タイトル:【虐】 まだ見ぬ景色 後編
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5128 レス数:1
初投稿日時:2008/02/08-10:21:25修正日時:2008/02/08-10:21:25
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【まだ見ぬ景色】後編
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「野良猫かと思って見てみれば……まさか野良実装とはな……」

親仔の背後には大きな影が立っていた。

(なんデス? 聞き覚えのない声デス……)

『テェ?』
『テチ?』
『テチュ……? テッ!?』

その声に仔らが一斉に反応する。
だが自分はゴチソウを頬張りすぎて動くことができない。

「うわ〜、こりゃひどく荒らしてくれたなぁ……しかし、まだ外に出てこようって奴が居たんだなぁ」

(デ……聞き慣れない? ……違うデス!)

母は首をかしげて悩む。

(これは何度か聞いたことがあるデス。声の感じはいつものと違うデス……これは、この感じは……)

『テッチ? ダレテッチ?』
『ワタチウンチがキモチワルイテチィ、キレイキレイしてホシイテチ』
『チィィ! オッキイテチ! コワイテチィ!』
「街中でお粗相か……糞蟲ちゃんはこれだから管理を離れると……」



(人間さんの……声……デス)



「困るんだよね!」

その人間はひとしきり大きな声をあげると、自らの足を持ち上げた。
そして……。

『チギィ!』

短い悲鳴が上がった瞬間、びちっ……と肉の爆ぜる音がした。

(デ? いまのは私の仔の声に似てるデス……?)

続いてザリザリと地面がこすれる音がする。
それにびちびちと液体の絡みつく音がまざり、後ろからつんと血の匂いがただよってきた。

(でもあの仔たちの声はもっと可愛いデス、あんな腐ったお肉をひき潰したような声じゃないデス。まるで天使の歌声のような……。)

どんどん不安になっていく。
母はありったけの力を口と喉にこめると、頬張っていたものを全てのどの奥に流し込んだ。

『ゲプッ! デェ……?』
『…………!』

そして……全てを飲み込んだ母が振り向いた先では次女が地面に横たわっていた。

(デ? 何をしてるデス?)

見ると、スカートから見えていた可愛いアンヨが何か赤色と緑色の、ドロドロしたマーブル色で隠れてしまっていた。
次女はひくひくと顔を痙攣させ、目からはとめどない涙を溢れさせてお空を見ていた。

『ど、どうしたデ……』
『チッギィィィィィィィィ! ヒギィィィィィッュュゥゥゥゥゥゥ!!』

母親が聞き終わる前に次女はありったけの声で泣き叫び始めた。
癇癪……いや、気が狂ったも同然の叫び方だ。

『ヒッギィィィィィィィィ! チィィィィィギァァァァァァ!!』
「あ〜ピーピーうるせぇなぁもう、叫ぶしか能がねぇのかよ糞蟲ちゃんよ」

人間は再びその足で次女のドロドロした部分をグリグリし始めた。

『ピギィィィィッ! ヂッ! ヒギチュゥゥゥゥゥゥ!!』
「うるさいつってんの!」

人間が何か言っているが、そんなことはどうでもいい。
母はヨロヨロと気が狂ってしまった次女に近付いていく。

『ど、どうしたデス……かわいいアンヨが汚れちゃってるデ……』

ぺちゃ。ねと……。

触れたその場所に足は無く、ドロドロブヨブヨとした肉片があるばかりだった。
コツコツとあたる硬いものがかろうじて残った次女の足の骨であることがわかった。

『これは……何デス……』

母はその露出した骨に触れる。
スリスリと形を確かめるように撫でまわしている。

『ギッ! チギッ! ヒュッ! ピッ! ピギィィィィイィ! テッチギィィィィィ!!』
『デデェェェ! どうしたデス! 泣くのをやめるデスゥ……!』

次女にとってはむき出しの神経を触られているようなものである。叫ばないほうがおかしいというものだ。
だが動揺した母には次女に何が起こっているのかがわからない。

「はぁ、お前が親か……。まったく、公園外に餌探しなんて勇気ある決断だったろうに……でもツメが甘かったな。それに……」

わからない、何で泣いているのか。なんで足が無いのか。
いや、足が無いから泣いているんだろう。じゃ、なんで足が無いんだろう。
さっきまでかわいいアンヨでチョコチョコ歩いて、後ろを着いてきた……それなのに……。
なのに……なんで……。
なん……——。

「……運が無かったな!」

ぶちゅん。

『メヂッ!』

先ほどよりもさらに水っぽい音と共に、母の目の前で次女が完全に姿を消した。

『デ……?』

次女が居た場所には、さっきまでは無かった大きな何かがそびえ立っている。

(なんデス、これは。どくデス、どいてほしいデス)

ぽふぽふと両手で“それ”をたたく。

(ワタシの仔が見えなくなっちゃったデス……。デデェ?)

