「奴隷ニンゲン」 とある公園の風景。 実装石が虐待されるのはいつものこと。 「デェェェン! やめてー、お腹の仔だけは殺さないでデスー!」 「おいおい、お前が死んだら仔は死ぬだろ?」 「オロローーン!!」 うずくまる野良実装。 「」は容赦なくバールのような物を振り上げた。 しかしそれが実装石のやわらか頭を粉砕することはなかった。 … ==================================================================== わたしの名は喪黒福造……人呼んで『笑ゥせぇるすまん』 ただの『せぇるすまん』じゃございません。わたしの取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。 この世は老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり…… そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。 いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。 さて、今日のお客様は…… 【エメラルド (1) 元飼い実装】 ホーッホッホッホ…… ======================================================================= 「うわ! こっち来んな!」 エメラルドが顔を上げると「」はいなくなっていた。 代わりに黒ィニンゲンが立っていた。 「デ、デスゥ…?」 「ご安心下さい。虐待派は私が追い払いましたから」 … ------------------------------------------------------------------------ エメラルドは黒ィニンゲンに連れられてベンチに座った。 「申し遅れましたが、実はわたくし、こういう者です」 「デ… ワタシ、ニンゲンさんの文字は読めないデス」 「あ、これは失敬」 … ------------------------------------------------------------------------- (数分後) 「ほほぅ、野良実装にしては随分綺麗だと思ったら、やはり飼い実装でしたか」 「元飼い実装デス。だけど実際は着せ替え人形みたいなものだったデス」 「ああ、もしかしてお腹にお仔さんができたからお払い箱に…」 「その通りなんデスゥ」 ・ ・ ・ 「公園はほんとに酷い所デス。とても生き物の住む所じゃないデスゥ…」 「確かに虐待派がうろうろしてますし、 実装石といったら同属喰いで有名ですからねぇ」 「それじゃあなた、また飼い実装に戻りたいとお思いですか?」 「それは無理だと思うデス… 今のワタシはただの野良実装デスゥ」 「おやぁ… あなたそんな根性ではこの先、生きていけませんよ。 周りの実装石の皆さんは、我こそはぁ!という気持ちで望んでいらっしゃるんですから」 「それは、そうした方がいいと思うデス。でも、そんなことしたら殺されちゃ…」 「よろしい… 一つ私が気合を入れて差し上げましょう」 黒ィニンゲンは右手の人差し指をエメラルドに向けた。 「あなたは強い、賢い、偉いのです! その気になれば奴隷を手に入れられる! 奴隷を手に入れるのです!」 ド——————ン!!! 「デギャァァァァァァァァァァァァァ!」 … ------------------------------------------------------------------------- とある公園の風景。 実装石が媚びるのはいつものこと。 「ニンゲンさん可愛いワタシを飼わせてあげるデス〜ン♪」 「デ〜ン♪ ワタシのお歌でメロメロになるデス〜」 「テシャァァ!! 糞ニンゲン寿司金平糖ステーキ献上しろテシャァァァ!!」 青年はそんな実装達は無視して、近道の公園を横切る。 しかし、そんな彼の目に留まった一匹の実装は他のそれとは違っていた。 「デェッスゥゥゥゥゥゥ!!!! 奴隷ニンゲンワタシの世話をしろデスゥゥゥゥ!!」 実装の気迫に圧倒された青年はその実装を連れて帰った。 ピンとくる何かを感じたのだ。 … ------------------------------------------------------------------------- (数日後) 「デヘェ… もっと力入れろデスゥ!」 「はい、エメラルド様ぁ」 青年はエメラルドの肩を揉んでいた。 