帰宅してコンビニ袋を開けるなり、俺は絶句してしまった。 「「「テッチュ〜〜〜〜ン!」」」 袋の中では何と三匹もの仔実装が異口同音に(リンガル使ってないので当たり前っちゃ当た り前だが)テチュ〜ンと鳴いている。 「一度に三匹って……良くやるよ」 よっぽど切羽詰った事情があったのかも知れないな、これは。 仔実装。いや、仔蟲どもは一様に右手を頬に当て、小首を傾げるいわゆる『媚』の姿勢で俺 を見ている。内一匹は気早く深緑に染まったパンツを脱ぎ捨て、ブリブリと軟便を空の弁当箱 の上に漏らしながらオナニーを始めている。 「テッスゥ〜ン……テッスゥ〜ン(はぁと」 うーむ。まだこんな『自分を性対象として見せよう』とする実装石っていたんだなあ。きも ちわる。 とりあえず。と、俺は携帯のリンガルを起動させようとして……やめた。 アパートの部屋の外で『デス、デ……デス、デス、デス』と若干息を切らしたかのような親 実装の鳴き声が聞こえたからだ。 (なんだ) と、俺は正直に思った。 これは、単なる託児なのだ。 もう少し待てば外の親実装は『可愛いワタシの仔がここにいるはずデス、ワタシも一緒に飼う事を許 すデス』などと騒ぎ出すだけだ。 一度に三匹などよほど切羽詰った事情があったのかねえなどと、一瞬でも思った自分が馬鹿 らしい。 袋の中で媚び、オナっている仔実装を無視して袋の口を結び、適当に放り出すと、俺は扉に 向かい、強く扉を押し開いた。 ドン! と、音がして同時に『デギャッ!?』という鳴き声が聞こえた。扉の傍で息を整え ていた親実装が吹っ飛ばされたのだ。 「お前、走って追いかけてきてたんだな」 それだけ言うと、まだ転んだままの親実装の腹を靴を履かないままの素足で踏みつけた。 「デボォォォォォォォ!!?」 「きもちわる。糞漏らすなよ」 早速、盛大にパンコンしている親実装の首筋を掴んで摘み上げる。うーん、いいもん食って たのかして首まわり太いな〜。きもちわる。 俺はあまり騒がれるのも嫌なので(隣近所も部屋は埋まっているしな)そのまま部屋に連れ 込み、放り出したコンビニ袋に目をやった。げ、袋が糞で膨れ上がってやがる。ありえねえだ ろ。最悪だな、こいつら。 仔実装は袋の中で自分のひり出した糞に溺れているのか、さきほどよりも激しくテチテチ鳴 いている。俺はその袋も片手に引っつかんで風呂場に向かった。 腕の中では親実装が何が面白いのかデプププといつもの気味の悪い笑みを浮かべている。 何? もしかして成功したとでも思ってんのか? ないだろ。何故ないと思えない。あ、そ うか糞蟲だもんな。 俺は風呂場まで来るとまず親実装を浴槽の中に放り出し、次に仔実装の(主に糞が入った) コンビニ袋に手を掛ける。手を掛ける頃には浴槽の底にしたたかに脆い足をぶつけて砕いて鳴 いていた。 浴槽の底は早速、緑と赤の染みがついていたが、そこはそれ。無視して袋を開くと、糞ごと 逆さにして中身をそっくり浴槽にぶちまける。上を向いてデスデス何か言っていた親実装は仔 の糞便を丸々口の中にぶち込まれる羽目になった。 「デゲ!? デ、デ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 あー、怒ってる怒ってる。仔実装は糞やら何やらがショックを吸収したのか知らんが無傷み たいだ。 最初はバラバラに落ちたがすぐに寄り添って今度は媚びもせずに震え始めた。おん? 親が 仔に向かって何か言ってるなあ。 今度こそ俺はリンガルを起こして蟲どもの声に耳を傾けた。 「オマエたちはやっぱりバカな仔デス。まともにおあいそもできないデスか」 「テ、テェ……ちゃ、ちゃんとおあいそしたテチ! でもあのニンゲン、ワタチたちを無視す るテチ!」 「そ、そうテチ。ワタチたちは悪くないテチ」 「そうテチそうテチ」 「嘘をつくんじゃないデス! 