タイトル:【虐】 釣具屋にて
ファイル:釣具屋にて.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5020 レス数:0
初投稿日時:2008/05/05-21:03:45修正日時:2008/05/05-21:03:45
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 (防波堤にて サイドストーリー)

 釣具屋にて

−− 1 −−


 「テッチャァァァァッ! ママッ ママァァァー!!」

 夜の公園の奥深く。草木の生い茂る散策路の片隅みでありがちな場面が展開されていた。
 同属喰らいのグループにダンボールハウスを襲撃された実装石がバラバラに解体され喰われている。
 蓋をはがされたダンボール箱の中で抱き合ってガタガタ震える仔実装達。
 無力な仔実装達は3匹の同属喰らいに貪り喰われていく母の姿をなすすべもなく見つめていた。
 さっきまで家族の温もりに包まれて安らかに眠っていたオウチもこうなると脱出出来ない檻でしかない。


 「デェェープププ デップ 次はお前たちの番デスよぉ♪」

 親の肉を貪り喰った後、一番大柄なボスが震える仔実装達にニタニタと死の宣告をする。

 「チャァァァー くるなテチ アッチいけテチィィィッ!」
 「テェェェンテェェェン たちゅけテ… たちゅけテチュゥゥゥウン」
 「いーやぁぁぁテチャァァァチぬのいやテチャァァァァーーッ! チュワァワァァァァン 」


 3匹の同属喰らいは仔実装を一匹ずつ摘み上げた。
 全力でチタパタ暴れる仔、テ・・テチュ〜ンと弱々しく媚びる仔、ただただチャーチャー泣き喚く仔。
 そんな仔実装達の必死な姿に同属喰らい達は目をニンマリと歪める。
 哀れな仔実装達はまずビタンビッタンと地面に何度か叩きつけられた。
 まず適当に痛めつけて肉を締める。
 骨を砕かれ全身を襲う痛みに仔実装達が逃げ出す力も抵抗する気力もなくしたら服を剥がされる。
 「テェェ…」と放心し、ピクピク痙攣するしかない仔実装達。
 糞まみれの体を脱がした服でざっと拭いたら、次は髪がブチブチと毟り取られていく。
 手馴れた同属喰らいの割りに髪抜きに時間がかかっているのはワザとである。
 なるべく少しずつ毟ることで禿にされていく屈辱を長引かせるためだ。
 もうお先真っ暗でも禿にされる絶望は堪えるのか流す血涙が色濃くなる。
 こうして心身共にジワジワ痛めつけ下拵えした仔実装を手脚の先からプチュムチュとゆっくり味わうように齧っていく。

 「ア アタチのアンヨがぁぁオテテが・・ ぁ ぁ ァ ァァ  ァ 」
 「ママ ァ いタいテチ・・ ・ ィ た いテヒャァァァ… ・・ ・」
 「チにたくな・・ いテチ チに たクな ぃテヂュエエェェェ…・・」

 断末魔の悲鳴も少しずつ小さくなり、幼い命は同属喰らいの腹に消えていった。
 
 「オ・・ オネェェ ェ チ ャ・・ オネーチャァァァ ァ レェェェンレェェェン」
 「レェェェ コワイレヒィィ ウジちゃんコワイのいやレフゥゥ レフェェェェェン」

 あとは小さな親指と蛆が残るのみ。
 ここで分け前をめぐるケンカでもしてくれれば隙をついてうまく逃げられるかもしれない。
 しかし同属喰らいでも仲のよい姉妹だったのか、蛆は姉であるボスが、親指は妹2匹で分けて食べることにすんなり決まってしまった。
 口元に血と卑しい笑みを滴らせたボスが腕を伸ばしてくる。

 「さぁウジちゃん、オヤユビちゃん出てくるデスぅ デプププ 優しいオネエサン達が遊んであげるデスぅ♪」

 逃げ場のない無力な獲物を同属喰らいのボスが嘲る。
 親指は妹のウジを抱きしめダンボールハウスの隅に屈みこんでブルブルと震えるしかない。
 ついに血糊と唾液に濡れた手が背中に触れた。

