たかが託児といえど、口では何とでもいえるの言葉どおり、されど託児。 大繁殖により増えきわまった実装石のため、公園での食糧事情が一変して悪い方に変化した。 親実装が託児の決意を決めるのには充分すぎる変化だった。 寒空の下、立ちすさむ実装石達が一人と一匹。一匹は仔実装だった。つまりこの実装石達は親子なのだった。 公園に面したコンビニに面した駐車場で、親子である実装石は託児の機会をうかがって。 「オマエはニンゲンさんに託児するデス」 このとき親実装は申し訳なさそうに。だが、愛情を込めてこう言ったのは子供を飢えから救う母の愛情からだった。 仔実装は仔実装にしては実装基準に当てはめて賢い部類に入る仔実装だったので 心の中で寂しいと思ったが、母を心配させまいと思いながらも、まだまだ仔実装であったので思わず 「寂しいテチ」 とつぶやいた。 そのときの仔実装の心の中は寂しい気持ちで一杯だった。 実装親子が束の間に別れを惜しんで2〜3言言葉を交わしていると人間の姿が見えた。 だが、人間の姿は公園の方だったので、実装親子は別れの言葉を交わしつつも人間の方を凝視した。 その人間が公園に入ると、実装石達の悲鳴が聞こえた。 コンビニに面した駐車場から眺める公園の植え込みの隙間からも、逃げまどう実装石など惨劇の様子だった。 虐待派だった人間の男が公園を抜けて面したコンビニへと歩む。 歩んでいるのが見えたので実装石達親子はゴミ箱の影に身を寄せ合って隠れた。 数分後、コンビニから出てきたのは人間の男だとでもいうのか。 そして都合のいいことに人間の男がぶら下げているコンビニ袋は袋の口が開いている。 実装石対策をしていないのだ。その袋の口の開きようと言えば、まるで親実装の体内を蛆実装が食い破った時に 喰われた親実装が開ける口の形に似ていた。 その口の形に何か不吉な物を感じた親実装だったが、仔実装の体力が限界まで持たないことを感じ取り 意を決して親実装は仔実装を両手で抱え人間の男に一気に近づく。近づく距離、時間、約数瞬。 親実装が投げたことで仔実装は袋の中に飛んでから入る。 袋の中から聞こえるテチィという声が、託児の第一段階が終わり完了したことを物語っていた。 仔実装は男の家へ、親実装は公園へ、互いの行く先は真逆の反対側だ。 遠くなる男の姿を親実装は後ろを振り返り、それでも託児を成功させた自信から堂々とした歩き方で振り返る事もせず 仔実装に別れを心の中で告げた。 あの仔はワタシの自慢の仔だ。賢さに関しては他の仔より賢い。きっとニンゲンさんも気に入ってもらえるはずだ。と 「しばしばのさよならデス。ワタシの仔。グッドバイ……ベリーグッドバイデスゥ……」 思わず呟くほどのことであった。 公園の中にある段ボールハウスの我が家に帰り着いた親実装は子供達の声援を受ける。 「どこ行ってたテチ!?」 「オナカペコペコテチ!」 「オネエチャがいないテチ」 「ウンチ出たテチ」 最後のはなくても良いのだが、子供達は口々に親に悪口をぶつけあう。子供達は糞蟲だったのだ。 賢い仔以外は放っておいても良かったのだが、あまりのうるささに親実装は耳をふさぐのだが 子供達のうるささと言ったら耳をふさいでもハッキリと聞こえるくらいの盛大な騒音だったのだが 親実装が今思うのは、託児に成功した賢い仔のことだけだった。 一方、託児に成功した賢い仔はコンビニ袋の中で悩んでいた。 目の前にゴチソウがあるのである。親にはニンゲンの食べ物には手を付けてはいけないと躾されている。 だが、食べたい物は食べたいし、我慢しなくてはいけない物は我慢しなくてはいけない。 とうとう我慢できずにコンビニ袋の中の男の買ったステーキをかじる。 口の中に広がる醤油味が賢い仔実装を狂わせた。つまり全て食べてしまったというところがある。 そして食べる物を食べれば、出る物が出る。大量の緑色の軟便をステーキ皿のトレイにして眠ったのだった。 男が気づいたのはステーキを食べようとしたときだった。 肉の代わりに緑色の軟便と仔実装が寝ていたのである。気づくはずである。 寝ていたが男に気づいた仔実装は親に躾られた通り男に飼って貰うための挨拶を行った。 