■常緑樹 ノーキョー 後篇 【「主任〜 実は 主任は「眼鏡を掛けた 30がらみの 好いオンナ」なんですよ ドウですか? イラスト的にはキンパツ 入ってます」 「いや 補正キツイよ」 「白衣に 無駄にでかいおっぱい タバコ 飲酒♪」 「部下Aよ そんな目で見てるってオチは無いよな・・・・」 「・・・・・・・」 「いや 沈黙 怖いって・・・」 「・・・・・そんなコト 無いっスよ(嗤)」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 (主任/部下A)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1時間の舌戦に於いて 口数は圧倒的にキリコ女史が勝ってはいるものの(たばこやめようかなぁ)「説得力」で有効打は少ない 事前の仕込みでコチラの方が有利に進んでいる感がある 余力を分散させるために配置した「実装石コーラス隊」も 無駄のないフットワークで無効化されてゆく ホント 巧いなぁ おじちゃん 惚れちゃいそうだよ だが 手持ちの仔実装は 既に無いはずだ 3匹で16匹の無効化は おれにも 六(むつ)かしいスコアだ おれ 嗤ってる 咒(しゅ)が利いているのか 場の励起はまだ観測されない フィールドを真実 あるいは説得力で埋めていく作業に功を得ていない事を指す しょうがない ヨセに入る 「君の左の障害は 母親のせいではない」 「・・・其処まで調べたのか」 激昂 想定内 「いんや 親子間の不和は解ったけど 左云々は 観測結果だ 君は 左に加虐的だ 動きにも不和がある 左道に王道なし 其(そ)は 鬼道なり ってね 『鬼(キ)』って漢字は 日本に入ってきた段階で 元からあった おに(於爾 穏 その他)の定義と習合したんだ それがややっこしいトコロでね・・・・ かなり 近いシチュエーションだったもんで 後追いで 整合性が起ったりしてる (この辺りを掘りすぎると怖いモノが出てくる) 字義そのものは モノ凄く『死』の近くにある」 「わたしを『分解』するつもりか」 ああ 云っちゃったよ 若さだねぇ 追い打つ 「分解は既に済んでいる」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ひとツと ひとツのあいだには 「あいだ」がある 混沌のそばに かぎりなく近い ワタシは ホンノウてきに 虚無にヒかれるゾクセイを露呈する 「キョムが来るデスゥ〜」 混沌をケズられ ワタシはフアンテイにおちつく 理論的な矛盾 ワタシハココニイマスワタシハココニイマスワタシハココニイマスワタシハココニイマスワタシワココニイマス・・・・・ 呼ばれてめをサます −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Report.0052 当方から自主的に放つ 最初の警戒信号(非定時連絡の意) 被験者は 睡眠のバイオリズムを無視して覚醒の信号が体を支配する 本能野からではなく 思考の深い処から発信している 便意では無い 信号は体外に突き抜ける 認知外の端子が出力を検知する 積極的にスルー 無意識下で 実装石は情報を共有してる検証になるかもしれない ユングが小躍りして喜んでいるのが 見えるようだうそです 意識の励起を待たずして 機能が先走る様をセンサーに感じる 虚(うろ)が来た 寝ぼけたとも云う −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【「カオス(混沌)の対義語は コスモス(秩序 宇宙)である この場合秩序に虚無は含まれる また 色(存在)の対義語は 空(虚無)であって この場合存在に混沌は含まれる でいいのかぁ(混世魔王)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「その左目で我を観よ!」 先日 失った機能を要求する 「・・・・左に世界は無い」抑えられない 「悔しいだろうな だけど筋違いだ 君が思っているほど 君は空虚ではない 『虚ろたる舟』は 此のステージに於いて 君の役目ではない 無礼な云い方だが・・・」 すまなそうな貌・・・ には見えない嗤い猫 「無礼な云い方だが 貌に七つの穴を穿てない君は 秩序たる式(色)を享受されない 君は 『混沌』に属したままだ」 「混沌」と「虚無」は「秩序」を介した相似関係にあると 定義すると云う 継ぐ 「さながら 水面に映る 月の如く」 「面白いだろ 鏡に映る影は 自分の目では観れない自分の姿を 左右のみ反転させる配慮をしつつ突き付けて来る」 びりびりとした 物理的に干渉を起こしそうな空気の中 この「言霊が励起する寸前の『場』」に いともかろがろしく 闖入者は現れ あまっさえ 「我を召還しめしは 誰(た)そ! ニエにコンペイトウを 差し出すが すじデスゥ〜」 と カオスな台詞を並べる わたしの知り得ぬ名前を持った実装石だ それは 『通る』コトバだった −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【日本語の「緑」って 割と新しい単語って知ってた? ほら 日本語って暖色系を「赤」寒色系を「青」って括ってたでしょ 「目に青葉 山不如帰 初鰹」とか云うけど 緑じゃん 葉っぱって ンで「緑」 若葉の萌える様子を指した エネルギッシュな言葉なのね ソコから来た言葉 ケイヨウシだったの 赤ちゃんとか ミドリコ って云うでしょ 知らない? そこらが語源 (ギャクタイちゃんβ)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 火急につき物理的媒介を経てニュアンスを結んで放つ 見た目には 左手足の無い仔実装を 成体実装に投げつけたヨウにしか見えないが それに異論は無い 混沌属性たる実装石に 「死」なるカテゴリー(秩序を突き抜け 虚無の存在(理論的矛盾))を名に持つ仔実装を文字通りぶつけた その 混乱(苦笑)に付け込み 言霊を送る 「手前ぇの名前は『ミドリ』だ!」 