ある日、公園で一匹の裸仔実装を拾った。 服も無く全身ボロボロで右手と左足と左手が無くなっていた。 また、全身に噛付かれたあとが何箇所も残っている。 近くに禿裸の成体の実装石と何匹かの仔実装の死体がある。 同属同士のイジメにでも遭ったのだろうか? 俺は気絶している仔実装をコンビニの袋で拾い上げ、家に連れて帰った。 家に着き仔実装の手当ても終わり、仔実装を水槽の中に入れておいた。 4時間程して風呂から上がったときちょうど仔実装が目を覚ました。 「テェ・・・テチ?」 仔実装は辺りを見回していた。 俺と目が合うといきなり脅えるように蹲り、泣き出した。 どうやら手足は実装活性剤のおかげで回復しているようだ。 俺はリンガルをONにして仔実装に話しかける。 「おい、どうした?なんか怖いことでもあったか?」 「テェーーーン、テェーーーン」 「困ったな。なぁ、俺が怖いのか?それとも腹が減っているのか? 喉が渇いてるのか?何か食べ物でも作ろうか?」 「テッスンッ テッスンッ テッスンッ」 よし、泣き止みだした。 俺は飴玉と水を入れた小皿を仔実装の前に置いてやった。 グゥ〜 「・・・なんだ。やっぱりお腹すいてるんだ。食べてもいいぞ。」 しかし仔実装は餌に手をつけない。 どうやらこの餌は食べても大丈夫なのか疑っているようだ。 しかし、食欲には勝てない。 口から涎を滝のように流し、ジッと飴を見ている。 そこで俺は飴を小皿から取って仔実装の前に持っていき、それを俺の口に入れた。 「う〜ん、甘い!美味しいぞ。毒なんて入ってないから早く食べろよ。」 俺が飴を食べるのを見て安心したのかいきなり飴に貪りついた。 俺は仔実装がその飴を食べ終わるまで待ってやった。 仔実装はよほどお腹がすいていたのか、いっきに飴玉を3つも食べてしまった。 そこで満足したのか食べるのをやめた。 「おい、お前いったいどうしたんだ? あの公園で何があったんだ?」 仔実装に問いかける。 「・・・」 「だんまりか?」 「・・・あ、ありがとうテチ。」 「ん?なんだって?」 「傷の手当だけでなく御飯も食べさせてくれてありがとうテチ。」 「いや、その位良いんだよ。」 驚いた。この仔実装はどうやら、それなりに礼儀というものを知っているようだ。 まさか実装石からお礼を言われるとは夢にも思わなかった。 「なぁ、お前なんであんなにボロボロになっていたんだ? お前の周りにあった死体は親と姉妹か?」 「テ!?テェ、テェ〜・・・テチャァァアアー!」 「やっぱりそうか。それと泣くなって。泣いたところで親は戻ってこないぞ。 それよりもなんでそんなことになったんだ?」 「テチュゥー。・・・ワタチはママや姉妹と一緒にご主人様に飼われていたテチ。 とても幸せな日々だったテチ。」 「だから、それがなんであんな所にいたんだ?」 「・・・分からないテチ。いきなりご主人様がワタチ達を殴ったりした後に公園に捨てていったテチ。」 「・・・・・・」 「ワタチのご主人様は優しくて、良いニンゲンさんだったテチ。 それなのに、その時はまるで悪魔のような顔をしていたテチ。」 「なぁ、もしかして何か粗相をしたんじゃないのか?たとえば飼い主を困らせたとか 飼い主に生意気な態度を取ったとか。」 「・・・ママや姉妹達はご主人様を『ドレイ』って呼んでいたテチ。 いつも、ご主人様を困らせることばかりしていたテチ。 それでもご主人様は毎日お風呂に入れてくれたり、美味しい金平糖くれたたテチ。」 