見るデスあのニンゲンの緩みきったツラ! あれはドレイに出 来る種類のニンゲンデス!」 無茶苦茶言ってくれるなこやつ等。 「見てるデス。ママのおあいそを!」 くにゅん、と親実装は折れ曲がって何か変なポーズをし始めた。 俺は蟲どものやり取りをやっぱり無視して風呂場を出ると、昔、日曜大工に使っていた工具 箱から錆びたカッターナイフを取り出して再び風呂場に戻った。 「テプププ。ママも無視されてるテチ」 リンガルのログに残っている言葉で判別可能なのはこれが最後だった。後には解読不能な時 に出る鳴き声がログに残っているだけでわけがわからない。 どうも浴槽内を見るに、仔実装の一匹がこの一言を切っ掛けに足の砕けた親実装に捕まえら れ、ぐちゃぐちゃになるまで叩きのめされたらしい。 既にぐちゃぐちゃなので正直今更だが、何か実装だったものっぽいものが親実装の傍に落ち ている。親実装はといえば、脅える仔二匹を憎悪に燃える瞳で睨みつけながら、浴室の中央に 鎮座ましましていた。 俺はそんな惨状をまったく気にせず、足の砕けた親実装をひょいと摘みあげ、服をカッター で裂いた。 「デ!? デッスゥ〜〜ン♪(イヤン、ニンゲンさんのエッチぃデスゥ♪)」 と表示されている。 すごいころしたい。 しかも演技なのははっきりしてるので余計に腹立つ。俺は裂いた服を完全に親実装から剥ぎ 取ってしまって適当に捨てる。 「デ……デゲ……デ……デデデス……(な、何気に服を取られたデス。で、でも我慢デス)」 思ったよりは頭いいのか? 服取られた〜って騒いでも死ぬだけってのは理解してるっぽい なあ。まぁ、あんま関係ないけど。 俺は親実装の腕を取ると、その丸っこい手先にカッターの刃を押し当てた。 「デ?」 リンガルは既にこの言葉から判別できなくなっていた。俺は押し当てた刃をそのまま押し込 み、丁度鉛筆削りの要領で親実装の腕を削り始めた。 「デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」 ぞり、ぞり。ぞり。 正直、作業感があるのは否めない。俺は別に虐待派でも愛護派でもない。正直、実装石なん てどーでもいい。でも、こうやって託児され、ニオイをつけられたら何かと面倒だ。 捨てても捨てても平然と戻ってくるこいつらを穏便に戻ってこさせなくするためには適度に 痛めつけるしかない。 「デッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」 俺の場合は、実装の腕を削ってやっている。 カッターナイフの錆は実装の血でついたものだ。 「デッズァアアアアアアアアアアァァァァ!!!!!!!」 ぞり、ぞり、ぞり。……ペキン。 カッターの先端が遂に折れた。刃はそのまま実装の皮膚の上に突き刺さったままだったが、 取るのも面倒なのでそのまま放置した。 「デ、デヒ……デ……デヒ……デ……」 終わったのか? 何となくそう言いたげな顔でこちらを見ている親実装。しかし、俺は何も 考える気がしなくなってきた頭をフル回転させて、カッターの刃を押し出した。 「デェェェェェェェェェェェェ!!!!???」 そして、まだ親実装の腕そぎを再開する。 「デギィィィィィ!!! デギャィギィィィィィィィ!!!!!」 ぼんやりと浴槽を見ると、残った仔二匹は既にパキンしたのか色のない瞳でこちらを見てい た。面倒が省けたが捨てる面倒は増えた。 「おい、子供死んだぞ」 「デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 しかし、親実装は聞こえないのか、ただただ泣き叫んでいた。 血涙が滴り落ちて俺の手は緑やら赤やらでべったべただ。 ああ、ようやくカッターの刃が親実装の骨に達したな……。 END □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
