タイトル:【愛】 躾競争5
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:17209 レス数:0
初投稿日時:2008/06/13-21:44:58修正日時:2008/06/13-21:44:58
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躾競争5


【あらすじ】

 としあき・すれあき・ひろあきの三人は、実装石虐待に飽きたため、今度は「実装石を理想的な状態に育てる」というテーマで躾競争を行う
ことにした。
 野良実装を強制出産させ、生まれた超未熟児達を三分割して育て始める三人。
 優勝すれば賞金が得られるが、最下位になると「全裸でホモビデオ鑑賞(しかもそれをビデオ撮影)」という屈辱的地獄を味わわされる。

 前回最下位だったひろあきは、全力で未熟児実装育成を進める。
 これは、そんなよくありがちな実装虐待作品である。



          ※          ※          ※


「今から二日以内に、この仔実装達を躾けろ。
 お前達と同じくらいにまで躾けられたら合格だ。
 だが、二日後どちらかが糞蟲のままだったら、お前達には地獄を味わってもらう!
 勿論、こいつらを殺しても同じだ」


 テチャッ?!
 テチィッ?!

 ひろあきの言葉に、ミドリとれぴが飛び上がらんばかりに驚く。

 これは、各個体がそれぞれ身につけた躾けをどれだけ理解しているか、そして如何に子供を教育していけるか、その素質を見定めるための
テストだ。
 云うまでもなく、たとえ躾をしっかり身に付けている者でも、それを他者に施すにはまた別なスキルが求められる。
 ひろあきはそれを充分理解した上で、ミドリとれぴに条件を課しているが、本当の目的は別だ。

 追加された糞蟲仔実装には、それぞれA・Bという簡素な呼称が与えられる。
 どちらも性格は最悪、態度も悪くワガママ放題。
 AとBは、ミドリとれぴが近付こうとした途端威嚇を始め、ついには糞を投げ始めた。
 糞はミドリ達に当たりこそしなかったが、水槽内はどんどん汚されていく。
 ひろあきのわざとらしい咳払いを聞き、ミドリはさっと顔を青ざめると、早速AとBを止めるための行動を開始した。

 テチテチ、テチュー! テチュテチュ!!

 テチャァァァ! テジャアァァ!!

 テチャテチャテチャ、デジャアーッ!!

 ミドリは自身が汚されるのも構わず、二匹を取り押さえて必死で何事かを言い聞かせている。
 だがれぴは何もしようとせず、むしろミドリが動いた事に安心したようで、その場にどっかと座り込んでしまった。
 本来なら、ここでれぴにきつい一撃を加えるところだが、ひろあきは、今回もあえて手は出さないつもりでいた。

 掴み合いを続ける三匹の仔実装と、それを眺めるれぴ。
 その間に、ひろあきはこっそりと食料を置く。
 それは実装フードの中でも、特別にまずいと定評のある最安値のもの(中国産)だ。
 水分ほぼゼロのぱさぱさした食感、更に本気で歯を立てないとびくともしない“親指以下完全お断り”の硬度、中空のため一度割れると突然
飛び散りやすくなる破片。
 規定量を得ても満腹感が全く得られず、しかもムダに消化が良いためすぐ腹が減り、栄養もほとんどないという困ったもの。
 とどめに、普段は無臭だが水気を含むと、飢えた野良実装ですら顔をしかめるほどのきつい人工臭を発生させるという性質まである。
 キロ単位販売で、同重量の国産品の1/5という低価格の上、その性質上虐待に適していると一部に異常な需要がある製品であり、ひろあき
は常にこれを十数キロ単位でストックしている。
 噂では、食糞させた実装石の糞を更に食わせ、その繰り返しの果てにひり出させた「糞の残骸の中の残骸」を材料に用いているというが、
詳しい事はひろあきにもわからない。
 彼は、これを「ミドリとれぴにとっての一日分」だけ盛り、代わりに水だけは充分に補充した。

 四匹が餌の酷さに気付き、揃って悲鳴を上げたのは、それから約二時間ほど後のことである。

 
       ※          ※           ※


 散々暴れまくったA・Bとそれに無理矢理付き合わされたミドリは、極限の空腹状態で中国産実装フードに飛びついたが、すぐに悲鳴を
上げて飛びのいた。

 テチャテチャ、テチャーッ!!