リライト 投了 わたしの打つ手は 終わった −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【「おれの名前は 『ナリヒラ』と云う・・・ 職業歌人だ 業(カルマ)を平らぐ・・・・ フィクサー(調停者 揉み消し屋 安定剤)っぽい名前だ いやだねぇ 向いてない好きじゃない おれはトリックスター(道化廻し)で在りたかったんだ」 高子(たかいこ) 答えて曰く 「あなたは 立派にニヒリスト(虚無主義者)です」 (在原業平/高子)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Report.**** 此処にいるのは 空虚な少女でもなく 混沌たる実装石でもなく 調停者でもない 秩序を六つしか穿たれない 混沌たる秩序 混沌にすがって安定を得ようとした 矛盾の安定 混沌に成り得なかった虚無 結果としての均衡者 だけが対峙しているに過ぎない 混沌 秩序 虚無 のバランスが 蓋を開けると秩序に集約されている 意外とつまらない結果に終わったモノだ 相応しいコトバを送ろう 「三方一両損」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ああ 00131192・・・ ええ覚えてますよ 0013で始まって冬に逃げ出した個体なら 限定できます 『ノーキョー』ですか そりゃまた 安易ですね 「そうですか あれがまだ生きてたんですね 安心しました え そんなんじゃありませんよ 確信が有ったわけでもないですし サバイバリティが高いのは まぁ ウチの売りでして 「経営者がね コウ 夢見ちゃいましてね 『山実装の味を越えるぞ』って はい 彼女たちは 敷地内で限りなく野放しに育ててました まぁ 食べられそうな野草や少しの木の実なんかを蒔いね 「巣に見立てた穴とかを 想定個体数に足りないくらい作りまして コウ 争わせるわけです ゆるくですが(苦笑) ほら 山間部とはいえ このあたりは 冬も温暖気味でしょ 緊張感維持って云うか 同族喰い個体を意図的に配置してね 苦労しました 同族喰いは『感染(うつ)』るんですよ ぎりぎりで 同族喰いは損だというバランスの食料事情のキープ? 「最初は 巣の中から(秘密の取り出し口がありましてね) テキトウに選んで 出荷していたんですが 2期からは彼女らに 間引きの仔体を選ばせました 糞蟲(性格的)の仔体だって 味は変わりませんしね うちは無理強いをさせない方針なんですよ 出荷量を増やしたいときは 食糧事情を悪くすれば 間引き仔体を複数頭ずつ出したりしますしね 一挙 数倍ですわ 「血統? ありゃ嘘です だいたい 遺伝子が一種類しか見つかってないんですから はい ひとつだけ ただ ひどく再現率って云うか そんなモノが適当なんです 設計図通りに ガンプラを作らないという喩えで 解りますか? ああ やっぱり 実装石のバリエーションの多彩さは そんなカンジだと わたしは考えとるのですわ 体質が良い個体は 良い仔を産む 良い胎教 は賢い個体を産む はい それは間違いありません 遺伝に 良く似ています 「00131192・・・その『ノーキョー』さんですか? 3期の母体ですね 1齢時に10頭出産 彼女の手元には5頭残 それから 9頭の4頭残 1.5齢時に・・・ ああ この時は分産すね 8頭を 3・2・3に分けて22日間で生んでます 供出数は7 「どうして逃げ出したんでしょうね ある意味 ここは 此処は『楽園』ですから」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【部下Bは 四角い筺! (部下A)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ミドリ」と云う名前で括(くく)られた元「ノーキョー」さんは 相変わらずあの公園にいる この名前は 実装石としてはこれ以上は無いくらい スタンダードな名前だ その名を冠した 彼女は とるに足らない普通の実装石として 面白くもない日常を満喫している 「名前」と云う財産を持つ 破格の状態なのだが まぁ 行って来いで チャラだ 彼女は 今 妊娠していて 胎教に入る時期だ 願わくば 混沌だの 虚無だの 謡って欲しくないものである エバーグリーンは 健在だ 実直に 数値を返してくる 提出を拒否したレポートに付いても 言及中(そう あくまで言及) あれからは そう 特出する内容は記(しる)さないのだが 其れが目的のシステムなので 何ら問題はない 今後は スタンダードとは云い難いものの 胎教を内側から観測出来る機会を得て レポートも頻繁に上がってくるはずだ 主任は キズモノにしたお嬢さんの「責任を取る」と 妖しい云い訳をして 有給休暇状態だ そもそもは 実装関係の特許とかナンとかで 喰っていける身分らしい その意味では ケイオス舎が本社と提携関係であるのは お題目だけではないのだろう ぼくは 本社からの出向状態にある部下Aだ 有難いことに 実装石にならずに済んだ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「再構築の前に遁走するから 不自由な思いをする事になる この3日間の難儀に対しては あやまらないよ」 ソウ云うと 何かを握っていそうな右手を付き出して わたしの瞑った左目に押し当てる 痛 「そもそも 君の左目は健在だ 虚無の無効化に振り幅を一挙に反転させた『切り口』に使わせてもらった」 いや わたしの失明は それ以前から・・・・ 「その痛みは説得力だ」 過去現在未来 なんて云うが 人間には 過去しか無い 未来は 未だ来ない可能性でしかない 認識した段階で 現在は過去となるからだ あるのが過去である限り 「改竄は たやすい」 開いた掌(たなごころ)は 空だった その事に 妙に納得がいった 得心した そして 云う 「わたしが 実は 初期型実装石を秩序化する工程に於いて 人化した個体だった ってオチは 謹んで 否定します」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 余談であるが 件(くだん)の「メガマウス」さんは2年後死体で発見されることになる その間に公園の監視カメラに一度も写り込まず 「そんなとこだけ マボロシの鮫を演出してどうする」 と 関係者各位の失笑を買ったと云う −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 了
