躾競争 2 【あらすじ】 としあき・すれあき・ひろあきの三人は、実装石虐待に飽きたため、今度は「実装石を理想的な状態に育てる」というテーマで躾競争を 行うことにした。 野良実装を強制出産させ、生まれた超未熟児達を三分割して育て始める三人。 優勝すれば賞金が得られるが、最下位になると「全裸でホモビデオ鑑賞(しかもそれをビデオ撮影)」という屈辱的地獄を味わわされる。 前回最下位だったひろあきは、全力で未熟児実装育成を進める。 これは愛と友情、そして真実に満ち溢れた、愛護派の皆様に捧げる作品である。 ※ ※ ※ 三週間目・育成開始から20日経過。 生き残ったのは、健康組ミドリと病弱組れぴ、ぷちの三匹。 蛆実装は進化または死滅して、今居るのはすべて親指実装。 いずれも身体的にはしっかり育成出来たようで、転んだりしても全然問題はないくらい丈夫になった。 豊富な栄養と偽石情報書き換えの賜物だが、これでようやくスタートラインだ。 既に栄養床と綿は取り払われ、新しく用意した低反発クッションを敷いて生活環境を整える。 親指達の様子だが、相変わらずぷちはボーッとしているだけで、自分から何もしようとしない。 そのため、いつもミドリが世話をしてやっている状態だが、どうもれぴはそれが気に入らないらしい。 ミドリがぷちにかかりっきりになると、遊び相手がいないためか不機嫌になり、時折ぷちを叩いたり蹴ったりする。 だがミドリが立ちはだかるとすぐに暴行を止め、ピーピー泣き出してワガママを唱え始める。 そして、ミドリがそれを慰めるという展開が、幾度となく繰り返されている。 ミドリもれぴも、大変に躾け甲斐のありそうな個体に育っている。 ひろあきはぷちは無視して、ミドリとれびに、徹底的に躾けを施す事を誓う。 そのためにも元気を付けてもらわなければならないため、高濃度栄養剤を混ぜた牛乳と、栄養豊富な実装フードを砕いて固形のまま 与える。 親指達は、初めて与えられる固形物の餌に難儀している様子だったが、それでもなんとか食事を進めようと努力しているようだ。 ぷちは、れぴに苛められても泣くでなく喚くでなく、ただ無言でじっと耐えている。 食事も口に運ばれれば食べるが、自分では絶対に食べようとしない。 先の通り、このぷちを情操教育に使用する以上、ひろあきの眼鏡に叶うのは本当にミドリだけとなってしまうようだ。 この時点で、ひろあきにとってのれぴの扱いがほぼ決まった。 ぷちとは違う形で、れぴには役立ってもらう事にする。 ひろあきは、ミドリを主として育成を施すと決め、早速準備を進める事にした。 本音を言えば、もう二匹ほどミドリと同格に扱える個体(ライバル)が欲しいところだったが、そんな贅沢は言えなかった。 ※ ※ ※ 親指ミドリは、当初に比べると身体がかなり丈夫になり、普通の親指実装と大差ないくらいに育ったようだ。 性格は大人しくて優しく、他者の面倒を見るのが大好きな上、ひろあきを育ての親と認知しているようで、目が合うと必ず挨拶か リアクションを行うようになった。 ただし、どうしてもお漏らし癖が抜けず、服やパンツがかなり汚れている。 これまではぬるま湯に服を着たまま浸けて大雑把に洗い流す事しか出来なかったが(実装服を脱がす過程で圧死してしまう危険があった ため)、この辺りに躾けを施す余地があると判断出来る。 親指れぴは、身体こそミドリより大きく頑強だが、精神的成長がまったく伴わず、ほとんど蛆実装のままのようだ。 お腹プニプニはさすがに求めないが、代わりにしょっちゅう遊んで欲しいとミドリにせがんでいる。 しかも、言う事を聞いてもらえないとウンチ投げ攻撃をしてくるという、困った性質もある。 