「サイバー駆除」 実装石の増加、それは日本国民の平和と安全を揺るがす大問題。 そんな中でも、特に被害件数の多い街で一人の女が雇われた。 「市長、本当にあの者に実装石の駆除が…」 「なぁに、問題はない。ふふ… あいつの能力は使えるぞ」 ・ ・ ・ その街には実装石が溢れていた。 その上、実超石や覚醒獣装石も複数混ざっていたため、一般職員が駆除などできなかった。 公園はもはや実装石と愛護派のためだけのエリアになっていた。 「デシャァァァァ!! 糞ニンゲンはやくまずいコンペイトウ置いてけデシャァァァ!!」 「あらあら、そんなにはしゃいで。ちょっとまっててね」(リンガル無し) 愛護派達は公園に肉のバリケード(おばさんの輪)を作り虐待派の侵入を尽く防いでいた。 果たして地獄の公園に送り込まれた市の刺客とは… ・ ・ ・ 「ふぇっふぇっふぇっふぇっふぇ…」 公園の真ん中、実装の最も多く集まる区間のベンチにしわがれた老婆が一人。 愛護派の訪問に実装達は糞投げで挨拶する。 「早く飯テチャァァァ!!」 「屑奴隷はハリツケの刑テチィィ!!」 「ポンポン空いたレフー!!」 老婆はカラフルな傘を差し糞の雨を防ぐと、なにやら白いトレイを取り出した。 「ねるねるねるねは、へっへっへっへっへ」 小刻みに震える手でトレイに青い粉末と水を注ぐ。 「練れば練るほど色が変わって…」 ただ混ぜているだけなのに色が変わる。 まるで魔法のようだ。 先ほどまで喚いていた実装が老婆に注目する。 「こうやって付けて…」 練ったゲル状のムースに丹念に砕いた飴を付けて… 「美味い!! テーレッテレー♪」 老婆は実装達に見せびらかすようにそれを口に運ぶと、 仔実装の産声のような電子音と共に、謎のムースの美味さをアピールした。 すると… 「テチャァァァ!! ワタシもあのネルネ欲しいテチャァ!!」 「ワタシも魔法したいテチュゥゥゥ!!」 「美味しそうテチーー!!」 「はじめて見るレフーー!!」 仔実装や蛆達が火をつけたようにねだる。 普通のエサなら食欲が勝って、「糞ニンゲンよこせテチ」 となるのだが、今回は食欲を興味の方が上回っていたようだ。 「ママァァァ!! あれ欲しいテチャァァァ!!」 「糞ババアから奪っテチャァァァ!!」 我侭を言う仔達に一瞬戸惑う親達だったが、すぐに老婆から奪おうといきり立つ。 しかしそこには既に老婆の姿は無く、大量の"ねるねるねるね"がダンボール詰めにされていた。 ・ ・ ・ (一ヵ月後) 街から実装石が姿を消した。 いや、正確に言うなら全滅した。 街中の実装石は公園に集い、重なるようにして死んだのである。 そしてほとんどの実装石の死因は餓死であった。 ・ ・ ・ (二週間前) 公園は殺伐としていた。 実装達は皆虚ろな眼でフラフラと公園中を徘徊していた。 「ネルネー、ネルネー」 どの実装も呪文のように同じ言葉を呟きながら無駄に時間を過ごしていた。 そして、時計の針が正午を指す時。 「ねるねるねるねは、へっへっへっへっへ」 いつのまにか老婆がベンチに座っていた。 老婆の姿を見るやいなや、実装達は剣幕を変えてベンチの周りに集合した。 「練れば練るほど色が変わって…」 一練りすれば数百匹という実装が押し合いながら湧き出てくる。 仔実装は踏まれることなどお構いなく、成体も成体で死んだ仔をエサとも思わなかった。 実装達の視線はただ、老婆の手の中に注がれていた。 「チョコクランチを付けて…」 普段なら砕いた飴を付ける。しかし今日は違う! なんとチョコを付けているではないか!! 実装達は興奮して狂ったように老婆に群がった。 