 「ヤメテ!せめてウジちゃんだけでも助けてレチィ」

 目をきつく閉じて最後の瞬間を待つ。
 
 そこに懐中電灯の眩しい光が差し込んだ。

 「「「デ???」」」

 驚いた同属喰らい達が振り返ると、眩しい光の向こうに巨大な黒い影がそそり立っていた。
 次の瞬間、麺棒の一撃がボスの顔面を打ち砕いた。

 「ボ ギャアァァアッ!!?!」

 同属相手なら圧倒的優位に立つ大柄な体格も人間相手には何ら物理的優位をもたらさない。
 むしろ的になりやすく隠れる場所に不自由するだけ。
 同属喰らい達は自らが獲物という一方的に狩られる立場に成り下がったことを認識した。

 「デギャー デェェェッ!」
 「デス!? デスゥゥゥゥッ!!」

 影は手にした麺棒で同属喰らいどもの顔面を打ち据え脚を砕いた。
 そして動けなくなった実装石の服と髪、それにパンコンパンツを手際よくハサミで切り捨てると3体の実装石を袋詰めして持ち去った。
 その間、カップ麺ができるまでの時間もかかっていない。
 親指が恐る恐る後ろを振り返った時、そこにはもう暗闇しか残っていなかった。

 「?… ・? ・ ?・ ウ ジちゃ ん…アタチたち・・・助かった レ チ ?」
 「レ・・・ レフ?」



−− 2 −−


 バイト仲間のトシアキ(重症の虐待師)から変な話を聞いた。 
 最近釣具屋に婿入りした同僚(兼虐待仲間)を夜の公園で見かけたという。
 何匹か実装石を禿裸にして捕獲していったらしい。

  新婚野郎が夜遊びかよ
  やっぱ婿養子だとストレス溜まんのかねぇ
  早くも夫婦仲うまくいってないんじゃねーか


 トシアキの軽口を聞いていたらちょっと心配になった。
 また様子を見に行くとしよう。



−− 3 −−


 「レプー? ウジちゃんまだネムいレフー」
 「ウジちゃんおっきするレチ ニンゲンさんがアタチたちを待ってるレチ」
 
 親指実装は朝早くまだ薄暗いうちに妹の蛆を連れてこっそり公園を抜け出そうとした。
 保護者を失った仔実装は本能的に新しい保護者を求める習性がある。
 家族を亡くした後、泣き疲れて眠っている間に脳内の一部思考回路にある種の活性化が生じていた。
 一般にシアワセ回路と呼ばれるその思考回路は、ニンゲンのオウチにいってそこの仔にしてもらおう、と夢の中で囁いた。
 シアワセ回路に照らすと、同属に襲われてみなし仔になった可哀想なアタチにはニンゲンに養われるケンリがある、らしい。
 真面目に考えてはいけない。むしろ人類に理解できてはいけないことだ。

 「レフゥフゥ ウジちゃん疲れたレフゥフゥ ちょっと休みたいレフゥ」
 「ダメレチ アタチだってヘトヘトレチ ウジちゃんもガンバるレチィ」

 もちろん巣から遠出したことのない2匹に道がわかるわけもない。
 薄暗い散策路で同じところをグルグルと道に迷っているうちに空が白み始めてきた。

 「オネチャ?ドコに行くんレフ? ウジちゃんノドがかわいたレフ オミズ欲しいレフ オナカもすいたレフ オウチに帰りたいレフ」
 「ガマンレチ 明るいミライが待ってるレチ ここであきらめたらおちまいレチュ」

 いいかげん疲れてきた蛆実装がレフレフ不平を言い出した。
 しかし姉の方は聞く耳を持たない。
 アマアマのコンペイトウ、あったかいオフロ、キレイなオヨウフク、キラキラのオモチャ、ヌクヌクのベッド・・・・・・
 あてのない遠い道のりもシアワセ飼い実装生活の妄想パワーが歩む気力を支えていた。
 そんな姉の妄想につきあわされた蛆実装こそ気の毒であった。 
 ちなみに蛆実装の方は保護してくれる姉がまだ1匹健在だったので思考回路に変化を生じていない。

 「レフェエレフェフェエエ ウジちゃん もう歩けないレフェェェ・・・・ 」
 「レヘェレヘェ…… アタチはセレブになるんレチィィィ ウジちゃんもプニちゃんになるんレチィィ」