「お前のママは何時からお前の飼い主を『ドレイ』って呼び出したんだ?」 「ワタチが生まれたときにはもうそう呼んでいたテチ。」 どうやら仔実装の話を総合するとこ、いつのは親は典型的な糞蟲で 飼い主は上げ落としをした虐待派といった所か。 虐待派なら、公園に捨てずにちゃんと保健所で処理してもらえよな。 もしくはちゃんと殺してゴミの日に捨てるとか。 それよりもこの仔実装どうしようかな? う〜ん・・・・・もうすぐアレも来るし試してみるか。 「なぁ、お前に聞きたいことがあるんだが。」 「テチィ?」 「このまま怪我が治ったらお前が捨てられた公園に戻るか それとも、このまま俺に飼われるか。どっちがいい?」 「テェ!?飼ってくれるテチ!?」 「お前が望めばだけどな。お前どうやら他の実装石より賢そうだしな。 あ、でもこれだけは覚えておけ。躾は必ず行う。 それが嫌なら怪我が治り次第、公園に送ってやる。」 仔実装は考え込んでいた。そして俺の顔を何度か見ながらまた考え込む。 そんなことを3分も続けてようやく結論を出したようだ。 「・・・ワタチはこのまま公園に行っても生きられないテチ。 もしニンゲンさんが良かったら飼ってほしいテチ。」 「よし!分かった。やっぱりこのまま捨てよう!」 「テェエエエ!!」 「冗談だって。本気にするなよ。」 「酷いテチ。本当に捨てられるかと思ったテチ!」 「まぁ、これくらい許せって。俺はたまに冗談を言うんだ。 これから俺と生活するんだから覚えておけよ。」 「テェ〜。ご主人様も人が悪テチ♪」 そして俺と仔実装の生活が始まった。 一日目 次の日の朝、仔実装はすでに起きていた。 水槽の中でキョロキョロと周りを見ながら、俺が起きるのを待っていたようだ。 男は大きな欠伸をしながら仔実装に挨拶をする。 「おはよう。」 「テチー!」 男は簡単な朝食を作り、仔実装にも実装フードと水を与える。 仔実装は実装フードを食べるのが初めてのようで 一口食べた後、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。 「どうした?食べないのか?」 「テチ!テチテチ。」 「ああ、リンガル使ってなかったな。」 リンガルをONにして再び話しかける。 「食べないのか?」 「まずいテチ。こんなの食べれないテチ。金平糖がいいテチ。 それか昨日食べたやつがいいテチ。」 「そうか。じゃあ食わなくていいぞ。」 そういって水槽から実装フードを取り上げる。 仔実装は金平糖がもらえると思いジッとしていたが 俺が何も与えないから、怒ったらしたらしい。 「なんで御飯をくれないテチ!」 「お前、食べたくないって言っただろ?」 「言ってないテチ。金平糖を食べさせて欲しいテチ。早く持ってくるテチ!」 なんか昨日と印象が違うぞ。なんというか、少し糞蟲化してる? 昨日、甘やかしすぎたか? 「言い忘れてたけど俺の家で実装石の御飯と言えばさっきのだけだぞ。 それが嫌なら何も食わなくていい。」 「テェェエ!そんなの聞いてないテチ。前のご主人様は金平糖をくれたテチ。」 なるほど。生まれてすぐに金平糖や高級実装フードだけ食っていたのか。通りで。 「前の飼い主のことなんか知らない。この家じゃ俺の方針に従ってもらう。 お前も昨日それで納得したろ。それが嫌なら公園に捨てるぞ。」 「テェ!?そうだったテチ。」 「で、どうする?実装フード食うか?」 「食べるテチ。」 そういって実装フードを水槽に戻してやる。 仔実装は渋々実装フードを掴みながら口に運んでいく。 