 テチィテチィ、テチテチ、テェェーッ!!

 それまで上等な肉をたらふく食べ続けて来たAとBが、ミドリに食って掛かる。
 どうやら、彼女がこのまずい餌を用意したと思いこんでいるようで、その態度から「もっと美味しいものを出せテチュ」的な事をほざいている
だろうことが、よく判る。
 しかも、怒りながらもダダ漏らしのため、餌皿周辺は瞬時に酷い有様となった。
 困り果てたミドリは、れぴに近付き何かを耳打ちするが、当の本人は知らん顔だ。
 その視線は、餌皿の横で自らの糞を踏みつけているAに向けられている。
 ひろあきは、そのどこかねちっこい視線に気付き、フンと軽く鼻を鳴らした。


 最初の変化は、それから更に二時間後に起こった。

 どこからひり出したのか、水槽の床の約1/3程を糞で汚染したAとBは、誰にも咎められない事をいいことに、ついにはミドリとれぴに対して
無意味な糞投げを始めた。
 あげくに、チププとあざ笑っている。
 餌にはまだ誰も口を付けていないようで、相当な嫌われようだ。
 全身糞だらけにして、とどめとばかりに顔面で大きな糞弾を受け止めてしまったミドリは、ついに泣き出して身体を洗う水桶の方へ逃げ出した。
 それを追ってテチテチと走り出す二匹の仔実装。
 Bがれぴの眼前を横切ろうとしたその瞬間、驚くべきことが起きた。

 ——ペシッ

 テチャッ?!

 べちゃん!

 Bは、突然立ち上がったれぴのラリアットを受け、(仔実装にしては)豪快にひっくり返った。
 床は衝撃吸収力の高い低反発クッションなので特に大きな怪我はなかったが、突然のショックに大いに驚いたようで、Bはワンワン大声を
上げて泣き出した。
 泣き声がピークに達するより早く、れぴの追撃が決まる。
 Bは、今度は後頭部をしばき倒されて顔面を床に激突させた。
 起き上がるより早く後ろ髪を鷲掴みにされ、脚で後頭部を踏んづけられて動きを封じ込められる。
 うつ伏せ状態のBは、悲鳴を上げる事も出来ないまま、ただ手足をバタつかせるだけだ。
 そんな過激な暴力を振るっているにも関わらず、不思議なことに、れぴの表情は異様なほど穏やかだ。

 脚に更に力が込もり、「メキッ」という微かな音が響くと、やがてBの手足は動かなくなった。

 れぴは動きの止まったBを解放し、その左腕を掴み……背中側に強く引き倒す。
 静かに見つめているひろあきの耳にも、「メリッ」という微かな音が届いた。
 と同時に、失神していたBが痛々しい悲鳴を上げた。

 テヂャアァァァァァ?!

 れぴが、Bを「破壊」しようとしているのは明らかだ。
 しかも、その態度や表情には、一切の慈悲やためらいはない。
 それどころか、先程より瞳が爛々と輝いているように感じる。
 Bの悲鳴にハッとしたミドリとAは、その光景を呆然と見つめている。

 やがて、Bの左腕は反時計周りに捻られ、ぷちぷちと肉が裂け始める。

 デッギャアァァァァ!! デチイッ、デヂィィィッ!! デギャアァ———ッ!!!

 血涙を流して暴れ、れぴから逃れようとするBだったが、れぴとの体力差は相当なもののようで、彼女はまったくビクともしない。
 半分ほど千切れかけた腕を見て、ペロリと舌なめずりをする。
 その瞬間、ひろあきは思わず「やっぱりな」と囁いた。

 と同時に、両者の間にミドリが飛び込んできた。

 テチィッ!!


