か言うレフ… 新入りチャン? こっち向くレフッ! 話しかけたら、そっちを向いてお返事と何度も教えられたレフ! 新入りチャン、喋らないなら絶交レフ!」 「「デピャピャピャピャ!!」」 死体相手に怒り出す蛆実装に、どっと爆笑が起きると、ウジニは目を丸くしてビクンと身体を硬直させる。 「笑うレフ? 蛆チャンがお裸だから笑われたレフゥ? あっちもこっちも笑うレフ! お姉チャーン、ドコレーフー」 ウジニは、やがてガタガタと身体を震わせ、キョロキョロと左右を見てはジョロジョロと糞を漏らす。 そこに、3匹の蛆実装が寄ってきた。 「「レフレフレフ…」」 大きな物に囲まれ嘲られる蛆実装は、同じ蛆実装を見つけて安心した。 しかも、1匹はチコの蛆実装ウジイチの服を身に纏っていた。 その見知った蛆実装が居る事もあり、身を寄せて恐怖を和らげようとしたウジニは、 近寄って漂う匂いに涙を浮かべて頭を振った。 「レッレー レー レー! ワタシレフ ワタシレフ おべべとられちゃったレッフ。 怖いレフ 周り怖いレフ ミンナ笑うレフ 助け… レヒィィィィィ オマエ達、臭いレフ!」 だが、それでも上から数多くの目に見下され逃げ場のないウジニは、 同じ蛆実装と身を寄せて恐怖を和らげるという本能に従うしかない。 この3匹も、自分と同じ境遇に置かれているのだと思って…。 「レーレー… 蛆チャンのお姉チャン来ないレフ… お前のお姉ちゃんも見えないレフ? こいつらも迷子レフ? ミンナでワタシのおべべ探すレフ。 それからお姉チャンを探すレフ。 急ぐレフ、ここは怖いレフ…」 3匹がジトっとした目で、寄ってきたウジニを見つめる。 「レレ?」 「レフ?レフレフ?」 「レフレフ…プニフー♪」 3匹はただ”レフレフ”と鳴き続けるだけ。 何を言っているのか、ウジニにはさっぱり判らなかった。 同じ蛆実装でありながら、ウジニと3匹ではまるで会話が成り立たない。 「新入り蛆チャンは動かないレフ。 こんな時に役立たずレフー。 それより、コイツらドコから来たレフ? レレ? どうしてお前もお話しないレッフゥ? いつもワタシより喋るレフ… 何を言っているかワカラナイレフ…」 そもそも、この脳味噌まで脂肪なサザエの3匹の蛆実装は、 殆んどの場合、呼吸をしたり、身体を動かしたりするついでに音が鳴っているだけ… 会話をしているわけではなかった。 「レフレフレフ…」 「レ!? 何レフ? オマエらヘンレッフ!」 ウジニは、思わず蠕動運動を逆にしてペトペトと後ずさりをはじめる。 3匹は丸々と弾力あるというより、栄養のない物をひたすら食い続けて肥えたブヨブヨの肉体を揺らし、 そのウジニを追いかけはじめた。 3匹にとって、普段共に過ごしていない蛆実装はただの玩具にしか見えなかったのだ。 「レ!? レ!? レレェ!!? 来るなレフ…」 必死に蠕動して後ずさりをするが、その速度は前に進むより遙かに遅い。 本来なら、ちゃんと直線を同じ状態で競争させたとすれば、 普段運動もして良い物を食べて健康なウジニならば、 あの薄暗く狭い家でのみ放置され、ブクブク太った鈍い3匹に追いつかれる事はないはずなのだ。 ドンドンと迫る鈍い3匹の異様な蠕動運動の姿に、ウジニは盛んに身を捩って方向転換を試みるが、 その余計で無駄な動きの間に、いとも簡単に追いつかれた。 「ヤメ ヤメ ヤメッ レレレ!! レピィー!! 尻尾はイタイレフ!!」 「レフ? レフフゥー♪」 認識力のまともに存在しない蛆実装から見れば、ナカマは玩具にして餌である。 「レフー レフー」 「レビャー!! これは蛆チャンのおてて! おててレフゥ!!」 尻尾から、腕から、腹から、3匹に好き放題に舐められ、突かれ、噛みつかれ、 必死に身体をくねらせて抵抗するも、すぐに噛みつかれては身を捩るウジニ。 「レッレレー♪ プニフー♪」 「レェー!! ポンポ 蛆チャンのポンポくすぐった…イタイイタイイタイタイレフゥー!!」 「レェー!! 蛆チャンタイヘンレフゥ 誰か助けるレフ… 見てないで助けるレフ」 「デプププ…ウジちゃんのクセにいっちょまえの言葉を話しているデスゥ」 「レ… レ… レレ… おてても…あんよも無くなったレフ。 