実装フードって食べたこと無いけど、仔実装の顔を見る限りよほど不味いんだろう。 そんなことを思いながら時計を見るともう、会社にいく時間だ。 「おい。俺は会社があるから昼間はいない。だから食べ物と水だけは置いていくらか 考えて食べろよ。」 そういって監視カメラを起動し、水槽にゴムボールを置いて会社に出かける。 家に帰ってきたのは夜の8時だ。 外は台風が近づいているため風が強く雨も降り始めていた。 仔実装の晩御飯のこともあり、急いで帰ってきたのだが 仔実装は水槽の中で寝ていた。実装フードは綺麗になくなっている。 かわりに仔実装の糞が大量にあった。 俺は仔実装を起こし、伝える。 「いいか。これからは此処にトイレをするんだぞ。それとトイレをしたら必ずこの紙で 体についたウンチを拭き取ること。そうしなかったら罰を与えるからな。」 そういって簡易トイレを見せる。 仔実装は糞まみれになりながら返事をする。 このままでは臭いので仔実装と水槽を洗わないといけない。 仔実装を水槽に入れたまま風呂場に持っていく。 「今からお前を洗うから。」 「ハイテチ!」 仔実装は元気よく返事をした。 仔実装に服を脱ぐように指示すると、頬を赤くして恥ずかしがっている。 なんか腹が立ってきた。 そんな自分を自制しつつも、仔実装を水槽から箸でつまみ出す。 仔実装はそんな待遇に起こりながら暴れている。 「おい、そんなに暴れると・・・ほら、落ちた。」 仔実装は俺の胸元くらいの高さから、水が張ってある風呂桶に落ちたため 大した怪我はしなかった。 しかし、落ち方が体の前面から落ちたから、モロに顔面や腹を水面に打ち付けたようで 仔実装は大の字になって気絶しながら沈んでいた。 本当に馬鹿としか言いようが無い。 俺は仔実装の頬を箸で軽く2,3回引っ叩いて起こした。 仔実装は「顔面がなぜかヒリヒリする」と不思議がっていた。 俺は仔実装の体に付いた糞を障る気になれず、自分で洗うように言った。 仔実装にはタオル代わりにハンドタオルを渡してやると そのタオルを不器用に扱い、なんとか体は綺麗に洗うことが出来たようだ。 しかし、体の構造的欠陥のためか、頭のてっぺんがどうしても洗えていない。 『なるほど、実装石の髪の毛がこんな訳のわかわらない生え方をしているのは こんな体の構造の為、生えない方が清潔にいられるというわけか。』 俺はシャワーで仔実装の頭を徹底的に洗い流した。 すると仔実装は苦しそうに 「テボッ!テボッ!…デジャァ!テボッ!…」 と喚き、水を吐き出しながら暴れだした。。 どうやら仔実装は、実装石の空きっぱなしの口から入ってくる水に溺れかけているようだ。 シャワーで溺れるとはなんとも器用な奴だ。 俺はすぐさまシャワーを切り、仔実装を落ち着かせた。 「悪い悪い。」 俺は仔実装に謝りながら髪の毛をシャンプーで3回、スポンジで体を3回洗ってやった。 仔実装は最初は怒っていたが、今は気持ちよさそうに俺に洗われている。 そして桶にお湯を張り、仔実装用の浴槽にする。 「テチィ〜♪気持ちいいテチ。」 仔実装の顔が緩みまくっている。よほど気持ちがいいらしい。 全身が脱力しているのが目に見えてわかる。 桶のお湯が糞で緑色になっているからな。 どうやら、脱力下と同時に総排泄口の筋肉も緩んだようだ。 俺は仔実装の顔面にデコピンを一発入れる。 ベチッ! 「テチャ!?」 「さっきトイレ以外で糞をするなって言ったばかりだろ。」 「テテッ!?