 だが妄想と違って現実は無情である。
 同属喰らいの襲撃を僥倖で生き延びた親指と蛆の姉妹であったが、とっくにその幸運は尽きていた。
 物陰から何かが目の前にいきなり飛び出してきた。

 「レチャァァーッ!なにするレチィッ?!」 

 隠れて獲物を待ち伏せしていた仔実装に襲撃されたのである。
 襲いかかってきた仔実装は自分より非力な親指を張り倒した。
 そして素早く蛆実装を引ったくるとスタコラ遁走した。

 「レレッ? ウジちゃんさらわれちゃうレフー! オネェェチャァァァァァァ たすけてレフゥゥゥン」

 蛆実装を強奪した仔実装は泣いていた。

 「ごめんテチィィィィ ワタチにはオナカを空かせてるイモウトちゃんがいるんテチィィィ」
 
 この仔実装もまた親を失くしたみなし仔だった。
 仔実装は自分の非力さを充分に理解していた。
 いくら体格差があるとはいえ親指相手に手間取っていれば他の危険な存在の注意を引いてしまうリスクがある。
 だから蛆実装を抱えてさっさと灌木と雑草の生い茂る暗がりに駆け込んでいった。

 仔実装の意図を悟った親指は青褪めた。

 「ま ー て ー レ ー チャーァー アタチのウジちゃんをかえすレチィィィィィ    レペッ 」

 立ち上がった親指はポテポテと追いかけたが、石ころに蹴躓いてすっ転んだ。
 モタモタしているうちに蛆実装の声は茂みの奥に遠く小さく消えていく。

 「レフェェェンレフェ ェ ェ ン… …・ ・ ・ 」

 「ウジちゃぁぁぁん ウジちゃあーーぁぁぁぁ ん ウ  シ ゛ ち ゃぁ ぁ ぁ  ぁ   ん」

 愛玩目的の幼蛆誘拐なんぞでないのはわかりきっている。
 冷たい現実を前にして妄想は吹き飛んだ。
 親指は唯一残った肉親の妹を追いかけようとした。
 しかし楽しい妄想だけに支えられ歩き続けていた身体はもう疲れきっていた。
 親指はその場にへたりこんでいつまでも叫び続けた。

 『   レチィィィィ    レチャァァァァアアア         レチュレチャチャァァァァァァァァァーーーー   』
 
 かん高いその声が飢えた捕食者をその身に呼び寄せると気づかないまま。


 春の繁殖シーズン途中で親を失う野良仔実装の数は多い。
 そういう孤仔の大半は一週間以内に他の生物、特に同属に捕食されて命を落とす。
 保護者を失った仔実装は本能的に新しい保護者を求める習性があることは広く知られている。
 生来のシアワセ回路に導かれ、自分より大きい動くもの、特に人間に保護を求めて追いかけてくる。
 よくG.W明け、街角で性懲りも無く人の足元にすりよって潰される薄汚い仔蟲どもの群れはたいていコレである。
 見込みの薄い努力だが、これで最良の保護者である人間に保護されるものも極々一部いる(1%未満、ただし虐待派を含む)。
 また他の成体実装に保護されるものも若干いる(3%程度、奴隷兼非常食として半永久的に隷属させられるものを含む)。
 子育て中の飼い犬や猫、営巣中の鳥といった他の動物に保護されるものもいる(極めて稀な事例)。
 地域にもよるが、この習性は孤仔の生存率向上にあまり寄与していない。
 どちらかといえば苦しみに満ちた生を速やかに終わらせるための自爆機能ではないかと皮肉られるほどだ。
 山実装や河川敷で暮らす野生実装の仔の多くはまず自力で生き延びる方法を模索する。
 当然野良仔の中にも運を天に任せた媚より自力で生き抜こうと努力する孤仔もいる。
 シアワセ回路がもたらす妄想を拒否できる仔実装は元々資質的に優れた個体が多い。
 逆説的だが他者に頼らず自力で生き延びられる個体ならそもそも保護者の必要なぞない。
 そういう自助努力する優れた少数個体の生存機会を奪わぬよう多数個体を速やかに自滅させているのかもしれない。
 このような観点から捉えると一見無思慮な自滅行動も種族的には正しい生存戦略と考えられる。