揉むといっても指で摘むようなものだが。 「デププ。お前は本当に物分りの言い奴隷ニンゲンデスゥ。褒めてやるデス」 「はわぁぁ、あ、ありがたいお言葉ぁ…」 青年は特殊な性癖を持っていた。 彼は虐げられれば虐げられるほど、性的な快感を得るような人間だった。 そして中でも女王様に虐げられるのが大好きだった。 彼はエメラルドを初めて見た時こう思った。 『な、なんだこの実装石は… 何故だ、何故だか女王様に見える…』 エメラルドは幸運にも、理想の奴隷ニンゲンを手に入れることができたのだ。 「デッデロゲ〜♪ この世は楽園デス〜 奴隷ニンゲンもいるデス〜 早く産まれてママと幸せになるデス〜」 … ------------------------------------------------------------------------- (数時間後) エメラルドは散歩をしていた。 しかし、首輪を付けているのは青年の方で、前を歩いくのはエメラルドだった。 エメラルドは他の飼い実装に出会うと、激しく罵った。 「デップップップップ! お前らのなんと無様なことデス〜」 「デギャー! またお前かデス! ワタシの奴隷の方が金持ちデシャァァ!」 「だから何デス? お前は奴隷に首輪を付けられてるデスか? そんなのおかしいデス! ほんとの奴隷はお前の方デス! お前はただの生き人形デス〜♪」 エメラルドは膨らんだお腹をさすりながら大笑いした。 そして、青年は四つんばいになったままヘラヘラと涎を垂らしながら笑っていた。 ------------------------------------------------------------------------- (また数日後) 「奴隷ニンゲン早くご飯持ってくるテチャー!」 「奴隷ニンゲンウンチ拭けレチャー!」 「プニフー! 早くプニプ二しやがれレフー!」 テチャレフテスレチャ! エメラルドは無事に出産を終えていた。 彼女の産んだ仔は胎教のお陰で見事に全匹糞蟲として誕生した。 しかし、エメラルド自身は元々賢い実装だったので仔への愛はしっかりと残っていた。 "奴隷ニンゲン早くワタシの可愛い仔の世話をするデスーー!!" 青年が期待したのはこんな言葉だった。 しかし、エメラルドは仔への愛情なのか、食事の用意以外はほとんどの世話を自分でやってしまった。 当然のごとく、仔を手塩にかけて育てている彼女には、青年をこき使う暇はなかった。 これは青年の予想を大きくはずれたものだった。 彼はエメラルドが自分を虐げなくなったことに苛立ちを募らせていた。 ------------------------------------------------------------------------- (その夜) 「デスゥ…?」 エメラルドはリビングの真ん中に設置させたベッドで、すやすやと眠っていた。 彼女は何かの気配を感じて起きたのだが、近くには奴隷ニンゲンはいない。 仔達も隣で可愛い寝息を立てていた。 「気のせいだったデスね」 「気のせいじゃありませんよ」 「デ!? デギャッ!」 暗い部屋で目を凝らすと、窓の方にいつかの黒ィニンゲンが立っていた。 黒ィニンゲンはのそのそとエメラルドの方に近づいてきた。 「いやぁ、さうがですねぇ。まさか本当に飼い実装になられていたとは」 「と、当然デス。ワタシは特別だからこんなの当たり前デス!」 「あ、その調子ならわざわざ私が出向くこともなかったようですな。ホッホッホッホッホ」 「デスゥ? なんデス!? 気になるデス! 聞かせろデス!」 「はぁ、この前お散歩中のあなたとお仔さん方の仲むつまじいい姿を見かけたものですから。 もしや、出産を無事に終えたことですっかり安心して、そのまま元の気弱なあなたに戻ってしまわれたんじゃないかと心配していたんですよ」 黒ィニンゲンはペラペラと喋り続けたが、エメラルドには実際の所何を言いたいのかよく分からなかった。 「デ! だからニンゲンは何を言いたいデス!?」 「つ・ま・り、あなたに忠告をしに来たんですよ。 今後、人間に媚びたりしたら大変な事になりますよ〜、と」 「デェ… デプ、デプププ。ワタシが媚びるなんてもうありえないデス。 天地がひっくり返ってもありえないデス。ニンゲン、無駄足だったデスね。 …て、ニンゲンどっか消えたデス」 突然現われ、突然消えた黒ィニンゲンを不思議に思いながらもエメラルドは再び眠った。 ------------------------------------------------------------------------- (翌日) 「デゲェ? 