■常緑樹 ノーキョー 中篇 【「なぁ 『部下A』よ」 「いいかげん 名前で呼んで下さいよ 主任〜」 「お前が 実は『実装石』だった ってオチだったら このスク ほのぼの路線だなぁ・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・ そんな理由で 僕の名前を伏せてたんですかぁ? 部下という立場上の自覚と フランクな雰囲気を演出するための口調も どことなくフェミニンだと云えるし」 「今からでも遅くない 語尾に『デス』を付けないか?」 「いやデス! ハッ やめて下さい その片方の口の端だけを上げて嗤うのは・・・・」 「なンだったら 『ボクー』でもいいぞ!! 謎の中年紳士の手管に屈して 好きでもない実装石の監視業務の片棒を担がされる ナチュラルボーンキラー・・・・ 業(カルマ)が 深いねぇ〜 まえUPしたスクだって 改竄してしまえば・・・・」 「ビジュアル的には コウ 幼児虐待と云うか 労働基準法違反と云うか・・・・ いやな絵面になりますね・・・ 公園近くの六畳一間のアパートで 寝袋にくるまってタバコ吸ってるオヤジと パソコンに向かって働いてる実装(蒼)石って しかも何匹かが 出たり入ったりしていたりしてるし なんとなく実装石臭い・・・」 「・・・・・そだね」 (主任/部下A)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「・・・誰 ですか?」 「えっと ソコからだと 2時の方向 仰角40° 見えるかな これ見よがしの監視カメラ それ 機能はしてるけど ダミーだから これ見よがしでないトコロにカメラが 数十機はあってね そっちは動画も鮮明に行けてるんだなぁ コレが」 「愛護派の方ですか?」 「う〜ん まぁ 違うよ どっちかって区分けされると ギャクタイしてる方かなぁ 観察派であるのが理想なんだけどね 兎に角 そのまま 聞いてよ」 「何ですか?」 口調に 怒気が混入し始めるのを 抑えきれなくなってくる 「この公園で我々は実験をしているワケなんですが それを邪魔されたくないのが本音です」 「つまり『帰れ』ってコトですか?」 「はい そうです ご希望とあれば ウブな実装石が屯(たむろ)している穴場のコミュニティを紹介しても好いよ」 「『否』と云えば?」 「社会的に殺します 3親等以上には影響を配慮しますが」 間髪を入れず答えた態度には 微塵の嘘も虚飾も無いように感じた マニュアルかもしれない 「そうですか・・・・ 考えてみます」 「あとな 老婆心ながら ひとつ進言 式の組み立てが甘い あれでは 糞蟲いっぴき 括(くく)れない」 TELしてきた男は そのひとことに初めて感情らしいモノを含ませて来たように思えた 「・・・自覚は あります」 と わたし 我ながらにがい声だと 思った −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ワタシはニガいので そっちに行くと やっぱりニガいので アタタかい方に ゆるゆると行く流される かえりたくなった まだ かえるベキではない やワらかい草とか きのミとか あつめる 冬ナル事象が タチハダカるマエに でも 抗エナイ衝動ニ突キ動カサレて おうちにカエル 見慣れた夜道を走って帰る クログロいスミには います 「ソコにいるデスか」 虚無はいますか 「ワタシはココにいるデス」 ワタシはココにある混沌です −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Report.0034 幻視なのか 有らぬ方向を見て 表層思考に言語を昇らせる 実は視野の把握も巧くいってない 24×24ドットのモノクロ画面で視覚化されたニュアンスだと思ってもらいたい しかも2階調だ 外部のカメラやGPSも連動されているので 必須の機能では無いのだが なんとも心許ない 余談ではあるのだが 額に観測用のカメラを配置して 黄色いレンズを付けようって案もあって 「赤 青(碧) 黄色で信号みたい〜」 はい 没になりました −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おーい 主任〜 理系の世界に還って来て下さ〜い」 「いや そうキッパリと分かつモンでもないし・・・」 ここで入るべきウンチクは尻切れで 主任はいつになく 上の空だ 「あいつ 来るよ」 「え?」 「ごめん おれ 焚き付けちゃったわ どう考えても あれ 挑発 成立してるね〜 ドウしよう」 アア コノヒトハタノシンデイルンダ・・・・ 「タバコは置いていって下さいよ」 「え?」 「行くんでしょ 現場に」 「え〜」 「『え〜』じゃなくて」 「だいたい 侵入者への対応は 携帯端末にアクセス 『説得』してお引き取り願うのが 鉄則でしょうに 煽ってドウするんですか!」 「ケイタイ持ってない場合は 直接行くじゃないか」 「スイッチ切らせて さらに電源まで引っこ抜かせたのは 主任じゃないですか! おまけに あれじゃキョーカツですよ恐喝!」 「証拠 残してないよ」 「あたりまえでしょ そのために本社が いくら出費してると思ってるんですか!」 「テ イ ケ イ カ ン ケ イ だ ! 