 れぴに体当たりして引き離し、千切れかけた腕をいたわるようにBを抱き上げる。
 一瞬ひろあきの顔色を窺ったミドリは、テチテチと鳴きながらBを連れ、Aの許へと走っていく。
 腕の痛みで大泣きし続けるBと、いまだ展開に付いて行けず呆然としているA。
 ようやく立ち上がったれぴは、小首を傾げてミドリ達の方を見た。
 その表情はとても残念そうだが、怒りの念は感じられない。


「ちっ、ミドリの奴気付いたか?」


 れぴの凶行にすっかり怯えてしまったAとBは突然大人しくなり、また何かを吹き込まれたのか、ミドリの傍から離れず、大人しく付き従う
ようになった。
 いまだワガママは唱えるし、トイレはおろか脱糞を止める事すら出来ないようだが、意外に結束力を高められたようだ。

 当然、れぴは三匹に距離を置かれる形になり、少し寂しそうな態度を取るようになった。


 それからしばらく後、ミドリは早速、二匹に躾を行い始めた。 
 相当てこずってはいたが、逆ギレはせず、地道に丁寧に教授を繰り返す。
 あのようなトラブルの後でも、ひろあきの命令を記憶し、実行しようとしているのだ。
 だがその間、AとBを決してれぴに近づけようとはしない。

 水槽内に、つかの間の平和が訪れたようだ。



       ※          ※           ※


 二日目、Bが水槽内から消えた。

 ここしばらくの観察と研究・探し物のため、睡眠時間を削っていたひろあきは、プレハブの中でうたた寝してしまったため、消えた瞬間を確認
出来なかった。
 汚れ果てた水槽の中では、ミドリに抱かれて眠るAと、その反対側で背を向けて転がっているれぴだけが居る。
 その中央に、Bのものと思われる実装服の破片と、無残に引き千切られた後ろ髪の一方が散らばっている。
 また、血痕も確認出来た。

 中国産実装フードは、最後に確認してからは全く手を付けられていない。
 ミドリ達によって少しだけ齧られたらしき粒が一つだけあったが、表面を少し擦った程度だ。
 粉すら散らばっておらず、ミドリやAの口周りにも、破片は付着していない。

 ——当然、血糊も。

 だが、れぴは違った。
 口の周りにべっとりと血が付いており、しかもそれを何度か袖で拭ったようで、右腕の部分だけドス黒く変色している。
 そして、Bの実装服の残骸がある地点から、れぴの傍まで点々と血痕が続いている。
 眠い目を擦りながら、ひろあきは、「やっぱりなぁ」と独り言を呟いた。


 三匹を起こさないように、以前使った注射器に水を込める。
 眠ったままのれぴをそっとつまみ上げ、目覚めるより先にノズルを総排泄孔に突き立てる。
 突然の痛みに目を覚ますが、それとほぼ同時に、ピストンが強く押し出される。

 れぴの口の中から、おぞましい色に染まった肉塊が、吐瀉物・液便と共に大量に流れ出た!

 ギャ…!! ゲボゴボゲボゴボ……!!

 濁流が体内を駆け巡り、腹の中に溜まった物を強引に押し戻す。
 凄まじい苦痛に加え、突然の呼吸困難、内臓を乱暴にこねくり回される違和感が同時に押し寄せ、れぴの身体は意志に関係なく七転八倒
を繰り返す。
 小鳥から逃れようともがく芋虫のような動作の後、未消化状態の“かつてBだったもの”が、水槽の床にべちゃりと広がった。
 仔実装の頭部の一部が発見されたため、もう誤魔化しようはない。
 強い酸味を含む腐臭が鼻を突き、さすがのひろあきもゲホゲホと咳き込んでしまう。
 れぴの騒ぎように目覚めたミドリは、瞬時に顔色を変えるが、もう何もかも遅い。
 眠りから覚め切らないうちに、体内に収めていたものをすべて吐き出されたれぴは、もはやまともに動く事も出来ない。
 共同生活を強制されてから、たった10時間程度……それすらも耐えられないほどに、れぴは腐り果てていた。
 
 テチャァァァッ!! テチテチ、テチィーッ!! ——ヂャッ?!

 必死で何かを叫びながら駆け寄るミドリを、デコピンで吹き飛ばして失神させる。
 ひろあきはようやく目覚めたAをつまみ上げ、瞬時に髪と服を毟り取ると、半死半生状態のれぴの前にポトリと落とした。

 テヂャッ!!

 Aはその衝撃で両脚を複雑骨折してしまい、逃げる術を失った。
 ミドリは昏倒し、こちらの様子に気付いていない。
 まだ激しく咳き込んでいるれぴは、突然目の前に現れた「ご馳走」を見て、赤と緑の瞳を目一杯に開く。
 その目は、明らかに獲物を見つけた歓喜の光に満ちている。
 つい今しがたまで、死と隣り合わせの地獄を味わわされた筈なのに即応する様は、激しい嫌悪感を覚えさせた。
 ひろあきは、冷たい声でれぴに囁く。

「いいぞ」

 テ?