−− 4 −−


 数日後の夕方、その釣具屋へさりげなく様子を見に来た。
 前と同じように「いらっしゃい、いつもありがとう」と明るく声をかけてくれた。
 実装虐待に現を抜かしてるトシアキよりよっぽど顔色がよく健康的だ。
 おまけにかなりシアワセ太りしてやがる。
 幸せ者め。杞憂だったかな。

 ついでのことだし時間があったので餌のコーナーを見てみる。
 投げ釣りで使う青イソメ、石ゴカイの値段をチェック。
 つらつら計算してみると、せいぜい1Kあれば一日楽しめる値段だったんだよなあ。
 パチンコの無駄金考えれば微々たるものだ。この前はケチって損した。

 生きたカニやボケ、エビの水槽を眺めるのは結構楽しい。
 子供のころ田舎の友達と谷川で遊んでいろんな生き物をいじっていたことを思い出す。
 それにしても・・・ミミズやハエのウジごときにも値段がついているのか。
 田舎なら畑にミミズ、アオムシとか川のザザムシくらいなんぼでもいた。
 聞くと最近はチーズやバターで特有の臭いをつけて集魚効果を高めたウジや食紅で色をつけた紅サシとかいう商品もあるそうな。
 今は置いてないけど冬場のワカサギ釣りに使う小さいウジは白くてカワイイから「ラビットちゃん」だって… あぁぁ とってもいい名前 だ ね ぇ ・・・

 サシに並べてクシ、赤クシ、上クシ(当店オリジナル 特選オウジさま)と書いたパックが入っていた。
 それは蛆実装のことらしい。
 クシというのはハエのウジであるサシと区別するのに使われている釣り用語だそうだ。
 ハエのウジをサシというが、これは腐ったサバを餌にしたからサバムシと呼んでいたのを略してサシになった。
 同様に蛆実装はクソムシを略して『クシ』なんだと説明してくれた。

 クソで育てた蛆実装ふぜいにも値段があんのかと聞いたら、「売りモンにそんなわきゃないだろ」と即座に否定された。

 まぁそりゃそうだよな。
 商品なんだから専用飼料で衛生的に育てて当然だろう。 


 その直後曰く、 「もちろん汚肉をたっぷり喰わせてやってるぜ、親蟲のな」 、 ・・・ヲイ…



−− 5 −−


 さらわれた蛆実装は泣いていた。さめざめと涙を流していた。

 「レェェ・・タフケテ」

 さらった仔実装も泣いていた。
 目元のパッチリした利発そうで可愛らしいウジちゃんだった。
 自分の妹のノータリン蛆とは違っていた。
 だからこれからどうなるのか解かっていた。
 妹蛆ならこの期に及んでも「プニプニしてレフー」とK.Yな足らずぶりで和ませてくれただろう。
 産みの母にすら食料扱いされることの多い蛆実装にとって下手な賢さなど呪いでしかない。

 「お願いレフ オネチャのところに帰してレフ」

 蛆実装がウルウルと潤んだ目で哀願する。

  おバカだったらよかったのに…

 仔実装は心をオニにして蛆実装の喉に噛みついた。
 仔実装の顎の力では蛆実装でもなかなか噛み千切れなかった
 地面に押さえつけた蛆実装がレプーレププゥゥと暴れる。
 短い手脚と尻尾がピコピコ最後の抵抗をする。  
 せめて早く楽にしてあげたかったのに、なかなか死んでくれなかった。
 喉を噛みちぎられるまでレヒィィィ ヤメ テ タ・・フ ケ  テ ク ルヒィ ィ と喚いていた。

 蛆実装の死に顔は舌をダランとたらし死に際の苦悶をそのまま貼り付けていた。
 仔実装は蛆の顔をしばらくじっと見ていたが、意を決して頭にモシャモシャと喰いついた。
 妹達にこの死に顔を見せたくなかった。
 ゴメンテチ ユルチテチィとむせび泣きながら口に肉を押し込んだ。
 頭部を食べ尽くすと仔実装はまだ暖かい蛆の身体を引きずって隠れ家にノロノロと歩き出した。
 オナカを空かせた妹たちが帰りを待っている。
 仔実装が立ち去った茂みには吐き捨てられた目玉と前髪だけが残っていた。
 唾液にヌラヌラと濡れた目玉はまだ涙を流しているかのようだった。