お姉ちゃんみたいにあんよで歩きたかったレフ…」 「コイツ、ウジのクセにおしゃべりテチュ。 オモシロいからもっと醜く叫ぶテチー♪」 「動けないレフ… モウ イヤレフ… タスケルレフ タスケルレフ イマナラ オネイチャンモ ママモ オマエタチヲ ユルスレフ…」 「ホントウに良くしゃべるウジちゃんデス。 ウジちゃん如きに言葉を教えるのはイケスカナイデスゥ…」 外野の罵倒を受けながら、ウジニはやがては身を捩る体力も失い、ヒクヒクと痙攣し肉を内臓を喰われていった。 「レェー… オネイチャンノ オオバカヤロ…」 そう言いかけて口が動かなくなった頃には、ウジニの存在は半分以下になっていた。 そして、3匹が腹を満たしてゲップをする頃には、 イクラが、剥ぎ取ったペット蛆用衣装やリボンを1匹ずつに身につけさせる作業に掛かっていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そして、もう1つの囲いは、すっかり敗北感に支配され憔悴しきったコロがいた。 汗と土に汚れ、すっかりペットとしての風格を失ったコロは、跪き、見上げるように顔を上げて言い放った。 「デ…デェ… チコちゃん… リンちゃん… ベスちゃん…。 どうしてデ… どうしてデス。 ワタシ達が何をしたデスゥ? ワタシ達は、セレブちゃんになる為にガンバッテ…。 オマエ達のようなカワイソウな連中にも接してやったデス。 恵みもしたデス。 オマエ達をイジメてたのは別の連中デスゥ… ワタシ達じゃないデスゥ。 ワタシ達はちゃんとガマンしてやってたデスゥ! あの仔達にも守らせていたデスゥ。 それなのにどうして選ばれたワタシ達がこんな目に遭うデスゥ!!」 その言葉にはまだ、自分が格上の飼い実装である事を臭わせはしたが、 声の方は震え、弱々しく、突然降り注ぎ、全てを奪った理不尽な不幸への恐れが支配していた。 コロの見上げる先には、悠然と歩み寄り仁王立ちする理不尽の元凶が不敵な笑みを浮かべてコロを見下した。 サザエは、本当にそう思ってしまっているのだから、何の澱みもない。 「オマエがワタシのモノを奪ったからに決まっているデスゥ。 オマエの持っている物はワタシのモノだったハズのモノなのデスゥ♪ その服も、オモチャも、オベントウも、デスゥクーターも、ゴシュジンサマも、 ミンナ、ミンナ、ワタシに与えられたハズのモノなのデッス… 取り返してナニがワルイデスゥ?」 悪びれる様子も、下手に調子付く事もなく、当たり前の口調で、逆にコロに聞き返しすらした。 「デェッ!!ワタシはオマエなんか知らな… グベェ!」 コロが、尊大に自分を見下すサザエに思わず抗議の声を上げた矢先に、 サザエの足が顔面に叩き付けられ、コロは哀れに後ろに一回転した。 「デッデッ…」 自分の妄想で頭に血の上ったサザエは、転がされたコロが顔を上げる間も与えずに、 罵声を浴びせながら蹴りまくった。 「オマエタチの所為でワタシはこんな場所に居るハメになったのデスゥ!! オマエ達がここに居るべきなのに居なかったから、 ワタシがココに、オマエ達がゴシュジンサマに飼われてしまったのデスゥ!! コレを奪ったと言わずナニと言うのデスゥ? コレはカミサマに選ばれたワタシに対する重大な罪なのデスゥ!」 ボコ、ガスッ、ゲシッ… コロには、己の身を守る為の最後の手段だった抗議。 あれでもコロにとっては充分すぎる譲歩… 哀願のつもりだったが、 只でさえ生きる環境が違う相手に自分の都合を説いても、その倍、相手の都合を押しつけられるだけ。 ましてや、サザエは理性的な面に置いては完全に均衡を失った理不尽の塊。 コロに許されるのは自分都合の尊大な言い訳ではなく、完全なる服従以外にはなかった。 「デエッ! デギィッ! デギャッ! やめ、や… めっ やっ、デスゥ!!」 伏した者への容赦のない攻撃。 頭は腫れ、へこみ、顔には靴型に赤く、青く、あるいは泥で変色した。 