「許してやる。お前の好きにしろ」

 …

 Aは、ぐしゃぐしゃになった下半身に必死で手を伸ばし、苦悶に喚いている。
 そっちに気を取られているせいか、れぴが投げかける危険な視線にまったく気付いていない。


 これは、れぴに対する最後のテストだった。
 経緯はともかく、完全に同族食いを覚えてしまったれぴは、もはやミドリの情操教育用としての役割を果たせない。
 いくらひろあきが厳しい監視を続けていても、れぴとミドリの間で「彼女達だけの情報交換」が充分成立可能な以上、どんな悪影響を及ぼす
か判らない。
 最悪の場合、ここまでの経過は総てムダになってしまう。
 れぴの悪癖がミドリに移ってはまずい。
 恐らく、先の試練で飢餓感に負け、同族の肉を食ってしまったれぴは、ミドリによってその痕跡を抹消されたのだ。
 食べ物のない環境で、固形の糞をしてしまえば、それは何かを食べた証拠となる。
 それを悟ったミドリは、れぴを守るため、証拠隠滅のつもりで彼女の固形糞を食ったのだ。
 だから、ミドリの腹からは固形糞が出たのに、仔実装を模した「惣菜」を食べようとはしなかった。
 そんなミドリの想いに、れぴはまったく気付いていない。
 だからこそ、こんなにもあっさりと、しかもあれだけ恐れていた筈のひろあきの眼前で、堂々と同族食いを始めようとした。
 ミドリとれぴの間に、どのようなやりとりがあったのかは、わからない。
 実装リンガルを絶対使用しないと決めているひろあきは、今後もそれを知りうる術を持たない。
 だが、それでも構わなかった。

 今、再び強制的に空腹感を与えられたれぴは、目の前で禿裸に剥かれた仔実装の肉を見ている。
 その上、ひろあきから許可も与えられている。
 ひろあきは、のた打ち回るAの腕を掴んで容赦なくぶちりと引き千切ると、れぴの前に投げつけた。

 テ、テジャアァァァッ?!?!

 更に火が着いたように泣き叫ぶA。
 それを合図に、れぴの手が、千切られたAの腕へと伸びる。

 テェェェ……テッチュ〜〜ン♪

 先ほど与えられた苦痛など既に忘れたかのようにニッコリと微笑むと、れぴは、Aの千切れた腕を嬉しそうに振り回し……口に含んだ。
 途端に、恍惚感溢れる表情を浮かべる。

 にちゅっ、ねちゅっ…という耳障りな咀嚼音が、水槽内に響き渡る。
 れぴは、ついに、ひろあきの眼前で堂々と同族食いを行った。

 テッチュ〜ン♪

 溢れんばかりの、幸福の笑み。
 それは、れぴがひろあきに見せる極上の悦びの感情だった。
 最初で、最期の。

 れぴは、ひろあきの拳でその身を叩き潰されるその瞬間まで、幸福の絶頂にいた。


 ——ズンっっっ!!!

 ヂッ

 パシャアァ—ッ!!


 垂直に振り下ろされた拳が、水槽を激しく揺らし、気絶していたミドリを目覚めさせる。
 綺麗な放射状に広がる血飛沫は、ボロボロにされたAの全身を濡らし、また床面に大きく見事な模様を描き出す。
 緑と赤の混じった血液を顔面に受けてしまったAは、突如腹部を不気味に膨らませ、新たな激痛に身をよじった。

 ヂ、ヂィィィィィ——ッ?!?!

 血飛沫が目に入り、運悪く色が揃ってしまったらしく、Aの破壊された下半身のいたるところから、極小の胎児がぬるぬると零れ落ち始める。
 いずれも未熟児中の未熟児で、生誕時の歓喜の声すら立てない。
 これらは、ヘタをするとミドリやれぴ達以上の儚い存在かもしれない。
 皮膚の裂け目、傷口から粘膜ごと滑り落ち、床に接しただけで、頭部や胴体をひしゃげさせて次々に死んでいく。
 また、痛みにのたうつA自身が、溢れ出る子供達を次々に押し潰している。
 その様子は、まるで腹部から嘔吐物を撒き散らし、その中で悶えているように見えた。


 テヂュワアァァ——!! テ、テヂイィィィィ!!!