−− 6 −−


 ヲイ…コラまてぃ……。

 コイツが言うには、実装臭として忌み嫌われる実装石の体臭は成体実装の肉を食べることで極端に強くなる。
 捕食対象が仔実装だと影響はごく僅かだし、蛆や親指なら食べてもほとんど影響が出ない。
 しかし同属喰らいの体に蓄積した悪臭成分はその肉を喰った個体にそのまま吸収、蓄積される。
 また同属喰らいから生まれてくる仔の体質は親の肉質の影響を受けた先天的に最悪の代物だ。
 このくらいは専門虐待師じゃないオレでも知ってる。
 ほとんどの陸上生物にとって嫌悪されるこの実装臭だが、水中ではむしろ集魚効果の高い臭いとして作用するらしい。
 だからチヌやグレ釣りの世界ではわざわざ同属喰らいに産ませた悪臭芬々たるクソ蛆が珍重されるとのこと。
 さらにこの店オリジナルの商品は母胎の餌に同属喰らいのミンチを喰わせた上、生ませた蛆も親の肉で肥育した窮めつけの汚蛆。
 常連の釣りキチどもがいうには特製のコレが「よく キ く」んだそうな、…… オエェ 。
 その名も『オウジさま(汚蛆サマ)』(一匹105円、消費税込み。ユムシより高けー)。
 冠をかぶった蛆にハートマークをつけた魚が寄ってくるイラストを描いたオリジナルパッケージまで作ってやんの。

 ん?ところで・・・ その母胎と餌はドコで入手するんだ?と聞いたらアハハと口を濁しやがった。

 やっぱり... 心配して損した・・・・・・ 

 「試供品パック(3匹入り)あげよっか」、と言われたが全力でお断りした・・・ ンなモンいらんわっ!!。



−− 7 −−


  なぜデス?なんでデス?? どうしてデスゥゥ???

 彼女は呻いていた。

 去年の春、仔実装だった彼女の目の前で母親がニンゲンにさらわれた。
 そのニンゲンは自分達姉妹には目もくれず、嬉しそうに母だけさらって立ち去った。
 残された姉妹は誰も助けてくれない冷酷な世界で生き抜いた。
 狡猾で敏捷なカラス。
 肉に飢えた強欲な同属。
 戯れ半分に致命的一撃をくれてくるネコ。
 仔蟲投げと称して仔実装をイヌの玩具にする愛犬家。
 よくわからない必殺技名を叫びながら跳び蹴りしてくる学校帰りの小学生。
 オマエらの怨みと嘆きの叫喚(コエ)こそ蜜の味よぉぉぉ、と言わんばかりの虐待派。
 ダンボールハウスの外の世界は飢えと恐怖、そして理不尽で満ちていた。


 姉達に連れられ、ママがいないことを他所のオバサンに気づかれないうちにコッソリ引越しをした。
 「オウチでママを待つレチ すぐニンゲンをメロメロにして迎えにきてくれるレチ アタチは飼い実装になるんレチュー」。
 途中で引っくり返ってパタパタぐずりだした親指ちゃんがトテトテオウチに引き返していった。
 捕まえて止めようとしたが長女姉が悲しそうに首を振った。

 それからは灌木の茂みに息を潜めて隠れ住んだ。
 オウチから持ち出せた食べ物は少なかった。
 落ち葉の下のダンゴムシ、ミミズを食べて飢えをしのいだ。
 まだ小さい頃はムカデやゲジゲジに返り討ちにされそうなった。
 ある日、長女姉が妹蛆ちゃんをどこかに連れて行った。
 その晩は少しオニクが食べられた。

 雨がシトシト降り続くある日、三女姉がこんな生活は嫌だとカッパを着た子供たちの前に媚びに出た。
 カンシャクを起こした挙句「どうして飼ってくれないテチィッ!」と糞を投げ、カラフルな長靴を履いた足に追われて潰された。
 その晩、あのオニクが何だったのか分かって泣いた。
 しばらくして、雨宿りに茂みにノコノコ迷い込んできた他所の仔を泣きながら姉妹で襲って喰った。

 食べ物がなくなってきたある日、次女姉と一緒にゴハン探しに出かけた。
 草の穂を齧っていたら大きな毛むくじゃらにバッタリ見つかってしまった。
 次女姉はワタシを草むらに突き飛ばすと大声を上げながらどこかに逃げていった。
 次女姉はそれきり帰ってこなかった。