ごめんなさいテチ。許して欲しいテチ。」 とりあえず桶のお湯を換えて再び仔実装を入れる。 「今度同じ事をしたら捨てるからな。」 「テェェェ。」 仔実装は先程とは違い、何か緊張した様子で風呂に入っている。 その間に水槽を洗っておく。 全てが終わると仔実装をタオルで拭いてやり水槽に戻した後、夕食にする。 俺はコンビニの弁当。そして仔実装はおなじみ実装フード。 仔実装が実装フードに手をつけようとしたとき、それを制止する。 「待て、御飯を食べるときは手を合わせてから『いただきます』って言え。 そうでなきゃ食わさんぞ。」 「『いただきます』テチ?」 「そうだ。そして御飯を食べ終えたら同じようにして『ご馳走様』だ。 それと御飯をボロボロと溢すんじゃない。溢すたびに罰を与える。」 「ハイテチ!いただきますテチ。」 仔実装は言われたように手を合わせて『いただきます』と言って御飯を食べだした。 朝ほど嫌がらずに実装フードを食べている。どうやら味のほうは慣れたようだ。 だが、やはり見事に溢している。 うすうす気づいていたが、前の飼い主はろくに躾もしていなかったんだろう。 そこで俺はコンビニの箸についていた爪楊枝で仔実装の頭を刺す。 プスッ 「テチャアア!!」 「溢すなって言ったろ。」 「テチャァァァ」 ポロポロ プスッ 「テチャアア!!」 「溢すな。」 「テチェェェ」 ・ ・ ・ そんなやり取りをしながら、どうにか仔実装は食べきることが出来た。 仔実装の頭は穴だらけになって、うつ伏せになって泣いていた。 俺は最後に仔実装の即頭部にデコピンを喰らわせた。 「テチャ!・・・何するテチ!」 「食べる前に言ったろ。ご馳走様をしろって。」 「テェ!?忘れてたテチ。ご馳走様テチ。」 「よし、よくできた。偉いぞ。」 仔実装の頭を撫でてやると嬉しそうに「テチュ〜♪」と鳴いた。 晩飯後、仔実装は嬉しそうにゴムボールで遊んでいた。 俺は監視カメラのチェックをしながら仔実装に話しかける。 「なぁ。お前、前に飼われてた所ではなんて呼ばれてたんだ?」 「テェ?名前テチ?」 「ああ、いつまでも『お前』じゃなんだしな。」 「『ミドリ』テチ。ご主人様がつけてくれたテチ。」 「ふ〜ん。ミドリね〜。じゃあ、俺が新しく名前をつけてやろうか?」 「テェ!?いいのテチ?お願いするテチご主人様。」 「それじゃあ、お前の新しい名前は『ゴミクズ』な。」 「テチェェェェ!?そんなのないテチ。酷いテチ。」 「冗談だ。新しく名前付けるのも面倒だし、お前の名前はミドリのままだ。」 「本当にそんな名前をつけられると思ったテチ。びっくりしたテチ♪」 監視カメラに映っていたミドリは、朝ごはんを食べ終えた後 そのまま寝て昼前に起きて御飯を食べて、 後は「糞をする→ゴムボールで遊ぶ→寝る→糞をする」を繰り返していた。 『よく6時間以上も同じことを繰り返せるもんだ。普通は飽きるぞ。』と思いながら カメラの映像を全部見終わる頃には、すでに11時を回っていた。 そろそろ寝るか。 「おいミドリ。俺はこれから寝るな。お前のベットはこのタオルだ。汚すなよ。」 そういって。水槽にタオルを置く。 ミドリはフカフカの綺麗なタオルが嬉しいらしく、はしゃいでいる。 何回もタオルに飛び込んだり、タオルの上でゴロゴロと転げまわったりしている。 「いいかミドリ。寝るときは『おやすみなさい』。起きたら『おはようございます』って言うんだぞ。 あと、俺が寝ているときはむやみに鳴くな。鳴いたら罰を与えるぞ。」 