 ——パキン


 たっぷり五分ほどのた打ち回った後、Aは、ついに痛みに屈して自壊した。
 体内からは、なおも未熟児達が次々に溢れ出て、どんどん死んでいく。
 たまたま体格に恵まれ生き残った蛆実装の何匹かが、粘膜の薄い部分から顔を覗かせ、母親の崩れた下半身に食み付き始める。
 まさに、それは「蛆」。
 その光景はあまりにもおぞましく、ひろあきですら、一瞬次の行動を忘れさせるほどだった。

 だが次の瞬間。
 更に予想外の事態が、発生した。

 テ……テヒ……


 パキン!


 水槽の反対側から、再び偽石が割れる音がした。

 水槽の壁に背をもたれ、ぐったりと四肢を投げ出し、舌をでろりと伸ばすミドリ。
 その表情は恐怖に満ち、そして、両目は濁ったグレーに染まっている。
 ひろあきの背に、冷たい物が走った。

「お、おい!」

 完全に手遅れだった。
 元々精神的に強靭ではない仔実装、しかも元は超未熟児だったミドリにとって、この凄絶な光景は衝撃が大きすぎたようだ。
 しかも、先程まで大事な家族が居た場所には、巨大な拳と大量の血糊がある。
 それだけあれば、賢いミドリなられぴの死を容易に悟れただろう。

「——根性ナシがっ!!」

 ミドリのためにと思った間引きは、最悪の結果を生んでしまった。
 ようやく拳を引き上げたひろあきは、短く舌打ちすると、ミドリの身体を手に取り、床に叩きつけるため思い切り振り被った。


          ※          ※          ※



 競争開始から、二ヶ月目。
 ついに、二度目の…そして最後のお披露目の日がやってきた。
 としあきの家に再び集まった三人は、以前のように自慢の子供達を披露する。


 としあきの仔実装は、既に20センチ級の立派な体格に育っており、とても超未熟児とは思えなくなっていた。
 清潔な身体、ほのかに漂う爽やかな芳香、ほころぶ笑顔、そして透き通るような美しい肌と髪。
 それは、どう見ても完璧な「飼い実装」の姿だ。
 非の打ち所はまったく見受けられず、としあきも自信満々の様子だ。
 例の錆びたカッターを使うまでもなく、完璧なまでに従順な態度を示している。
 すれあきもひろあきも、その素晴らしい仕上げぶりには、舌を巻くしかなかった。

 だが、以前いた筈の親指二匹が、今回はいない。
 二人は、それが気になって仕方なかった。

「ああ、あの子達ね——まあ、いいじゃない」

「すっげー気になる! どうなったんだよ、教えてくれ」

「そうだよ、あれも結構イイ線言ってたじゃん。何があったんだよ?」

 食い下がる二人にニッコリ微笑むと、としあきは、表情に似合わない冷たい声で、静かに囁く。

「今ここで説明して、この子にパキンされちゃったら、イヤだもん」

「「 …… 」」

 その言葉に、ひろあきもすれあきも、これ以上追求する事はできなかった。


 続けてすれあきが披露したのは、15センチと20センチに成長した仔実装姉妹。
 親指は卒業出来たようで、これで、公開解体対象は一匹も居なくなった事になる。
 こちらも、としあきの仔実装に勝るとも劣らないほど小綺麗で大人しく、健康そうに見える。
 肌も張りがありつやつやしていて、髪も申し分ない。
 前回、すれあきにべったり甘えていたあの個体だが、どうしたことか、今回はしっかり親?離れを果たしている。
 それどころか、まるで感情がなくっなてしまったかのように静かで、ピクリとも動かない。
 よく見ると、少し小さい方の右目が完全に復元されておらず、何か激しい責めを受けたらしき痕跡が窺えた。

「はい、挨拶しなさい」

 すれあきの優しい呼びかけに反応して、二匹は、まるでゼンマイ仕掛けのロボットのように会釈をする。
 思わず「ギ・ギ・ギ」と擬音を入れたくなるような固い動きで、ひろあきととしあきは思わず目を合わせた。