何度も、何度も、何度も……。

『デェ?』

するとそのそびえ立つ何かの下から、じわりと緑と赤色の何かが滲んできた。

『あの仔の匂いがするデスゥ……どうしてデスゥ?』

再び親はぽふぽふと“それ”をたたき始めた。

「あーもう叩くな叩くな。今どけてやるよ」

そう人間が言うと、目の前の大きな何かが持ち上がった。
長く伸びたそれを追いかけていくと……人間さんの顔。
“それ”は人間さんの体から生えていた。

(……ああ、あれは人間さんのアンヨだったデスゥ)

そして、そのアンヨがどいた下からは……ドロドロとブヨブヨが出てきた。

『デ……デェ?』

両手でぺちゃぺちゃとそのドロドロブヨブヨをさぐってみる。
……手ごたえが無い。時々コツコツ手に当たる白いものがあるくらいだ。
でもそのドロドロの下にあの仔が着ていた服がある。
それに、よく見れば形が残っている部分もあった。
だが所々が紫色になっていたり、桃色がはみ出していたり、緑色がドロドロ出てきたりとよくわからない。

『チッギャァァァァ! イモウトチャァァァァン!』
『マッ! マッ……ァッ! ママァァァァァ!!』

ここで固まっていた長女、三女が泣き叫び始めた。

(デ……デ……)

その声で母親の脳内ジグソーがパチリと一瞬で組みあがっていく。

『デ、デァァァァァァァァッ!? ワワワワワワタシの仔がぁぁぁぁぁっ!』

やっと母は理解した。
我が仔が人間に踏み潰されたことを……。

「おいおい泣きたいのはこっちだぜ、こんな風に俺ん家の生ゴミを道路に散らかされてさぁ」

 人間は手に持ったリンガルを見ながらそう吐き捨てた。

『デ……ナマゴミ、デス?』
「管理が悪い、って向かいのババアに怒鳴られる身にもなってくれってんだよ……」

ナマゴミ、人間はたしかにそう言った。
聞いたことがある。たしか例のゴチソウ……“ザンパン”をそう呼ぶことがあるはずだ。
つまり、ナマゴミとはゴチソウのこと。

『デェ〜……』

ポクポクポク……。

つまりこれは人間のゴチソウ。
で、自分達はそれを食べた。
つまり自分達はゴチソウを横取りしてしまった。
で、次女が殺されてしまった。
つまり人間は怒っている。
……どうやら自分達は人間を怒らせてしまったらしい。

チ〜ン。

——母の脳内ジグソーはそう組みあがった。



『デッデェェェ! 許して欲しいデスゥゥ! ほんの出来心デッスゥ! 悪気はなかったデスゥ!』

まるで前髪を摩擦でハゲさせるかのように、母は地面に頭部をこすり付け謝った。

『テッ? ママナニしてるテチ!』

そんな母の姿に長女は怒り狂う。

『ああああああ謝っているデスゥ! お前も早く一緒に謝るデスゥ!』
『イヤテチィ! コイツはイモウトチャンをコロシタクソニンゲンテチィ! ナンデアヤマルテチィ!』

地面に正座で座り、頭部をこすりつけるようにして地面へ垂れる……。

「土下座」

実装界にとっても、このポーズはもちろん降伏・服従の意味を示す。
——母親が自分の娘……姉妹の敵に服従している。
どうやらその姿が長女はお気に召さないようだ。

『デギャァァ! 何をぬかしやがるかデスゥゥ! 早く!お前も一緒に謝るデスゥ!』
『テチュン!』

母は生意気な口を利いた長女を地面に引き倒す。
そして自分と同じようにズリズリと頭部を地面にこすりつけ服従のポーズをとらせた。

『イダイデッヂィィィィ! オカオがイダイデヂィィィィィィン!!』
『マ、ママ……?』
『デデェ! お前も謝るデスゥ!』
『テッ……! テチッ!!』

突如として鬼のような形相になった母親。
姉妹の中では最も賢い三女だけに、状況はきっちりと理解したようだ。

『チィィィィ……』

家族の中で誰よりも許しを請うように頭部を擦り付け始めた。

「へぇ〜実装にも土下座文化があったんだな。日本に生息してるから自然と身についたのかねぇ」
『そ、そうデス! そのドゲザとかいう奴デスゥ! だから、許して欲しいデッスゥゥ〜……』