長女がいないデス! 次女もいないデス! 三女もいないデスーー!! というかみんないなくなってるデスーー!!」 昨日まで一緒にいたはずの可愛い仔がいなくなり動転するエメラルド。 そこへ奴隷青年が大きなケースを持ってやって来た。 「エメラルド様、なにか命令は…?」 「デェェェ!! うるさいデス!! お前なんかに構ってる暇はないデス!!」 「そうなのか、やっぱり… やっぱりあなたはこいつらがいる限り僕だけの女王様じゃないんだね」 青年は一言呟くと、ケースをエメラルドの前に置いた。 その中には不満で糞を漏らしたり、テチャテチャと暴れている仔達がいた。 「デ! お、お前達! なんでそんな所に!?」 混乱しているエメラルドをよそ目に、青年は一匹の仔を握りつぶした。 「チャァァァァ!ママァーーーーー! チベェ!!」 エメラルドには理解できなかった。 何故奴隷ニンゲンが自分の仔を殺しているのか。 いや、何故殺すことができるのかが。 「ママ早く助けレヂュゥ!!」 「痛いレギャァァァ!! ベチョ!!」 次々と潰されていく仔達。 エメラルドはもはや、何かを考える余裕など無かった。 今起きていることをどうにか止めたい。ただその思いだけが空回りしていた。 「デ… デ…」 彼女には奴隷ニンゲンに止めろと怒りをぶつけることが出来なかった。 仔を取り戻そうと、奴隷ニンゲンをぶちのめすことも出来なかった。 無意識に右手が口元に動く、首が傾く… 「デ、デッス〜ン♪」 それは実装石の本能とも言える行動だった。 ------------------------------------------------------------------------- エメラルドが媚びると青年はリビングを去った。 それがどうしてなのか、彼女にはわからなかったが何匹かは仔が助かったのでそんなことはどうでも良かった。 「良かったデス… お前達が助かって…」 「なんにもよかありませんよぉ」 エメラルドが振り返るとそこには黒ィニンゲンが立っていた。 黒ィニンゲンは強い口調でエメラルドを責め立てた。 「あなた私の忠告を無視して人間に媚びましたね」 「ち、違うデス! あれは命令デス! 反乱を起こした愚かな奴隷に…」 「嘘おっしゃい! あの時のあなたの心からは仔を失う事への恐怖はあれども、 仔を奪われることに対する怒りは感じられませんでした。 あなたあの青年に弱みを見せてしまいましたよ。 あなたにはもう彼を支配するだけの威厳は残っていません!」 「そ、そんなこと…」 「このままではあなたもお仔さんも大変な目に遭ってしまいます。 今ならまだ間に合うかもしれません。 逃げるのです。ここから逃げるのです。 公園へ逃げるのです!」 ド——————ン!!! 「デギャァァァァァァァァァァァァァ!」 … ------------------------------------------------------------------------- (青年視点) ふぅ… あれは僕の思い違いだったのか。 あの時に見たエメラルド様には気迫があった。 あなたなら僕の女王様に相応しいと思った。 だけど、あなたは変わってしまった。 仔が産まれてからというもの、僕にはまったくかまってくれなくなった。 それに母親らしい面が見えるに連れて、そっちがあなたの本性なんじゃないかと思ったよ。 僕はあなたに糞を投げつけて貰いたかったんだ。 奴隷ニンゲンふざけるなって… だけどやっぱりあなたは普通の実装石だったんだ。 仔を殺されたくらいであんな、あんなことするなんて… うぅぅぅぅぅ… 今までの僕はなんだったんだ。 あんな普通の実装石に仕えていたなんて… ぐぅぅぅぅぅ!!! この糞蟲がぁぁぁぁぁぁ!!! ぜぇってぇ許さねぇかんなぁぁぁぁぁぁ!!! ------------------------------------------------------------------------- 黒ィニンゲンは朝焼けを背に去って行った。 どこからか実装石の悲鳴が聞こえるような気がするのも気のせいではない。 「はぁぁ、やっぱり実装石の足では逃げ切れなかったようですねぇ… しかし、人間とは恐ろしいものですな。自分から奴隷になっておいて逆恨みするなんて。 まあ、所詮実装石相手ですからね …これがほんとの上げ落としって奴ですなァ」 ホーッホッホッホ!! 駄文でした 赤いサクブスでした 元祖上げ落としの「笑ゥせぇるすまん」リスペクト