「やったな、すれあき?」

「今度は、どんな過酷な地獄を堪能させたんだい?」

 二人の質問に対して得意げに鼻を鳴らすと、すれあきは、二匹の頭を優しく撫でつつ、静かに話し始めた。

「実はなー、前の時の生き残りに子供産ませて、こいつらと一緒に育ててたんだ。
 で、途中からそいつらをわざと糞蟲化させてな、この子達の目の前で生きながら解体してやったんだよ。
 “悪い子になったら、こんな風になっちゃうんだよ♪”と言いながらね」 

 すれあきが説明しているのは、前回としあきが明かした手法だった。
 やはり、過激な「落とし」をしっかり施していたらしい。 

「え、えげつな〜!!」

「その、目を怪我したっぽい子はどうしたの?」

「ああこれ? よりによってそいつらの命乞いをしたからさ。半田ごてでね、ブスッと」

「ぐえ!」

 さも当然という態度で、すれあきはさらっと説明する。
 どうやら、熱した半田ごてで一度目を眼孔ごと焼き、後に傷口を丸ごと抉り取って強引に復元させたのだという。
 家族思いだった妹は、それでようやく大人しく(無感情に)なったそうだ。
 「やっといい子に育ってくれて、俺は嬉しいよ♪」と呟きつつ、姉妹の頭を愛しそうに撫でるすれあき。
 だが、その目は相変わらず、まったく笑っていない。
 ひろあきは、初日に彼の踵落としで床の染みになった仔が、前回は物凄く甘やかされていた事を思い出し、この姉妹の行く末を
ゼロコンマ数秒間だけ哀れんだ。


 続けて、ひろあきの番が来る。
 期待の視線が注がれる中、ひろあきは、ケースの中から小綺麗な仔実装を取り出した。

「さ、ミドリ。ご挨拶しなさい」

 テチ!

 命令を受けた仔実装は、ニッコリと微笑みながら、としあき達に頭を下げた。
 しかも、スカートの端を持ち上げ、膝を揃えて少し曲げるという気取ったポーズまでしてみせる。
 更に、クルリとステップを踏んで回転し、もう一度ニコッと笑った。
 そのあまりの愛らしさに、としあき達だけでなく、その連れ子達まで驚いている。
 ひろあきの連れてきたミドリは、誰がどう見ても、完璧な…否、それどころかここに居るどの個体よりも上等な仕上がりだった。

「へへーん、どうだ」

「す、すっげぇな…ひろあき!!」

「これは本当にすごい。まるでお人形さん…いや、妖精みたいだ!」

 テェェェ…
 テチュウゥゥ〜…
 テチィ…

 としあきやすれあきの仔実装達は、感嘆と嫉妬の混じった声を漏らしている。
 本来なら、それは飼い主達にたしなめられる態度だが、当の本人達はそれすらも忘れ、ミドリに見入っている。
 身長12センチ、亜麻色の透き通るようなカールヘア、生まれたての赤ん坊のように柔らかいピンクの肌、そして、何よりあの未熟児とは
思えないほど健康的なイメージ。
 更に加え、死と隣り合わせの躾を受け続けたとはとても思えないほどの、天真爛漫さ。
 もし事情を知らない人間が見たら、十数万円クラスで取引されている超高級飼い実装と信じてしまうだろう。
 それくらい、ミドリはパーフェクトに成長していた。

「これは、決まったかな」

「あううう…絶対自信あったのになぁ! まさかひろあきに抜かれるとは!」

「おいおい、酷い言い方だな。俺が一番ダメみたいじゃねーか」

「いや、実際今まで一番ダメだったから、驚いているんだよ?」

「ひ、ひでー!」

 ミドリを絶賛するとしあき達の声が本音である事を、ひろあきはすぐ理解した。
 ふざけた口調で褒めてはいるが、二人とも、目に激しい嫉妬の光を宿らせている。
 ひろあきは、絶大な自信を以ってこのミドリを連れて来ていた。
 たとえ二人がどんなに素晴らしい仔実装を育てたとしても、このミドリには敵わない。
 敵う筈など、ない。
 そうハッキリ断言できるだけの、理由が存在するのだ。



 (次ラスト)

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