また、ひろあきを完全に無視しており、育成者・主人であるとも認知していないらしい。 どうやらミドリに対する依存度が高いようで、独占欲もかなり強いように思える。 排泄や食事のスタイルも酷いもので、常に身体がべとべとに汚れている。 また、身体が痒いらしくいつもぽりぽりと掻いているのだが、その様子が妙にババ臭い。 この様子なら、ミドリと同じ躾けを施していく事が出来そうに思えた。 最後の親指ぷちは、飽きもせず二人のやりとりをずっと見つめているだけだ。 身体こそミドリ並に育っては来たが、まだどこかひ弱そうなイメージが残っている。 たまにひろあきの方を見て、何か言いたそうな顔をする時があるが、鳴き声すら上げない。 ミドリに庇われても、世話をされても明確な対応が出来ないようだ。 糞量が極端に少ないのも気になるが、その代わり、三匹の中ではもっとも綺麗な身体をしている。 ついでに例の成体実装は、その後ふんだんに餌や菓子を与えられ、すっかり太ってしまった。 今では当初より二周りも太くなってしまっている。 声を出さないから煩くはないが、目が合うと必ず何かを要求してくる。 ひろあきは相当うざったく感じていたが、まだ手を出すわけには行かなかった。 親指達の最初の躾けは、自分だけでトイレができるようになる事と、身体を綺麗にする事。 ここから、ひろあきの介入が始まる。 まず、350mlのペットボトルの底部約3センチほどを切り取り、これの周囲を粘土で固め、更にその上に滑り止めシートを適当に被せる。 これで、真横から見ると緩やかな傾斜のある台形のトイレが完成した事になるが、更に内部にトイレットペーパーを厚めに敷き、万が一 親指達が落下しても怪我をしないように配慮する。 親指達は、まずこの傾斜を昇り、最頂部で尻を出してペットボトルの中に排泄する事になるのだが、身長5センチの彼女達にとって、 自身の身長の5分の3に及ぶ高さを上るのは容易ではない。 だが、これくらいのハードルは乗り越えてもらわなければ、とてもじゃないが他の二人に見せる事など出来ないのだ。 プラ板の上に乗せた粘土台付きトイレを、親指達のケースの中央に置く。 ひろあきの存在をもっとも認知しているミドリが、即座に反応して、不思議そうに見つめてくる。 「これはトイレだ。今日からはここでウンチしなさい。わかったね」 優しく声をかけてやるが、ミドリは小首を傾げ、れぴは無視している。 ぷちは相変わらずの無反応状態。 あれだけの未熟児だったのだから、人間の言葉をどれだけ理解出来ているものか、計る術は少ない。 ひろあきは、もう一度同じ事を言うが、ミドリ以外はまったく態度を変えない。 ここで、ようやく「躾け」の本領が発揮される。 ひろあきは、先端部を金ヤスリで少し削った縫い針を用意すると、素早い動きで、れぴとぷちの太腿辺りを突き刺した。 レ、レチャアァ〜〜!! ぷちの悲鳴が、初めて耳に届く。 この針は、先端の側面がギザギザになっているため、普通のもので刺すよりダメージが大きい。 ひろあきは、感覚的に先端1ミリを越えるかどうかという浅い刺し方をしたつもりだったが、初めて外部から与えられる「身体内部に到る 激痛」は痛恨の一撃に相当するようだ。 二匹は傷口を押さえてのた打ち回り、涙と涎、糞を撒き散らす。 唖然とするミドリをよそに、ひろあきは二匹の背中に、もう一撃ずつ加えた。 レチャアァ〜〜ッ!! レ、レチャァッ?! レチューレチュー!! ミドリはタタタと二匹に駆け寄り、ひろあきから庇うように立ち塞がる。 顔前に針を向けても、それがどういうものなのかわからないらしく、威嚇めいた表情を浮かべて食い下がって来たので、すかさず額を プツリと刺す。 