タイトル:【妄】 コチラ側通信 実装石の懇(あからし)
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初投稿日時:2008/02/18-23:53:20修正日時:2008/02/18-23:53:20
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■コチラ側通信02 実装石の懇(あからし)

こちらの世界には居ない 都市伝説以下の存在に取り憑かれた『ぼく』の噺

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碧黒(あおぐろ)き矮人(こびと) 川辺に在りし
頻(しき)りに邑(むら)人に糧を乞う
望み適わずんば 邑人の駒 水に引き込み 此を喰らう
稀に邑人をも襲い その尻仔玉を抜くなり
此は 水虎の仕業なるや

古老 答えて曰く
其れは□□□なり 河童に在らざるなり


別の者曰く
殯(もがり)の場にて敢えて蠢くモノ在り
其れは屍肉を貪るなり
身の丈 咫(しゃく)に余り 弐咫に及ばず
肉色の駆に嚢角(ふくろつの)頭上に生じ いと 醜き
此は 巷の聞こえし 魍魎なるや

古老 答えて曰く
其れは□□□なり 魍魎に在らざるなり
さらに 及べば 禿裸なり


別の者曰く
古き長者の舘に奇しき童女 何時とも識れず住まう
家人郎党 誰(たれ)も其の貌に覚え無く 不可思議な事在り頸を傾ぐ
其の童女 家に在りし時 家大いに栄え
在らざるは家 傾くと聞き及ぶ
長者 其れを嫌い
童女を捕まえを奥の座敷に囲うも 何時とも識れず家を去れり
其の長者 未だ健在と聞く
此は 巷の聞こえし 座敷童なるや

古老 答えて曰く
其れは□□□なり 座敷童に在らざるなり


別の者曰く

・・・中略・・・

其れは□□□なり 餓鬼に在らざるなり

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「双葉夜話(ふたつはよるばなし)」 松宮傳介 著 昭和5年6月6日:再版
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「この □□□ってのは 欠字?」との問いに 昌幸は
「うん 最初から活字になってたから おれのセイじゃないよ」

社会的な流れと云うものか
昌幸が勤めている会社から出向させられてる双葉市郷土博物館では 所有している蔵書を電子書籍する方向で動いている

本を1ページ毎にスキャン(600dpi)して OCR(Optical Character Reader:光学式文字読取装置) でテキスト化
校正してサーバーにアップする
画像データそのものも使用出来る可能性を残すためか 微妙な解像度を要求してくる

著作権の整備が微妙なため 著作者の死後50年を越えた書籍から 古い順に処理している
自然 刊本はぼろぼろであり 全ての工程が手作業となる

「世の中には 自動的にページをめくって撮影して OCRしてくれるシステムもあるんですけど!」
今年は予算が取ってないし よしんば有ってもページがばらけ始めてる本では やはり手作業になるだろう

完全にばらけた本だったら 別の楽な方法があるのだが ソウは行かないのが現実と云う壁なのだ

「おれがSE(システムエンジニア)になったのは こんな事をするためじゃない」
と「こんなこと」をして糊口を凌いでいる人が聞いたら 気を悪くするようなコトを叫ぶ

とは云え 性格的に「こんなこと」に向いていた彼のオペレートは 実は高く評価されていた

正確でソツがないのだ
「豪放磊落」なキャラを自認したい彼は ソレを認めたくならしいのだが・・・

その昌幸
こうやって面白い本を見つけると データを持って 腐れ縁のぼくの家にやってくる
「今は本の傷みのため 持ち出しは禁止になってるけど 元々は貸し出してた本だし 合法な行為だ 安心しろ
実際に研究家が訪ねてきたら データをコピーして渡してる
ネットに上げる前に 解説を依頼に来て 断られたって事にしよう」
「ぼくは研究者でもないし 古書肆でも 神主でも 妖怪ハンターでもない」

駅から15分離れただけで こんなに簡素になるのか というくらいの郊外
昔は4畳半 バス トイレ キッチン共用で貸し出されていた部屋を 2部屋纏めて改装し 1物件として貸し出されたの我が家だ
2Fを纏めて借りた事になる

隣の部屋に行くのに 一旦部屋から出てキッチンをかすり廊下に回って往かなければならない

バスとトイレも離れていて 風呂前に催してもキッチンを抜けて 廊下を通って用を足す
これが面白くてこの部屋を選んだのだ
そもそも2DKに廊下が有るのが無駄で好い

案の定 家へ来た友人は 直感的にトイレを見失う

玄関を見失った ガスの検査員もいたし




さてこの本(データ)の方に話を戻そう

コタツの上のノートパソコンでデータの続きをななめ読みしてみる

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【口語訳】

「ダークグリーンなコビトが川にいて しきりに村人に食事をねだっている
訴えを聞かないと 村人の馬を水に引き込み喰ってしまう
時々村人にさえ襲いかかって「シリコダマ」を引っこ抜く
これは 水虎の仕業ですか?」

