防波堤にて バイト仲間の一人が結婚退職(?)した。 釣具屋の娘とねんごろになり、晴れて自営業者の一員となったのだ。 御祝儀も兼ねて釣具を一万円分ほど適当に買ってくる。 せっかく買ったのだから使わねば損。 さっそく次の日曜日に隣町の漁港へ行ってみることにする。 釣り餌に金をかけるのがもったいなかったので、朝早く公園に出かけて餌を入手することにした。 ダンボール箱で寝ていた実装石を捕獲し、蓋付きRVボックスに押し込んで連れ去る。 「(デプププ♪ あこがれの飼い実装になるデスー これからは楽しい毎日が待ってるデスゥ〜♪ )」 「(ニンゲンー アタチも連れてっテチー)」 「(レェェェン! ママー ママァー!)」 「(おはようレフ ニンゲンさん プニプニしてくれるレフ?)」 なんか小っこいのがテチュレチュ喚いていたが残しておく。 無用の殺生は嫌いだ。達者で暮らせよ。 「(テェェェン 待っテチー アタチ達これからどうなるテチー)」 「(仔はまた産めばいいデス クソ臭い仔はいらないデス さよならデスゥ デピョピョ)」 「(レェェェェェン! 置いてかないレー ママー ママァァァァ!)」 「(どうしてプニプニしてってくれないんレフーン? ウジちゃん不幸レフー)」 愛車に釣具一式とクールボックス、それに蓋付きRVボックスを積んで漁港の防波堤に来た。 長靴に履きかえて、蓋付きRVボックスを開ける。 「デェゲロゲー デェゲロゲー」 予想していたとおり、車酔いした実装石がゲロゲロ吐いていた。 ロープの付いた水汲みバケツ(600円)で海水を汲む。 アイゴバサミ(300円 毒針のある魚をつまむ小型の火箸)で実装石のパンツをひっぺがす。 勘違いして「デッスンデスゥ〜ン」と股を開きだす実装石を踏みつける。 「デスデスー?!」 糞だらけのパンツを海に放り込み、ブレードの長いフィッシングナイフ(980円 シース付き 海に 落としても水に浮く便利商品)で服を切り裂いて捨てる。 海をゴミで汚すのはよくないかもしれないが、実装服はコンビニ袋なんかと違って腐るからいいだろう。 「デジャァァァー! デ ギ ャ ア ァ ァ ァ ァ ス !」 実装石が泣き喚きながらジタバタ暴れるものの、腹を踏みつけている足に力を入れてやると、蛙が潰れ たような声をあげておとなしくなった。 「ギュエエエエェェェ…」 後ろ髪の両房を輪になるように丸結びしておく。 ゲロと糞だらけになったRVボックスを海水で洗い、散らかった周囲も綺麗にしておく。 水汲みバケツのロープに実装石の輪にした後ろ髪をしっかりくくりつける。 口に低圧ドドンパを押し込んでやると、コンペイトウに似た甘みに実装石が目を覚ました。 「デス? デッスゥ〜ン ………デ?デスゥ? デ… ス ウ ウ ウ ウ… 」 糞を撒き散らされる前に実装石を海に放り込む。 何度か海に上げ落としてしっかり洗う。 案外手間がかかってしまった。 これなら素直に釣具屋さんでエサを買ったほうがよかったかもしれない。 「デー デェデェ」 ぐったりしている実装石を仰向けにして、赤インクを点眼し何匹か蛆実装を産ませる。 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」 「デデェーーーッ? デエェェェェー デェェェンデェェェン」 (なんで蛆ちゃん産ませるデス? 騙されたデスー 仔産みドレイにされちゃったデスゥゥゥ) 大きい蛆が出てこなくなったら強制出産を止める。 親実装はRVボックスにまた閉じ込めておく。 「デェー デッデオロロデー デデロデェェェ デェェェェンデスンデスンオロローーンオロローーーン」 (こんなはずじゃなかったデスゥー 公園に戻りたいデスー 仔のいる我が家に帰りたいデスー) 釣具とクールボックスを持って岩の多いポイントへ向かう。 ブラックバス用の短いロッド(2480円)に簡単な仕掛けをセット。 蛆実装を潰してしまわないよう注意して、口から総排泄孔に針を刺し止める。 「レフー プニプニレフュレヒ゜ ャ ー ッ !」(プニプニしてくれるレフか? ウジちゃん嬉しいレヒ゜ ャ ー ッ !) 近くに見える岩の隙間を狙って放り込む。 「レフォ レペポ レポポポポ・・・」(イタイレフ クルシイレフ ウジチャ チンジャ ウレ フゥ ゥ ・・ゥ …ン) 水の中で蛆実装をしゃくるようにピョコピョコ動かしていると 黒い影が突進してくる。 きた♪ 「ピギャ」 ブルブルと岩陰に引っ張り込もうと強い引きを見せる。 カサゴだ。 カサゴの口からペンチで針を外す。餌の蛆実装はグチャグチャに潰れていたので別のに取り替え続行。 