レッチャァァァ!! 「ウンチはトイレでしなさい、と教えたね。今度から俺の言う事を聞かなかったり、無視したらしたら、痛い事をするからな」 レ、レエェェ…… ひろあきは、パンコンの処理をさせるため、ミドリをワリバシで摘み上げてトイレに誘導する。 最初は頭頂部に直接運んでやるが、そこから先どうすればいいのかは指示しない。 また小首を捻って考え込むミドリの眼前に、針を晒す。 それに怯えながら、一生懸命考えているミドリ。 だが、とうとう「成すべきこと」が思いつかなかったようで、その場でメソメソと泣き出した。 すかさず、後頭部に針を刺す。 しかも、今回はさっきより心持ち深めに。 レギャアァァァァッッ!!! れぴとぷちがハッと顔を上げるほど大きな悲鳴を上げ、ミドリはトイレの中に落下した。 後頭部を押さえようと手を伸ばすが、短い腕では届かないため、まるでバンザイしているように見える。 ひろあきは、また針を顔に突き付けながら、「ウンチはここでしなさい」と呟く。 ここに至り、ようやく針と激痛の関連を理解したらしい。 針先で膨らんだパンツを指し示してやると、やっと意味がわかったようで、慌ててパンツを脱ぎ始めた。 次に、視界から姿を消したミドリを捜し、うろうろと歩き始めたれぴを箸で捕らえ、宙吊りのまま先と同じ説明を加える。 だが、れぴはまったく話を聞く態度を見せず、無意味な威嚇を繰り返すばかり。 ひろあきは、顔面に三回ほど針を突き刺し、改めてその先端を眼前に向けた。 レチャァァァァッ!! トイレの中では、パンツの中の糞を落としているミドリが、不安げに顔を上げている。 ぷちも、不思議そうにれぴの様子を見つめている。 少し乱暴にトイレの脇に落としてやると、れぴはぐすぐす泣きながらひろあきを睨み、続けてミドリにレチレチと話し掛け始めた。 ミドリから、今されている事の意味をレクチャーされているようで、みるみるれぴの顔色が変わっていく。 ひろあきは、れぴもトイレの穴に突き落とすと、ミドリと同じように針をちらつかせて命令を加えた。 だが、れぴは針の意味を理解できないらしく、いまだ威嚇を繰り返す。 しばらく考えて、ひろあきは、こはあえて厳しく接する事にした。 針で、れぴの右目を刺し貫く。 しかも、今までとは違って、深々と…… ずぶ……っっ……! レ……ギャアァァァァァァアアアアア!!! レチャァァァッ!! 後頭部に貫通するほど深く刺し、しかも、わざと時間をかけて引き抜く。 刺されただけでなく、表面のギザギザのせいで痛みは更に増している筈だ。 今までなら、この衝撃で自壊してしまいかねなかったが、今はもうその心配はない。 隣で眠る成体実装がはね起きるほどの悲鳴を上げ、れぴは、必死で右目の針を抜こうと抵抗する。 だが、更にぶりぶりと脱糞したので、ひろあきは針をぐりっと捻った。 レ、ビイィィイイギャアァァァァ!! レ、レ、レチィィィィッ!! 喉が裂けんばかりに叫ぶれぴと、それを見て恐怖に震えるミドリ。 わざときついお仕置きを見せているのは、ひろあきの立場が絶対的上位であること、一切逆らえないこと、歯向かったら壮絶な激痛を 味わわされることを理解させるためだ。 こうすれば、ミドリ本体に過度のダメージを与えなくても、躾けの意味を理解させる事ができる。 元々このために生かしている存在なので、ひろあきは、れぴに対して一切容赦するつもりはなかった。 最悪の場合、ここで自壊されたとしても良いとすら思っていた。 五分以上もかけてれぴを痛めつけたひろあきは、ようやく針を抜き取り、あらためて二匹に命令する。 親指実装にとっての縫い針は、人間にとっての大剣に相当する。 それで頭を刺し貫かれたため、れぴは瀕死の重傷を負っていた。 