本社云うな・・・」 「あいつ 欲しいなぁ」 「キリコちゃん? オンナノコですからねぇ」 「じゃなくて あれは本能で式書いてるから 偶然でも合致すると ヤバイ まわりも傷つけるタイプだなぁ こりゃ」 「出費ついでに ココで取れるだけの資料で好いから 集めてくれないか 『仕込み』に入る」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− パスパスパスと 視野に入ってくる個体をエアガンで狙い撃つ 市販のまま 無改造のハンドガンだし 薄暗いし 本気ではないし たいした成果も上がっていない 「ここで撃ってる分には お咎めナシか」 少し前に 電源を切ったはずのケイタイにメールが届いた そこには虐待現場のケッテイテキ瞬間が写った写真が数葉 添付されていて ご丁寧に目に黒線まで掛けてあった (「よい子とわるい子のギャクタイのためのベストプレイス99−双葉市編①.pdf」なるファイルも『こいつたぶんマカーじゃない』) コノ写真を 適切なタイミングで 適切なサイトに適当なコメントを入れただけで わたしを無効化出来る 云ってしまえば この写真が巧妙なコラージュであったとしても 結果に大差はない 騒げば騒ぐほど 反作用は増大する むろん それだけで済むわけもなく 父親がシゴトをイキナリ首になったり 母親に万引きの疑惑が掛かったり・・・・ じじぃは呆けるわ 犬は吠えるわ 猫はしゃべるわ 馬は笑うわ・・・・ ソレが可能だと云うことを 示唆しているわけだ 3親等以上ににかかる影響は配慮されると云うことは 2親等以内は保証せずと宣言してるに等しい 人質として括られたわけだ わたしから数えると(わたしには子も孫もいないし)じいさん一人と 両親 妹に限定される ほぼ 都市伝説と思っていた「虐待派の末路その1」のテンプレートに遭遇している これは リアルだ 笑ってしまう わたしは さっき半身を磨り潰した 仔実装と大差ない立場に立っているわけだ BB弾を撃ち尽くしたエアガンをデイバックに突っ込んで しっぽを丸めて 逃げ出すしかない わたしは −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【最近のはいけねぇい カオスが足りねぇい(ひころく)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Report.0039 野良の実装石の夜は長い 通常 人間程度の視力しか持ち合わせていない彼女たちは 日没から夜明けまでは視野が確保できないため 眠るしかない 幸か不幸か 彼女の巣の近くには街灯があり 段ボールの入り口を開け放つと 簡単な作業は出来る 段ボールの下に穿った穴から コンビニ袋に入れられた食料を取り出す 昼間の食事が利いているので(仔実装一匹摂取すれば 2日は持つ)これからの食事は考えにくい どんぐり 草 とろけるチーズ ビスケット 袋ラーメン そうめん 酒粕(!) 保存が利くラインナップだ それを ひとつ一つ確認して(ドングリなどは表面を磨いたりして)整理していく 一通り終わると また 最初から始める 快楽を示す信号が上昇する 此の作業は 娯楽なのだろう と 報告の優先度を 1ポイント上げる でも この状況は危ない 無防備すぎる センサー群をアクティブに切り替え 周辺の同族に備える 被験者がようやく就眠したので おおっぴらに情報の一次整理をはじめる 有効な情報に優先順位を付けて送信用のパッケージを作成する 偽石の近くに有線で存在しているためか この作業のデータは 不本意ながら被験者に 一部 フィードバックされる 彼女が頻繁にミている「コワイゆめ」の正体は 本システムの弊害のひとつだ 申し訳なく思う 主任に成り代わり お詫びを表明しておく 時系列に沿って開示はされてるが このレポートは リアルタイムに送信されているのではなく 1日単位で圧縮送信されている事も告白しておこう −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− わたしは そう あの糞蟲にも劣る 家族の厄災より 自分のエゴを優先してしまう 売られた喧嘩を買うとか 人の気にしている欠陥をずけずけと言い放つオヤジが気にくわないとか そんな意識はない ホント 無い 数葉の 転送された写真から カメラの位置を類推するも それ以外のカメラが有るのは 想像に難くない とりあえずこの付近に限り(類推外のカメラを2ツ発見) 数台のカメラの電源を引っこ抜き 「仕込み」をする空間のみを確保する 時間がないので 先ほどエアガンで撃たれて 逃げそびれてる個体などに 栄養剤を振る舞うコトで タマを確保する 両のポケットに 2匹ずつ計4匹 言葉を使う人間は「4」の数字を無意識に嫌う 「死」に通じるからだ 願わくば 敵が わたしを 常識的なニホンジンだと思いますように・・・・ 生きているカメラを意識しつつ 『細工は粒々 仕上げはご覧じろ』 挑発信号を放ち あまり広くない公園の奥に歩み出す 喧嘩を買ったコトになる −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【実装石ってカオスですね 次の一手が 全く読めません 読まなくても問題ありませんけど(Sai)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 段ボールを住処とする個体は あまり多くない この公園の奥には30ヶ所(中 成体実装で)40個体が精々だ 「組織的に実験を行っわれてる個体」を割り出そうとすると・・・ まぁ ロケーションからの類推はむつかしくない カメラと光源の近く 巣の前の空間 遊具や建物の配置も重要なファクターで 人とか実装石の出入りがチェックできるのならベストなプレイスだ だが 問題点は コチラが準備したロケーションではなく 彼女「ノーキョー」が最初から住んでた場所だったコトにある 我々は無意識に観測が楽な個体をチョイスしなかったか? 