流石のコロでも、もはや飼いの品や体裁もなく、無様に身を捩っては逃げようと勤めるが、 攻撃は、身を捩ったそばから背中に腹に、腕に、足にと蹴りが届く範囲に容赦がなく。 ついには、ケツを蹴り上げられながら、笑い見下し取り囲む野良達にまで手を伸ばして助けを求めた。 「テビッ、デギッ、テデッ… タ、タス、タ…ケ、スケテ…」 当然、堕ちに堕ちた同族に哀れみでも手を伸ばす者はこの場の何処にも居ない。 「「デプププ…」」 「デピピ…ブタが何か喚いているデスゥ♪」 「哀れテチ… いいきみテチュ」 「仔ゴロシのブタの末路デス」 世界が違う野良の独壇場で、飼い実装には奇跡以外に身を救う方法は1つしかない。 一見、理不尽な暴力ではあるが、実装石の世界では効率の良い追い詰め方だとサザエは導いていた。 その為に、蹴り方を途中から手加減するだけの余裕も持っていた。 最初に猛烈な責めで痛みを与え、途中からは力を抜いて手数を出す事で精神的に追いつめだしたのだ。 大抵の実装石は、ここまで優位になってしまうと攻撃する事が快感となり、 疲労が無い限り攻撃は過激化し、全く歯止めが効かなくなるのだが、サザエはちゃんと加減をした。 「な、何でもするデス… だからタスケテェデスゥ!!!」 パンコンで膨れあがったケツを蹴られ続けたコロは、糞がクッションとなり痛みが少ないにもかかわらず、 蹴られているという事象だけによって、ついにはその言葉を叫ぶ程に追いつめられた。 その言葉と共に蹴りが止まる。 「このクソダンゴ… どっちを向いてお願いしているデスゥ? まったく頭の悪いカスデスゥ。 偉大なワタシを無視するとはイイ度胸デスゥ♪ この仔ゴロシのクソダンゴは野良でも常識の謝り方も判らないクズのカスのウンコちゃんデッス。 その野良以下の腐った脳味噌に、もっとちゃんとした謝り方を記憶させて欲しいデスゥ?」 そう言われたコロは、すっかり変形しあらゆる体液でグシャグシャの顔で、 跳ねるように身体を起こして慌ててサザエの方に向き直った。 この時点でコロは完全に陥落していた。 あとは、ドコまでプライドを捨て去るかである。 コロは額どころか、傷付いた顔面全体を地面にすりつける程に土下座をした。 自らの顔に傷をつけるという、実装石には土下座のランクとして上位の土下座。 「デ… 許して下さいデス。 何でもするデス。 ワタシ達を助けてくださいデスゥ!!」 そんなものは、胎教でも、生まれてからの教育でも、ニンゲンと共に過ごしている間にも習うはずがない。 実装石が、その種として存在する過程で持っている原始的な本能だ。 もはや、そこには、昼までのセレブを目指していた清潔な実装石の姿はない。 ワタシ達… と家族を心配して見せた所を除いては…。 「仕方がないデスゥ♪ そこまで言うなら助けてやらない事もないデス。 ワタシは心が広いデスゥ♪ ここの野良さん達も、オマエの様な自分の仔をコロス程ヤバンな事なんかしないデッスゥ〜。 ただし、その着ているワタシの服を返しやがれデス!」 「デデデッ…」 顔を上げたコロは流石に胸元に手を当てて戸惑った。 ここまで陥落しながらも、流石にこの服まで奪われたら自分が飼いである事を示す物を失うと判っていた。 誰から見ても、自分がニンゲンから飼われていることを示せるイチバンわかり易いものを。 舌なめずりをしながらサザエが片足を上げる。 「ワタシはココロが広いと言ったデス… 何もオマエを禿裸にはしようと思わないデッス…。 ワタシはオマエの策略で取り違えられたモノを取り返して当然なのデスゥ。 だから、今ワタシが着ている、このクサイ、オマエの服は返してやると言う事なのデス。 あまりにも寛大すぎる処置だとは思わないデスゥ? ワタシはオマエにこんなに酷い目に遭わされたというのに、 奪ったモノさえ返せば、オマエの本来の持ち物を返して、命まで助けると言ってやっているデスゥ♪ 何なら… オマエが望むなら… ワタシはこのセレブらしい寛容さを捨てて、 オマエの様なクズの基準に合わせて殺してでも奪い取ってやってイイのデスゥ…。 まったく罪デス! クソダンゴの頭の悪さは罪デス! その石ころ脳味噌でウンチな理解力の所為で、ワタシにまで暴力の罪を押しつける気デッスゥ。 