『野球場から飛び立って 〜 Take Off From The Ball Park 〜』 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 七回表—— ビジターチームの攻撃が始まると、ライトスタンドのホームチーム応援席のあちこちから、 「…レフー?」「…レ?」「…プニフー?」 蛆実装の鳴き声が聞こえ始めます。 ラッキーセブンのお約束、蛆ちゃん飛ばしに使われる《バルーンうじちゃん》たちです。 《バルーンうじちゃん》は球場内の売店で一組百円で販売されています。 仮死状態でパック詰めされた蛆ちゃんと「バルンパ」と呼ばれる特殊な薬、それに爪楊枝のセットです。 パックが開封されると、蛆ちゃんたちは眼を覚まします。 そして、 「……レッ? ニンゲンさんレフ?」 「はじめましてレフー、ウジちゃんレフー」 「わーい、ニンゲンさんのお膝の上レフ♪ さてはウジちゃん、飼いウジちゃんになったレフね♪」 「焼きそば美味しそうな匂いレフ、ホットドッグも美味しそうな匂いレフ、ビールは苦そうな匂いレフ」 「ウジちゃん生まれてから何も食べてないレフ、ゴチソウしてくれてもバチは当たらないレフよ?」 レフレフと好き勝手に鳴き始めます。 もちろん、蛆ちゃんが何か食べさせてもらえることはありません。 空に飛ばしたときにウンチをぶちまけたら大変なことになるからです。 「レフー? ここはニンゲンさんのおうちレフー? ずいぶん広いレフー?」 「ニンゲンさんはセレブとお見受けしたレフ♪ つまりはウジちゃんもセレブ飼いウジちゃんレフ♪」 「でも、おうちの中にはニンゲンさんがいっぱいレフ、ニンゲンさんは実装ちゃんより大家族レフね?」 「芝生のお庭でボールで遊んでるニンゲンさんがいるレフ、ウジちゃんも一緒に遊びたいレフ」 「芝生でかくれんぼでもいいレフ、ウジちゃん保護色だから見つからないレフよ? レプププ……」 ここが野球場だということは蛆ちゃんたちには、わからないようです。 実装工場で大量生産された蛆ちゃんたちはママの胎教の歌を聴かないまま生まれました。 それでも先祖代々、偽石に蓄積されている情報で、欲望に直結した知識だけは中途半端に備えています。 蛆ちゃんの三大欲求といえば食欲、ウンチ欲、プニプニ欲です。 それに加えて「被保護欲」も今回販売された蛆ちゃんたちは持っているようです。 被保護欲とは「ニンゲンさんに飼われてセレブ蛆ちゃんとして一生楽して暮らしたい」という欲求です。 きっと今回の蛆ちゃんの母体となった生産石か、その先祖の誰かが元・飼い実装だったのでしょう。 「レフッ!? ポップコーン売りに来たレフッ! 食べたいレフッ食べたいレフッ!」 「ニンゲンさんの食べかけのサンドイッチでもいいレフ、ウジちゃんのお口に入れてレフ、あーんレフ」 おやおや? 大口を開けてよだれを垂らしていた蛆ちゃん、人間さんにつまみ上げられて、足元に捨てられちゃいました。 「レピャァァァッ!?」 「こいつ、よだれ垂らしすぎ。こんな汚い蛆を飛ばしたら、ほかの客の迷惑だからな」 蛆ちゃんを踏みにじってトドメを刺した人間さん。 売り子のお姉さんが回って来たので、新しい《バルーンうじちゃん》を買い求めます。 ペットショップで買えば蛆ちゃんは百円で一山単位で手に入ります。 でも《バルーンうじちゃん》は糞抜き済みですし、何より「バルンパ」がついて来るのです。 「レフー! レフー! おなか空いたレフー! ウジちゃん大ピンチレフー! 食べ物よこせレフー!」 身をよじって抗議のレフ叫びを上げていた蛆ちゃん、人間さんの膝の上で、ころんと仰向けに転がされます。 そして、おなかを優しくプニプニされました。その人間さんは若い女の人です。 