老人はそれに答えて
「そりゃ□□□じゃ 河童じゃないそい」


別の人が云う
「埋葬する前の屍を於いておく場所で なんか蠢いているけど
なんか 死体喰ってるし・・・
体長は30センチちょっとから60センチは行かないくらい
肌色で頭には 皮に包まれた角が生えていて すごく醜い
これは 噂に聞く魍魎ですか?」

老人はそれに答えて
「そりゃ□□□じゃ 魍魎じゃないそい
もうちっと云っとくと 禿げハダカじゃ」


別の人が云う
「古い長者どんの屋敷に怪しい少女が 何時とも知れずに住み着いている
家族も雇い人も 見たこと無い顔で 不思議な事もあるもんだと首を傾げる
その少女がいると家は栄えて
居なくなると家は衰退すると聞いた
長者どんは その言い伝えを嫌がり
捕まえて奥座敷に閉じこめたが いつの間にか居なくなってしまった
其の長者どんは まだ元気らしい
これは 噂に聞く座敷童ですか?」

老人はそれに答えて
「そりゃ□□□じゃ 座敷童じゃないそい」


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「この調子で 108人の来訪者を次々と論破していく構成なンだけど
まだ 続ける?」とぼく

「いい(もうやめて下さい 助けて下さい くらいの意)」
と うちの冷蔵庫にビールを勝手に取りに行く
抜いた分 脇段ボールから冷蔵庫に補充してくれる

「まぁ こんなカンジで 延々妖怪の特徴を続けて ことごとく□□□だと云い続けている
ざっと上げてみても

垢嘗(あかなめ)
小豆洗い
二口女
オバリヨン
死神
川獺(かわうそ)
倉ぼっこ
式神
狸
狢(むじな)
青坊主
おしらさま
油すまし
砂かけ婆
髪鬼(かみおに)
天の邪鬼
薬缶吊る
かぶきり小僧
付喪神(つくもがみ)
テッチ(山姥)
豆腐小僧
ぬっぺらぼう
ぬらりひょん
ヒダル神
べとべとさん
すねこすり
狒々(ひひ)
夜雀(よすずめ)
産女(うぶめ)
コロポックル
片耳豚(かたきらうわ)

等々

概ね小さいモノとか食い意地が張ってるモノとか 目に見えないモノとかだね


うあ『片耳豚(かたきらうわ)』って知ってる?」

「しらん」ふつう 識らないか

「なんでも奄美大島系の妖怪らしい
名前の通りで片耳の豚の姿をしていて 股の下をくぐられたらタマシイを抜かれる
助かっても性器を損傷してしまい 一生フヌケになってしまうと云う」

「性的なニュアンスが(苦笑)」
「ロケーション的には ハブとも符丁するねぇ

『産女』は 抱いている子供を被害者に渡すシチュエーションが該当

『オバリヨン』はいわゆる おんぶおばけ 産女の手渡す子供とキャラかぶり

『死神』は異国の言語で死の咒(しゅ)を掛ける・・・Death(デス)

『テッチ』も単に鳴き声で

『薬缶吊る』に至っては アイテムの符丁だけだ」

「駄洒落ってOKなの」
「『韻を踏む』のは 王道だよ」とぼくも ぼくのビールを取りに行く

おれのも おれのもと向こうから聞こえる

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この著者 松宮傳介翁てね 明治元年生まれの民俗学者でね 折からの西洋文明にパニくった一人だよ

私財を抛(なげう)って 集められるだけ民話を採取していったんだ
集め尽くしたら 今度はそれを コト細かく分類した ソコまでは 好い 大変好ましい

だけど 其処からが 悪かったんだ」

はいはい 聞いてるよ つづけなすってと昌幸

「かれは これらの資料を片っ端から 科学的に潰していった

妖怪の大虐殺だ」


続ける
「文明開化の波の中 この論文は受け入れられた
日本を省みようというムーブメントや民俗学だのは まだこの後の話だしね

彼は この後の著作は鳴かず飛ばずで 故郷の双葉市に隠遁したと聞く
晩年の著作があるのは 知ってたけど コレだったとは」

でも絶筆の手記を持ってるよの自慢をスルーしつつ

「持ちネタ いっぺんに出し過ぎたんじゃないの」
「たしかに ことごとく否定するパートを読み飛ばせば それ以前の妖怪を体系立って整理した優秀な『妖怪辞典』として機能してる
現に 最近ではソウ云った意味での再評価がされてる人だ」