トイレの底で汚物にまみれながら、息も絶え絶えになっており、脇ではミドリが心配そうに介抱しようとしている。 そんなミドリに、早くウンチをパンツから掻き出せと命じる。 すると、ミドリは首を横に振り、更にれぴを庇おうとした。 ひろあきが思っている以上に、ミドリの姉妹愛は強いらしい。 それはそれで感心するべき価値があるのだが、躾け中のため、今は汲んでやるわけにはいかない。 ひろあきは再び針を突きつけ、言う事を聞くように強要する。 それでもガンとして退かないため、ひろあきは、今度は針を脳天に深々とぶっ刺した。 ——ぷちの。 レチャァァァァアア?!!? レ、レチィッ?! 思わぬ方向から悲鳴が聞こえてきたため、ミドリは慌ててトイレから這い上がろうとする。 縫い針の半分ほどを突き刺し、しかも今度は一気に引き抜かれたため、傷口からは僅かに脳漿がはみ出ている。 唐突な激痛に仮死状態に陥ったぷちは、すぐに静かになる。 プレハブの中には、必死でトイレから這い上がろうとするミドリと、痛みに泣き喚くれぴの声だけが響いていた。 結局、ミドリは完全にトイレでの命令を果たせず、ついに本人も激痛を味わわされるハメになった。 縫い針の一撃は右腕に突き刺さり、ミドリは悲鳴を上げつつもんどり打ったが、それを無理矢理押さえつけ、真正面から睨みつける。 「俺の言う事を聞かなかったら、どうなるか、わかったな?」 ひろあきは恐怖で押さえつける躾けを施すタイプで、今回も例外ではない。 すっかりひろあきに恐怖心を抱いてしまったミドリは、全身を激しく震わせながら、ひたすらコクコクと頷き続ける。 「お前がミスをしたら、他の子達も同じお仕置きを受けることになる。気をつけろ」 レ、レチャァ…… 怖い目に遭うイコール脱糞、というのはいけない事だと感覚的に悟ったのか、ミドリは、持ち上げたひろあきの手の中で漏らすことは なかった。 明日は、いよいよ洗濯である。 この日、ひろあきは細かく砕いた安物の実装フードを砕いて与え、それまでのような牛乳浸しなどの手を掛けたことはしなくなった。 食環境が変わる事と、主人の関連性を理解させるために、これも重要な処置だった。 翌日には、全員の傷は回復しており、またいつものようにレチレチと鳴きながら遊び回り始めた。 まるで昨日の事を忘れているようだが、少しだけ変化が見られた。 遊びの枠内には、ぷちも加わっていた。 ※ ※ ※ ゲーム開始から、29日目。 一ヶ月目を迎える明日正午、としあきやすれあきが育てた子供達との第一次比較が行われる。 この時点で、それぞれの成長度合いを見比べ、今後に活かすのだ。 三人は、既にメールによるレポートを交わさなくなって、一週間ほど経つ。 その分、明日のお披露目が面白くなるという寸法だった。 ひろあきの所では欠員は出ておらず、いまだに三匹の親指が元気だ。 否、正確には親指、ではない。 三匹とも、若干ではあるが親指サイズより成長し、今では身長約7センチほどになっている。 ややミニマムな仔実装という感じで、それぞれの鳴き声も「テチュ」に変化した。 成長度合いはミドリ>ぷち>れぴの順だが、その差は定規で図らないとわからない程度の僅差で、ほとんど同格と言って良い。 ここまでの躾けの進行度だが、まずトイレは全員覚える事が出来た。 ただし、一日で覚えたのはミドリだけで、もっとも習得が遅れたのはれぴだった。 あの過激な躾けのせいで、れぴはトイレそのものに恐怖感を抱くようになり、便意を催してもなかなか近づけず、その場で泣きながら パンコンするようになってしまった。 当然、その後針による一撃を受けまくり、益々泣き喚くハメになる。 