挨拶だけの形だが、そこに素直な挨拶が見えていることに男は気づき笑顔で挨拶をかえす。 そして心の中で賢い仔実装が手に入ったことを喜んだ。 挨拶をかえし終えた男は仔実装にコンペイトウのような物を渡し食べさせる。 仔実装は今は満腹なので何も食べなくともいいのだが、食べることにした。 食べ終えた仔実装の腹の中では縮まるような音がして、仔実装はパンツの中にパンコンする。 それは仔実装が生まれてきて初めてするほどのパンコンだった。まさにその文字通りパンコニアパンコンだったのだ。 パンコンし終えた仔実装は気絶して夢を見る。 優しかった母のこと、仲の良かった姉妹のこと、実は居なかった蛆実装のこと。 全てが繊細に夢となって現れ、仔実装の偽石が崩壊するのを防いでいた。 その様子を見て男は笑いながら仔実装を水の入っていない水槽に入れる。 仔実装が目を覚ましたのは翌朝の朝方だった。 目をこすると水槽越しに男の姿が見える。 実は男は独身だが、早くに死んだ親の年金を受け継ぎ豪華な暮らしをしている。 男の家はまさに一つの城である。厳密には城でなく屋敷に近いのだが、それを抜いても大きすぎる。そんな家であった。 そして男の城では朝食の時間を迎えており、彼の世話をする実蒼石が次々と豪華な料理を運び出していた。 それは朝食とは思えないほどの豪華さで、実装石がこの料理を見たら、これが本当に朝食なのかと目を仰天させるに違いない。 これだけで実装石と男との差は歴然と離れており、男が豪華な暮らしをしている様子はこの朝食だけでも想像がついてしまう。 さらに料理は運び去られて、男の目の前に全ての料理が出そろった。豪華で目を見張るほどの調度品の数々。 目の前には光を反射するナイフやフォーク。そして、座っても尻が床に着かない座布団。 全てが豪華豪華の超豪華。文字通りこれ以上の単語が見当たらない程の豪華であった。 昨晩食べさせられたコンペイトウという名のドドンパにより仔実装の腹は空腹で、仔実装は男に空腹を訴える。 それはまさに空腹を訴えるという感じだった。 そしてあまりの空腹により本性が出てしまう。それは一番やってはいけないこと。守らなくてはならないルール。 「ニンゲン、そのゴハンをワタチに食べさせるテチ!」 歯を食いしばりながら口を大きく開け、威嚇という感じの表情をつくる。 そして男に問いただしたい小さなこと。それはなぜ自分がパンコンしたまま寝ているのかと言うことにある。 その様子を見た男は笑いながら食事を中断し、食卓にあった爪楊枝で仔実装の右手を刺し貫き水槽の床に固定する。 そして持っていた割り箸で仔実装の服を器用に脱がせる。 命と偽石と髪の毛の次に大切な服を奪われ仔実装は絶叫を叫ぶ。 「テチョォォォォ!服とるなテチ〜!」 仔実装が抵抗で暴れるたびに刺し貫かれた右手の傷は大きく深くなり仔実装に痛手を負わせる。 そして男は、仔実装が動けないのを良いことに仔実装の目の前で仔実装の服を仔実装によく見えるように オーバーなアクションを付けて火を付けて燃やした。 仔実装は信じられないと言ったような顔を向けて。 「テヒッ、テチョォォォォォ!」 絶叫に次ぐ絶叫だった。 その様子を見てただニヤニヤと笑うだけの男。決死の親の見立てにもかかわらず、なんと男は虐待派だったのだ。 そのころ、服を燃やされた仔実装の親とその姉妹達は渡りの最中であった。 服を燃やされた仔実装の臭いを頼りに男の家まで忍び寄り親子もろとも託児して貰い、飼い実装になろうという計画だ。 だが、実装石の渡りなど、その成功率たるやおよそ5%、多く見積もっても3%強以下を下回る。 ここに来るまでに仔の殆どを失ってしまった。9匹いた仔実装は約半数にまで数を減らしていた。 信号の歩道を渡りきれずにトレーラーに轢かれた長女 民家の庭で見た犬の餌を奪いに行って、犬の餌になった3女 ドブに落ちたので、そのまま見捨てられた5女 途中で会った飼い実装のオヤツになった6女 猫に喰われた7女 鳥に喰われた8女 実は居なかった蛆実装 などの有様だった。 