母は頭部を地面につけたまま、プリプリと尻を持ち上げる。

「う〜ん、そうだなぁ。いいもの見せてもらったから……許してやりたいのはヤマヤマなんだけどねぇ」
『……デ?』
『テェ?』
『テ?』
「残念だけど、公園から出てきた野良は殺処分することになってるんだよ」
『デェ? サッショブン・・・?』
「つまり殺すってこと」
『デッ!』
『テッ!』
『チッ!』

三匹の顔が一瞬にして青ざめた。

『そ、それだけはやめて欲しいデッスゥゥゥゥ!!』
『テェェェェン! シヌのイヤテチャァァァァァァン!!』
『ママァッ! ママァァッ!!』
「だ〜め、決まりだからね」

人間はチッチッチと人差し指を振りながら告げる。

『なななななんでそんなことをするデッスゥゥ!?』

親実装は当然とも言える質問をぶつける。
再びリンガルに視線を落としていた人間は、ニヤリと笑みをこぼし……嬉々として語りだした。

「この街は昔から野良の被害が酷くてさ、何年もかけてお前らを公園から出させないように皆で“教育”してきたんだよ」
『教育……デス?』
「ああ、公園から出ようとしたら皆でボコボコにして公園に戻すんだ」
『デッ!?』
「キャッチアンドフルボッコアンドリリース、こいつを何度も何度も繰り返した」
『マ……マ……?』

母の脳裏にボロボロの姿で戻ってきた“ママ”が浮かぶ。
そう、外に出てきた連中の殆どは行方不明だが、ごく一部は再び帰ってきた。
だがそれらは必ず“瀕死の重傷”で、必ず“後日死んでしまう”のであった。
もはやこの時点で人為的作為を感じなければいけないところである。

「そうすればいくらバカなお前らでもそのうち気付くだろ? “公園の外は危ない”って」
『ワタシは……ママに、そう教えられて……』
「それが狙いさ。この街は愛護派が多いんだけど、あいつらワガママなんだよね〜。
 野良実装ちゃんを愛護してあげたい、けど街が汚されるのはイヤ……って。そんなんどうしろってんだよなぁ?」
『な、仲良く暮らせばいいと思うデス……』
「そうだな、だからお前らを公園に閉じ込めることにしたんだ。柵とかフェンスとかじゃなくて、自分達から、な。
 そいでもって、公園をほどよく野良が暮らせる環境に整えて……まぁ言うなれば一種のサファリパークみたいなもんか。
 野良の生態も観察できて、季節によっては愛護もできる。脱走したら制裁として虐待。見事に三者が共存できてるだろ?」

虐待派、愛護派、観察派。
異なる三派閥が共存して運営する理想的な街、それの核となる公園。
人間は、それがこの公園の真実の姿なのだと言う。

『ワ、ワタシ達の自由と幸せが無いデス……』
「公園内ならいくらでも自由だったろ、でもここはもう人間様の生活圏内だ、それは良くない。
 進入は重罪……大人しくお前らの生活特区で過ごしていればよかったんだよ」

公園とは言わば都市部における実装石の住家、その象徴である。
簡単に言うと大多数の人間が「そこに住んでいても仕方が無い」と思う場所。
そのわずかな心の隙こそが、人間社会で弾かれる野良実装唯一の生息域であり「生活特区」と呼べる場所なのだ。

『ご、ご飯が無かったんデス……だから、仕方が無く……』

母はおずおずと動機を語る。
だがそれに人間は笑い声で応えた。

「あっははははは! あ〜……そりゃ残念。すれ違いだったなぁ」
『デ?』
『テ?』
『テェ?』

ポカンと人間を見つめる三匹。

「たしか予定通りなら今日が配給の日だったかな。……今頃公園には愛護派の一団がエサを撒きに行ってるはずだぜ?」
『エサテチ……?』
『ゴハン……?』
『ど、どういうことデス……?』
「だから、公園にずっと居ればおいしいご飯がたらふく食えたって話なんだよ」