そういって、爪楊枝を見せる。 ミドリは震えながら返事をした。 それにしても、罰を与えても糞をもらさないとは。 我慢強いのか?そのわりには風呂で簡単に糞をもらしてたな。 そんなことはいいか。 「おやすみ、ミドリ。」 「ご主人様おやすみなさいテチ。」 そうしてお互いに眠りに付いた。 三日目 朝、俺はミドリの鳴き声で起きた。 時計を見ると、すでに9時を回っていた。 俺は目をこすりながら欠伸をして布団を出る。 外は台風の暴風圏に入っているらしく、風で色々なものが宙に舞っていた。 そんな光景を見ながら顔を洗って歯を磨く。 そしてミドリに挨拶をする。 「おはよう。ミドリ。」 「テチー!テチチ」 ミドリは何か叫んでいる。 リンガルをONにして話を聞くと 「遅いテチ。もうお腹ペコペコテチ。早く御飯を用意するテチ。」 ペチッ 「テチャァァァ!」 ミドリはデコピンを喰らって水槽の壁にぶつかる。 「お前な、昨日言ったろ。俺が寝ている間は鳴くなって。それと挨拶。 しかもなんだ?お前が俺に命令するってどういうことだ?」 「テェェェ。ごめんなさいテチ。もうしませんから許してほしいテチ。」 「罰としてデコピンな。」 「テェェェ!」 ベチッ 涙を流しながら謝っているのでとりあえず許してやることにする。 実装フードを用意して水槽の中に入れる。 仔実装は嬉しそうに食べている。 俺は昨日風呂に入ってなかったことを思い出し、朝風呂の準備をした。 ミドリは相変わらずゴムボールで遊んでいる。 風呂から出た俺はミドリを見て思った。 「なぁ、お前は服が無くても大丈夫なのか?」 「そんなことないテチ。服は欲しいテチ。」 「・・・」 「服と髪は実装石にとっては一生に一度だけの大切な物もテチ。 命の次に大事なものテチ。」 「まぁ、そうだな。」 「服は無くなったけどまだ髪があるテチ。禿裸よりマシテチ。 それにご主人様に拾ってもらったから今はとても幸せテチ♪」 「ふ〜ん。なるほどね〜。じゃあ、もう服はいらないんだ。」 「ハイテチ。」 「そうか〜。明日、晴れたら服を買いに行こうと思っていたんだが。 いらないならいいか。」 「テチャアアア!?ま、待って欲しいテチ。今の嘘テチ。やっぱり服は欲しいテ!。」 「わかった、わかった。そんな涙を流しながら必死に土下座するなよ。 冗談だって。いい加減、なれろって。」 「テチィィィ」 相変わらずからかいのある奴だ。 とりあえず明日は晴れたら実装ショップに行って、服を1着買ってやることにする。 今日は外に出られないので、仕方無しに一日読書をしてすごした。 しばらくするとミドリは、いい加減ゴムボールに飽きたようで 自分にかまって欲しいのか「テチテチ」と鳴いて俺を呼んでいる。 そこでミドリを水槽から出してやり、家の中に慣らすことにする。 「いいかミドリ。何時までも水槽の中じゃ窮屈だろ。そこで、家の中を自由に動き回ってもいいことにする。 ただし、トイレはこの台所のあの隅にするんだぞ。あと、無闇やたらとドアや扉を開けるなよ。 最後に、あそこの部屋だけは入るのも覗くのも禁止だ。いいな。」 「テチィ!嬉しいテチ。わかったテチ。」 そういって、ミドリは早速いろいろなところを見て回っている。 これでしばらくは静かになると思い、再び読書を始める。 が、5分後ミドリの叫び声がする。 俺は読んでいた本の内容が盛り上がっているところで中断されたので、苛立ちながらミドリを探す。 ミドリは冷蔵庫のドアに挟まっていた。 