ひろあきは、同じ失敗をする者は決して許さず、どんどん仕置きを過激化させるタイプだ。 そのため、躾けられる側は益々恐怖と緊張感が増加して動けなくなってしまうのだが、それでもまったく容赦はしない。 それどころか、そういう状態の者を更に痛めつけ、追い込むのが大好きなのだ。 れぴは、最終的にはミドリのレクチャーを受けてようやくトイレを覚えるに到るが、その頃には、すっかりひろあきに歯向かう事はなくなって いた。 傍目からは致死に至りそうなほど過激な仕置きが続いたが、ひろあきは長年の経験からギリギリを見切っており、しかも傷が深い場合は 即座に活性剤を与えて無理矢理回復させるなど、様々な、それでいて彼女達の事情を一切無視した強引な工夫・処置を続けていた。 そして、それを見るミドリにも恐怖と緊張は伝染し、やがてれぴを反面教師にするようになった。 一方のぷちだが、こちらは最初に受けたお仕置き?以来、特に何事もなく躾けを身に付け、時々ミスはあるものの、ひろあきからの仕置き を受ける程の失敗はほとんどなくなった。 あったとしても、せいぜい初期に行われた針ツンツン程度で、それだけ受ければしっかりと「良い事・悪い事」を理解できるようになった。 この劇的な変化はひろあきの予想を大きく上回るもので、正直ミドリの育成のダシにするつもりだった彼の思惑から外れていたが、 それならそれでいいやと割り切る事にした。 続けて行われた「洗濯」の躾けでも、色々な事が起こった。 やはりミドリとれぴは、服を綺麗にする必要性が理解できなかったらしく、当初は服を脱ぐ事すら必死で拒んでいた。 仔実装といえど、服を身から離す事の意味を本能で理解しているのだろう。 だが、その本能の命令を捻じ曲げるのも、躾けの一つである。 ミドリとれぴは、ケースの反対側にまで吹っ飛ぶほどのデコピンを受け、れぴに至っては顔面を壁にぶつけてしまった。 対して、ぷちは何の抵抗もせず自ら服を脱ぎ、次の指示を待っていた。 ひろあきは、結局最初にぷちを教育する事にして、続いてミドリとれぴにそれを見習わせる形にするしかなかった。 だが、綺麗に洗濯された服をまとったぷちの様相に感銘を受けたようで、後にミドリもれぴも、自ら進んで洗濯を行うようになった。 次の躾けは、洗濯をするタイミングを自覚させること、そして洗濯をする場所を覚えさせること。 一旦洗濯を覚えると、三匹は何かあるとすぐ服を脱ぎ、水のみ皿に服を突っ込んでジャブジャブ始めるようになった。 しかも仔実装のため長い時間洗濯するのが難しいようで、ひろあきが見てないとすぐにやめてしまう。 そんな事を繰り返していたので、ケースの中はすぐ水びだしになり、しかも本人達は裸のまま、加えて服はいつまで経っても乾かないと いう最悪の状況になった。 そんな彼女達に対して、ひろあきは服を取り上げ、冷凍庫で凍結直前まで冷やした水をぶっかけた上、ドライヤーで冷風を浴びせるという 極寒地獄を味わわせた。 これにより、服がない事の意味と、自由に洗濯をしていいわけじゃないという事を理解させる。 だが、さすが仔実装というべきか、ここまでやって尚れぴは状況が飲み込めないようだった。 汚すと洗濯を強いられ、洗濯をすると怒られるため、どうすればいいのかわからず思考のループに捕らわれてしまったのだろう。 元々賢くないれぴが悩んでも進歩が全然ないので、ひろあきは右腕と右脚を針で貫通させる仕置きを課した。 これにより、れぴは「悩む自由」すらも奪われ、だんだんストレスを溜め始める事になった。 洗濯は、ひろあきからの指示があって初めて行って良いという理屈を理解したのは、それから三日後だった。 水飲み皿とは別に容器が用意され、しかもその脇には少量の洗剤が置かれている。 