友人が彼氏と同棲を始めたというのでいっちょ冷やかしにいってくるかと思い立った。 とりあえず電話してそちらに伺う旨を伝える。 しかし電話であいつ、変なこと言ってたなあ。 『彼氏?違うよ実装石だよ、それもマラつき』 以前、散々、彼氏が出来た彼氏が出来たと友人たちに吹聴してたし、 彼氏とやらのプリクラも見せてもらった。 ちょっとポッチャリした人の良さそうな男の人だった、 …わりと好みかも、チクショウ。 それに引越しの日は『手伝いに来てくれたら彼氏手作りの夕飯おごる』と言われたけど残念ながら仕事の都合で無理だった。 原チャを走らせ30分。 やって来たるは彼女らの新居、双葉ハイツ。 表札確認、302号室…鈴木○隆と高橋○子、 ん、まちがいない。 「ちわー」 チャイム押してドアの向こうから挨拶する。 「はーい」 という彼女の声が聞こえてくる。 「あ、待ってたよーいらっしゃーい」 「デスゥー」 出迎えてくれたのは友人の○子と…その彼氏の…いや、マラ実装の…いや、彼、氏…? とにかく、プリクラで見たあの彼氏だった。 彼女に首輪と縄を付けられ、でかい緑の実装服を着た彼氏が出迎えてくれたのだった。 なにこれ? 固まった私に向かって友人の彼女は意気揚々と言った。 「これ、私の飼いマラ実装のふかみどり君、ホラ、御挨拶は?」 彼女がぐいっと紐を引っ張ると、 「デッスゥ!」 と大きな声で実装服を着た男が片手を顎に当てて首をかしげた。 「こら!お客さんにいきなり媚を売るなんて行儀の悪い実装だね!!」 彼女は声を荒げるとその彼氏の尻をパシンパシンと平手打ちした。 「デギャッ!デギャッ!デギャッスー」 彼氏…もといでかいマラ実装…いや、彼氏…ああくそっ!は、とにかくなんか実装っぽい悲鳴を上げながらも嬉しそうだった。 妙な雰囲気の中で私は引き攣った愛想笑いを浮かべながら彼女に引っ越し祝いのミスドのドーナッツを渡した。 ふかみどり君が…甘いドーナッツの匂いに引き寄せられてのそのそと四つん這いでやって来た。 正直「うわっ来んな」と思った。 「だめでしょ!ふかみどり!!お行儀よくしなきゃおやつあげないって何度言ったら分るの!!」 怒った彼女が実装タタキでもって彼氏の…いやふかみどりの全身を引っ叩く。 「デッスーン!デッスーン!!」 と愛嬌をあげたマラ実装ふかみどり君…つーか、彼氏は嬉しそうだった…。 結局、私が彼女らの家にいたのは20分にも満たなかった。 ちょっとくらくらする頭を抱えて早々に帰ってきたのだった。 しかし彼女と彼氏の…ふかみどり君は多分あれで幸せなんだろう…。 そういえば彼女は昔から実装石が大好きで(主に虐待する面で)、 よく『実装石を彼氏に出来たらなー』なんて言ってた…、 そのときは『じゃ、おめーマラ実装とかとヤんのかよ?正気じゃねえなーゲラゲラ』と皆で笑っていたものだったけれど…。 どうやら彼女は理想の彼氏を手に入れたようだ…。 人間でありながら実装石として虐待されるのを楽しむ彼氏が…。 人の幸せの形はそれぞれだ…とは思いつつも、 あの彼氏は長生きできるだろうか?と思い悩む春深いある日だった。 終 ———————————————————————————————————— 「デスとデス」&「託児における自分なりの考察」の作者でした。 20秒くらいで書きました。