冷蔵庫の扉を開けようとして扉を開けたが、中途半端にしか開かなかったため 扉が自動的に閉まって挟まれたのであろう。 俺はそれを見て呆れた。 「お前な、扉は開けるなって言っただろ。言いつけを守らなかったから罰を与える。」 「テェェェ!」 救出されたミドリは、またデコピンをされるのではと思い手で頭をガードした。 だが、いくら待っても何もこない。 ミドリは恐る恐る目を開けて俺を見た。 「何してんだ?」 「テェ?罰はないテチ?あ、いつもご主人様が言っている冗談テチ。びっくりしたテチ♪」 「は?何言ってるんだ。罰は今日一日飯抜きだぞ?」 「テチャァァ!!」 ミドリを水槽の中に入れる。 よく見ると糞をもらしている。 どうやら扉に挟まれた衝撃で、腹を圧迫されて出てしまったんだろう。 「あ、お前糞をもらしたな。罰を追加ね。」 「許して欲しいテチ。これ以上御飯食べれないと、お腹がペコペコになって死んじゃうテチ。」 「何言ってるんだ?」 「テェ?」 「糞をもらした罰はデコピンだって。」 ベキッ! 「テチャアアア」 ミドリは転がりながら、水槽の壁に後頭部をぶつけた。 その拍子にさらにブリブリと糞をもらす。 「あ〜あ、またもらしたよ。もう一回デコピン喰らうか?」 「テエッ!?嫌テチ。今すぐ綺麗に巣から許して欲しいテチ。」 「まあいいだろう。綺麗にしたら許してやる。」 俺はティッシュを数枚仔実装に渡してやった。 ミドリは急いでティッシュで体と水槽の底を拭いている。 そして綺麗になったところで 「お前はやっぱり水槽の中だけで生活しろ。」 そう言って俺は読書を再開した。 チラッと見ると、ミドリは水槽の中で凹んでいた。 夜になったのでミドリを風呂に入れてやる。 ミドリはどうやら風呂が気に入ったらしくかなり嬉しそうにはしゃいでいる。 「何がそんなに嬉しいんだ?」 「体が綺麗になるテチ。それに髪の毛もサラサラでいいニオイがするテチ。 それにお風呂に入ると全身がポカポカしてとても気持ちいいテチ♪」 「ふ〜ん。」 風呂を上がるとミドリにタオルを渡す。 「自分で拭け」と命令するとミドリは不器用ながらも体を拭き出した。 俺がドライヤーで髪を乾かしていると、興味深そうにそれを見つめているので ドライヤーをミドリに向けてやった。 そうするとビクッっと驚いて逃げていった。 それでも気になるのか、物陰からこっちを見ている。 俺は再びドライヤーを向けると「テチャァァァ!」と言って水槽のほうへ逃げてしまった。 わけのわからない奴だ。 風呂のあとは晩御飯だ。 肉を冷蔵庫から出すと、ミドリは目を輝かせて嬉しそうに水槽の中で不思議な踊りを踊っている。 どうやら罰のことを忘れているようだ。 そんなことは放って置いて、俺は自分の分だけの晩御飯を用意する。 今晩は焼肉定食だ。 肉の焼けるいいニオイがする。 ミドリは昼御飯を食べていないからか、目を血走らせ涎を滝のように垂らしながら待っている。 料理が完成して俺はミドリを水槽からだしテーブルの上に置く。 置いた瞬間、ミドリが料理に向かってダッシュしたので カウンター気味にデコピンを食らわせる。 バキッ! 「テピャ!」 悲鳴を上げて後ろに転がるミドリ。 俺は落ちないように支えてやり、ミドリに言った。 「これはお前の晩御飯じゃない。」 「テテッ!じゃあ、ワタチの御飯はどこテチ?」 「お前もう忘れたのか?昼間言ったろ?今日一日飯抜きだって。」 「テチャア!?」 「お前はそこでジッとして、俺がこの御飯を食べるところをよく見ておけ。 