しかし老婆は動じることなく、 「こりゃ美味い!! テーレッテレー♪」 実装達にとってこの電子音は戦いのゴングである。 老婆が去った今、ねるねるねるねを賭けた戦争が始まる。 「デェェェェェェ!!! それは私の! 私のデジャァァァァ!!」 「デプゥゥゥ!! ネルネは誰にも渡さんデズゥゥゥゥ!!」 「チャァァァァ!! アンヨは捨ててもネルネは頂くテチャァァァ!!」 「デスゥゥ!! この糞蟲どくデスゥゥ!!」 「ネルネー!! ネルネー!! プニプ二しないことを許すからネルネをよこすレフーー!!」 ブチッ 「それはぁぁぁぁぁ!! デシャァァァァ!!」 ドカッ 「チピィィィィ!!」 べチッ ・ ・ ・ (賢い実装親子視点・初日から三日目) 「ママァァーー!! ワタシもお菓子つくるテチャァァァァ!!!」 「駄目デス! あれはきっとコロリデス! 食べたら死ぬデス!」 「イヤテチィィィ!! なんで死んじゃうテチュー!! 意味分からないテチィィィィ!!」 「妹ちゃ、ママの言うこと聞くテチ! あんなの食べてもいいことないテチ!」 「嘘テチュゥゥゥゥ!! 隣の末っ子ちゃんから長女ちゃんは昨日も昨日の昨日も食べてたテチィィィ!!」 「あれはきっと遅発性のコロリデス! とにかく駄目デス!」 「チャァァァァァ!! ワタシも作るテチュー!! ネルネ自分で作って食べるんテチューー!!」 (賢い実装親子視点・一週間後) 「見るデス、長女ちゃん。あれが今の次女ちゃんデス」 「ネルネー… ネルネー…」 「チャァァァ… まるで廃石テチィ」 「あのネルネは食べると味覚が破壊されるデス。 そうなったらもう、お水も生ゴミも、同属の肉も食べれなくなるデス」 「テチュー… ご近所さんの死体が溜まってるテチ。ワタシ達以外誰も食べないテチュ」 「それにあのニンゲン婆、配るネルネの量を段々減らしてるデス」 「みんな殺しあってるテチュ… 死んだお肉食べないのになんでテチ…」 「競争相手は少ないほうがいいんデス」 (賢い実装親子視点・二週間後) 「デェェ、いっぱい同属が集まってきたデスゥ」 「きっとネルネの噂が広がったんテス」 「たぶん馬鹿な同属がネルネがウマウマと自慢したデス」 「ママァ、この公園怖いテス」 「このままだと死体が溢れてニンゲンが掃除しに来るデス。 私達は今日にも脱出した方がいいデス」 ・ ・ ・ 「テスゥゥ… 死んだ妹ちゃ、さよならテス… おねえちゃとママは新しいお家を見つけて妹ちゃの分まで生きるテス…」 ・ ・ ・ (後日談) 「市長、○○市の実装石の駆除、完了したそうです」 「そうか、思ったより遅かったな」 「はい、ミイラ状態になっても生き延びる実装石のことです。 餓死するにはよほどの時間が必要だったのでしょう」 ガチャッ ノックも無く開いたドアの向こうには、ねるねの老婆が… 「ねるねるねるねってるか〜い?」 「ねるねるねるねってるYOー!」 市長はラッパーのポーズで老婆に応えた。 秘書は只唖然とするばかりであった。 ・ ・ ・ サイバー菓子・ねるねるねるね、正規品であれば実装石に何の害もない。 しかし、老婆が調合したネルネは違う。 特注ネルネの甘さは実装にとって麻薬のごとき存在であった。 しかし本当にそれだけだろうか。 本来人に媚びて恵みを受ける実装石。 それが貰い物とはいえ、「練る」という過程を通したことで、 自分で何かを生み出す喜びを得たのではないか。 子供が自分で作って自分で食べる。 親が自分で作って仔に食べさせる。 一ヶ月の間、実装石が感じたかもしれない幸せである。 ・ ・ ・ 「練って美味しい! ねるねるね〜るね♪」 ねるねるねるねを久々に買った、赤いサクブスでした。