今、親実装の手元には託児した次女に次いで賢さが高い4女しかいない。 仔実装が全ていなくなれば託児する理由が無くなる。つまり飼い実装になるチャンスを失うというところがある。 今居る4女だけは死守しなくてはいけない。ギリギリの気持ちの中で親実装は考えることをした。 そしてついに決断した。 何があっても4女だけは守り抜こうと。 その苦労を語れば人間も頑張った自分を認めてくれるかも知れないし、認めてくれないかも知れない。 だから一か八かに賭けたのである。 親実装はそれまで潜んでいた民家の軒下から這い出して4女の手を引く。 目標とする男の城までの距離まで、あと少しである。 そのころ、服を燃やされた仔実装は食卓の上にいた。 それは皿の上に固定され、まるで「仔実装の丸焼き」の一品料理のように寝そべっている。 その仔実装に男は食事用のナイフとフォークで腹を割いていく。その様子はまるで食事をしているように見えた。 「テチョォォォォォ!」 仔実装の叫ぶ騒音が聞こえるが、男は表情を変えずに仔実装を切り刻む。 切り刻むナイフが胸元に来たとき、ナイフの先に硬い物が当たったのを感じた男は ナイフとフォークで器用に偽石を取り出す。 偽石はきれいな緑色だったが、仔実装は風前の灯火だ。 男は取り出した偽石を実蒼石に命じて特製の実装活性剤に漬け込む。 これは男が長年の研究により創りだした特製の実装活性剤で、高級なワインなどで出来ているので 市販の実装活性剤よりもさらに高価な特製の実装活性剤なのであった。 実蒼石が偽石を特製の実装活性剤に漬け込むと、スイッチがピッと入ったようにシュルシュルと仔実装の傷が治った。 そのころ、偽石を取り出され特製の実装活性剤に漬け込まれた仔実装の母親と4女は その様子を窓の外から震えながら眺めていた。寒いわけではない怖いのだ。 その様子に気づいた仔実装は「ママテチ!」と叫んだ。 その様子に気づいた男は窓を開けて偽石を取り出され特製の実装活性剤に漬け込まれた仔実装の母親と4女を家の中に入れる。 その様子をみて仔実装は今度は母親と4女が同じ目に遭わされると気づいた仔実装は「ママ逃げるテチ!」と叫ぶ。 だがもう遅い。ここは男の城の中なのだ。侵入者を防ぐトラップの数々は逃亡者を捕らえるトラップでもあるのだ。 きびすを帰した親実装はあっけなく捕まってしまう。 罠の下では4女が「ママ〜!、ママ〜!」と文字通り母親という名前を叫んでいた。 罠にかかった親実装の顔をのぞき込んで男が言う。 「お前の仔実装は俺のステーキを食ったんだ。食べた分は帰して貰う」 その目は笑っていたが、あきらかに心から笑ってはいない。よそ行きの目ということがある。 怯えた親実装は恐怖でパンコンしたが、辛うじてパンツの中だったためプライドは保たれている。 そして親実装はそのプライドのまま 「人間の暮らしじゃないと仔実装が死んでしまうデス」 「そうテチ!ママの言う通りテチ!」 と親子で苦しい生活を言った。 仔実装と、ママと呼ばれた成体実装はまっすぐな返答だと男は思った。だが 「だから託児したのか?人間に迷惑をかける託児をする実装石は殺して処分だぞ?」 と説得する用語を放つと一変して 「デ、デェェ……そ、それは”託児ごっこ”デスゥ」 と機転を効かせた。 そうだこれは”託児ごっこ”なのだ。”ごっこ”ならば許されると言うところがある。 親実装はそう心の中で言い訳をして、全ての罪を男になすりつけた。 その言葉を聞いた男はニヤリと笑うと、皿の上の仔実装の髪を掴んで引きちぎる。 「ならばこれも”虐待ごっこ”だっ!」 「テチョォォォォォ!」 命の次に大切な髪、失えば二度とは生えそろわない髪、それを失ったのだ。仔実装はショック状態でパンコンする。 だがパンツは男に取り上げられてしまった。燃やされてしまっていた。いまやコンでしかない。 そのことで仔実装はプライドと髪の毛を失ったが…… 「うわっ!汚ねっ!」 パンツがないおかげで潔癖性の男の手を糞で汚し、糞に触れた男は慌てて仔実装を取りこぼした。 仔実装は男の手から床にバウンドし着地した地点はフローリングの様な床の上の家族の元に降り立っていた。 