「レフッ!? プニプニレッフン♪ ウジちゃんを餓えさせた罪は赦すレフ♪ 存分にプニるレフ♪」 隣の席の若い男の人間さんが、あきれたように笑いながら女の人に言います。 「おまえ、風船にして飛ばしちまう蛆にプニプニしてやることないじゃん?」 「えっ、知らないの? おなかをよく揉んでおいたほうが高くまで飛ぶのよ」 どうやら、このカップルの人間さんでは、女の人のほうが野球観戦の経験が上のようです。 きっと彼氏は映画に連れて行きたかったのに、彼女が野球のほうがいいと言ったのでしょう。 『私を野球につれてって』のケイティー・ケイシーを地で行く女性野球ファンの鏡ですね。 見ると、周りの人間さんたちも蛆ちゃんをプニプニしています。 「プニフー♪ プニフー♪」 「広いおうちでプニプニ三昧レフ♪ セレブなウジちゃんの醍醐味レフ♪」 「これで美味しいゴハンがあれば言うことなしレフ、ゴハンの時間まだレフか?」 ビジターチームの攻撃は三者凡退で終わりました。 ベンチへ引き上げるホームチームのナインに、人間さんたちはプニプニを打ち切って拍手を送ります。 「レフェェェン、プニプニやめちゃイヤレフー、もっとプニってレフー」 「プニプニ分が足りないレフ、ウジちゃん抗議のウンチ漏らすレフ、うーんレフ、うーんレフ……」 「ウジちゃんもウンチするレフ、ウンチするのは快感だとウジちゃんの大事な石が告げているレフ」 「でも生まれてすぐにしたウンチは苦しかったレフ、アマアマのおクスリで無理やり出させられたレフ」 「あれは危険なアマアマだったレフ、ウジちゃんもう騙されないレフ」 「レヒッ? ウンチ出ないレフー! レフェェェン……!」 「おなか空っぽだからレフ、ゴハンもウンチも抜きなんて児童虐待ならぬウジ童ギャクタイレフ」 「レフェェェン、もっとプニれレフー、ウンチもさせろレフー、ゴハンもよこせレフー!」 「レフェェェェェン、レフェェェェェン……!」 涙の大合唱になってしまった蛆ちゃんたち。 すると、その眼の前に「バルンパ」が差し出されます。 「レフッ!? そのトゲトゲまん丸はアマアマの金平糖とお見受けしたレフ!」 「ウジちゃん騙されないレフ! それはまさしく金平糖レフ! 早くよこせレフ! あーんレフあーんレフ!」 「アマアマレッフン!?」 「ウマウマレッフン♪」 ぴたりと泣きやんだ蛆ちゃんたち、今度は「アマアマ」「ウマウマ」の嬌声が上がります。 もっとも人間さんの耳には多少嬉しげなだけの「レフレフ♪」としか聞こえていないのですが。 球場内に軽快なダンス音楽が流れ始めました。 ひらひらのミニスカート姿のダンスチームがグラウンドに登場します。 ホームチームのマスコットの着ぐるみも一緒です。 音楽に合わせて踊り始める着ぐるみとダンサーたち。 「レプププ、頭でっかちの不格好が踊ってやがるレフ」 「頭でっかちはウジちゃんたちもヒトのことを言えないレフ、それにアイツ意外と動きが切れるレフ」 「レピャッ? 頭でっかちのクセにバック転しやがったレフ!」 「負けてられないレフ、ウジちゃんたちも踊るレ……レ……レピャァァァァァァァァッ!?」 急に蛆ちゃんたちの身体が、太く長くふくらみ始めました。 スタンドのあちこちで蛆ちゃんの悲鳴が上がります。 「レピャァァァァァッ!? おッ……おなかクルシイクルシイレフッ!?」 「はちきれるレフッ!? 張り裂けるレフッ!? 何か生まれるレフッ!? さてはエイリアンレフッ!?」 そう、それがバルンパの効果です。 バルンパは蛆ちゃんの身体をゴムのように軟らかくするとともに糞袋内にガスを充満させます。 その一方で総排泄口の括約筋を引き締める作用もあるので、ガスは外に漏れません。 もちろん口からガスが逆流するケースもありますが、ごく稀なことです。 実装石という種族は意地汚いので、口に入れたものを簡単に吐き出さないよう喉の力が強いのです。 