このクズの理解力がない為にセレブの優しさも判らず、ワタシに野蛮な事をさせる気なのデスゥ」 その仕草と言葉に、コロは慌てて頭巾を頭から外し、躊躇するようにゆっくり立ち上がり、 リュックを、ポーチを、さらに涎掛をと順に服を脱いでいく。 「「デププ…デププ」」 嘲るような笑いが漏れる中、靴を脱ぎ、すっかり糞を貯めたパンツを降ろし裏返しにして自らの手で払うと、 内股になり、片手で股間を隠しながら、空いた手でパンツをすっと差し出す。 さしずめ、その糞に汚れた高級パンツは降伏を示す白旗ならぬ緑旗である。 その時点で嘲りの笑いは、大爆笑の渦となってコロを容赦なくなぶり者にした。 股間を恥ずかしそうに隠すという飼い実装らしい恥じらいの残るコロは、 その爆笑に、太腿をモジモジとすり寄せ、その股の間にギュッと手を挟み入れ、 その、まだ汚れが染み付いてはいない白い肉体を捩って屈辱に耐えているのを示した。 無論、そんな仕草を見せてしまえば、狡猾なサザエが納得するはずはない。 さらに付け入るスキを与えるだけなのだ。 コロのパンツを差し出す手を、サザエはパチンと平手で打った。 「ワタシの、万分の一の知性もないクソダンゴのクセに、まぁ〜だセレブちゃんゴッコデスゥ? セレブちゃんの真似事をしても、このウンコパンツは何事デスゥ!? ワタシにコレを身につけろと言うなんてイイ度胸デッスゥ〜」 その手をコロの目の前でギュッと握ってみせる。 ”次はパンチだ”という意思表示だ。 「デエッ!! デ デ」 コロはもはや反論の言葉も話せず、 その脳の奥深くに使うことなく眠っていた実装石そのものの習性に突き動かされるように、 慌てて弾かれたパンツを正座して拾うと、「デェー…」っとサザエの顔色を窺う様に見上げ、 キョロキョロと周りの実装石達の視線を窺い、ゆっくりと… ゆっくりとパンツに顔を近づける。 洗わなければ… だが、ここには水がない… 水場は何処? そもそも、水場に行く事を許してくれるのか? ならば、どうやって、アイツの言う事を解決できるのか… まさか… きっとそうだ… それを待っている。 これしかない… もう、こうするしかない… アイツは待っている。 ワタシがハズカシイ事を、みんなの前でするを… 望んでいるのだから、する以外は… 殺される。 そして、そのままグズるように鳴き声を発しながら、そのパンツを舌で舐めはじめる。 「デッ… デェー…」 糞を… 自分の舌と唾液で掬い取って洗濯する。 飼いどころか野良実装としても堕ちた服従行為だ。 座ったまま目線で周りやサザエを窺い、レロレロと糞を舐める。 コロの目には自然と大量の涙が溢れ、ポトポトと音を立てる程に地面にこぼれ落ちていた。 さらに、服をパンパンと手で払って埃を軽く落とすとキレイに折りたたみ、 頭巾や涎掛けも同様にしてから順に積み重ね、そして下着を乗せ、最後に靴やリュックもそろえて乗せ、 それを正座したままスッと両手で差し出す。 もはや、恥じらいに股間を隠す仕草をする余裕もない。 だからといって、飼い実装のコロはプライドを捨て去って、この屈辱を我慢できるわけでもない。 それが、サザエにも感じられるだけに、 ここまでして、ようやくサザエは勝利の手応えに、股間が濡れる程に打ち震えつつ追い打ちを掛けた。 「残っているデス…」 サザエの言葉に、コロは訳が分からず、パンツに残る糞のシミが気になるのかと手を伸ばす。 「デッ?!!」 「残っているデス!!」 掲げてみればシルクのパンツは、数時間前までのコロが知っている物とはかけ離れた緑の物体となっている。 だが、コロはそのことに関して感慨を持つ事を許されず、もう一度、レロレロと舌で舐める。 もはやコレ以上は、洗濯機や洗剤がなければ汚れの取りようもないが、 何もしないとボコられるという恐怖が、形だけでもそうしなければとコロを突き動かしていた。 そこに横凪ぎの蹴りがコロの顔面を捉える。 ゴキッ! 「テブギャッ!」 舌を切りながらもコロが見上げたサザエは、コロのある場所を指差しながら赤と緑の双眼を冷酷に輝かせていた。 