まさに3日ぶりの家族水入らずである。抱きしめあう3匹。 しかしすぐに男の影が迫る。 「絶対に許さないよ」 男が大きく目を寄せる。 このままでは全員、見た目が厳しいことになってしまう。 そう考えた親実装は恐怖のあまり、両の手に次女と4女を引いて逃げ出した。 とてつもなく広い男の屋敷の曲がりくねった通路を右に抜け左に抜け、また左にと言うように逃げた。 だが、男の城は大きく罠も多い。このままでは男に捕まるのも時間の問題だ。疲労狼狽する親に次女が言った。 「ママ!ワタチはママ達より長くこの家にいるテチ!この家のことは任せるテチ!」 親実装はこの上もなく娘をたくましく思い、娘の指示に従うことにした。 それと同時に、なんと賢い娘なのだろう。ワタシの娘なので賢いのは当然だが、ここまで賢いとは予想だにしなかった。 とその賢さを評価して。 「オマエは賢い仔デスゥ」 といった。そのときの親実装の気持ちは、なんと賢い娘なのだろうと言うくらいだった。 この賢さならば禿裸でもやっていける。親はそう考えることを確信した。 4女も賢いには賢いが、引っ込み思案な性格なのかあまり言葉を発することは少ない模様だ。 今の親実装の心配はそれだけであった。 「ママ達はコッチに隠れるテチ!」 次女の指示通り廊下の角に隠れる親実装と4女。人間と対峙するは次女は通路の真ん中に立つ。 程なくして男が現れる。手にはバールのような物を装備している。 近づく男、時間、距離、約数瞬 次女のカウントダウンが始まったのは4秒前からだった。 「5…4…3…2…ゼロ!」 「コッチテチ!」 親実装と4女は次女に言われるまま逃げ道を逃げ出す。 命も裂けよとばかりに3匹は走っている。歩いているのではない。走っているのだ。 逃げ出して逃げ出して、逃げ出した先には出口があった。 藁にもすがる思いで出口をくぐると、そこは外であった。親実装は無事に逃げ出せたのだ。 安心する親実装だが、背後からの悲鳴で再び緊張することになる。 「ママー!捕まってしまったテチー!!」 見れば、かつて民家の軒下で死守して守り抜くと心に決めた4女が男に捕まり連れ去られていく。 親実装は自分が逃げるのに必死で4女のことが頭から抜けきっていたのだ。 男は4女を捕まえただけで満足したようで、家の中に引き上げていく。 男に捕らえられた4女は次女と同じく虐待され禿裸にされることであろう。 だが、親実装にはそれを阻止する方法も4女を助け出す方法も知らない。 親実装はその後ろ姿と遠くなる4女の悲鳴を聞きながら 「デェェ〜全てはワタシのせいデスゥ……」 と呟いた。 かくして、親実装の手元には最初に託児した次女が禿裸の状態で残った。 つまりプラスマイナスゼロということである。 だが、禿裸に公園での生活はきついことになってしまう。 それでも彼女たちは生きていくしかないのだ。終わりがあるかわからないことに…… (おわり) −−−−−あとがき−−−−− 読んでくれた人ありがとう。牙城院 詩空デス スピード感のある?(^^;)逃走シーンとラストの実装石の悲哀を書きたかったので 虐待分は少な目になってしまいました(爆) 自分的には90点中86点の出来だと思っています。でもここの大物スク師さんにはまだまだ及ばないので 努力あるのみじゃ〜e(^。^)gいつかは天辺とったる〜!(^◇^) 出来れば挿絵希望デス 次回作の構想も着々と進行中デス 設定は核戦争により文明が中世程度まで退化した地球が舞台で 幼き頃に親に捨てられ一人で生きて来たがゆえ誰にも心を開かないが 凄腕の殺し屋として裏世界で名を知られる隻眼の少年と 失われた目の秘密を知る実蒼石がクリーチャーと化した実装石をハントする予定です ではみなさん、これからも僕に期待していてくださいヾ(^^ゞ))..( シ^^)ツ −−−−−本当のあとがき−−−−− ダメな日本語・破綻したストーリー・痛いあとがき という三重苦(読んでる側が)を実装したら、こんな風になりました でも、自分で読み返すと意外と読みやすかったりして ホンモノには敵わねぇなぁ……と思いました