今後の 改善ポイントを発見しちゃた その辺りまで読んでいるかドウかは知れないが キリコ女史が来るなら遭遇しそうなポイントに 待ち伏せする 大して広くもない公園 歩き回って「おっさんを見つけて見当を付けました」 ってコトになっても困るので 適当に隠れる しゃがんで タバコも控える ほどなく 待ち人は 正面から現れた −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「こんばんわ」と挨拶めいた事をいって「ライター持ってない?」と続ける 「さっきのバーナーでいいよ」 部下Aが 実装石に会う可能性が高いから タバコとライターを奪われたとか セッティング前に自販機でタバコは買ったけど ライターは失念したとか 自己紹介としては情けない 一言に感想を圧縮すれば「くたびれた」感じの中年男性が ソコにいた 「実装石に嫌われますよ」 と グリップに使い捨てライターを内包するバーナーを 投げて渡す 「おれ コレで親指 火傷したことがある」 点火 一瞬 浮かび上がる貌はチェシャ猫の嗤いを 思い起こさせた 「あちち」 (今 おまえ あちち 云うたやろ) 「世代から云うと ハイライトよりは下だよ 団塊よりは下だ ずっと下 マイルドセブンの世代だ!」 と苦笑している 「タバコに興味ない世代ですから」 「・・・・あ そう」 グリップをコチラに向けて ライターを返してくる 「ありがとう 指紋は出ないよ」 「指紋除去?」 「そんな大げさなモノじゃなくて コツがあるのよ コツのレベル」 知りたい? と嗤ったヨウな貌になる ブラフの可能性もあるが 男は 自分が所属する世界の 怖さを仄めかす 「一応 義務だから 云って於くけど 引いてくれない?」 「言上げをしたのは マイクで拾えなかったンですか?」 「それでも 敢えてお願いする 引いて欲しい・・・」 そう 云った男は 片方の口の端だけを上げて 嗤っていた・・・・ 「あなたが悪い 試してみたくなったじゃなですか」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【俺の前で気易く「混沌」を語るんじゃねぇ おれが虚しいんだ(りゅうのすけ)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ハンデをやろう キリコ君 おれの名前は 『ナリヒラ』と云う・・・ ファミリーネームの方は残念ながら アリワラではない 真偽の判断はご随に」 「信じましょう コノ業界 嘘ほどリスキーなものは在りませんから」 コチラも 縛りを定義する 彼の名前が本物ならわたしの術の利きが確かになるし 嘘を付いたとしたら彼の式が不安定になる わたしが彼の名前を信じないと式は不安定になり 嘘の名前なら咒(しゅ)はそもそも彼に届かない・・・・ 但し 情報提供者の優位性が 彼のポイントに加算される 「もうひとつ 譲ってやろう・・・・ 君が勝てば 全てを不問にしてやる 君が負ければ 君をこの世から消してやる・・・ 煮たり 焼いたりして 喰ってやろう その場合 2親等以内への影響は防げないが 積極的なアプローチはしない」 どうだ 破格な条件だろう と云わんばかりの態度だ 「本気が出せるか?」 一見 大盤振る舞いの妥協案だが 彼と此の情報量を比べると それでも此方に不利だ 「謹んで『ナリヒラ』の名前は 返上致します 虐待派 HN『ギャクタイちゃんβ』及び『九尾キリコ』の名に於いて 命名する 汝『嗤い猫』なり」 願わくば木の上で嗤ってろ 「巧いなぁ『納得』しちゃったじゃないか 因みに『業平』は本名だ 最近は 噸と使ってないけど それから ダブルネームでの括りもめずらしい よほど『キリコ』の本名に自信在る結果が残せてないのか ネット上の名前にアイデンティティを預けているのか」 相手側のビハインド(だと信じたい) 「今のを 始まりの合図と受けよう」 「ご随意に」 来る! 「キリコのかぁさん で〜べ〜そ〜」 いつの間にか 周りに実装石が集まり 「デ〜デ〜ス〜デ〜デ〜ス〜デ〜デ〜ス〜・・・」 と唱和する 言霊は展開される 話題は 何でも好いわけではないが 状況に即したテーゼだったり 意表を衝くそれだったり 徹底的に否定したり 同意で場の方向性に乗るのも手だ 後者の場合 フィールドの励起は急速に進むが「場」の支配にむつかしいものがある 互いに方向性の違うロジックをぶつけ合うのも有りだが これでは単にデュエットに過ぎない 弾き 唱和し 分解し 再構築し 削り 磨り潰し 潜り 背き 偽り 剔る 我々「言霊師」同士の戦いは 端から見ると(その瞬間までは)退屈きわまりない口喧嘩に過ぎない −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【トシコ ミドリがかぷかぷ笑ったよ(けんじ)】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