……あまりの衝撃に親仔はしばし声を上げるのを忘れていた。
公園に餌がないから探しに来た。だがもう少し待っていれば人間が餌を差し入れに来ていたというのだ。

つまり……自分達の行ったことは、全て徒労……。

『デッデェェェェェェ!! そりゃどういうことデッスゥゥゥ!?!?』
『チギャアァァァ!! このクソオヤ! なんてマヌケテチィ! オマエというクズのタメにイモウトチャンはジメンのシミになったテチィ!』
『ママァァッ! ママァァァァ! ドウイウコトテッチィィィィィン!』

動揺して取り乱す母に、仔らは容赦なく罵声と詰問をぶつけた。
その今まで見たことの無い仔らの様子に母はさらに混乱する。

『デ……ち、違うデス、これは何かの間違い……』
『テェェェェン! ママァァァァァァ! テェェェェェェェェェェン!!』
『ウルサイテチィ! このゴミオヤ! オマエもジメンのシミになるがいいテッチィィィィィ!!』
『デェェェ! ママになんて口の聞き方デスゥ! こっちに来るデス! お仕置きデスゥ!』

母はブンブンと腕を振り回し、長女を威嚇する。

『ウルサイテチ! オマエにソンナコトされるケンリはないテチ! これでもクラウテチ!』

だが完全にヒステリー状態になっている長女は母の静止も聞かず、己の糞を母に向かって投げ始めた。

『デギャァァァァ! なんてことするデッスゥゥ! お前は糞蟲だったデスゥゥ!?』

すっかり糞まみれになった母は逆上して長女に掴みかかった。

『ウルサイテッチィィィィン! オマエコソがクソムシテッチャァァァァァ!!』

お互いに取っ組み合って罵りあう親仔を尻目に、三女は人間をじっと見ていた。

『ママ、オネエチャン……あのニンゲンサン、ナニしてるテチ?』
『ハァハァ……デェ?』
『ハァ……ハァ……テェ?』

三匹の視線の先では、人間が耳元に何か板らしきものを当てて喋っていた。

「あー、もしもし、……俺。うん、そう、三匹。……活き? いいよ、いいよ! すっごく理想的な糞蟲親仔。楽しめるぞぉ」
『デェ……、あの〜……人間さん……?』
「おう、久々だからなぁ。道具? ああ、俺ん家の使えばいいよ。え? あ〜、愛会のババア? いや申請書はお前が書いておいてくれよ。ん、じゃな」
『ニンゲンサン……?』

ピッ、と小さな音がその板から鳴ると、人間はようやく親仔に視線を戻した。

「お、わりわり。ちょっと電話してた。で、なんだって?」
『今のは……何デス?』
「ん? これか?」

人間は持っていた板……携帯電話をひらひらと親仔に見せ付ける。

「ああ、仲間を呼んだんだよ、これで」
『な、仲間デス……?』
「い〜い糞虫が三匹も入ったから……皆で楽しもうぜ、って」
『な、何をデス……?』

人間はにやりと口端をつりあげると、嬉しそうに言った。

「三 ヶ 月 ぶ り の …… 虐 待(はぁと」
『デッ!』
『ヂッ!』
『ィィィィィッ!!』

その言葉と共にブリブリと盛大な音が三匹からこだまし、パンツの中に糞がぶちまけられた。

「さぁ……キミには脱走の恐怖を存分に語ってもらわないといけないからね。じっくりたっぷりねっちりと行こうか……」

人間は母と長女、三女を一度に手に抱いた。
もはや三匹は顔や総排泄孔における穴という穴から汁をこぼしまくっている。
もう涎やら鼻水やら何かよく分からない液やらでベトベトだ。

『デ……デデ……デェェェ!!?』
『テェェェァァァァ!! イヤテェェェェン! ギャクタイ! イヤァァァ! テッチョォォォォォォン!!』
『チヒッギィィィィ! テッ! テヒッ! ハフ、ヒッ! ヒィィィィ!』

三者三様に叫ぶ親仔を見て、人間はここ一番の優しい笑顔を見せた。

「今から経験すること、面白おかしく公園の皆に語ってくれよ……“外に出たらどうなるか”って事をね」
『デギャァァァァァァァァァ!!』
「それじゃ楽しもうか。俺の家で……」
『テッヂィィィィィィィィ!!』
『イヤテェェェェェェン……テェェェェェェェェェェン!!』