案の定、それを口に含んだミドリとれぴは、しばらくぶくぶくと泡を吹いていたが、ぷちだけはそんな愚行を行わなかった。 洗剤を容器に入れて洗濯すると、汚れも落ちやすいという理屈は、ひろあきが想像していたより早く理解された。 充分に洗濯を行うのに必要な時間がどれくらいか、どうすれば良く落ちるかなど、各自工夫が行われているようで、ひろあきはこれを 静かに見守った。 ついに、ほぼ完璧に汚れを落とせるようになった三匹には、続けてすすぎを教え、干すことまで実行させる。 そのために、ケースの内側にはひろあきお手製の可愛らしい物干し台まで設置された。 すべてを問題なくクリアした三匹には、細かく砕き口に含みやすくした金平糖を与える。 生まれて初めて味わう甘味に、三匹は飛び上がるほど驚き、そして感動した。 ひろあきを恐れているれぴも、この時ばかりは全身で喜びを表す。 ひろあきは、全員の頭を指先で優しく撫でながら、「うまくやれたらご褒美だからな」と付け加える。 砕いた金平糖はものの数分でなくなってしまうため、三匹は次の甘味を得られるようにと必死で勉強しようとする。 たいがいそれは長続きしないのだが、それでも、向上心が芽生え始めたのは良い事だった。 だがぷちは、相変わらず寡黙かつ無感情を貫いており、やがて他の二匹から少しずつ距離を置くようになってきた。 ※ ※ ※ 次に躾けるのは、「主人への対応と挨拶」だ。 三匹は、ひろあきが特別な存在で絶対に逆らえない者だという事は理解していたが、それ以外には特別な感情を抱いていないようで、 時折大変無礼な態度を取る事がある。 ここで針を効かせるのは簡単だが、それでは何時まで経っても認識を変えられないため、まずは挨拶を徹底する事にする。 朝起きた時、食事の時、寝る時。 まずは、この三種類と機会だけでも、熟知させねばならない。 見ず知らずの者と逢った時に行う挨拶などを躾けるのは、まずこれをクリアしてからだ。 ひろあきは、三匹に挨拶の意味と、成すべき事を説明するが、初回に一発で理解した者はさすがに居なかった。 最初に行うのは、食事前の挨拶。 仔実装達は、いつも直径10センチほどのプラスチック皿に餌を盛られ、それを手に取り齧るのだが、挨拶をせずに餌に手を伸ばした瞬間、 その皿を取り上げる。 当然文句を言い始めるが、全員に軽いデコピンを加えた上、次の飯時まで餌は抜きになる。 水すらも一切与えられなくなるため、活発な新陳代謝のため常に多くの水分を発散させている仔実装にとっては死活問題となる。 いつも午前七時と決められた朝食を抜かれると、そのまま五時間我慢しなければならない。 この間、おかしなものを食べないように仔実装達は手足を弱いゴムで拘束され、ダンボールで作られた「身体の幅とぴったり同じため 座れない小部屋」に閉じ込められる。 どんなに泣こうが叫ぼうが、ひろあきが助けることはない。 ただし、徹底しすぎると皮膚が乾き代謝が鈍るため、一時間に一度のペースで霧吹きを使い、顔を濡らしてやる。 だが、昼時になってまた挨拶を抜くと、引き続きダンボール飢餓地獄の始まりだ。 これは、たとえ挨拶をする者が居ても、誰か一匹が忘れただけで施行されるという厳しいものだ。 言うまでもなく、最後まで挨拶を忘れていたのはれぴだったが、今回は身体を傷つける仕置きはしない。 今の彼女達には、飢餓感だけで充分すぎる仕置きになる。 最大二日間連続で食事抜きという目に遭わされた三匹の関係は、少しずつ変化を見せる。 他の二匹の足を引っ張るれぴは、ミドリにもだんだん距離を置かれ始める。 ぷちは変わらず寡黙なままだが、明らかにれぴの存在を退けるような態度を取っていた。 