「このじいさんが 妖怪が憎くくって そんな事してたとしたら えらく皮肉な結果だなあ」

「・・・そうか 憎かったわけじゃなかったら 思う壺かぁ
そうなると 晩年のこの本のでの態度が 意味がありそうに思えてくる」

「あんまり詳しくないんだけど コウ云う欠字って 時の権力者とかを揶揄する政治的な意味だとか
あなた(読者)の都合の良い言葉を嵌め込んで下さい ってぇンじゃないの?」

「おおむね その通り
再版で昭和4年 初版は2年か 総理大臣的には
昭和元年から若槻禮次郎(第一次) 昭和2年からが田中義一 ピンとは来ないなぁ
この年は昭和金融恐慌があったけど 沈静化に成功してるようだし
あと 余談だけど 昭和天皇に『田中の話はさっぱりわからぬ もう田中の話は聞きたくない』
なんて云われたエピソードも残ってる」

「とほほだ」
「とほほだ とほほの見本だね」


「どうも時事ネタっぽくないなぁ」

「一般論的な政治家像かもね 明治の政治家のヒャッハーぶりを聞き及んだとかしたら 肯(うなづ)ける」

「だけど 108のラインナップを眺めるに 当てはまる人物像ってのも 厭なひとだけど 実害は無さげだ」

「自分の都合の良い人を当てはめるケースも 却下だね」

微妙に 用意された結論を 云い出せずにいる

「それよりも 例の郷土博物館だけど データーベースを自前のサーバーに設置したいらしいんだ」
「そりゃ 前向きでいいじゃないか」
「誰が 管理とかするんだ あそこで育てると半年はかかるぞ」
「そのまま 就職したら? SEなんだし」
「顧客としてのメンテは厭わない かかりっきりは厭だ
常駐しちまうと SEじゃなくて 物知りなオペレーターになっちまう」
「おまえ ヒトに好かれるんだよ」

夜中の2時頃
「それじゃ 明日午後から ちょっと出社だから」と昌幸は腰を上げた

「これ(パソコンを見て)ありがとうな」

「観たいモノが 観えたか?」

「微妙だな すがりつくと 恐い目を見る」

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松宮傳介 手記(未公表)

あれ以来 小生には「零落した神」「まつろわぬモノ」たちの気配が纏わりついている
あれほど念を入れて無効化の式を掛けたのに

いや 式はそれなりに充分利いたのだ
だから それのツケが此方側に廻って来たと云える

未熟を悔やむ

愛すべき憎むべき モノ 達よ
此方では住み辛らかろう

今壱度 式を打とう
干涸らびた 老骨ひとつ ニエに献上致す
此をもって彼方に誘(いざな)おう

コチラからアチラに シフトするが良い


此の手記を観た 後世の者の苦言が聞こえる様だ

「翁よ・・・

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・・・翁よ ファンタジーが過ぎまするぞ」

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あから・し 【▽懇し】 
(形シク)
胸のしめつけられるような気持ちである。ひどい。心に痛切に感じられるさまにいう。

	三省堂提供「大辞林 第二版」より

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了





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【おまけ】
古文翻訳装置にかけてみました

[
碧が黒い矮人 川辺に存在した
ひっきりなしに村人に糧を乞える
望み適私ねるなら 村人の馬[駒] 水に引き混雑し これを喰ろう
稀に村を人さえも襲い その尻子玉を抜くのである
これは 水トラの仕業であることか

過去老 答をえて言うことには
それは□□□なり 河が子供に存在しないのである


別の者は言うことには
殯の場で敢えて蠢くるモノいる
それは屍肉を欲張るのである
身の長さ[身長] 30.3センチメートルに余り 60.6センチメートルに及ばない
肉色の体に 嚢角が頭上に生をし とても 醜き
これは 巷が聞こえた 魍魎なることか

過去老 答をえて言うことには
それは□□□なり 魍魎に存在しないのである
言うまでもなく 及ぶと ハゲが裸なり


別の者は言うことには
古い長が者の舘に不思議である子供女 逸とも知れする住もう
家人郎党 誰もその顔に感じ無くのか 不可思議な事ある首を傾ぐ
その子供女 家に存在した時 家が大きな去り栄え
いないのは 家傾くと聞き及ぶ
長者 それを嫌がい
子供女を捕まはえを奥の座は敷に囲えるも いつとも知をする家を去っている
その長者 未だ健を在と聞く
これは 巷が聞こえた 座は敷子供であることか

過去老 答をえて言うことには
それは□□□なり 座が敷子供ではないのである


別の者は言うことには

…中略…

それは□□□なり 餓鬼に存在しないのである
]

※ 多少 元テキストを整形しました

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■過去作品
常緑樹
コチラ側通信



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