《バルーンうじちゃん》の場合は、それが命とりになるのですが。 「レピャァァァァァッ!?」「レヒィィィィィッ!?」「レフェェェェェン! レフェェェェェン!」 風船のようにふくらみながら泣き叫ぶ蛆ちゃんたち。 人間さんが尻尾をつかんでいなければ、そのまま空へ飛んで行ってしまいそうです。 「レッ……飛んじゃうレフッ!? ウジちゃん飛んじゃうレフッ!?」 あらあら、子供の人間さんが蛆ちゃんを一匹、手から放してしまいました。 ふわふわとお空へ浮かび上がる蛆ちゃん。 ですが、まだグラウンド内のダンスは続いています。他の蛆ちゃんたちが空へ飛ぶのは、もう少し先です。 「イヤレフ高いレフ怖いレフー! せっかく飼いウジちゃんになれたレフのに! おうちに帰らせてレフー!」 お友達より先に飛び上がった蛆ちゃんは球場の外へと風に流され、やがて姿が見えなくなります。 どこまで飛んでいくかは誰にもわかりません。 そういうことがないように、蛆ちゃん飛ばしは本来は爪楊枝を使うことになっています。 さあ、最後の決めポーズでダンスが終わりました。 いよいよ蛆ちゃんたちの見せ場です! ——ぷすっ! 蛆ちゃんの総排泄口を狙って人間さんが爪楊枝を突き立てました。 「レッ……レピャァァァァァァァァッ!?」 悲鳴とともにお尻からガスを噴出させた蛆ちゃんが、勢いよく空へ飛び上がります。 「レピャァァァァァァァァッ!?」「レピャァァァァァァァァッ!?」「レピャァァァァァァァァッ!?」 スタンドのあちこちから空へ打ち上げられる無数の蛆ちゃんたち。 まるで野原に吹いた一陣の風が、草を散らしたかのよう。 ライバルチームの応援席からも、その光景に拍手が送られます。 高く飛び上がった蛆ちゃんたちは、ガスが抜けるにつれて身体が縮まり、元よりも小さく萎びていきます。 そして再びスタンドへ、一部はグラウンドへ、ひらひらと緑色の紙吹雪のように降っていきます。 それもまたバルンパの効果で、蛆ちゃんは身体中の水分を喪ってペラペラに乾いてしまうのです。 「H2O」が水素「H」と酸素「O」に分解されるとかの仕組みがあるようですが難しいことは抜きにします。 とにかく観客の頭の上に蛆ちゃんが降ってもベチョッと汚く潰れたりしない。そういう話です。 観客の拍手と歓声に送られて、着ぐるみマスコットとダンサーが引き上げていきます。 入れ代わりに球場の係員たちが出て来て、グラウンドに落ちた蛆ちゃんを回収します。 「レ……お花畑と思ったら芝生の上レフ……」 「おのどカラカラ……おなか空っぽ……蛆ちゃんもうダメかも知れないレフ……」 「ニンゲンさん……末期のプニプニをキボンヌレフ……」 まだ息があるしぶとい蛆ちゃんたちですが、無造作に回収袋に放り込まれてしまいます。 一方、スタンドに落ちた蛆ちゃんたち。 か細い声で「レフー…」と鳴いていますが、こちらは試合が終わるまで放置されます。 観客の肩や荷物に乗った場合は足元に払い落とされますが、わざわざ踏み潰してまでトドメは刺されません。 もう鳴き声は人間さんの耳に届かないほど小さいですし、勝手に這い回るような目障りな真似もしません。 放っておいても、そのまま干からびて死ぬだけです。 「——アウトー! ゲームセット!」 やがてホームチームの勝利で試合が終わりました。 ライトスタンドの人間さんたちは気持ちよく球場を後にします。 観客が帰ったところでスタンドの清掃が始まります。 その頃には、ほとんどの蛆ちゃんは息絶えています。 死因は脱水症状による衰弱死か、人間さんに意図せず踏み潰されたかです。 あるいは、眼の前に人間さんの食べかすが落ちているのに、 「美味しそうなポップコーンレフ……でも蛆ちゃん身体が動かないレフ……こんなの拷問レフ…………パキン!」 