「本当にクズはクズなのデス! ワタシの物を返せと言っているコドバすら理解できないデッスゥ」 それで、初めてサザエの意図を理解して情けなく口を開けて鳴いた。 「デ、デェ、デッデッ… デェー!!」 自らの首にある首輪を手で覆い隠して。 コレを渡したら、もはやコロに残された全てが無くなってしまう。 「デ、デ、デ」 もはや、外観的に飼い実装であった数時間前には戻れないと心の内では理解しながらも、 その区分けの意味を持つ服まで差し出すという屈辱的な降伏を示しながらも、 他人に示す為ではなく、自身に言い聞かせる為にだけ残っていると言える僅かな装飾品。 それまでを渡せといわれたのだ。 自らが飼われている証の迷子札付きの名前入り首輪…。 美しかった髪を、今も飾る髪留めやリボン。 豪華な服が、他者に示すに一番わかり易い目立つ飼いの証拠とするなら、 それら装飾品、特に首輪は、自身の矜持を満たす飼いの証と言うことになる。 このまま野良に堕ちるにしても、明日を生きる糧になるであろう”飼われていた証”が口だけになってしまう。 現状、大して差はない事だが、当人にしてみれば抱ける明日への希望が天と地程に違う。 倒れて首を手で覆い見上げるコロの頭を、サザエは容赦なく踏みつけて、そのまま踏みにじる。 「まだ、判らないデスゥ? このクソダンゴは!!」 ガツッ… グリグリグリ コロは言葉での反論も抵抗も出来ず、たまらず首輪を隠すように覆っていた手で、その首輪を外し、 助けを求めるように鳴きながら外した首輪を高く掲げる。 「デッ、デッ、デッ、デッ、デェェェェェェェェ」 呆気ない陥落だった。 サザエは、それを奪うと、周りの実装石達に見せびらかすように一旦掲げ、 既に自分に付いている古びた首輪を外して、コロの首輪を身につけた。 「判ればイイんデスゥ… 判ればデスゥ〜」 サザエは外した古いほうの首輪を見て、一瞬、遠くを見るように空を見上げたが、 すぐに、ブルブルと軽く首を2・3回横に振って古い首輪を地面に落とす。 「こんなのニセモノの記憶デス… このクソダンゴ達のイヤラシイ罠なのデスゥ。 ワタシの失敗で転落するとか、そんな記憶や過去などワタシにあってはならないのデスゥー」 今度は、誇らしげに顔を上げ、空ではなく取り囲む野良達を見据え、 肩の髪をかき上げては首輪を見せびらかしてから、ようやくコロの頭から足を避ける。 コロは、渋々とその最後の希望の品々を髪から外す作業に取りかからねばならなかった。 一方のサザエはテキパキと汚れた服を脱ぎ、コロの下着を、服を、装飾品を身につけたサザエは、 投げつけるように、薄汚れた程度では表現できない実装服をコロの顔に叩き付けた。 「ワタシの服がこんなに汚れたデス… でも仕方なく我慢してやるデス。 それ、オマエに相応しい服デッスゥ〜♪」 コロは、そのボロ服に慌てて手を伸ばしたが、服を手にしたところで、 溜まっていた感情の堰が切れたように大声を張り上げて、そのまま崩れるように横たわって泣いた。 「デ… デェェェェェェェェェェェェェェェン」 本当にコロがコロであった事を示す物理的な品は何一つとして残されなかった。 何よりも… 裸が嫌だ… 裸で居ることが命にすら関わりかねない危機だからだとしても… 野良の垢と腐敗汁にまみれた服に、躊躇いも無く、思わず手を伸ばしてしまった自分の情けなさに泣いた。 そこに、コロ一家の服を身につけた仔達も、やはりコロ一家のペット蛆服に身を包んだ蛆実装を抱えて現れ、 一家揃って、観衆も巻きこんで高笑いの声を上げた。 そのサザエ一家の姿に、コロのカン高い泣き声はよりいっそう音程と音量を上げ、 時折、鼻水を啜る小休止を挟んでも、しばらく止まる事はなかった。 「デッデッ、デェェェェェェェェン! ヒグッ、デジュッ、(ズルズル)オロロ〜ン…」 敗軍の行進曲は、何処までも悲壮で物悲しく鳴り響く涙の独奏。 それはまさしく敗者の唄と勝利者の凱歌の二重奏であった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− つづく