もし動いたら禿にして公園に捨てる。いいな。」 「テエエェェ。」 ミドリは涎と涙を流しながらこちらを見ている。 すでにミドリの周りには涎と涙の水溜りが出来ていた。 ミドリは俺が口を開けると、自分も大きく口を開け 俺が咀嚼すると、自分も咀嚼している。 俺が飲み込むと、ミドリも唾を飲み込んでいる。 ちょっと面白いな。 「なあ、晩飯食いたいか?」 「テェ!?食べたいテチ。お腹いっぱい食べたいテチ!」 「食わせてやろうか?」 そういって焼肉の一切れを掴み、ミドリの前に持っていく。 ミドリが口を開けて食いつこうとする寸前で箸を引っ込め、肉を俺の口に運ぶ。 ミドリはガチッ!っと大きな音を立てて歯と歯を合わせていた。 そして意地悪をした俺に怒り出した。 「何するテチ!早く御飯欲しいテチ!どうしてそんな意地悪をするテチ! 御飯食べさせてくれるって言ったテチ。」 「だから、俺は言ったろ。冗談を言うって。それに『食べさせてやる』って言ってないだろ。」 「テチャアアアア!」 ミドリは顔を真っ赤にしながら、俺に向かってきた。 だがミドリよ。肝心なことを忘れてないか? 「あ、お前、動いてるな。あ〜あ、禿裸+公園に捨てるの決定だな。」 俺の一言でミドリは顔の色を赤から青に一気に変化させた。 血圧とかどうなってるんだろ? 「テ?…テエエエエエエエ!!待って欲しいテチ。許して欲しいテチ。 何でもするから許して欲しいテチ。」 「え、何でもするの?」 「ハイテチ。」 「じゃあ、お前一人で公園を一周してきて。」 「テェ!?そんなの無理テチ。殺されちゃうテチ。」 「何でもするって言っただろ?アレは嘘なのか? 嘘つきを家に追いとくわけには行かないな〜。」 「テェェェ・・・」 ミドリは相当困っているのか、頭を抱えて悩んでいた。 5分ほど考え込んでいた後、いきなり倒れた。 額に手を当てるとかなり熱がある。 どうやら脳がオーバーヒートしたようだ。 俺はミドリを水槽に戻してやった。 しばらくしてミドリが気づいた。 どうやらお腹が減って目が覚めたようだ。 「ご主人様、お腹減ったテチ。御飯欲しいテチ。」 「お前今日一日飯抜きだろ。」 「?何言ってるテチ?そんな事知らないテチ。」 「?ミドリ、寝ている前のこと覚えているか?」 「テェ!?なんでご主人様が私の名前知っているテチ?」 「え?何でって…。…ミドリ、俺がお前と暮らして何日目だ?」 「変なこと聞くテチ。2日目テチ。」 どうやらオーバーヒートして、記憶が飛んでしまったようだ。 それにしても都合の悪い事だけ、全部忘れやがって。 今までのことを説明してやる。 ただし御飯の事は、すでに食べたことにしておいた。 ミドリはお腹を鳴らしながら寝ようとしているが 今は睡眠欲より食欲が勝っているようで、なかなか眠れないようだ。 寝返りを何度も打っては、お腹に手を当てている。 そんなミドリに俺はアドバイスをしてやる。 「腹が減っているなら水でも飲んで誤魔化したらどうだ?水ならいくらでも飲んでいいぞ。」 「テチー。そうするテチ。」 ゴグッゴクッ 「プッハ〜、なんかお腹がタプンタプンするテチ。でもさっきよりマシテチ。」 そう言って眠りに着いたミドリ。 寝ているミドリの頭にそっと指を近づけて、デコピンをする。 ベキッ! 「テチャ!何するテチ!」 「教えたはずだぞ。『おやすみなさい』を言えって。」 「忘れてたテチ。おやすみなさいテチ。」 「おやすみ。」 俺もミドリにつられて眠気がきたので寝ることにした。 続く