 カラカラの夏、遠くにお水を汲みに出て行った長女姉が帰ってこなかった。
 その晩は公園にニンゲンが来てパチパチ火花で遊んでいた。
 光がキレイキレイだった。
 翌朝、生焼けのヤキニクが這いずりながら帰ってきた。
 じきに息絶えたソレは… とても美味しかった。
 心も身体も乾いていた。流す涙も嗄れ果てていた。

 秋の大風の日、トイレに出た末の妹がマラに捕まった。
 油断してた。こんな日なら危ないヤツらもウロウロしてないだろうと思ってた。
 なのに大風でオウチを吹き飛ばされたマラがねぐらを求めて徘徊していた。
 吹き荒ぶ風の音もマラの鼻息と「オネェチャンタスケテチ オネェエヂャァァーン」と助けを求める声を消してくれなかった。
 やがて降ってきた大雨が妹とマラを押し流していった。

 風と雨が通り過ぎた空は澄み渡っていた。
 真っ赤な夕日にいつまでも姉妹で助け合って生きると誓い合った。

  どんなことをしてもゼッタイ生きてやるデチ  ミンナでシアワセになるんテス 

 冷たい風が吹くある日、首輪と暖かそうなマフラーをした仔が袋叩きにされていた。
 近くのオバサン達がゾロゾロ集まって嘲笑っていた。
 その後すぐ、血まみれの首輪を取り合って血みどろのケンカをはじめた。
 翌日、「あい'むじゃすてすぅ!!」と吼え猛るニンゲンがやってきた。
 目についた公園のオウチを竜巻のように木っ端微塵にしていった。
 飛び散ったオニク、貯めこんであったゴハンとタオルをせっせと隠れ家に運び込んだ。

 ひもじさに耐え、肩を寄せあい乗り越えた厳しい冬。
 水辺で出産中の弱った同属を次々襲って喰った早春。
 たっぷり肉を喰らい、どんどん強く大きくなっていく自分達に自信がついた。

 他所のオウチをぶん取って大きいオウチを作ろうと相談した。

 それが・・・・こんなことになるなんて……


  やめるデスゥゥゥゥゥゥやめてデスゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・

 母を失った日、一緒に長女姉の胸で泣いた妹達。
 大きくなってからもずっと片時も離れず暮らした家族。
 その妹達が目の前でミキサーで砕かれ挽きニクになっていく。

  おねがいデスゥ イモウトたちにヒドイことしないでデスゥゥゥ

 顔面を潰され呻くことしかできない彼女は心の中で絶叫をあげた。

  ワタシたちが何をしたというんデス
  ニンゲンには関係ないデス
  ただシアワセになりたかっただけデス
  なのにどうして?
  なんでデス??
  迷惑かけてないデス
  ニンゲンさんに何にも悪いことしてないデスゥゥゥ!!


 だがニンゲンは彼女の問いに答えてくれない。

 答えの代わりに開いた口に漏斗を差し込まれ、さっきまで妹だったモノを飲み込まされた。



 ニンゲンの事情を彼女が知る由もない。
 知らない方が、理解できない方がシアワセだろう。

 だがコレだけは言える。
 セコいニンゲンさんはドコにでもいる。
 因果のタネは今年も蒔かれ、そして季節は繰り返すのだ。



−− 8 −−


 次の日曜の早朝、青イソメ(石ゴカイより大ぶりで安い)を買いに例の釣具屋に寄った。
 検索して調べたらキスの投げ釣り用には形態的にゴカイ類の方が向いてることがわかった。

 1000円分買うと余るので店主のお婆さんに500円分(セコっ)お願いする。
 お婆さんが水槽の青イソメを掬って計量している間、店内をブラブラ見て周ることにした。
 鍵付きケースに入った0が五つほどつく鮎竿を眺めていたら、店の裏方で実装石がデギャデギャ泣き叫ぶ声が聞えた。
 見に行くと友人が慣れた手つきで実装石の手脚を引きちぎっていた。
 ミキサーで粉砕した汚汁を蛆実装がいっぱいいる蓋付き水槽に注ぎ込む。
 やってることはトシアキと代わりないのに、コイツは妻帯者なんだよなぁ、と思うと複雑なものを感じた。
 


−− 終わり −−

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