孤立し始めたれぴは、やがて「自分自身で躾けを覚え身につける」必要性に駆られ始めたが、ここまでは、ひろあきの想定通りだった。 このような「死と隣り合わせの厳しい躾け」はそれなりに功を奏し、三匹は、挨拶・トイレ・洗濯まではきっちりこなせるようになった。 加えて、例の偽石の影響で成長も進み始めたようなので、ひろあきはそろそろ餌の種類変更と摂取量の向上、身体面のケアを重視する 事にした。 なんにせよ、当初心配されていた身体の脆さを気にしなくても良くなっただけ、大変な進歩だと感じられた。 ※ ※ ※ 今や常時綺麗な実装服をまとい、挨拶もしっかり元気にできるようになった仔実装三匹は、お披露目前の最後の躾けとして、 「お風呂の入り方」を伝授されることになった。 これまで、三匹はほとんど身体を洗ってはおらず、そのためいくら服が綺麗でも、とても清潔とは言い難かった。 これは、ひろあきがこれまでわざと触れなかった部分だ。 元々綺麗好きな実装石は、身体や装身具を清めることを覚えると、それを常習化しようとする行動を見せるものだが、なぜかこの三匹には それがない。 今はまだ小さいので臭いはさほど酷くはないが、それでも、ケースに顔を近づけるとムワッと臭気が漂うほどにはなっている。 いつまでも消臭スプレーを使い続けるわけにはいかないので、ひろあきは、三匹に改めて教育を施すことにした。 「お前達には、今日から毎日お風呂に入ってもらう」 テチュ? テチュテチュ、テチュ〜? テェェ? 安物プラスチックの深皿を用意し、そこに適温の湯を、三匹が溺れない程度まで注ぎ込む。 続けて服を脱がせると、ワリバシで胴をつまんで湯の中にポトンと落とす。 テチャッ?! テ、テチャ……テ、テェェ? 今回は、最初にれぴを入れてやった。 初めは驚き慌てて脱出しようとしたが、温かい湯の気持ちよさに気付き、すぐに笑顔になる。 テッチュ〜〜ン♪ テェ? テチュー、テチュー! テチュー? れぴの声に反応して、ミドリとぷちも好奇心を膨らませ始めた。 次々にワリパシでつまみ上げてやると、二匹は、れぴとほぼ同じようなリアクションをして湯に身を浸す。 テチャ〜♪ テッチュ〜ン♪ ぷりゅぷりゅと聞こえてくる耳障りな音、みるみる濁っていく湯、そして異臭。 初めて風呂を経験した実装石のほぼすべてが行うという「気持ちよすぎて出ちゃったテチ」が、早速始まった。 最初に漏らしたのは、やはりれぴ。 だがミドリは、その様子をみて自分も真似し始めた。 湯の中でりきみ、わざと糞をしようとする。 ひろあきは、即座に二匹をつまみ出し、脇に用意してあった容器の中に投げ込んだ。 テ、テヂャァァァァッ!!! テジイィィィッ!!! 100円ショップで売っているような半透明容器の底に、1センチほど冷水を張ったものだが、先ほどまで温かい湯の中にいた二匹には、 劇的な効果がある。 じたばた悶えながら、冷水を身体にまとわせていく様子は、大変に滑稽だ。 これも、針の仕置き同様「効果は高いが実はそんなに身体負担のかからない」ペナルティだ。 もし、これが仔実装達の腰まで浸かるほどだと、心臓麻痺を起こしてしまうだろう。 二匹が身悶えしている間にぷちを取り出し、汚れた湯を交換する。 ミドリ達の様子を見て即座に脱糞をこらえたのか、それとも別な理由なのか、ぷちはとうとう最後まで湯内脱糞をしなかった。 ひろあきは少し大げさに感心しながら、金平糖の欠片を口に含ませる。 ぷちは、おいしそうに口をもごもごさせながら、無表情な顔でじっとひろあきを見つめた。 その後、ガーゼを加工した垢すりを与え、石鹸を付けて身体をこする事、髪を洗う方法を丁寧に教えていく。 