食べる力も残っていなくて絶望のあまりパキンしてしまう場合もあったりします。 でも——おやおや? そんな状況でも生きている執念の蛆ちゃんもいますね。 「生き延びるレフ……このおうちは何故か屋根がないレフ……雨が降ればウジちゃんは復活できる筈レフ……」 自分が弱っている原因が全身の水分を奪われたからだと理解している賢い蛆ちゃんのようですよ。 「やまない雨がないように降らない雨もない筈レフ……生きるレフ……生きて再びプニプニされるレフ……」 でも、所詮は使用済の《バルーンうじちゃん》。生きていようが死んでいようが同じこと。 ホウキとチリトリを持った人間さんに、他の可燃ゴミ(蛆ちゃんの死体を含む)と一緒に掃き集められて。 「レヒィ……ウジちゃんのド根性は報われないレフか……? 重いコンダーラ引っぱるから赦してレフ……」 袋に詰められて焼却場行きの運命を辿るのでした。 人間さんにとって蛆実装なんて、そんな程度の存在です。 ------------------------------------------------------------------------------------------------ ところで一部の球場でラッキーセブンに風船ではなく蛆ちゃんを飛ばすようになった理由は以下の通りです。 (参考:フリー百科事典「Jisopedia」) 1:合成ゴム製の風船と違って使用後に燃えるゴミとして捨てられること。つまり環境に優しい。 2:空に飛び上がるときに「レピャァァァ!」と、いい声で鳴いてくれるので景気づけになる。 3:風船を虐待しても、つまらないでしょ? ——チャンチャン♪ ------------------------------------------------------------------------------------------------ 【終わり】

| 1 Re: Name:匿名石 2014/11/05-04:06:53 No:00001543[申告] |
| これなら野生動物がゴム風船を詰まらせて死ぬこともない。
素晴らしいですね! 愛護蛆ちゃんだ! |
| 2 Re: Name:匿名石 2014/11/06-21:43:34 No:00001545[申告] |
| もし野山や海に落ちても分解される自然に優しい蛆ちゃんたち、いいなぁ。気象観測用のゾンデとかも実装素材にできれば… |
| 3 Re: Name:匿名石 2014/11/09-10:31:14 No:00001548[申告] |
| 実装気球はなんか別のスクであった気がする
虐待じゃなくて実装人ネタだった気もするけど |
| 4 Re: Name:匿名石 2014/11/09-18:12:44 No:00001549[申告] |
| 風船になるやつだよね、それ
空飛んで糞をたらす迷惑なやつ |
| 5 Re: Name:匿名石 2017/03/24-20:23:30 No:00004566[申告] |
| 蛆が降ってくるなんて糞処理済みでも嫌だなあ |
| 6 Re: Name:匿名石 2017/08/27-00:34:21 No:00004851[申告] |
| >実装気球はなんか別のスクであった気がする
マラにレイープされてできた奴なんで薬飲ませて風船にして天国へ飛ばしてあげるって話か 幼児たちと蛆たちの無邪気さがちとやるせなかったが |
| 7 Re: Name:匿名石 2017/08/28-16:53:33 No:00004852[申告] |
| >虐待じゃなくて実装人ネタだった気もするけど
実装人のネタのやつは風船実装でああいう種類の空飛ぶ実装なんだよ 捕まえてきて畑に吊るしておくと勝手に糞をバラまいてそれを 堆肥化するという |