こうして笑顔の男に連れられ、三匹の親仔はとある家の中へと消えていった……。

おそらくは、人生の中で初めて見るであろう人間の家。
同じく、初めて見るであろう器具の数々……。
そして……それらが見せてくれるであろう素晴らしき悪夢の世界。

三匹の“まだ見ぬ景色”は、まだまだ続くのであった……。










——— それから2週間後 ———



『デデッ、それは本当デスゥ?』
『間違いないデス、確かに戻ってきたデスゥ!』
『あいつがお外に出たという噂は本当だったデスゥ……』

町立愛護公園、噴水前。
そこに無数の野良実装が集まっていた。
彼らは円を作るように群がり、その中央には一匹のボロボロの実装石が座っていた。

『それで、どんな感じデス?』
『見りゃわかるデス……』
『デデェ……これは目も当てられないデスゥ……』
『ママ……コワイテチ……』
『しっ、見ちゃダメデスゥ……』

その座り込む実装石……いや、実装石と判別するのすら難しいかもしれない。
服は無く、前髪も後ろ髪も無く、口にいたっては歯どころか唇すらないという状況。
止めるものが無い為に涎が際限なくドロドロと下にこぼれて行く。
顔は空豆で作った豆大福のようにいびつに膨れ上がり、手足はなぜか12本に増えている。
強引な施術が行われたのか、その付け加えられたであろう手足の付け根には、見苦しい縫い後が垣間見える。
目に光は無く、うつろな視線でただヒューヒューと息をするだけの物体となっていた。

『おい、生きてるデス? まぁ見れば生きてるのは分かるデス……』

周囲に集まった野良の一匹がツンツンをその実装石を刺激する。

『ひゅ……ひゅぅ……』

だが口から漏れるのは息遣いも同然の音ばかり。
どう見ても会話というものができそうな状況ではない。

『何があったデス? 公園のお外には何があったデス?』
『あほこ……は……ひごく……へふ……』
『デェ? なんて言ってるデス?』
『あそこは地獄……とか言ってるデス』
『お外はやっぱり地獄だったデス? やっぱりデス……まったく禁忌は正しかったデスゥ!』
『この糞蟲! 自業自得というヤツデスゥ!』
『ママァ……コワイテチ……』
『しっ、石でもぶつけてやるデスゥ……』

その後しばらく、好き勝手にこの実装を罵倒した野良達は雲の子を散らすようにその場から離れていった。
後には発見された当初より3割り増しの怪我になった実装石(?)が残されていた。

『ひ……げは……わ……はひのほ……は……ひゅ……』

たった一匹になっても、彼女は壊れたスピーカーのようにずっと何かを呟いていた。





——人間さん、ワタシの仔は元気デスゥ?

——長女も三女もお腹がぽっこりしていたデス。きっとママになるデス

——ワタシ、おばあちゃんになっちゃうデス?

——でもワタシもおなかがぽっこりしているデス。

——新しい妹が出来るデス? ならそれでおあいこデス。

——デ? みんなワタシのお腹の中で生きているってどういうことデス?

——カタミのテアシってどういうことデス?

——よくわからないデス。

——お前の仔だ、とか言ってドロドロの汁を見せられた頃から覚えてないデスゥ。

——でも、あの汁は美味しかったデスゥ……。










「どうだ、敏明。あのメッセンジャーの様子は」
「もう……ずっと同じ感じだな。群れにもうまく伝わったみたいだし、もういいんじゃないかな?」
「おい、俺にも覗かせろよ……お〜、よく見えるな。さすが高級品、倍率高けぇ〜……」
「……壊すなよ?」
「わはは、愛護派がエサやりにきたぞ。アレ見つかったらまたうるさそうだな!」
「書類出しても元々うるせーからな、本音は俺たちのことを認めたくないんだろ……?」
「はっきりしねぇ連中だな、本当」
「……さて、と。それじゃ面倒なのはイヤだし、もういいかな……」
「ん、その手に持っているのは?」
「……時限装置」
「へ? ただの偽石じゃねーか」
「アホ……だ・か・ら、だろ」
「え……? ああ、そういうことか! なるほど」
「ああ、もうアイツは十分役目は果たしたな。それじゃいきますか……」
「そうだな」
「それじゃ、合掌……」
「他の連中も、もう公園から出てくるなよ〜」
「ご苦労様でしたっと」
「向こうに行っても、また見たことのない景色が待ってるぜ〜♪」
「じゃあな〜」



——パキン。



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まだ見ぬ景色【完】
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1 Re: Name:匿名石 2018/05/06-11:42:29 No:00005203[申告]
糞蟲死すべし、慈悲はない
我慢する、待つということができない糞蟲は死ぬしかない
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