ぷちは、それがとても気持ちよくすっきりする事だと納得したようで、実にスマートに洗浄を覚えた。 それどころか、垢すりを使って器用に頭頂部を洗う技まで見せ付ける。 これは、今まで何百匹もの実装石を躾けてきたひろあきですら、初めて見る快挙だ。 ひろあきは、ひょっとしたらこいつは化けるかもしれない…と、当初の考えを改め始めた。 うまく育てていければ、ミドリの良いライバルになるかもしれない。 三十分後、一足先にすっきりしたぷちは、就寝の許可を得てすやすや眠りに着く。 だが、ミドリとれぴはまだ風呂から脱出できない。 何度やっても湯の中にお漏らしをしてしまい、冷水責めを繰り返す。 どうやら、括約筋を咄嗟に締める事をどうしても失念してしまうようで、それなりに賢い筈のミドリですら、なかなか巧くいかないらしい。 ほんの僅かな液便の漏れでも容赦なく与えられる仕置きに、二匹は心底怯えた。 やむなくひろあきは、その日は先に身体洗浄を教える事にして、ガーゼの垢すりとボディソープ、シャンプーを使わせた。 彼女達も、身体を洗う事の気持ちよさは理解出来たようだが、洗い残しが多すぎるため、何時までたってもすすいで貰えない。 どんどん泡だらけになっていくが、すすいでもらえないため目が痛み、口の中に石鹸が入る。 少しずつテチャアテチャアという悲鳴が出始めるが、ひろあきは絶対に手助けはしない。 風呂に入り始めて一時間を過ぎた頃、二匹は、グズグズと泣きながら、自分の身体の洗い残しをチェックし続けるハメになった。 にも関わらず、ひろあきはすすいでやらない。 片方の目を薄く開け、ひろあきの表情を何度も窺う二匹は、ボロボロ涙を流して許しを乞い始めた。 ——なぜか二匹とも、後ろ髪を洗う事には全然気付かない。 こういう時とても効果的なのは、絶対に忘れられないようにしてやる事。 ひろあきは、どうしてOKが出してもらえないのか悩んでいる二匹の後ろ髪の束から一本の毛を摘み取り、力一杯引っ張った。 ツン、という手応えと共に、毛はあっけなく抜ける。 と同時に、二匹の凄まじい悲鳴が響いた。 テジャァァァ——ッ!! テッチャアァァ——ッッ!! 実装石にとって、髪の毛はたとえ一本でも大切なものだ。 それを引き抜かれたものだから、その慌てぶりはかなりのものだ。 ミドリはそれでようやく洗い残し箇所に気付いたが、なんとれぴは、ここに至ってまだ理解が出来ない。 ひょっとしたら、後ろ髪は洗うものではないという考えがこびりついているのかもしれないが、そんな事情などひろあきは理解しない。 引き続き、三本ほど毛を毟り取り、さらに泣き叫ばせる。 見かねたミドリが、やっとレクチャーを始め、れぴは「レチャッ?」と鳴いて目を見張る。 それから十分後、ようやくひろあきから許可を得て、二匹は風呂を終える事ができた。 三匹とも、身体が綺麗になる事の喜びと気持ちよさはすぐ理解できたが、それ以上に苦痛な仕置きに、すっかり萎縮してしまったようだ。 翌朝、前日の復習の意味を込めて朝風呂を用意したが、自ら喜んで飛び込んだのはぷちだけで、ミドリとれぴは涙と脂汗をダラダラ 流しながら拒絶した。 当然、ひろあきにこっぴどく叱られ、問答無用に湯の中へ放り込まれる結果となったが。 この時も、れぴはまた後ろ髪を洗い忘れ、今度は一匹だけで居残りをさせられてしまった。 だが、脱糞は止まったため、ひろあきは「二度目にしては上出来だ」と感心し、最後にはミドリとれぴにも金平糖の欠片を振舞ってやった。 ——ここまでで、29日。 残りあと一日だが、彼女達はまだ「食事のマナー」という、お披露目でもっとも重要視される躾を、まだまったく身に着けていない…… あともうちょっとだけ続くんじゃ