「レビャ」 「レビィ」 「プニフー」 他にもアイナメや外道の雑魚が釣れた。 蛆実装がなくなったので、いったん車に戻る。 穴釣り用の竿と仕掛けを片付けて、サビキ釣り用の仕掛け一式(2980円)を出す。 実装石をサビキ用エサバケツ(580円)の上に置き、また赤インクを点眼して強制出産させる。 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……………… 「デシュウゥゥーー! デッスデススゥゥーー デシャーアアアア…」 (う、蛆ちゃんが! 蛆ちゃんがとまらないデス! とめてデスゥー ) 今度は実装石が干からびてきても止めない。 ゾロゾロ出てくる小さな屑蛆実装はサビキ用エサバケツに受けておく。 ミイラになった実装石はテトラポットの隙間に投げ捨てる。 そこには他の釣り客が捨てたボラやクサフグのミイラが転がっている。 別にかまわないだろう。 「デ テ ゛… デ・・・・・・… ・・ ・ 」 (コ… コウエン ニ カ…エル テ ゛ス… マッテ ルデ…ス カワイイ… ・・ …) 屑蛆どもをサビキカゴに詰めて海に放り込む。 小さいサバや小アジ、イワシがそれなりに釣れた。 案外面白かった。また来るとしよう。 カサゴとアイナメは煮付けに、雑魚や小アジは唐揚にして食べた。 手間はかかったが、新鮮な魚はやはり美味しかった。 ・ ・ ・ 翌日のバイトの帰り、実装石を昨日捕獲したダンボール箱に別の実装石がいるのを見かけた。 昨日の実装石よりやや小さめの気がする。 岩場で釣れる根魚と同じだな、となんとなく思った。 −− 続く −− 旧バイト仲間の釣具屋で釣り道具を買い足した。 この前の公園に行き、餌を同じダンボールで確保。 「デエエエェー?!」 今回も仔は放置して、親だけ蓋付きRVボックスに押し込む。 「(ママをかえチェー! ママをかえすテチャーーッ!!)」 後ろから一匹テチュテチュ鳴きながらヨチヨチ追いかけて来たがどーでもいい。 「(ニンゲンさん放してデスー オウチに帰してデスッ コドモがいるんデスゥゥ)」 公園の入り口でふと後ろを見ると仔実装が成体に捕食されているのが見えた。 「ヂュワッヂチャァ゛ーァァァ」(たちゅけテェー ママァーママァァァァ・・・・) 畜生の世界は弱肉強食が全て。まぁ当然だな。 「(ワタシの仔がぁーーーデェェェェンデェェェェンデェェェェ ェ ー ン・・・・)」 実装石に産ませた蛆で今度はキス釣りをする。 新調したばかりの投げ竿で投げ釣りに初チャレンジ。 キャストする度に灯台に縛り付けておいた実装石が「デェェンデェーデェェーン」と五月蠅い。 だがエサがなくなるまで遠投を繰り返して粘ったが、潮が悪かったせいかボウズだ。 クサフグや海藻、コンビニ袋くらいしか釣れなかった。 気分転換に実装石をサンドバッグにする。 強制出産させた屑蛆でまたサビキをしてみたが、フグやカワハギばかりでろくなものが釣れなかった。 それでもお日様の下でよい運動ができた。 釣れなかったのはエサが悪かったせいだろう。 干からびた役立たずを捨てようとしたら、テトラポットの下の方に何か動いているのを見つけた。 実装石だ。 投げ仕掛けの天秤をスナップサルカンから外して、代わりにオモリをつける。 ポケットに入れていたガムをオモリに巻きつけて、テトラポットの隙間に放り込んだ。 ググッと引いたので一気に引っ張りあげる。 親指実装が釣れた。 「レ チ ュ ゥ〜 レチュゥゥゥ〜ン♪」(アマアマレチ オイチイレチ アタチのレチ ゼッタイ離さないレチ〜♪ ) 針がなくともエサに齧りついて離そうとしない。 ハゼ釣りでも似たようなことがおこる。 意地汚い親指実装をデコピンで外して、もう一度キャストする。 軽い引きがあったので今度はソロソロとゆっくり引き上げる。 「レヒョレッフゥゥレフ ゥ 〜〜ン ♪」(アマアマレフ〜ン 逃がさないレフ 全部ウジちゃんのものレフ〜♪ ) また釣れた。今度は蛆実装が齧りついていた。 「レチィーーッ レチッレチッレチャァァァッ!」(ドロボー アタチのアマアマかえせレチ!) 「レフン レフーンプニフープニ フ 〜ン 」(ニンゲンさん 会えて嬉しいレフ プニプニして欲しいレフ〜)」 前にミイラになった実装石を捨てた場所の近くだ。たぶん腹に残っていた屑蛆の生き残りだろう。 片付けようと思っていた投げ仕掛けの針に刺して防波堤の継ぎ目に落としたらアイナメの大きいのが釣れた。 よい獲物は案外足元にいるものだ。 晩飯がとれて助かった。ありがとう実装石。 −− 終わり −−
